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勇者ウィルの冒険 Ⅱ 妖婦アビゲイルの秘密 (第五回目)

作.amahaさん 
キャラデザイン.そら夕日さん

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 翌日の明け方フォウが持ち物の点検をしていると後ろから声をかけるものがいた。
「お頭」
昨夜も質問したバズだ。ごつい見かけに関わらず優れた知性の持ち主なのでフォウは高く買っている。ナックルダスターを胸の谷間に隠しながら返事をした。
「どうした?」
「あ、あ、あのぉ~」
「なんだ?」
「胸を」
「あ」
顔を赤らめたフォウは慌てて手で隠す。
「ちょっと横を向いていろ」
「へい」
武器の固定を確かめて上着を羽織った。
「いいぞ。どうだ上手く隠れたかな」
「はい。しかし腰のナイフは」
「旅の女だ。自衛の短剣の一振りはないほうが不自然さ」
「なるほど」
納得顔でしきりにうなづくバズであった。
「で、なんのようだ」
「へい、今日の獲物のことで疑問があるんで」
フォウは真顔になりバズを見つめなおした。
「それで?」
「一つはどうしてこの3人に目をつけたかということ、もう一つは金貨5000枚は大金とはいえ、どうしてお頭みずから危険を冒しなさるかってことです」
(こいつの評価を上げるべきかもしれないな)
「実はな、ややこしくなるからみんなの前では言わなかったが、これは依頼された仕事なんだ」
「殺しですかい?」
「そうでもない。年上の女は生きたままとらえる必要があるんだ」
「報酬はたんまりと?」
「もう半金は受け取ったさ」
「奴らの金貨と仕事後の半金で大儲けってわけですかい」
「その辺りは微妙だな」
「と言いますと? ああ、そういえば昨日お頭は変なことを言いなすったですな」
フォウは興味深く聞きなおした。
「どんなことだ?」
「俺たちの退却の合図を決めなすったじゃないですかい」
「ほー、それがそんなに変かな。奴らは、少なくとも男は手ごわそうだぞ」
「お頭が選んだ10人は腕っこきですぜぃ」
「なあ、バズ」
「なんです、お頭」
「お前は実に素晴らしいな」
「お褒めに預かって光栄です」
「それでお前はどう推理するんだ、俺の考えを」
「依頼人より獲物の方が金持ちなら」
「ほほーう」
「はるかに多く搾り取れるかもと」
「ふふん。まあそういうことだ。それに」
「それに?」
「なんでもない」
フォウは依頼人である名も名乗らぬ怪しげな娘のことを思い出していた。へりくだった態度の中になんともいえぬ怪しさと冷たさを感じさせる人物だ。
(人物? あれで人なのだろうか、あるいは噂に聞く魔物の一族なのだろうか)
金のために人を殺すこともあるとはいえ、フォウは魔物の手伝いをするなど真っ平であった。

(8)

 船首に立っていたウィルは後ろを振り返った。既に大河の中央を越えており、ここまでの所は順調に来ている。すぐ後ろにいるシフが微笑んでいた。ロックは船室でいびきをかいているはずだし、どういうわけかシフを嫌っているフレッドはともの方で舵を操る船頭の側にいる。他には帆の操作をする見習いが1人いるだけだ。
「どうされました?」
シフの問いに応えようとしたとき妖気と共に風が止み船が下流へ流され始めた。船頭がのろいの言葉をはいたのでウィルは船尾に向かう。
「何か不都合でも?」
「なにかどころじゃありませんですぜ。ごらんのように風が止んじまったので」
「それはわかりますが」
「この季節のこの時刻に風が止むなんざぁ考えられない。きっと何かの呪いに違いねえ」
船頭は手で十字をきった。東方教会の信者らしい。船上を沈黙が支配した。ウィルが妖気のことを聞こうとしたとき再び風が吹き始めた。ただし今までとは向きが逆だ。再び船頭がのろいの言葉を吐く。どうもまだ神に任せきるほど教会に帰依していないようだ。
「風は吹き始めたようですけど」
「素人さんにはわかるまいが、上り性能の良いこのボートでもこの流れじゃかなり下流に流されるんでさあ」
船頭は簡単にタッキングの説明をしてくれた。
「予定の船着場は難しそうですね。下流は危険なんですか」
「まあ街道筋からは見えねえ入り江を知っているからそこに泊めまさあ」
向こう岸を見ていたシフがこう言った。
「あちらに見える森のところですか?」
「へい、さようで」
不機嫌そうにフレッドかくいつく。
「なぜわかったのさあ」
「フリーダ、やめなさい。失礼でしょう、言い方が」
「だってぇ」
「かまいませんわ。帆船のこと少しは知っていますの」
船頭とシフの帆船の話を少し聞いてからウィルは話を戻した。
「あそこなら盗賊からは安全なのですか」
「まあ見なせえ」
「はあ」
そういわれて見ても入り江の奥に小さな林があるだけで何の変哲もない。
「木は生えているものの回りは草地で見通しがいい。盗賊どもがこの船を見つけて入り江に向かえば一目瞭然、船をつけなければ良いんで。まあ到着は遅れてしまいますがね」
「なるほど」
確かにあらかじめ木陰に潜んでいない限り襲うのは無理な地形だ。疑り深かったフレッドもどうやら納得した。

<つづく>

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