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投稿TS小説 最悪の理想の薬(10) by.DEKOI

※食器の数:93枚
『生理』が起こってからおよそ3日が過ぎようとしている・・・のだと思います。

何せ時間感覚が完全に麻痺しているのですから。いま何時なのかどころか朝なのか夜なのかすら全く分かりません。
生理が起こると痛みとかで不快な気持ちになるそうですが、私はお腹のジンジンとした痛みこそありましたが、それほど気になるほどの痛みでもなかった為、特に問題はありませんでした。

いい加減にここでの生活が慣れてきましたが、不安というか不満な点も色々あります。
まず第一に、自分の顔がどうなっているのかが未だに分かっていないのです。
鏡がないどころか、蛇口から出てくる水の色が微妙に黒っぽいせいで水鏡すら作れません。蛇口から出た水を最初見た時は毒でも含まれているのかと怪しんだくらい。
そして実は言うと鏡がないせいで、自分がいま着ている服が似合っているのかいないのかすら分からない始末。せっかく色々な服があるのに着飾りたくても鏡に映すことができないから意味がないのです。

そして何よりも不満に思っているいるのは一体私は何の薬を盛られていたのかが分からない事。
恐らくSFとかファンタジーでよくあるらしい女性化する薬を飲まされているのでしょうが、何か妙に引っかかるのです。
それは、私が自分が女性である事に全く違和感を感じていないこと。まるで生れ落ちた時から性別が女性であった様な気がしてならないのです。
いったい私は、「石井剛毅」という人間はどうなっているのでしょうか?何になってしまったのでしょうか?

そしてお皿の数が99枚になった時。遂に、この部屋から出る時が来ました。
そして同時に私が何の薬を飲まされていたのかが判明した時でもありました。

いつも通りに食事を終え、お皿の一枚を手元に置いた状態でトレイを戻した時。

『石井剛毅さま。どうやらお別れが来たようです。』
「・・・・!貴方は・・・!!」

最初の日の除くと、今の今までこちらから話しかけても全く反応が無かった「管理人」の声がどこからか響いてきました。

『現時点を持ちまして、薬の臨床試験が終了いたしました。この部屋から貴女を解放します。』
「そうなんだ・・・。」

私はそれを聞いて安堵したのですが、何故か手放しに喜ぶ事が出来ませんでした。
この時点では分かっていませんでしたが、妙に気になり不安にな気持ちが心の片隅にあったからです。

『折角ですから、今まで貴女に飲ませていた薬について教えてさし上げましょう。』
「・・・!」

私は驚きで思わず硬直しました。まさか薬の内容についての説明がくるとは思わなかった為です。

『薬の効果は【服用した人物を理想の異性に変える】、です。』
「は・・・い?」
『即ち服用させていた薬は、服用者が心の中で伴侶やパートナーとして得たいと思っている理想の異性像に肉体と精神を変態させるのです。まあ肉体の変身についてはある程度の変更までに制限されますが。』

その時の私の感情は「呆れかえっている」という言葉が最もふさわしいかったでしょうか。
すわなち私は、「石井剛毅」という男子が彼女にしたいと考えていた女性そのものだと「管理人」は言っているのです。

「ちょ、ちょっと待ってください。それってある意味最悪な事なのでは?」
『そうですね。服用者は最も得たいと考えている異性像に「自分がなってしまう」のですから。つまり理想の異性像を手に入れつつ、実はそれでいながら永遠に得られなく状況になってしまうのですからね。』

最早あいた口が塞がらないとしか言いようが無い状況です。
他の人を理想の異性像に変えるというのならあまり納得はいきませんが分かります。
ですが、自分が理想の異性そのものになってしまうのは一体全体なにがしたいのか分かりません。
それも自分がなりたい異性像ならともかく、自分が彼氏彼女にしたい異性になってしまうというのです。薬の用途が全く持って意味が分かりません。

「そんな薬を作るのって、何の意味があるのですか?」
『私には分かりません。何せ私は貴女の変身状況の確認と部屋の管理を任せられた人工知能に過ぎませんので。』
「えっ、じゃあ貴方人間じゃ」
『ありません。私はこの部屋の管理を任された、ただのニューロコンピュータ内で作られた存在に過ぎません。』

たぶん今の私の顔は実に間抜けな表情を浮かべているのでしょう。
今の私の心境は「どうしたらいいのか分からない」というのが正しいのではないのでしょうか。
不思議と心は落ち着いていますが、頭の中まで真っ白で落ち着いているのもいやな状態です。

そんな状態に私がなっていてから少し経つと、いきなり激しい音が鳴り響きました。
慌てて私が音がする方を向いてみると、壁と溶接されているドアから激しい音が鳴り響いていました。

「な、何?なんなの??」
『実は1時間前に貴女が所属している子供特務課に、貴女が拉致監禁を受けてこの地下室に閉じ込められた事を伝えました。ついでにドアが溶接されていて開かないことも伝えてあります。』
「そ、そうなんだ。」

「管理者」が言う通りだとしたら、私を解放するためにドアをこじ開ける作業を行っているのでしょう。そういった事をする為の重装備がたしか警察の倉庫にあった筈です。
そうなんだ、子供課の皆が来ているんだ・・・。
と、思いふけそうになった瞬間。ある事が私の脳裏で思いつきました。

「ちょっと待って!もしかして石井剛毅という「少年」がここにいるって伝えたの!?」
『その通りです。』
「そんな、私が変貌している事は皆は知らないの・・・?」
『そうです、その事については知らせてません。これが最後の検証なので。』
「ど、どういう意味??」
『「異性に変貌した被験者をその事を知らない知人に見られたときの被験者の反応」を報告するのが私の最後の務めなのですよ。』

なんて悪趣味なのよ、私を拉致した人は!そんな反応を確認して何の意味があるのよ!!
そのようなやり取りの間も外ではドアを開ける為の作業が行われているらしく、遂に向こう側からドアを切断する為の刃が覗き始めました。

ドアが開いた瞬間、私はこの部屋から解放されます。それはとてもうれしい事。
それは今の私の姿が皆にばれてしまう事も意味しています。それはとてつもなく恥ずかしい事。
耳障りな音をたてながら徐々にドアが切断されていきます。その間、私はどうしたらいいか分からずオロオロしているばかり。
嬉しい感情と恥ずかしい感情が混じっていてどうしたらいいのか分からなかったのです。

そしてとうとうドアと壁の境目の箇所が全て切断されました。大きな音を立てながら鉄製のドアはこちら側に倒れていくのを私はただただ見ているだけでした。
ドアだった物が床に落ち、激しい音をあげたと同時に1人の少年が部屋に飛び込んで来ました。その後ろから数人が追従するように部屋に入っていきます。

「石井!大丈夫か!!」

最初に部屋に飛び込んできたのは坂田君でした。部屋に入ってぐるりと周りを見渡して・・・ある一点に到達すると硬直しました。一点というのは、まあ、私を視界に入れた時なのですが。

「石井・・・?何で女装してるんだお前?? ってか貴女だれ???」

全身を硬直させたまま坂田君は私に声をかけてきます。どうも私が「石井剛毅」と判断されなかった様です。しょうがないかも知れませんね、何せ彼は「石井剛毅」は突っ撥ねた態度を常に取っていた「男」だったのですから。

「えっと、久しぶり?なのかな、坂田君。」
「あれ?君なんで俺の名前を知ってるの?」
「えっと、私は貴方の同僚の石井剛毅「だった者」だから・・・。」
『え゛っ。』

それを聞いて坂田君を始めとした部屋に飛び込んできた子供特務課の面々がビキッという音をたてながら硬直しました。揃って同じポーズで硬直という傍から見れば滑稽な状況なのでしょうが、その状況の原因が自分だという事実の前では笑えません。

「じゃあ君は、石井な、の?」
「うん、実はそうなの。あははは・・・・」

何とか立ち直ったらしい坂田君が言葉を詰まりながら私に尋ねてきたので、苦笑交じりで私は答えたのですが、

「あはははは・・・・う、うえぇぇぇぇん」

途中から何故だか分かりませんがすごく悲しくなってしまい、皆の前にも関わらずボロボロと涙を流しながら泣き出してしまいました・・・。

<つづく>

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