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投稿TS小説第141番 Blood Line (69)(21禁)

 リサの視界がブラックアウトしそうになった時、周囲の木陰から小さな音が聞こえた。草の擦れる音は俊治の耳にかろうじて届く程度だったが、誰もいなくなっている筈の島で自分達以外の存在の出現に驚いた俊治は、手の力を緩め上体を起こした。
 自分が俊治だった事、他の能力者を嬉々として殺して回った事、そしてリサを殺そうとしている事。それらの感情や思いが俊治の中で錯綜していなければ、あるいは能力で避けられたかも知れない。しかし、現実は違った。
 意識がはっきりし始めたリサの目の前で、胸から音もなく血を吹き出してリサの横たわる右側に倒れゆく俊治の姿があった。
(あ? あっああ?! 俊治君っ)
 瞬時には何が起こったのか理解できないリサが俊治に手を伸ばす。その鼻の先を何かが掠めていった。リサが振り向くとヘルメット、ゴーグルを備えた、まるで機動隊を重装備にしたような人間が三人、小銃を構えて近づいていた。
 命を狙っている事は想像に難くない。今日は既に何度も同じ様な経験をしていた。やられる前にやるしかない状況で、リサは怒りと恐怖の感情を爆発させた。
『待ってて』
 俊治の耳に【声】を残し立ち上がった。
 紅い瞳が三人を射抜く。制止の声も発せず三人はトリガーに力を込めようとした。リサは銃器の構造を知らない。射撃を止める為には人間をどうにかする必要がある。リサは三人の人差し指を第二間接からねじ切った。
 いきなりの激痛に屈強な男達の悲鳴が辺りに響く。それでも小銃を落とさず、痛みに震える手から反対の手に持ち替え狙いをつけた。しかし、それだけの時間があればリサには十分だった。扇型に広がった左右の男達の心臓を破裂されるイメージを作る。と、ばったりと倒れていく。
 ゴーグル越しの表情はよく解らなかったが、動揺しているようにリサには思えた。改めて照準が向けられた時、リサは対峙する男の両肘と両膝を捻った。絶叫が耳に痛かったけれど、自分の行為が残酷だとは思わなかった。人を殺そうと思っていたのだ。自分にもそれが起こる可能性があることも認識している筈だ。
 ひくひくと痙攣している男のもとへ駆け寄ると胸元を掴んで【声】を使う。
『高野は?! どこに行った!』
「……高野? そんなヤツは知らん」
 てっきり高野の伏兵かと思っていた。高野の居所を知っている筈だと思い一人残したのだ。しかし高野の手の者でないならなぜ、どうして自分が狙われなければならないのか。
『誰? 誰が狙ってるんだよ? なんで?』
 力一杯身体を揺らすが、男は痛みの冷や汗を流しながらニヤニヤとするばかりだ。このままでは無駄な時間だけが過ぎていく。業を煮やしたリサは、いつか読んだマンガのように人の思考を読もうと意識を集中させた。
 色々なイメージがリサの心に入ってきた。古そうな思考は欠けが目立ち、新しそうなものは鮮明に残っている。最も鮮明な思考とイメージに、リサと高野の顔写真があった。そして、ここに向かう直前に出てきた建物のイメージ。
(建物……字が……えぇ? なんで?)
 リサでもそれが政府関係の機関だと解る。しかし狙われる理由が解らなかった。真理が父親のコネクションを通して話をつけているものとばかり思っていたし、数ヶ月間も放って置かれて今更の感も否めない。
『政府機関の人がなんで……』
「――俺の思考を読んだのか?! 化け物が」
 当然の疑問を投げかけると、男はさも嫌そうな顔をして舌打ちをした。そして見る間に口から大量の血を吐き出しながら動かなくなってしまった。
(あっ?!)
 リサにも男が自害した事は解った。たくさんの疑問が沸き上がってくるが、それを一時しまい込み俊治のもとへ走っていく。
 衣服には四箇所も穴が開いて、そこからだくだくと血が流れ出る。失血はおびただしく既に俊治の顔は白くなりつつあった。手で押さえても止まらない。
失血の部位もどこの血管が切れているのかも解る。しかしどうしていいのかが解らない。
『俊治君……起きてよ……』
 うろたえるリサの声に反応して俊治が瞼を開く。空を見る眼とは対照的に、俊治の手が動きリサの首筋を力無く捕らえた。その行為がリサを悲しくさせた。
 その手を取ろうとしたけれど、リサの手をかいくぐり、俊治の手は地面に落ちていった。
 止めどなく流れる涙が、俊治の顔に落ちていく。
 知っている、いや、大事な人が次々と死んでいく様を目の当たりにし、リサは自分が疫病神なんじゃないかと自問自答していた。璃紗に淡い恋心を抱かなければ高野は移植先として選ばなかったのではないのか。逃亡先で真理と接触しなければ、陵辱され高野に殺される事は無かったのではないか。俊治に至っては友達などと思わなければ、期待させるような行動を採らなければ、二度も死の恐怖を味わわせる事は無かったのではないか。
 役立たずだと親にも言われた「幹彦」は、リサとなって災厄を振りまく人間になったのかと。自分がいなくなればいいのかとも思う。しかし死ぬのは怖い。生きていたい。
(……大体、僕が襲われるのは高野のせいなんだ。こんな風にさえならなければ、能力がもっと小さければ)
 十代半ばの子どもが背負うには重すぎる荷を、リサは高野への憎悪へと変換した。周囲の人間に害がないようにするには、害を及ぼす方を無くせばいい。高野やもう一つの驚異を排除すればいい。そうすれば楽になれるんだと。
 排除する事が人を殺す事だと明確に理解している訳では無かったけれど、リサは自身が生きる為に、そしてこれから知り合うであろう人達に災厄が降りかからないように、「戦う」事を選んだ。
 リサは俯きながら両手で目を擦り涙を拭った。俊治の亡骸を埋めてあげたいとも思ったが、追っ手は三人だけではないだろう事も予測していた。
(このままでごめんね。もう行くよ)
 後ろめたく思いつつも、意を決して立ち上がると、そのまま振り向かず何処へか歩き出した。

<つづきはこちら>

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