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勇者ウィルの冒険 Ⅱ 妖婦アビゲイルの秘密 (第二回目)

作.amaha
キャライラスト.そら夕日

(3)

 次の町でウィルたちは宿泊することにし、サラと別れた。フリーダ化したフレッドの疲労がひどかったのだ。アムシャが駆けつける前に黒の乗り手の弱点を知らないまま2騎を倒したフレッドは男性源をかなり消耗したらしかった。
 2日目復活したフレッドは朝食中も反省することしきりだった。
「日光が弱点かあ。1人目で気付くべきだったなあ」
「でもそれを知らずに2騎を倒したのはすごいってサラさんもアムシャさんも言ってたわよ」
ウィルのほめ言葉にフレッドは嬉しそうだ。
「まあ奴らは軽量だったからカラットの一撃で吹っ飛んだよ。まあ思ったより一振りで消耗したんだけどさ」
「それでどうして戦いになったわけ?」
ウィルは黒の乗り手の狙いはサラたちではないかと疑っている。
「どうしてって」
「だって旅人たちはその姿を見ても襲われなかったじゃない」
「なんて言うか、目が、いや奴らに目はなかったかなあ、視線があった瞬間に奴らは飛び出してきたし、俺も何となく敵意があるのは感じた」
「どういうことかしら」
フレッドがウィルに食べさせてもらっているのを羨ましげに見ていたロックが口を挟む。
「フレッドを強敵と認識して襲ったんじゃないかな」
「どうしてロック?」
「奴らはさほど頭が良いとは思えなかったし、ほら俺たちの戦いでも俺の方に2体来ただろう」
意識がなかったフレッドが戦いの様子を知りたがったので2人は交互に話して聞かせた。
「サラスヴァティーってご婦人に会いたかったなあ」
「あら残念。お付のアムシャさんは奥様って呼んでたわよ」
「浮気する気はないさ。きれいなご婦人に会いたいって言うのは別にかまわないだろう」
本当は男だと知らないフレッドがウィラを好きらしいのに気付いていたので、ウィルは顔を赤らめた。

 大事をとってもう1日休んでから3人は出発した。街道は整備されており、都のような華やかさはないものの、村も町も豊かに見える。地道に開発を続けた住人と大公家の努力の賜物であろう。
 北出身のフレッドは平和で豊かな大公領の様子に感銘を受けたようだった。
「北は違うの?」
ウィルは鞍の前の方に乗るフレッドにたずねた。
「北の町に行ったことはないのか?」
ウィルは旧都から100kmほど離れた町の名をあげた。
「そこはまだ北の国とはいえない。ノームからだな」
ノーム以北は妖精の国とも言われフレッドやアビゲイルのように耳の尖った人が多い。
「寒いの?」
「まあね。それにここほど土地が肥えていないんだ」
「でも珍しい物産があるでしょう?」
「大河東ほどは利益が出ないからね。大商人が来なくなって久しいのさ」
「この辺りも主な貿易相手はアルゴスのはず。北の町の商人も少し考えた方がいいかもね」
「なるほどなあ」

 数日後大公国の首都に着く前にその家臣がウィルの前に現れ、私邸に招待することを伝えた。3人とも堅苦しい官廷での会談を望んでいなかったのですぐさま同意を伝える。
 それでもフレッドは心配らしい。
「私邸たって大公様なら豪華なんだろう?」
「領地は広いけど大きめの田舎屋敷って所だよ。辺境伯だった大公のお爺様の持ち家の一つだったそうだ」
「ふーん。ウィラはお姫様なんだなあ」
「そんなことないって」
そう言いながらウィルは今にも笑い出しそうなロックをひとにらみした。
 彼らが馬を進める街道からはよく耕された耕地が大河まで続いているのが見て取れる。そしてお伽噺の中に出てくるようなきれいで小さい村を抜けると遠くの丘に屋敷が見えてきた。ウィルは懐かしさのあまり声を上げる。
 屋敷に入り3人で大公に拝謁した後、ウィルは大公に私室へ2人は祖母エレに食堂へ案内された。
 大公の私室に入るとウィルは挨拶も早々にこれまでの経過や母クレアの推理などを説明した。そして叔父の持つ雄性のクリスタルに触らせて欲しいという願いも話す。
 まだ20才代に見える大公はまずクリスタルを試すように言った。
「雌雄同時にかけぬほうが良いらしい」
そう言われウィルは自分のネックレスを近くのテーブルに置き、大公に手渡されたものを首にかけ防御の呪文を唱えてみた……。何も起こらない。それだけではなく奇妙な違和感があった。
 しばらく待ってから大公は話しかける。
「変化はないようだな」
「はい。残念ですが」
「ところで自分のものと比べて違いはあるかな?」
ウィルはネックレスを大公に手渡しながら感じた違和感を正直に説明した。
「なるほどなあ」
「叔父上、理由がお分かりなのですか?」
「いや、正確なところは知らない。しかしもともとその2つはクレアと私用の護身アイテムだから、親子のほうが最適に近づくんだろう」
「なるほど」
「それと妹のいった雌性の影響と言うのは考えにくいと思う。雌雄があると言うより、先ほども言ったように、クレアと私専用という説明だったからな。それとあくまでも護衛効果を上げるためのものだから君の体の女性化に積極的に関与したとは思えないな」
「そうですか……2つのネックレスの送り主は誰なんでしょう。母は教えてくれませんでしたけど」
「さる貴人なのだが、ゆるしなく教えて良いかどうかわからない。つい先日王国の東方領の視察に向かわれたから私から手紙を出しておこう。返事が来次第お前にも伝えるよ」
「お願いいたします」
「ところで都の様子はどうだった」
ウィルは舞踏会の様子と王子の相手がアビゲイルに決まりそうなことを伝えた。
「なるほどライバルがそなたでは換われとはいえないが、厄介なことになったな」
ウィルにはわけが分からない。
「なにがでございましょう?」
「クレアは何か言っていなかったか」
「母上は何も」
「今の王国には王と宰相以外にも権力を持つものがいる。旧貴族ではない」
旧貴族は年金を目当てに王宮に集う宮廷貴族という王冠の飾りになっている。
「大河東に土地を持った軍人や大商人出身の新興貴族たちだ。爵位はまだ男爵や準男爵と低いが、圧倒的な経済力を誇っている」
「確かに東方領の領主は羽振りが良いと聞いています。でもそれに何か問題があるのですか?」
「20年前の勝利の後、大河東に移住した彼らは現国王への忠誠心が高い。それだけに宰相が実権を握っている現状を憂えている。国王が宰相に対して不満を表明しないのでトラブルまでいかないというのが正しいだろう。王は政務より享楽を愛しておられるからな」
「宰相の養女が妃になると内乱が起きるといわれるのですか?」
「すぐにではないさ。しかしきな臭くなるのは間違いない。わが国もな」
「叔父上の領地まで?」
「世界は天秤の上で微妙に揺れているのだ。東方の領主たちが王室や宰相から離れれば、今は押さえられている旧王国領の住民は立ち上がるかもしれない。そして各勢力も私に合力を求めてくるであろうな」
ウィルは相手の顔をまじまじと見つめた。
 20年前の戦乱が起こったときまだ10代だった叔父は先代からの家臣オットー・ロートリンゲンらの協力があったとはいえ一代でこの大公国を築き上げた。その叔父の予測は信頼できるようにウィルには思える。
「内乱を避ける手を打たれないのですか、叔父上は」
「むろん戦乱など私は望まない」
「では」
「私は動けないのだよ」
「なぜなのですか」
「私の発言や行動は全てこの大公国を背負ってのものになる。中立をうたっても、そうは思ってもらえないのだ」
そんなものかもしれないとウィルは納得した。
「そうだウィル。君なら出来るのではないか?」
「しかし」
「確かに引退したとはいえロック・サンダースの息子ならあまりにも国王に近い。しかしウィラならどうかね」
「それも叔父上の」
「確かに養女にはしたが私には実子もいるし、君はアルゴスの出身ということになっている。王子の相手が決まればフリーの立場と言っても良いだろう。頼めないかね」
「わかりました。情報だけでも集めてみましょう」
「うん。ネックレスの送り手からの返事がきたら連絡する」
「お願いします」
「そういえば」
「なんですか?」
「ウィルが女性化した後、まあ女性の体になったのは別にして、男のときと変わったところはないかな」
「変わったと言いますと?」
「痣とかほくろとか――そんなものさ」
ウィルは一つ思い出した。
「そういえば……」
(4)

 北の町ノームに着いたアトランとシマラは二手に分かれて情報を集めた。
 夕方シマラが待ち合わせ場所の『金の斧亭』で待っているとアトランは約束よりずいぶん遅れてやってきた。
「遅いじゃないか、君」
「いろいろあったのさ。そのワインを私ももらおう」
「うん、これは西海岸産だがなかなかいけるよ」
アトランは店主に大きなゴブレットを用意させて一気に飲む。
「確かにこれは美味いな。咽喉にしみわたるようだ」
「だろう。ところでだ。君は調査にずいぶん時間をかけたうえ僕を待たせたわけだから当然僕より多くの情報を得たと期待しているんだが」
「じゃあこうしよう。君は食べ始めているようだし、ワインも口がなめらかになるほど飲んでいる。君の報告を先に聞いて、僕が新情報を付け加えることが出来れば期待に応えたことになるだろう?」
同意したシマラは杯のワインを飲み干すと優雅に口を拭ってから話し始めた。
「襲われる荷馬車の数は確実に増えている。襲われた荷馬車部隊はたいてい全滅なので目撃者に会うことは出来なかったが、修理中の馬車をいくつか見せてもらったよ」
口の中が肉で一杯だったのでアトランは手振りで先を促した。
「うん。僕の見立てではあれは人狼の仕業だな。もちろん王国内の人狼族が数百年前に西の海を渡ったと言う話は知っている。しかし残ったものがいるかもしれないし、王国の北の森のことを僕たちは知らない。トナカイを狩る種族の中に人狼族がいても不思議じゃあるまい」
肉をワインで飲み下してアトランは質問する。
「じゃあ今になって人狼が王国の商人の馬車を襲う理由はなんだい?」
「それはわからないけど、南からの穀物や北の塩漬け肉などがたくさん襲われているから、今年は森の獲物が少ないんじゃないかな。それで君の調査結果はどうなんだい?」
「確かに襲われた荷馬車の数から言えば食料品を乗せたものが多い。それはノームを初めとする北の町の穀類の価格を引き上げており住民を困らせている」
「この辺りじゃ芋くらいしかとれないからね」
そう言ってシマラは新しいボトルを注文する。
「しかしそれで都の商人ギルドが困ると思うかい?」
「う~ん、保険や価格上昇で吸収できるかな」
「御明算。彼らが困るとすればもっと高額の品や極秘に運んでいる品だろうね」
「高額な品?」
「大河東のものに比べれば小規模だが金山もある」
「なるほど。金だとさすがに度重なれば保険は利かないか、あるいは王家の鉱山からの横流し品なら盗られても表ざたに出来ないな」
「それに食料を運ぶ荷馬車と違いそれらには爪や牙の痕がないんだ。と言うより荷馬車後と消えているのさ。巨大な蹄の後だけ残してね」
「やれやれ、さては君の言っていた魔族の生き残りかい?」
「うん。黒の乗り手じゃないかと考えている」
「ルゲイルの?」
「ああ。あれには子供がいたはずだ」
「ルゲイスといったっけな」
「魔族は長命だが、あれはまだ実年令で20才になっていない」
「恐るるに足らずってとこか?」
「逆だ。手加減を知らず無茶をしそうで恐い」
「おいおい、魔族が人間に情けをかけるとでも? 君の魔族びいきもここに極まれりってとこか」
「そうとられてもしかたないが、魔族が大挙して人を襲うことはないだろう?」
「古今東西、僕の知る限りではそのような例はないようだな。同族や神族との争いは叙事詩に歌われているけどね」
「私闘は別にして彼らは集団として人類に直接手を出さないって言うのが私の考えさ」
「どういうことだい?」
「彼らなりのルールや禁忌があるんだと思うな」
「君が言っていたように魔族同士が争っているなら、親人類的魔族集団がくびきになっていただけじゃないのかな」
「確かにその可能性もあるけど、君の言う通りならその親人類的魔族には私の言う信条があるってことだろう?」
「折れないね、君は」
「智のシマラ殿にお褒めいただいて光栄です」
「やれやれ、ところでこれからの具体的な作戦だけど」
「とりあえず人狼を狩ろう」
「ギルドの考えが君の言ったとおりなら黒の乗り手こそ我々の相手じゃないのかな」
「ここしばらく、数週間、人狼以外に襲われたらしい事件はないんだ」
「確かに」
「それに相手が黒の乗り手ならロックの手も借りたい。ウィルのことも気になるし」
「決まりだな。まず人狼をやろう」
「ああ」

<つづく>

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慣れないからだで秘密を知らぬものを交えた旅。良い運びだと思います。

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