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投稿TS小説第141番 Blood Line (68)(21禁)

 リサへの攻撃は再び飛礫を含んでくる。避けながら自分も攻撃したいところだけれど、高野の話も気になっていた。そこへ高野の声が再度響いた。
『0106号、君を必死になって助けようとしたヤツの脳だけが生きていたとしたら?』
 リサを助けようとした人物など、その人生の中で片手で数えられる程だ。ましてや必死になるなど一人だけ―俊治しかいない。しかし彼はリサの目の前で殴り殺された。確かに心臓が止まったと聞いた。リサには高野の一連の発言自体が、リサの隙を作る方便だと思えた。
『嘘つき野郎! 俊治君はお前が殺したんじゃないか!』
 激しい憎悪がリサに沸き上がった。能力による攻撃は、飛礫と違って目に見えない。しかし今のリサには「来る」事が解り始めていた。目を凝らせば身体に秘められた能力の渦が視覚化されはっきりと見える。さっき初めて見え、ここに来るまで見えなかったと言うのに。0124号から出る黒い渦はリサの身体の各部位に巻き付いてくる。その巻き付いた所が攻撃されている。
 目に見えないからやっかいなだけで、見えるなら後手に回らず防ぐ事も簡単な話だった。
『私の力を低く見ないで欲しいね。君が傑作ならもう一人もそうだ。目の前にいるだろう?』
 目の前の女は俊治とは似ても似つかない。しかしリサ自身が男の脳を女の身体に移植された存在だ。それが他人にも転用されたとすれば……。
 愕然とするリサの集中力が一瞬切れた。0124号が逆転を狙うには十分すぎる程の時間。そしてリサは崩れるように倒れた。
『0124、能力が拮抗しているなら腕力でねじ伏せろ!』
 響き渡る高野の言葉は、0124号にどこか違和感を抱かせていた。
(目の前? わたしの事? わたしが0106号を助けた?)
 頭の奥で鋭い痛みが波のように広がっていく。と同時に、0124号の心にもさざ波が立ち始めていた。しかし高野の言葉は0124号にとって絶対だ。0124号は速やかにリサの倒れた場所に駆け寄っていく。
 頸動脈を圧迫され一時的に意識を失っていたリサが、0124号の足音で覚醒した。けれどその意識は未だ混沌として、目の前の女がなぜ自分の首を絞めるのか、なぜ絞められているのか、把握するのに数秒を費やした。白い顔が鬱血して真っ赤に変わっていく。
(くる…しぃ――あっ、俊治くん? ほんとに?)
 0124号の手首を掴み振り解こうと力を込めるけれど、容易には放してくれない。それどころか放すまいとより一層力を込める。
 本当に俊治なのか、リサはそれを確かめないではいられなかった。自分の為に犠牲になってしまった俊治に対して自責の念もあった。どうしたらその答えを得る事が出来るのか。リサは自身の疑念を0124号に直接ぶつける方法しか思い浮かばない。声は出せなくとも直接鼓膜を震わせて。
『俊治君? 俊治君なの?』
 リサの【声】に反応したのか0124号の絞める手が硬直した。その般若のような形相がややあって苦痛の表情へ変化していく。
(としはる? 誰? 私? 私は……0124……番号? 名前、私、……頭が痛い痛いああああっ)
 リサの瞳に写る0124号の姿と自分の名前。リサの声が0124号の頭の中で響き、姿がオーバーラップしていく。名前が番号などあり得ないという事に気付き、自分が何者なのかを問う声が次第に大きくなっていく。0124号はリサから離れると頭を抱えながらその場に蹲った。あまりの頭痛に涙が流れていた。
『俊治君っ、そうなんだろ?』
 追い打ちを掛けるようにリサが問いかける。0124号の脳裏に「俊治」という漢字が浮かび、そして今の女の姿が本来の姿へとモーフィングするように変化していく。
(私、は、俺? 俊治……俺は……!)
「リサ、ちゃん?」
 何かに気付いたように顔を上げた。0124号には俊治だった記憶が徐々に戻り始めていた。そして自分が今まで何をされ、何をしてきたのかも。
『俊治君、よかった、生きてたんだ!』
 素直に喜ぶリサとは反対に、表情を次第に曇らせていく0124号=俊治。悲しみかそれとも悔恨か、複雑な表情は嬉しさ一杯のリサには読みとれなかった。
「俺、今まで……なんであんな事を……」
『そんなのいいからっ。高野がいるんだ、今ならやっつけられるんだよ、力を貸して』
 俊治の手を取り立たせようとしたその時、二人の頭上から高野の声が降ってきた。
『0124号、何をしている! そいつを絞め殺せ!』
 高野の声を聞いた途端俊治の身体が震え始め、瞬きする間も無くリサを引き倒し馬乗りになった。  驚愕の表情を見せるリサに構わず俊治の両手は再び首を絞め始めた。
(どうして?!)
 リサの唇の動きは俊治も理解していた。記憶は戻ったけれど、心理に深く根を下ろしている高野の暗示は解けた訳では無かった。高野を神にも等しい存在として刷り込まれた俊治にとっては、高野の命令は絶対不可避なものとなっている。自分の意志では抗えないのだ。目の前の女を殺せ、その声で俊治の心は占領されていく。
「ダメだっ、止められないんだ! リサちゃん、俺を止めてくれっ。もう殺すのはイヤだ!」

「くそっ記憶野のいじり方が足りなかったか」
 上空を旋回しながら様子を窺っていた高野には、その場で何が起こっているのか解ったようだった。
「所長、今撃てば」
「いや、もういい。0124の暗示は完璧だ。0106を殺すまで止まらん。それに0106も0124が誰なのか解ったのなら殺す事など出来ん。傷つける事すらな。だから結果など見る必要もない。離脱するぞ」
「待たないんですか」
「……欠陥品には興味がないな」
 冷たく言い放つ高野を横目に井原はスティックを横へ倒し、ヘリを帰路へ向かわせた。その時視界の隅に動くものを認めた。
「所長、あそこに人影が」
 井原のインカム越しの声が焦りを帯びている。高野は返答せずすぐにそこを見た。迷彩服の男達が能力者を目指して忍び寄る姿が一瞬ではあったが見えた。
「何者なんでしょう」
「あれは……、そうか、以前撃ち落としてくれたのも、あいつらか」
 苦虫を噛み潰したように口をへの字に曲げると、以降到着するまで、高野はじっと正面を見据えたまま口を開く事は無かった。

 苦しさのせいなのか、それとも本当にそうなのか、ヘリの音が遠ざかっていくのがリサの耳に入っていた。しかし意識はすぐに目の前の問題へと戻る。
 俊治の指を外そうとPKを使おうとした。しかし俊治もまたそれを阻止しようと能力を行使する。リサの方が能力は高い為に抗おうとすれば可能だ。しかしそれは同時に俊治の肉体を痛めつける事にもなる。高野が考えた通り、リサが自分を救うためには俊治の犠牲の上に成り立つ事になる。それは出来なかった。
「リサちゃん、ごめん、ダメなんだよ……。俺を、殺してくれよ……」
 大粒の涙がリサの顔に落ちて流れていく。泣きながら尚も力を込める俊治の顔と声が遠くなっていく。
『僕も、できないよ……』

<つづきはこちら>

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