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投稿TS小説第141番 Blood Line (53)(21禁)

『――悲しいの?』
「どうなのかな。正直言って、あの後八方手を尽くして調べて、彼のやってる事が徐々に解って。ショックだった。裏切られたって思った。ヘリが堕ちてるって聞いた時はそんなでもなかったけど。でも、遺体が無いって聞いて」
『ええっ? 遺体が無いって……それじゃ』
 てっきり高野は死んだと思って話を聞いていたリサは、その言葉に驚いていた。
「そうなのよ。あたしはまだ生きてると思ってる。ここの存在は知らないだろうから心配はしてないんだけど」
『……あいつは、そんなに甘くないよ』
 柵に凭れた身体を離し、リサが真理からも離れた。一歩二歩と足を運び真理を振り返る。真理に見えたリサの顔は少し青白く見えた。
『あいつの話なんてもう聞きたくない。帰る』
 上目遣いに真理を見つめる瞳には、全てを拒絶するような色が映っていた。
「ご、ごめんね。不安にさせるつもりじゃなかったのよ。そういう事実があるって、あ、ちょっとリサちゃん」
 弁明をする真理を残し、リサは家に向かって走りだしていた。

 家に戻ってから、リサはこれからの生活に思いを巡らせていた。自分の能力のせいで人が死んだ事で気が咎めたりもしていた。ただ、自分を繋ぐ鎖は解かれたと思っていた。高野も鹿島も捕らえられ塀の中に入ると思っていたのだ。だから、一時期を過ぎれば今までにない生活が待っていると信じていた。それが根底から揺るがされたのだ。
 もしかしたら、この島にも来るかも知れない、そう考えると身の毛がよだつ。また陵辱の日々を過ごさなくてはいけないのだろうかと。最悪のケースを考えながら、しかしリサは一方で楽天的な想像もしていた。真理の話ではヘリコプターは墜落したと言っていた。ならば。
(行方不明って言っても、落ちた近くで野垂れ死んでるかも。そうだよ、普通空から落ちたんなら死んじゃうよ)
 自分の不安を覆い隠そうと、リサは都合のいい想像を、それが本当の事だと信じようとしていた。そうしなければ、これからおちおち寝てもいられなくなりそうだった。

 リサが住んでいる家は、真理が所有している診療所兼住居だった。一階には真理の診療所となっていて、二階が住居として使用されていた。
 診療所の診察室の引き戸を開けると、デスクに向かった真理がカルテの整理をしていた。仕事中ということもあり、リサは声を掛けるのを躊躇したけれど、勇気を出して真理の鼓膜を振るわせた。
『真理さん、さっきはごめんなさい』
 予期していたのか真理はそのまま振り向いて笑顔を見せた。リサはその真理の表情を見て緊張が解れていった。そのまま真理の側まで行き患者用の丸椅子に腰かけた。
「あたしもごめんね。イヤな事を思い出すもんね」

 背もたれに身体を預け、広げられたカルテの上をボールペンのキャップでリズミカルに叩いていた。一瞬の沈黙の後、真理は思いだしたように引き出しからカルテを取り出した。
「リサちゃん、向こうで出されてた薬ってもう飲んでないのよね?」
『飲んでない、っていうか、真理さんと逢ってからはないけど。施設に戻ってからも』
 リサが飲むべき薬剤、それは免疫抑制剤だった。臓器移植を施せば、必ずと言っていいほど拒否反応が出る。異物が体内に入ってくる為に身体がそれを攻撃してしまう。たとえそれがその身体にとって必要不可欠な臓器であっても。免疫抑制剤はその免疫作用を低下させる事で、移植された臓器が攻撃されないようにする。レシピエントが他人であれば生体間の適合は低い。身内であっても高いとは限らない。
 リサの場合、幹彦の脳が璃紗の身体に移植されたのだから、当然処方されていたし、正常に機能させるためには必要な処置だった。にも関わらずリサの肉体は正常この上ないのだ。島に来てからは真理が検査し、一応拒否反応は出ていない。
(こんな風に生体間で適合するなんて、普通あり得ないんだけど。でも、彼なら探し出せるかも……)
『真理さん?』
 真理の脳裏に二つの可能性が過ぎっていたが、リサの【声】でその思考は心の引き出しへとしまわれていった。
「あ、ごめんね。うん、先日の血液検査でも拒否反応無いし、健康そのものよ」
 美しくカットされた眉をひそめていた真理の表情が明るく変わった。何かまずいことでもあるのかと少し心配していたリサは、身体に問題が無い事にひとまず安心していた。その安心感が、幹彦という人物が次第に本当のリサに変わっていっているという事実に、理解が及んでいなかった。
「そうだ。島で友達できた?」
 友達という言葉はリサの心を抉ってくる。初めての友達である俊治。その顛末。真理もその事自体知っているけれど、敢えて尋ねていた。リサの特殊性は真理も十分知っている。このまま島にいようがいまいが、友達もいない孤独な人生などリサには送って欲しくないのだ。それでなくても一人になりがちだと言うのに、心に付いた傷は無理矢理にでも塞いで新たな生き方を模索して欲しいのだ。しかし敢えてそれを言う事はしなかった。それさえもリサに気づいて欲しいと、真理は思っていた。
『友達なんて……知り合いはいるけど』
 真理から視線を外し、小さく真理の鼓膜を振るわせた。消え入りそうな【声】が真理の頭に響く。
「あら。いつの間に? どんな人なの? 男?」
 矢継ぎ早に問う真理に、リサが大きく溜息を吐いた。
『なんか勘違いしてる。強いて言えばだし。――もう、解ったから。言うってば。時々遭う小学生くらいの女の子。『お姉ちゃん、お姉ちゃん』て言われるから、なんか……変な気になる。後はいないよ。みんな僕の事は遠巻きに見てるだけ』
「北村さんのところの貴子ちゃんかしら、近所の女の子だと。でも、いい傾向じゃない。友達は多い方がいいんだから」
(年が離れてても友達なんだろうか?)
 ストレートの黒髪を靡かせ、妙に懐いてくる女の子を思い出しながら、リサは友達の意味を噛み締めていた。

<つづきはこちら>

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