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その名はアステカーナ!(1)と(2)

飛鳥

イラスト.東宮由依

作.isako


Her name was Aztecana, she was a strong-girl
With golden feathers in her hair and a dress cut down to there
She would fight and be a champion of justice


   その名はアステカーナ


「大事にしていたものなのにいいのか、おじさん」
叔父が俺に渡したのは秘蔵の品の中でも特に大事にしていたクリスタルスカルだ。俺が前から欲しがってるのを彼は承知している。
「お前ニュース見ていないのか?」
ケ・ブランリ美術館のクリスタルスカルが19世紀のドイツ製と分かったことを言っているらしい。
「でも俺の父親からのプレゼントなんだろう?」
あるいは俺に渡すべきものを勝手に所有したかだ。
「兄も騙されたんだろうな」
「専門家だよ」
「私の興味はオーパーツだけだからな。これが該当しないとなればお前のほうが持ち主としてふさわしい」
「でも高価なものなんだろう?」
「金額の問題ではないさ」
確かに事業に成功した叔父は金には不自由していない。両親が行方不明になったあと俺を引き取り学費を出してくれている。それだけにスカルを今までもってた理由が分からない。父は俺に渡す気でいたはずなのだ。
「ところでだな、見返りというわけではないのだが」
「どうしたの急に」
「そのー兄たちが、お前の両親が行方不明になる前に何か送ってこなかったかと聞いたことがあるだろう?」
「ああ、覚えてるよ。でも手紙だけだった」
「自筆の?」
「ああ、そういえば発掘地一帯の地図もあったよ」
「初耳だな」
「だって発掘現場の地図だよ」
「最後の発掘地のコロンビアのものだな」
「うん。サン・アグスティン遺跡付近だと思ったけど」
「ふむぅー、それをみせてくれるかね」
「現物は他の遺品と一緒にあずけてあるけど手紙類はコピーを持ってるよ。何度も読み返して少し汚れているけどね」
「それでかまわない。みせてくれ」
「いいよ」

 1週間後叔父は南米に旅立ち、俺は1人暮らしを始めた。
 


(1)

 1人暮らしを始めた学生アパートの住人は近くにある大学の教養生が多い。うちの高校は付属ではないけれど学園地区には複数の大学がある。今まで住んでいた叔父の屋敷に比べればぼろいが、住めば都だ。それに今までだって1人暮らしとたいして変わらなかった。
 その日遅く夜食でも買いに行こうと外に出た。学校やアパートは小高い丘の上にあり、コンビニはその裾にある。ドアのロックを確かめ大事にしまったクリスタルスカルに服の上から触れる。スカルは父母の形見の様な物であり、常に身につけるよう言われていた。叔父がしばらくの間占有していたのは一種の裏切り行為である。

 大学生が多いとはいえ彼らが夜を過ごすのは駅周辺なので一帯は静かだ。下にあるコンビニへは造成中の地区を通り抜けるのが近道になる。しばらく街灯のないところを通るが、下に広がる町の灯りで完全な闇になることはない。
 道は暗く他に人はいない。それでも短縮される時間を考えれば充分に選ぶ価値のある近道だ。
 学園地区でありこの辺りの治安はもともと良い。しかし最近妙な噂が流れていた。変質者らしい人影を見たというのだ。まあ事件のニュースはないし、その変質者が実在していたとしてもぱっとしない男子学生の俺が襲われる可能性は低いだろう。

 決めた夜食のCMの鼻歌まじりで坂を下りていると奇妙な羽ばたき音を聞いた。深い森は消えたとはいえ木々は多い。梟でもいるのだろうか。
 気にせず歩いていると小さな悲鳴が聞こえた……聞こえた気がした。
 見まわすと少し離れたところに人影が見える。2つ……いや1人か。知らぬ間に駆け出していた。臆病なはずの俺なのに逃げるんじゃなく人影の方へ。
「大丈夫か……あれ?」
最後の『あれ』は男性だと思っていた人物が女性で驚いたからだ。女性はうずくまっており目を閉じていた。
「大丈夫ですか」
もう一度問いかけて肩に手をかけると彼女は目を開けた。結構な美女だ。
「お前は?」
声も可愛いが、ちょっと口調は生意気だった。
「麻耶といいます」
「臭うぞ」
「え?」
おかしいな、シャワー使ったのに。
「わからぬのか。私はザ・ダークネス、闇の公女だ」
くそ、えらいのに関わってしまったなあ。電波ビンビンだぞ。
「明るい所まで送りましょう」
「ふざける気か」
彼女が俺の胸をつくとクリスタルスカルの真上だった。
「きゃ」
「げげ!」

闇の公女役で出演:右側の女の子 イラスト:
hukuyama.jpg
The girl from Aztec goes walking
And when she passes, each one she passes goes - ah


(2)

 どちらが『きゃ』と言ったのか『げげ』と言ったのかよく覚えていない。えっ、『きゃ』が電波娘に決まってるって? ところが話はそう簡単にいかないんだ。何しろ黄金の輝きと共に俺も女性化してしまったんだから。
 笑っていいぞ。何しろ変身した俺は休日の朝からやっている子供向け特撮ものに出てくるような恰好なんだ。身につけているものといえば、ビキニ程度の布切れとメタルの飾り、そして胸のクリスタルスカル、あとは手の銀色の杖――じゃあ変か、シルバーバトンだけだ。
「くそ、やはりお前がアステカーナか!」
状況が理解できない。説明できるとすればこの電波娘、いやそうじゃない何か未知の力をもつらしいこの存在だけだ。
「あのー、もしもし」
「黄金の光を近くで浴びすぎて力が出ない。作戦負けか」
「変身をさあ」解いてくれないかと言う前に娘は喚きだした。
「このままだと変身が解けてしまうぞ」
「え!」
そりゃ助かる。
「今日は挨拶だけにしておいてやる。さらばだ」
「は、はあ」
娘の背に黒い翼手が生えたかと思うと舞い上がり飛び去っていく。俺は呆然と見送るだけだった。
 娘が言った変身が解けてしまうと言う言葉を信じて俺はそのまま待ち続けた。
 しかし10分過ぎても15分過ぎても変化がない。だんだん腹も空いてきた。持参した現金が腰のポーチの様な物に入っているのは確認したけど、この姿でコンビニのある通りに行くのは無理がある。救いを求めて辺りを見回していると男物のジャケットを見つけた。そういえば怪人電波娘を最初見たとき確か影は2つ見えたっけ。思いついてジャケットを着てみると恥ずかしい上半身をうまく隠してくれた。

「758円になります。1000円からお預かりします。242円のお返しになります。アザーシタ」 
顔見知りのはずの店員は視線を合わせぬまま会計を済ませた。彼女の目にはきっと俺が電波娘に見えるのだ。まあ仕方がないよなあ。
 いつもより奮発したのは空腹がひどいからだ。ひょっとして変身のせいなのかな。
 俺は袋を持ち外へ出た。恥ずかしい恰好にもメリットはある。夜のコンビニのガラスに映る今の俺はなかなか可愛い。他の客の視線をひしひしと感じる。おとなしい恰好なら大学生どもにすぐに話しかけられただろう。しかしそれさえいつまで続くことか。俺は帰り道を急いだ。

 部屋に戻りむさぼるように夜食を食べた。満腹したとたんスカルが輝き始め、あっけなく元の姿に戻った。服も元どおりである。ジャケットは脱いでいたので無事にハンガーにかかっていた。
 食べた後のゴミとジャケットがなければ全て夢だと思いたい気持ちと、せっかくの女性化だというのに風呂もトイレも行かなかった無念さが俺の中でせめぎあっていた。

<つづく>

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