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勇者ウィルの冒険(連載2回目)

作.amaha
絵師: そら夕日さん いちご色素

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連載一回目はこちら

(4)

 4人での話し合いでウィルは人前ではウィラ・コンティと名のることになった。コンティと言うのはウィルの母方の姓なのでまんざら嘘というわけでもない。
 ウィル改めウィラはロックと馬を並べて少し先を進んでいる。笑い声が聞こえてきた。どうやら巨人ロックを乗せた馬がへばりかけているのをからかっているらしい。10mほど後方でシマラと共に駒を並べて進むアトランはそれを見て微笑んだ。
「ねえ、君」
言われて隣にいるシマラに注意を向ける。
「どうした」
「その笑みさ。君までウィラちゃんに惚れたんじゃあるまいな」
「そうじゃない。ただ女性化したショックを乗り越えてくれたようなので嬉しかっただけさ」
「そのことなんだが」
「うん?」
「僕が彼に説明したように女への変化があのネックレスの働きで起こったのは間違いない。母上の贈り物の力を信頼してるからこそ、ああして暢気に旅をする気になったのだろうさ」
「確かに魔物の力で変身させられたより安心だろうな」
「僕がウィルに強力な力が働いたと言ったのを覚えているかい?」
「無論だ。第一普通の変身魔法なら君が解いているだろう」
「うん。でも実はそれだけじゃないんだ。邪悪な気配こそないけれどあれは魔族の使う魔法に近いと思う」
「もう少し詳しくウィルに聞くか」
「ウィラちゃんだろう」
そのとき少女の悲鳴が聞こえたので2人は慌てて馬腹を蹴った。

 近寄ると2人が互いに謝りあっている。
「すまない。わざとじゃないんだ、ウィル」
「こちらこそ悲鳴をあげてすいませんでした。ちょっと驚いたので。それからウィラと呼んで下さいね」
「ああ、ウィラ。俺が悪かった」
事情を聞こうとアトランは割って入る。
「2人ともどうしたんだ」
「冗談を言い合っていて俺がいつものつもりで抱き上げてしまったのさ、そのーウィラを」
「あーっと、えーっと、あのー、ちょっと手が胸に来て驚いたのでー」
その恥らう可憐な様はアトランを直撃した。
「そ、そうか」
強い視線を感じて横を見るとシマラがねめつけている。
「君?」
アトランはシマラの耳元でささやいた。
「ウィラが可愛いのに改めて気付いただけさ」
「遅すぎるぞ、君」
 2人が内緒話をしている間にウィルとロックは仲直りをしていた。
「あのー少し驚いたけど以前どおりにして下さるほうが嬉しいです」
「そうか! でもそのーこれからは気をつけるよ。敏感な部分に」

(5)

 数日後大河の東岸に着いた一行は渡し舟に乗り込んだ。渡し舟と言っても川幅も広く王国の東への街道の一部で交通量も多いのでかなり大きい。船倉もあり馬や馬車もそのまま乗れるようになっていた。
 ウィルは1人で甲板に出た。時間ぎりぎりに乗船したので他の3人は手続きや馬と荷物の固定に行っている。大幅に雑用が減ったのは女性化したおかげだ。
 手すりに身をあずけてウィルは西岸をながめていた。この辺りは彼にとっておなじみの場所だ。西岸の港から南に向かえば母の兄が治める広大な領地がある。幼いとき父親が冒険の旅に出るとよく母とそこで過ごした。そうだ西の領地に住む母の元で男に戻ったら一度叔父を訪ねよう。兄思いの母は父の引退で住居が遠くはなれたことをいつもぼやいていた。
 良いことを思いついたと体を動かし手すりが胸をこすり、ウィルの心は自分が女性化したことに向けられる。
 冒険者としては筋力が、特に上半身のそれが大幅に落ちたのが痛い。持久力も、これはわずかだが、落ちた。両手剣はもちろん長剣も扱いかねる今のウィルが帯びているのは護身用の小太刀だ。
 素早さは短時間なら遜色ない。体の柔軟性は増したが、戦いの役に立つとは思えない。シマラは魔力は増したというが、今さら魔術を学んでも男に戻れば役にたたないだろうからそんな気も起きない。
 母にクリスタルのことを聞くまでこの体でがんばるしかないらしい。そう思いながらウィルがため息をついたとき話しかけてくるものがあった。
「お嬢さん、お一人ですか?」
「ほへ?」
横を見ると従者を連れた若い貴族が手すりに寄りかかってウィルを見ていた。
「お供とはぐれられたのですか?」
「供というか、仲間はいます。今たぶん船倉にいると思いますワ」
これでいなくなるかとウィルは期待したのだが、相手は逆に間合いを詰めてくる。女性化して最初の敵キャラらしい。
「拙者は宰相猊下のお役目を勤めますジャック・ワイルダーと申すもの」
「はあ、えーっとウィラ・コンティです」
宰相猊下というのは国教の最高指導者ロンド大司教のことだ。政教のトップに上り詰めたロンドはいまや国王をも凌ぐ勢いである。ただ物事にうといウィルは知らなかったが、ロンドには魔族と裏で通じているという黒い噂が昔からある。先代の北の魔王ルゲイルを倒したウィルの父親が左遷されたのもロンドの差し金といわれていた。これこそウィルの父親が全ての職を辞し西の領地に引きこもった原因である。
 男がさらに一歩近づいてきたのでウィルがオロオロしている所に助けが現れた。
「この小さい紳士はどなたかな、ウィラ」
「ああ、ロック。私に挨拶してくださったワイルダー卿よ」
ワイルダーは決して小さくはない。女性化する前のウィルと同じくらいの身長だ。しかし雲をつくようなという言葉を体現するような大男ロックの前では確かに小さく見えた。
「拙者は宰相猊下のお役目を勤めますジャック・ワイルダー男爵」
「ふん。拙者は国王陛下の命を果たして都に戻る途中のロック・ダンカン男爵だ」
「お供の方も戻られたようだから退散するとしよう。お困りのことがありましたらいつでも相談に来てください。都でなら宰相家の家宰に言えば私の居場所は分かります」
従者を連れてすごすごと立ち去ったワイルダーの立っていた場所にロックは『けっ』と言いながら唾を吐いた。ウィルはおかしくてたまらない。
「ロック、かわいそうよ。彼はさほどの使い手じゃなさそうだし」
「そんなへなちょこがウィラを無力な少女扱いするのが我慢ならなかったんだ」
「そういえばロックって男爵だったの」
「そのうちな」
「え?」
「出世街道の途中でちょっと休憩中なのさ」
「まあ」


 西岸の港に上陸した一行はウィルの希望もあり先を急ぐことにした。通常なら5日かかる都までの旅程を3日でこなす予定である。
 しばらくするとウィルは他の3人を引離し少し前に出ていた。女性化してからは少しでも早くと気がせくため拍車を加えることが多い。幸い軽量化しているので馬にたいして負担はかからなかった。
 しばらく駒を進めているとウィルは気になる人物を街道脇に見つけた。それは小さな少女である。この辺りは街道の近くまで山が迫っており一番近い町からもずいぶん離れていた。だぶだぶの服を着せられたおさなごが1人でいるのは不自然だ。しかも荷物といえば少女の力では持ち上げるのがやっとの巨大な剣のみである。
 ウィルは思わず巻き乗りして少女の顔を覗き込んだ。その目に涙があるのを見て慌てて馬を止めこう話かける。
「お嬢さん、どうしたの」
「うるせー、俺は男だ!」
「はいぃ?」
その時には他の3人も追いついており、2人の喜劇をニヤニヤと見つめていた。
「言った通りさ。お前のような小娘に助けを請う俺じゃねえ」
「まあ、ひどい。でも私より小さく見えるのは気のせいなのかしら」
「後ろの小山の向こうで山賊どもを退治した反動さ」
アトランの合図でロックが山に向かう。
「おっさんたちは俺の言うことを信じないのか?」
じっと少女を見ていたシマラはこう指摘した。
「君は何か対価を必要とする術を使ったわけだ」
「辛気臭いおっさんだが頭は切れるようだな」
「これはどうも、お褒めいただいて」
その時馬蹄の音とともにロックが戻ってきた。
「20人ほど死んでるぜ」
「ほーら、ほんとだろう」
「なるほど」アトランは続ける。「次の宿場まで連れて行ってやろうか?」
「1人で大丈夫さ」
3人が口々に勧める誘いを少女はけんもほろろに断った。
 シマラが言うなら生意気な口をきく少女が元男なのは確かだろう。でもウィルには何かが引っかかる。よく思い出してみると少女は最初から道端にいたのではない。ウィルがよそ見している間に現れたはずだ。そして目の涙。態度がかたくなのなったのは……。
「あなたいつ男に戻るの?」
「え? ああ、今でも可能だけどやりすぎると女で固定する可能性があるから当分使いたくねえ」
「ふーん。女1人だと不便なことも多いの。都まで付き合ってくれないかな」
「あんたに?」
「ええ」
「俺は男だぞ」
「当分は女の子でしょう」
「ま、まあ、そうだが……」
「お願い」
「女の願いを無下にはできねえな」
「ありがとう。名前は?」
「俺はフレッド」
「フレッド?」
「姓もあるちゃんとした家のでだぞ。フレデリック・ザリエルって言うんだ」
「良い名だけどその姿の時はつかえないわ」
「うーん。言われて見れば」
「フレデリックならフレデリカね。フリーダでどうかな」
「我慢してやらあ、あんた良い人そうだし」
「ありがとう」
「俺の嫁に……あっ」
ウィルの後ろでにらみつける3人に気付いてフレッドは沈黙した。

 フレッドがアトランとロックに伴われ荷物を取に戻ったのでウィルはシマラと道端で待っている。フレッドは相当若年化しているというシマラの話をきいてウィルは自分の判断は正しかったと思った。幼い女の子となったフレッドは安心して旅をともにできる人が来るのを草むらで待っていたに違いない。それがウィルだった。その後現れた3人を見てから文句を言い始めた。
「なあウィラ」
「なあにシマラ」
「ウィルのことはフレッドには言わない方が良いと思う」
「どうしてかしら」
「他の2人も同じ意見なんだが」
「じゃあ従う」
「君の母上の贈り物も関わる以上知るのは最小限が良いと思うんだ」
「わかったわ」

<つづきはこちら>

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