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投稿TS小説第141番 Blood Line (67)(21禁)

 自分の能力に拮抗し、あまつさえ強引に無力化してしまうリサの能力に、少なからず0124号はショックを覚えていた。自分こそ高野のお気に入りである、それだけの特別な能力がある、そう思っていた。高野のリサに対する執着は、最初の移植者であり、見た目が一般人とは違う事が起因していると想像していた。
 しかし、他の能力者とは違う訓練を受けている自分が、何もしていない小娘に負けているのだ。
(違う、負けた訳じゃない。問題は能力の使い方だわ)
 リサの視線が高野のヘリコプターの方に向いた。それをチャンスと、0124号はリサの鳩尾目掛けて拳大の石を投げつけた。
 前を見るリサの目に、飛んでくる凶器が映った。不格好に身体を捻り、避ける。
(! うわっ)
 一旦安堵したリサに向かって、第二、第三の飛礫が向けられていた。同時に五つも飛んでくると避けようが無く、腕に身体に脚に傷を作って通り過ぎていく。体側を掠めるだけでなく、いずれ身体の中心に当てられてしまうのは目に見えていた。
 一歩一歩近づいてくる0124号から逃れようと、リサは通りに出ようと走り出した。しかし、通りは0124号の背後にある。ほんの10メートル先が途轍もなく遠い。
 壁際に追い詰められたリサの背後から、大人が一抱えできるかどうかの大石が飛んで来ていた。
押しつぶそうとする質量の塊。鼻先から「すーっ」と上がってリサの頭の上で止まった。そしていきなり落下した。
 辺りに地響きが鳴り響き、それ以降は遠くでヘリコプターの音が聞こえてくるのみ。
(やった……意外とあっけない)
 血の池に沈むリサを想像しながら駆け寄る。しかしそこには滴る血も無ければ、押しつぶされたリサの姿も無かった。周囲に目を配るけれど、どこにも、何も見あたらない。
(──そんな……確かにこの石の真下にしたのに……え?!)
 その時、塀で隔てられた隣家から走り去る足音が0124号の耳に届いた。塀のこちらから向こう側へ瞬時に移動したとしか0124号には理解できない。しかし、0124号でさえ瞬間移動や物体すり抜けは出来ない。
 しばし、呆然としていた0124号は、リサの走っていった場所へと急ぎ走り走って行った。

 人間の男女の差で最も大きいものは体力だとリサは思っていた。運動をしている女性としていない男性なら勿論女性が上だが、同じようにしていた場合、そして同じようにしていない場合には顕著だ。体力の差は歴然としてあった。
 後ろを気にしながら走るリサは、数十メートルも走ると脚が思ったように上がらない事に舌打ちをしていた。息は上がり、心臓がフル回転していながらも脚は動きが鈍くなっていく。
(せっかく、上手く抜けられたのに……! これじゃ追いつかれちゃうよ)
 大石が迫ってきたあの瞬間、行き場を失ったリサは目を瞑っていた。避けるだけの時間は無く、大石をはじくだけの心の余裕も無くなったのだ。ただ「この場からいなくなりたい」という逃げの心が上手く働いたのか、地面が地響きを立て、恐る恐る目を開けると、目の前には能力者の姿は無く、変わりに背後にあった筈の壁が現れていた。一瞬の逡巡の後、自分が今まで成し遂げたことが無い能力を発現させた事に気付き、急いで走り出していた。
 0124号との時間的アドバンテージはそれでも15秒程しかなく、振り返れば50メートル程リサの後ろに0124号の姿が見え隠れしていた。
 荒い息で走るリサの耳に、ヘリコプターのエンジン音が次第に大きく聞こえ始めていた。

 操縦席に座った井原が各部のチェックをしている所に、高野が声をかけていた。
「もうそろそろ15分だ。出発しろ」
「本当にいいんですか? 援護しますが」
 確認とばかりもう一度聞くが高野はそれに答えず、手だけで再度合図した。

 重そうなヘリコプターの機体がふわりと浮く。地上の草木が強風に煽られ右を向いたり左を向いたり果ては吹き飛んでいった。木々の間から白いモノが見え隠れし、次第に大きくなるのが井原の目に入ってきた。
「所長っ、ヤツが」
 インカムから流れる井原のせっぱ詰まった声を聞きながら、高野は舌打ちをしていた。リサが現れると言うことは0124号が失敗したと言うことに他ならない。
(あれだけ時間を掛けたというのに。役立たずがっ)
「すぐに離脱しろ」
『高野っ今いくぞ!』
 雑音混じりの井原の声ではなく、女性然とした綺麗な声が高野の耳に入ってきた。それが誰の声なのかは高野も瞬時に理解していた。 前方を見れば、射抜かんばかりのリサの目があった。高野にも初めて焦る気持ちが芽生えていた。
 今にも飛びかかろうとするような姿勢のリサが、蹴躓いたように前方へ叩き付けられた。振り返るリサの背後から、無数の飛礫が来襲しているのが高野の目にもはっきり見える。
 大小の飛礫はヘリコプターが作り出す突風を物ともせず、リサの身体に穴を穿とうと突進を開始した。しかしその力は急速に失われ、リサの寸前で完全に制止してしまう。そして今度は反対に木陰に隠れていた0124号の元へと猛然と戻っていく。
(ここまで能力に差があったのか? そんなバカな……以前の値では遜色無いレベルの筈だ)
 眼下で繰り広げられる飛礫を使った能力戦。0124号は必死で飛礫を避けながら新たに攻撃を仕掛けていた。しかしリサの能力はそれを余裕で上回っているのかその場を動く事すらしていない。高野は解らなかったが、少し前までは0124号の方が有利に戦いを進めていた。しかし戦う事で急激に自身の能力が高まっているリサに対して、それまでと同様な能力の0124号では太刀打ち出来なくなるのも道理だった。
(なるほど、異常な興奮状態が能力を飛躍的に高めた、という事か)
 レイプ、真理の死、そして高野への復讐心。それらがリサを性的な興奮とは違うレベルの興奮を与えていた。それがリサの能力を後押ししていた。勿論、戦うという、リサ=幹彦には到底持ち合わせていなかった行為自体も、興奮を与える起因となっていた。
(ならば、一気に冷ませてしまったらどうなる?)
「井原、もう一度戻れ。いつでも離脱出来る距離を保って旋回するんだ。外部スピーカーをオンにしろ」
 危なくなる前に去る、それが高野の戦法だ。だからこそ今の地位まで昇ってきたのだ。それを井原も知っている。それを危険を冒してまで何をしようとしているのか解らなかった。井原は不承不承、高度を下げリサと0124号の周りを旋回し始めた。
『0087、君は誰を傷つけようとしているのか解っているのか?』
 見上げるリサに言葉を浴びせる高野。先ほどまでせっぱ詰まった表情だったというのに、その顔には余裕すら伺えた。

 少しでもリサが気を抜くと、脳や心臓の血管を止めようとしてくる0124号の能力。両者のそれは高野が思う程差が無い。リサは高野の声に一瞬隙を作ってしまった。
(あぐっ)
 瞬く間に道路に飛ばされ叩き付けられるリサの口から小さな呻き声が漏れた。
(誰? だって? 僕に能力者の知り合いなんて、もういるわけないだろ)
 唯一の友人も施設を抜け出す時に死んでしまっている。自分で殺して置きながら何を行っているのかと、心底バカにされたと再び怒りが沸き起こっていた。

<つづきはこちら>





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