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投稿TS小説第141番 Blood Line (71)(21禁)

 微かなショックとともに扉が開く。冷たい印象の薄暗い廊下が正面に延び、その奥に扉がある。扉の両脇には警備が二人、サブマシンガンを携えて立っている。その間を通り大塚と武石は室内に入った。
 室内には大塚より年配の男達十名が長く伸びたテーブルに付いている。その二十の瞳が一斉に二人に浴びせられた。
「先生方、お待たせして申し訳ございません」
「おお、大塚君。ま、座りたまえ」
 そのグループのリーダーなのか、扉側とは反対の上座の席に座した、禿げ上がった頭を横から持ってきた白髪で隠した初老の男が声を掛けた。言葉とは裏腹に男の視線は二人を射抜く程に鋭い。恐縮し背を丸めて席に着く大塚を後目に、武石は飄々とイスに座った。
「これで揃ったな。始めよう。菊永君」
「…… 国内に残った殺傷能力のある能力者は、把握している範囲で一名を残すのみとなっています。故長谷川氏所有の島にいた能力者達は、一昨日、高野により排除されております。ただし当の高野の行方は解っておりません。危惧されるのは高野が情報をマスコミに流す事ですが、これはマスコミ各社に協力していただいているため心配には及びません。今後、我々の採る方向ですが、まずは高野の確保となるかと思われます」
 菊永と呼ばれた四十台の男が、初老の男に向かって一礼した後、現状を坦々と語った。大塚、武石以外の八名は腕組みをしたり目を瞑ったり書類に目を通したりしていた。
「大塚君」
「は、はい」
 初老の男が顎に手をやりながら呼びかけた。大塚は大粒の汗をハンカチで拭う。
「解っていると思うが、高野が持つ情報が外に漏れては国家の一大事だ。黙らせなくてはいけない」
「はい、解っております。ですから全力を持って」
「そう。それからね。今回の一件は我々には全く関係の無い事だ。君が立案し実行に移したものだ。我々の名前も出されたら有権者の皆様に顔向けできん」
 暗に切り捨てると言っているようなものだったが、大塚は頷いていた。
「万が一、明るみに出た場合、身の処し方は解っているだろうね」
「……も、勿論、です」
 緊張で喉が乾いたのか、大塚の声は掠れ震えていた。初老の男は大塚の答えを満面の笑みで受け取った。
「皆さんもお聞きの通り、大塚君は我々の意向を汲み取ってくれましたよ。さて、ここで大塚君からの今後の提案ですがね」
 自分の言葉ではなく、あくまでも大塚の提案である事を強調しつつ、男は先を続けた。
「高野を確保、などと甘い事ではダメだと言う事なので、ここはどうでしょう、見つけ次第『処分』ということで。で、いいんだよな、大塚君」
 大塚に残された返答は肯定しか無かった。
「ま、これが何事も無く処理出来れば、大塚君も本当に我々の一員となれるんだから。気合いを入れて頑張って欲しいものだね」
 再び、今度は全ての視線が大塚へと集まっていた。大塚は小声で何事が呟いていたが、横にいる武石の耳にも聞こえなかった。
「ここで先生方に面白い情報が入手出来たのでご紹介したいと思うのですが」
 菊永がちらりと武石に視線を送った。その意味が武石には解らなかった。
「その情報というのは何なんだね?」
 興味津々に身を乗り出す一人の男。それが合図のように菊永が口を開いた。
「能力開発の第一人者である高野と、今逃亡している皆川璃紗。そしてここにいる武石君の件でして。ここにある資料によると三人には共通の」
「失礼いたします。緊急です。これは武石さんに」
 菊永が進行しようとしたその時、SPが室内に入ってきた。武石に渡された書類には計測された爆発的に上がった能力値とその時間、そして場所が記入されていた。SPは書類を渡すと初老の男に耳打ちした。一瞬、男の顔色が変わった。
 その理由が武石には理解できた。能力値を計測したのは今から五分ほど前。そしてその場所は、この施設だった。
(ついに、来た……)
 武石は決意と共に唇をぎゅっと噛み締めた。
 初老の男に皆の視線が注がれると、観念したように男は説明を始めた。現在、自分達の頭上で追っていた能力者が来た事、そして、戦闘状態にある事。
 普通に考えれば、地上は戦闘状態なのだ。地下にいた方が安全な筈だった。しかし、対能力者、特にリサのように島から忽然と姿を消す能力、テレポーテーションが使える相手となれば話は別だった。今、この瞬間にもこの部屋の中に姿を現す可能性があるのだから。
 彼らの現状認識の甘さが、能力者と一般人の軋轢をうんだのではと武石は思っていた。彼らはまるでスポーツ中継でも見るように、室内の大型スクリーンを使用し頭上で繰り広げられている戦闘を見ていた。銀髪をなびかせて動く年若い女の姿が画面に現れる。「あんな小娘に翻弄されていたのか」と吐き捨てていた男達も、次々と射撃体勢に入りながらも音もなく倒れていく警備兵達の現実を突きつけられ、次第に言葉を失っていった。
「どうして彼らは撃たんのだ?! 相手は丸腰だぞっ」
「……見た瞬間に心臓を破裂させてるらしく……」
 大塚と武石を交互に見て叫ぶ一人の男に、大塚が頼りなげ答えた。
「ならば、狙撃はどうなんだ?!」
 別の「先生」が声を上げた。守りを固めていた筈の屈強な兵士達はみな物言わぬ存在となり果て、 地上には一人の華奢な娘だけになっていた。と、リサを遠目から映していたカメラに気付いたのか、紅い瞳が真っ直ぐレンズを見ている。理解の限界を超えた状況に男達は絶句していた。
「……あれは、何をしているんだ?」
 辛うじて一人の先生が声を出した。画面ではリサが倒れ伏した兵士の側に跪き、頭に顔を近づけていた。
 武石は瞬間的に思考を巡らせていた。
(なぜ「彼」がここにこれた? 情報がどこかから漏れたから? あり得ない。他にあるとすれば……考えを読んだ?)
「ああっ?! 女が消えたぞ」
 どよめく男達の声が、武石を思考の世界から現実へと引き戻していく。末席に位置する武石の後ろから人の倒れる音が聞こえた。当然のように音の方向に振り向いた。

 黒のジャケットに黒のパンツ。白い肌と髪が妙に映えその奥から除く紅い眼が光ったように見える。それは武石がこれまでの人生でずっと鏡に映った自分の姿だった。その背後でモニターに映し出されている画面には入り口から一つの影が周囲を伺うように入ってくるのが見えたが、リサの乱入の混乱は誰にもその画像を見せようとしなかった。

 地下へのテレポーテーションから抜け出た次の瞬間、その眼に映ったものに、リサは大きな鏡があると錯覚してしまった。自分とは隔絶した存在である事も理解しながらも、それでいて懐かしいような感覚。もう見る事は無いと思っていた「武石幹彦」の肉体が目の前にあった。
(僕が?! なんで?)
 高野は、自分と璃紗の脳を入れ替え、そして璃紗の脳が入った幹彦の肉体は「処分」したと言っていた。ある訳が無いのに、そこにいる。それならば、その中に入っているのは。
『璃紗、さん?』
 武石の鼓膜に直接呼びかける。しかし、何の反応も示さない過去の自分の肉体。
「う?! わああっ、ここ、ここに来てるぞ!」
 男達の内の一人がリサの存在に気付き叫び声を上げた。SPが懐から拳銃やサブマシンガンを抜き徐に掃射した。銃撃と同時に武石が一番リサと離れたSPの側に駆け寄る。
 数人のSPの腕を捻り上げ銃を撃てないようにしながら、リサは自分の肉体に呼びかける。『璃紗さん』と。しかし変化したのは敵意を剥き出しにした目つきだけで口を開こうとはしない。
 猫に追われた鼠が出口の無い箱の中で集団で逃げまどうように、スーツを着こなした「先生」立ちは隅へ隅へと移動していく。それが、傍らから見れば滑稽な程だった。
 先生達はSPにすがり着き身動きを取れなくしてしまっていた。撃たれる心配さえなければ銃器を取り上げる事など雑作は無い。一人一人の腕や指を捻るだけで戦闘が不可能となってしまう。しかし銃は誰にでも扱えるのだ。
 味方としか考えていなかった自分の肉体が、目の前で銃を拾い事もあろうに自分に狙いをつけた。よもや撃つまいと信じていた所へ轟音が響く。
(!)
 何かを思う、考える余裕など無く、リサは身体を横にジャンプさせ、固定されている長机の下に身を潜めた。
『璃紗さんでしょ?! 僕だよ、幹彦!』
 自分の肉体が目の前で動いていたら混乱する。誰でも。自分がそうだったのだから当然璃紗もそうだと思っていた。だから名乗ったのだ。しかし、銃を撃つ手は止まってくれない。
(もしかして、全然違う人?)

<つづきはこちら>

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