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「カストラート」 (そんな、おままごとみたいな……Noch einmal) (14) 作.ありす 挿絵.東宮由依

第13幕 ドレスアップ作戦(Ⅱ):誘惑編

「それでは、明日の報告を楽しみにしていますね」

 そう言って、ヘルマは帰っていった。
 彼女が手伝ってくれたおかげで、夕食の準備はあっという間に終わった。
 材料費はそれほどかからないけれど、やたらと手間のかかる料理。味や食感もそうだけど、見た目にも工夫を凝らした、私の知らない料理だった。
 私はまだまだ教わることがたくさんある。新しい料理を覚えたら、クララは喜んでくれるかな?

 もう日没の時間だけど、今日は遅くなるって、クララは言っていた。
 私はエルダの店で買った服に着替え、唇にエルダからもらった口紅を引き、ヘルマから借りたイヤリングをして、鏡を見た。
 うん、悪くない、と思う。髪はヘルマのアドバイスどおりに、アップに結わいてみた。首筋のラインを見せるんだそうだ。よくわからないけど、こんな感じかな?

「ただいまー」

 帰ってきた! 私はいそいそと出迎えた。
 クララはびっくりしている。
 ほら、なんか言って見てよ!

「どうしたんだ? クノ」
「どうって、何が?」
「いや、その服。なんというか……」
「たまには気分を変えて見たの。似合う?」
「あ、ああ」

 クララは混乱している。
 でも、もうちょっと気の利いたことぐらい言えば? 
 それにそんなに胸ばかり見ないでよ。私だって恥ずかしいんだから!

「その胸……、本物か?」

 言うに事欠いてそれか!
 というか、なんでわざわざかさ上げしなきゃいけないんだよ!!
 グーが出そうになるのをぐっとこらえて、私は言った。

「気になる? 確かめてみれば」
「あ、いや、その、ゴメン」

 素直でよろしい。

「ところでクノ、そのペンダントは、どうしたんだ?」
「え? ファリンにもらったのよ。ほら、前に私のナイフをあげたことがあったでしょう? あれと交換だって、ファリンが」
「ファリンが?」
「そうよ、結構前からしてるはずだけど、今頃気づいたの?」
「君は胸元の開いた服が嫌いだったろう。だから、今気がついたんだ」
「そうだっけ? でもかわいいでしょう?」

 私は胸元が目立つように、腕で少し胸を寄せあげてウィンクしてみた。
 これでどうだ!

「あ、ええと、その、腹減ったかなー」
「え? ああ、すぐに食事にするね」

 色気より食い気? まぁいいわ。
 いつもなら、二人で食事のときは向かい側に座るのだけれど、今日はたまたま行商に出ていて、ファリンとハルがいない。
 私は大きなテーブルのクララの隣に、肩をくっつけるようにして座った。

「ハルたちは?」
「二人でテナックの街に出かけているの。今日は街に泊まるって」
「そ、そうかい?」
「今夜は久しぶりに、二人きりだね」
「ああ、そうだね」
「泊まってく?」
「どうしようかなぁ……」
「汗かいてない? 温泉に入るなら、背中流してあげるよ」
「あ、うん……。ごめん、お代わりをくれないか?」
「え? はいはい。そうだ、おいしいでしょ? この料理。ヘルマに教えてもらったんだ」
「うん、おいしいよ」
「そう、良かった。ずいぶん手間がかかったんだから」
「そうか、それはうれしいな」


 食後のお茶をしていると、クララが言った。

「少し散歩しないか? クノ」
「え? もう夜だよ。今日はお月様だって細いし、夜は出歩いちゃダメって……」
「僕が一緒なんだから、かまわないさ」
「う、うん」

 後片付けもそこそこに、私はクララの後について外に出た。

「ねぇ、どうしたの? 急に散歩しようだなんて。キレイに着飾った私と、デートしたくなったとか?」

 茶目っ気たっぷりに言ってみた。

「いや……。そうだな、その服、ちょっとびっくりしたよ。クノがそういう服を着るなんて」
「おかしいかな? エルダもヘルマも褒めてくれたけど」
「エルダも?」
「え? あ、ああ、うん……。この服ね、エルダの店で買ったの」

 クララが何か感づかないかと、内心ヒヤヒヤしながら答えた。

「そうか……」
「……似合わない?」
「ううん。そんなことないよ。女性らしくていいと思う。その髪型も」
「ありがと。でも、やっぱりちょっと恥ずかしいんだ。こういう服」
「そうだね。あまりその姿で、外を歩いて欲しくはないな」
「やっぱり、……嫌なんだ。私がこういう服着るの」
「いや、そうじゃない! そうじゃないよ。クノのその姿を見て、邪な考えを起こす奴が出ないとも限らないからさ。嫌とかじゃなくて、その、なんていうか……」
「うふふ、わかった。でも安心して。クララの前でだけだよ、こういうカッコするの」
「ああ、それなら、いいんだ……」

 いつの間にか、私の手はクララにしっかりと握られていてた。

「あ、でもそれなら何で散歩したいなんて言い出したの? まぁ、こんな時間に、こんなところ歩いている人はいないと思うけど……」
「ああ、そうだな……」

 クララはすっと私を抱き上げて、道端の柵の上に私を座らせた。

「今のクノを誰にも見せたくはないけど、猫目月にだけは見せてもいいかなって思ったんだ」
「ば、バカ……」

 なんて恥ずかしいことを平気で言うんだこの人は……。
 思わず赤面して下を向いた私の頤にクララの手が当てられて、上を向かせられた。
 柵の上に座らされた時から判っていたから、クララにされるがままにキスをした。

 でも、結局その晩はそれ以上の事はなかった。
 もしかしたら一線を越えるかも? と思ったけど、そうならなかった。
 ちょっぴり残念だったけど、でもやっぱりほっとした。

<つづく>

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