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投稿TS小説第141番 Blood Line (59)(21禁)

 通常の生活を営んでいる時に、突然命を奪われていく島民達。夜が明ける頃には、殆どの島民の姿がその家々から消えていた。早朝から活動していた漁船も動き出さず、登校する子ども達の声も聞こえない街並み。ただ、能力者達が住まう場所以外、全てが昨日とは違った風情を見せていた。
 ローターの風切り音とエンジン音を伴い、二機のヘリコプターが先発部隊が待つ島の北側に降り立った。次第に力を無くすローターの下から、高野と0124号が地上に足を付けた。一言二言言葉を交わし、0124号だけが歩いていく。
「ご苦労さまでした。これよりわたしたちが能力者の掃討に向かいます。井原さん達はバックアップをお願いします」
 低めのハスキーな声が響く。全員一様にベリーショートの髪の女達。脳移植の為に頭髪を剃り上げた跡だ。その彼女達が0124号を無言のまま出迎えた。そして彼女の言に頷く。能力者部隊の8名は能力者が住む建物へと移動していった。
「垣内、西岡、渡辺、お前達は残りの島民を刈り取れ。佐久間と時田、俺とバックアップだ」
 装備をいくつか外しながら井原が命令を発した。五名の隊員達もそれに倣う。
「いやー、早く終わらせてお楽しみといきましょうよ。二人っていい女なんすかね?」
「ブリーフィングで何見てたんだ? ちゃんと画像が出てたろうが。間違えて撃ち殺すんじゃねえぞ」
 誰に話しているのか渡辺が軽口を叩くと、それを諫めるように西岡が横から小突いた。
「……家が分かってるから大丈夫っすよ」
 リーダー他、隊員達の目線が渡辺に集中する中、何とか一言だけ返す。そして再び無言で二組に分かれると、森の中へと入って行った。

 八人の女達がひっそりした道路を歩いていく。十分程行くと前方に建物が見えていた。そこから一組の男女がジャージを着て出てきた。早朝の散歩なのか、それとも他の用件なのか、暗い雰囲気の街を気にするでも無く、女達の方も見ずに歩を進めていった。
 その一人が突然倒れ、もう一人が焦ったように抱きかかえているのが見えた。遠くで叫びながら辺りを見回し、0124号達をみとめると助けを求めた。七人の能力者達は、それをニヤニヤしながら見つめるだけ。ただ一人0124号だけが蔑むように目を細めると、叫び声は途絶え、やがて折り重なるように倒れていった。
「これから掃討に移ります。……はい、捕縛後、直ちに連絡を入れます」
 携帯電話を取り出した0124号が高野へ連絡した。そうしている間にも、数人の能力者達が建物から出てきていたが、高野の能力者達はちらりと見るだけだった。
「予定通りに進めます。0035、0093、0103はわたしに、0071、0079、0116は0085に従って下さい。反撃出来るような能力者がいるとは思えないけれど、もしいたらPKで四肢を抑えること。これで相手はパニックになります。その間にわたしと0085が息の根を止めます。それ以外は各自で」
 丁寧な言葉遣いで恐ろしいことを話す0124号に、七人は静かに頷いた。そこに路上の遺体を見つけた能力者が駆け寄ってきた。
「たい、大変なの! あっちで人が倒れてて! 早く長谷川先生呼んで来ないと……あら? あなたたち」
 島内では真理と暮らしているリサを除き共同生活に近い。逃げてきた能力者の殆どが顔見知りになっていた。加えて島内の十代・二十代の男女は、農業や漁業を嫌い島から出ていっていて、能力者以外はいないと言ってもいい程だ。哀れにも暗殺者集団に駆け寄って来た能力者が不信に思うのも無理からぬ事。
「誰でもいいじゃん。どうせ死ぬんだし」
 背の低い0116号が一歩前に出ると、相手の胸元を指さした。
「え? 今、なんて?……?! う?」
 胸の奥が突っ張るような、これまで見舞われた事の無い感覚に戸惑いの表情を浮かべ、高野の能力者達を見渡す。しかし、既に心臓は止まり本来脳へ行くべき血液は滞り、次第に視界が暗くなっていった。崩れるようにアスファルトに叩き付けられ、目を見開いたまま動かなくなった。

(泣き声?)
 真理と朝食を採り、今日も朝から岸壁へ行こうかと用意をしていた時、リサの耳に子どもの泣き声が聞こえていた。朝の八時という時間は、早いようでいて児童や生徒にとっては遅刻しそうな時間だ。いつもなら島内の少ない児童や生徒が元気な声を出しながら登校している時間だった。しかし、今日に限っては妙に静かで、だからこそ、子どもの泣き声に反応できたとも言える。
(貴子ちゃん? どうしたんだろう……?)
 一向に泣きやむ気配がない。朝から叱られるような事をして泣いているにしても、母親が何も言わないのはおかしい気がしていた。それに、家の中で泣いているのではなく、外、路上のような気がしていた。
 貴子に真理との秘事を見られ、それが島中に知られた事で、それ以来リサは貴子と話をする機会が無かった。以前なら多少の疎ましさは感じても、直ぐに貴子の前に行っていただろうけれど、そんな理由からリサは躊躇していた。
 それでも貴子の泣き声が十分近くも続いていると流石に心配になる。リサは、ポロシャツとジーンズを着て家の前に出ていった。

 路上に出て貴子の家に近づくに連れ、泣き声も大きくなる。家の前には寝間着姿の貴子が一人立っていた。駆け寄る音に一瞬驚いたのか貴子の身体が僅かに身じろいだが、リサだと解ると一層声が大きくなった。
「おねえちゃああん」
 小さな女の子が切なく泣いている姿に、リサは胸が熱くなり抱き締めたい衝動に駆られていた。それが女性の身体故に起きた衝動だったのか、ただ心配になっただけなのか、リサには解らなかった。
とにかく何があったのか聞かないと始まらない。とは言え、何も知らない貴子に【声】を使う訳にもいかず、かと言って地面に筆談するにも泣きやんで貰わないといけない。リサはその場に腰を降ろし貴子の身体をぎゅっと抱き締めた。
(貴子ちゃん、どうしたの? 大丈夫だよ、ここにいるから。泣きやんで)
 心の中だけでそう問う。それが伝わったのか、単に誰かが来た事で安心したのか、貴子は徐々に落ち着きを取り戻していた。貴子の小さな肩を優しく掴み、身体を離す。お互いの視線が絡み合う高さで、リサは唇だけで「どうしたの?」と尋ねた。鼻をすすりあげながら、貴子が懸命に説明しようとする。リサに理解出来たのは、貴子の父親と母親、それに祖母が倒れている、という事だけだった。
 玄関まで貴子の手を引いていき、待っているようにと声の出ない唇で告げ、リサは恐る恐る室内に入っていった。
 居間に行くと、食事の用意がテーブルに置かれていた。朝食と考えるより夕食と思われる献立。しかしそんなものはどうでもよかった。テーブルに突っ伏している女性と床に倒れている男女。三人とも顔を下にしている為に表情が読めない。ゆっくりとテーブルに倒れている女性に近づき、震える手で肩を叩いてみた。手に残る感触はモノのように堅く冷たかった。数秒待ってみても反応がない。
(わっ、目が……)
 回り込んで顔を覗いて見ると目を見開いて一点を凝視している。目を開けて寝ている人は珍しい。
(し、死んで、る。ま、まじで?)
 間近で死人を見るなど初めての経験だった。身体から血の気が引いて緊張で呼吸が一層速くなる。何も悪い事をしている訳でも無いのに、きょろきょろと辺りを見回し落ち着かなくなっていた。
(こ、こ、こっちは? まさか)
 床に倒れる男女、恐らく貴子の両親も死んでいると理解したが、それでもリサは一応確認した。母親の手首を取り脈を診てみる。けれど想像通りだった。
(でん、でんわっ、救急車、ひゃくとおばんっ。――あれ? 通じてないぞ)
 混乱しながら受話器を取るが、音が聞こえて来ない。大体において声帯が無い璃紗の身体では相手の鼓膜を震わせて【声】を作っている。電話ではどうやって【声】を作るのか解っていない。たとえ電話線が繋がっていたとしても会話のしようが無かった。実際には、高野の襲撃部隊が通信機器を破壊して孤立させていたから、リサが気に病むような状況にはならなかったのだが。
(そうだっ真理さん! 真理さんに)
 躓きながら貴子が待っている表へ出、不安そうに待っている貴子のもとへと踵を返した。

「あー、ターゲット捕捉。ガキと一緒っす。……なんつーか、いいすね、あの女」
 渡辺の覗くクロスヘアーの中にリサがしっかりと捕らえられていた。これから数時間後のお楽しみを考えると、今から股間がギリギリと張り切ってしまう。
「あんなのでも能力者だ。舐めてかかるな。――ガキは排除しろ」
 垣内が表情を崩さず短く渡辺に言う。その冷徹な細い目には「早くしろ」と言わんばかりだった。

【真理先生をよびにいくからいっしょにいこう】
 地面に文字を書いて、貴子にそれを読ませ、リサは顔を上げた。
「おかあさんも、一緒じゃないとやだよお」
 再び泣き出した貴子が駄々をこね、リサの握った手を離そうと腰を引く。このままでいても押し問答になるだけ。リサは【声】を使おうと貴子に相対した。

<つづきはこちら>

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