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投稿TS小説 「Kleiner Engel des Priesters」 (そんな、おままごとみたいな……Ausserdem noch einmal) 第六楽章

第六楽章 怒り
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 教会の2階にある資料室を借りて、古い聖歌集を見せてもらっていると、クノさんの叫び声が聞こえた。
 何事かと思って、窓の外をみると、クノさんが倉庫の中から、泣きながら走っていくのが見えた。
 良く見ると、クノさんの服が破かれていた。
 そしてその後から、カール司祭が頭を掻きながら出てきた。

 な、何てことを!

 暴漢に襲われて、泣きながら逃げていったクノさんが心配だけど、カール司祭への怒りも大きかった。
 一言言ってやらなければ気がすまない。
 どちらへ行くか迷っていたら、クノさんと入れ替わるようにして、ハルさんが出てくるのが見えた。
 私は慌ててハルさんに聞いた。

「ハルさん。クノさんは?」
「え? ああ。見ていたのかい? クノなら心配ないよ」
「心配ないって……。襲われたんですよ! 倉庫で!」
「カールだろう? 大丈夫だって、クノ本人が言っているから、そっとしておいてあげなよ」
「そんな!」

 ハルさんも酷い! 人気の無い狭い場所で無理矢理に襲われることが、どれだけ傷つくことなのか、わかってない!

「クノなら大丈夫だよ。心配ならば、暫くしたら様子を見てあげて。僕はもう自分の家に戻るから、おやすみ、ファリン」
「そんな、あのまま放って置いていいんですか?!」
「そうっとしておいてあげたほうが、いいこともあるんだよ。おやすみ、ファリン」

 確かに、傷つけられたばかりの女性の傍に、男性がいるのは良くないかもしれない。
 私も元は男だけど……。

 でも、私は珍しく、本当に珍しく怒っていた。
 私は礼拝堂で執務中のカール司祭に詰め寄った。

「司祭様、お話があります!」
「何かな? ファリン、怖い顔をして」
「クノさんのことです!」
「ク、クノがどうしたのかな?」

 明らかに動揺している。少しは罪の意識があるのかしら!

「あんまりじゃありませんか? いつか言おうと思っていたのですけど、カール司祭のクノさんへの仕打ちは酷すぎます」
「君には関係ないことだよ」
「いいえ、大有りです。クノさん、泣いていましたよ。たとえ婚約者だとしても、酷いんじゃありませんか?」
「見てたのか……。僕は別にそういうつもりだったわけじゃ……」
「じゃあ、どういうつもりだったんです!」
「いや、君は何か誤解している」
「何がです!」
「言ったはずだ。君には関係ない」

 明らかに何かを隠そうとする態度。あんな事を女の子にしておきながら。
 そう、あくまで誤魔化そうというんですね!

「カール司祭はいつもクノさんに酷すぎます。まるで一挙手一投足までが気に入らないみたいに」
「そんなことは無いよ」
「いいえ、そうです」
「クノは、甘やかしたら駄目なんだ。自分のことがわかっていない」
「そんなことありません。クノさんはいつもあんなに一生懸命じゃありませんか、そりゃ、カール司祭が思う通りではない事もあるかもしれませんけど、それでも、司祭様ならば、もう少し寛容になられてもいいはずじゃありませんか!」
「君に何がわかるんだ。クノは元男だった。でも今は女の子だ。そのことをちゃんとわかっていないんだ」
「どう違うというんです? クノさんはクノさんでしょう?」
「“人は今ある姿のままにあるべき”だ」
「聖典の引用ですか? でもこう続きますよね? ”本質の在るところに、あるべき姿がある。その姿を見極めよ”と」
「クノは女の子になったんだよ」
「判りません!」
「そして、僕は男になったんだ」
「だから?」
「僕はクノを女性としか見ていない。だけどクノはそれを判っていない」
「それは、司祭様の我侭なんじゃありませんか?」
「そうかもしれない。ただ、僕は僕の思うようにするしかない」
「ご自分が絶対に正しいと、思っていらっしゃるんですね?」
「僕は司祭だからね。皆の手本となる必要がある」
「ならば、神に尽くして、特定の誰かを愛したりなんかせずにいたらどうです?」
「君にそんなことを言われる筋合いはない」
「あなたはクノさんにふさわしくありません!」
「それは僕が決めることだ」
「クノさんには決める権利がないとでも?」
「そんなことは言っていない」

 話にならない、と私は思った。

「そうですか、よく、わかりました」
「待ちたまえ」
「何でしょうか?」
「僕はクノを愛している。それだけは、忘れないでいてもらいたい」
「私の方が、ずっとクノさんを愛しています!」

 言ってしまった! これではライバル宣言みたいではないか。
 しかも私は女だということになっている。同性愛の禁忌を破っているみたいな口調だ。
 私は怒りのままに礼拝堂を後にした。

<つづく>

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