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投稿TS小説第141番 Blood Line (57)(21禁)

* * * 噂 * * * * *

 その噂がリサの耳に入り始めたのは、リミッターを瞬間移動させるべく、真理に身体を弄られた日から二週間程経ってからだった。初めはリサも気にならなかった。島の人々とは世間話をする訳でもないし、姿からして他人とは違うリサに、奇異な目を向けるのも理解していた積もりだった。しかしその目が軽蔑を込めた視線となると話は違った。
 いつもなら遠巻きに見守る、そんな視線が、このテリトリーに入ってくるなというメッセージが込められている事に気づき始めた。それが一週間前。
 そして、あれ程姿を見せていた貴子の顔を見なくなったと気づいたのが一昨日。気になって貴子の家を訪れた今日、自分と真理を対象とした噂が島内を駆け巡っているのに気づいたのだ。
「もう、うちの貴子にちょっかい出さないで頂戴。あんたみたいな無節操な女、ほんとは近くにいて欲しくもないけど……まったく、長谷川のお嬢さんも何考えてんだか」
 汚いモノでも見るような目つきで、貴子は言葉をリサに言葉を吐きかけた。無節操と言われても、リサには全く理解出来なかった。島に来てから比較的友好な関係が作られていると感じていた。それがこの態度だ。リサの頭の中はたくさんのクエスチョンマークで一杯になっていた。
 島民に対してリサは声がでないという振りをしていた。能力者の中でも特別に高い能力を持つ為、島民に無駄な恐怖心を煽らない為だった。何を意味して「無節操」と言うのか、リサは手帳を取り出し【どういうことでしょうか】と理由を尋ねた。
「――女同士であんな事して、うちの娘に近づいたのもそういう理由でしょうが。まったく、能力者なんてろくなもんじゃないわ。長谷川の旦那様の頼みじゃなきゃ、気持ち悪くて引き受けなかったわよ」
 愕然とするリサを置いて、言いたいことを言って貴子の母親は家へと入っていった。扉を思い切り閉めて。その音で我に帰ると、リサはふらふらと歩き出した。
(女同士で、って、島に来てからはリミッター外す為に真理さんにされた時だけ……。まさか、それを誰かに見られてた?! それが島中に広まってる? どうしよう、みんなが知ってたら、追い出される? 折角仲良くできそうだったのに……。あ、真理さんも変な目で見られてるって事か?)
 築き上げたと思っていたモノが、一瞬の内に瓦解してしまう。脳移植後に何度となく経験していた。けれど、今回は自分だけの問題では無かった。真理や他の能力者達にも影響がある筈だった。
(そう言えば、この一週間、殆ど病院に人が来ない――。僕が原因だった?!)
 能力の開発と言えば聞こえはいいが、ただの性的陵辱行為でしかなかった。それが今の状況を造り出している。リサは自分の入れ物となった身体を呪った。時に折れてしまった自分の心を蔑んだ。
落ち着ける居場所と思っていたこの島も、今は心を締め付ける場所に変わりつつあった。
(真理さんに――なんて言えばいい? エッチなコトしたの見られて噂になってるって? 真理さん、落ち込むに決まってるよ……。違うように言ったとしても、僕以外から聞いたら同じ事だし)
 とぼとぼと歩くと、いつの間にか真理と住む家に着いていた。ふと、人の気配を感じ通りを振り返ると、中年女性の数人がリサの方を時折見ながらひそひそと話をしていた。真理との事を話しているに違いないと、リサは家の敷地に飛び込んで行った。
 飛び石の上を歩き玄関には向かわず、窓へと身体を向けた。窓から待合室を覗くと、やはり誰一人としていない。
 元々閉鎖された場所では、余所者を受け容れるには時間がいるし、自分達のスタンダードが全てなのだ。違う、と言うことは好ましく思われない。ましてや能力者の集団だ。細心の注意を払うべきだったのだ。今更ながらに、リサは痛感していた。
 診察室から伸びをしながら真理が出てきた。それに慌てリサは窓から手を離した。若干つま先立ちだった為か、上体が揺れてしまいバランスを崩した。窓に肘が当たり不用意な音が響いた。
少しびっくりした表情で真理が音のした窓の方に目をやった。と、銀色の見慣れた頭が見え隠れしている。パタパタとスリッパの音を響かせながら、窓を開いた。
「なぁにしてるのかな? 盗み見はあんまり感心しないわよ」
 決して怒っている訳ではなかった。あくまでも軽く、リサに冗談を言うような口調で言った。しかし、バツが悪そうに上目遣いで見るリサの表情は、見る見るうちに曇っていき、逆に真理は(何か不味い事でも起こしちゃったの?)とリサを心配し始めていた。
『あの……』
 真理の鼓膜に聞こえるリサの【声】も幾分小さく震えているように感じられた。
「なぁに? どうしたのよ? 心配毎でもあるの?」
 上体を支える腕を窓枠に置き、半身を窓から出すように身を乗り出して真理が問う。躊躇が見えるリサに、それでも真理は促す事もせず、リサ自身が話始めるのを待った。
『今日も、来てないですよね』
「誰が? ああ、患者さんね。そうねぇ、来ないって事は病気じゃないって事でイイコトなんだけど、あんまり暇なのはねぇ」
 多少苦笑いも入った表情には、噂が耳に入った感じには思えなかった。
『来ない原因は、僕かも知れなくて……噂が』
「リサちゃんが原因? 噂? どんな?」
 なぜリサがそう思うのかさっぱり解らないという顔で、真っ直ぐに視線を投げかけてくる。リサは噂の内容を言った途端、その目が怒りに変化する場面を想像していた。しかし黙っている訳にもいかず、重い口を開いた。
『この間、僕のココに入っているのを取ろうって言ってた時の、その、してるところを見られたみたいで……それが、噂に……』
「あらー。それは……マズイかも、ね。でも、一体誰が?」
 マズイ、とは言いつつも真理には焦った様子は見られなかった。それが実質島の持ち主然としている父親の影響が島民にあるのを解っているからなのか、それともそれ程重要な事ではないと思っているのか、リサには解らなかった。一拍おいて【声】を使う。
『貴子ちゃんが見ていたみたいで。――それで彼女のお母さんが僕に言ってきて』
「ああ、成る程ね。あのお母さんなら解るわね。――でも大人が見た訳じゃないなら、違うって毅然として対応してればいいわ。人の噂も七十五日って言うし」
 そんなに簡単なものなのかと、リサは訝しんだ。噂は時間が経てば鎮火するかも知れない。しかし、人の心に残った疑惑の火種はずっと残っていきそうに思えたのだ。
「その噂のせいで患者さんが来ないと思った訳ね。大丈夫、暫くすればその内また患者さんも来るわよ。リサちゃんのせいじゃないし。どっちかっていうと、わたし、かしら」
 そんなリサの悩む表情に真理が戯けながら言った。それを見てリサは小さく笑っていた。

 リサが思った通り、島民と能力者達の間には微妙な隙間風が吹き初めていた。噂の大元がリサだと解ると、それまで知り合い程度だった能力者達はリサに対してあからさまな嫌悪感を見せていた。心地よい居場所を取り上げられた動物のように、能力者同士での静かないがみ合いとなっていた。
無視するなら良い方で、中傷や陰口などは言うに及ばず怒鳴り合いや掴み合いも仲間同士で行われていた。島民は遠巻きに冷笑を浮かべ眺めていた。
 当然、その渦中にはリサも含まれていた。元はと言えばリサと真理のせいだ。能力者達はそれを事実だと思っていたし、その通りだった。
 真理は自分達を島に連れてきた恩人のようなものだ。文句を言うのは憚られたのだろう、能力者達は何も言わなかった。しかし、リサは違った。同じ能力者で、しかも見た目も異なっている。妬みも僻みもあった。だから、標的になってしまったのだ。子どもじみた意地悪から悪質なイジメまで。
 女同士ならばまだ良かった。男の能力者は、リサの後をつけ、取り囲み、乱暴をしようとした。けれど、リサの能力がどれ程のものか身を持って知るに至り、漸くリサに平穏がやってきたのだ。結果として孤独だけが残ったけれど。
 その間も、島民と能力者の間は埋まることは無かった。真理はあちこちと話をしに行っていたようだったけれど、功を奏したという事にはならなかった。

そして、一ヶ月が過ぎていった。

<つづきはこちら>

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