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勇者と魔王の嫁入り修行(その6)

作:DEKOI
挿絵:そら夕日さん

久々の続編ですが、1話はこちら

平面世界リーザスには、「勇者」「英雄」と言われる渾名を名乗る人間は少なからずいる。
そのような人間たちの中には武功を立てて本当の意味で栄誉として渾名を名乗る者もいれば、強盗団にも関わらず武力を持っているという意味で渾名を名乗る者もいる。
しかしある人物の登場により、彼等の渾名は意味を無くす事になった。
世界最大の領土を誇る王国「ベッケンハイム」の第3王子、ウィル=ベッケンハイムが表舞台に出てきた事によって。

勇者ウィルの実家はベッケンハイムの王族が暮らす世界最大級の建物である王城オルドクライドである。
戦争による市民達の被害を抑える為に、敢えてこの城は市街地とは離れた所に建てられた。
城の外壁の色は夜中に溶け込む事を考慮して漆黒の色で統一されている。
この辺りは地方では落雷が多いので、ところ狭しと並び立つ尖塔は幾たびの雷撃に撃たれた事でいびつな形容を醸し出している。
城の正面門およびその付近の外壁には巨大モンスターとの戦闘を考慮して巨大な尖旋角、ようするに「ドリル」が至る所に突き出している。ちなみにこの装備は設置されてから一度も使用された事がない。誰がそんな事を考えたのかと正気を疑いたくなる。
防衛を考えて切り立った崖の淵に作るという斬新な設計場所、だったのだが崖の壁穴の大半はジャイアント・バットの巣穴になっており、夜になると城の上をギャーギャーと叫びながら飛び回る始末。
城の建築を指示した当時の王は趣味として狩猟を好んだたため王城の近くに広大な森があるのだが、何年か前にお抱えの魔術師が誤って召喚した異界の『何か』が森に逃走、それからは夜になるたびに名状し難い叫び声が森の奥から木霊するようになった。

この地方では王城の事を「パンデモニウム」とも呼んでいる。何せ見た目と周りの環境が悪の城そのものなのだからしょうがないとも言えなくは無い。


その伏魔殿、ではない王城におよそ2年半ぶりにウィルは帰城していた。
勇者として世間を大いに沸かせている王子が久しぶりに帰還する事に城中が色めきたったが、ウィルが入城すると今度は大混乱状態になってしまった。
ウィルの噂を聞いていた城の者たちは第3王子様はさぞや立派で凛々しくて逞しい好青年になっていると思っていたからだ。
ところがいざ入城してきた人物はというと、たおやかでつつましげで華奢な美少女だった。
その少女がこの城の王子ウィル=ベッケンハイムの変わり果てた姿だと分かった直後、城の者の大半がパニック状態に陥っていた。

大混乱に陥いらせた入城劇からおよそ1時間後。ウィルは謁見の間にいた。

「おお勇者ウィルよ、死んでしまうとは何事だ。」
「いや、お兄様。僕まだ死んでないですって。」
「うむ分かった、言い直そう。おお勇者ウィルよ、お姫様になってしまうとは何事だ。」
「うっさい、黙れ。」
「・・・どう言えばいいっちゅーねん・・・。」

玉座の前に忠誠を誓う儀礼的な姿勢を取るウィルを、ウィルの実兄でありベッケンハイム皇族の第1王子アルガス=ベッケンハイムは少しだけ高台に設置されている玉座に座りながら見下ろしていた。
ウィルの実の兄だけはあり、アルガスも薄く輝く金髪の持ち主であった。
だが顔つきと体格は何と言うべきか、現在ウィルが女性化をしている事を差っ引いたとしても「兄弟」という言葉を連想させる事は不可能と言ってもよいほど異なる姿をしている。
顔の造形は「岩」と表現したくなるほど荒く深く、目つきは人を襲う事に長けたゴロツキの様であり、顔の下部は何故か黒い濃い髭で覆われていてる。
薄い青色で染め上げられ所々に質素な飾りを散りばめられた上品さを漂わせる礼服を羽織り、背中には紅い色を主とした色で染め上げられた豪奢なマントを着けているのだが、それらの服装の上から見ても分かるほどの、それこそ「オーガ」や「熊」という言葉を思いつかせるガチムチボディの為に、顔つきと相まって滑稽なほど似合っていない。
アルガスの姿形を見た殆どの人は「大国の王子様」ではなく、「山賊の親分」という言葉が脳裏に浮かんでしまうだろう。
しかし彼が世界一の大国の王位継承者第一位の『王子様』だと知ったら、乙女と呼ばれる女性たちの99.98%は厳しすぎる現実の前に卒倒する事だろう。半分はぐれるかも知れない。
しかもこれでまだ25才で、美人な奥様がいて、その間に可愛らしい女の子が3人いる、という現実はもうナイトメアが入念に作った悪夢としか言いようがない。

「ところでお兄様。お父様はどうしたのです?」
「ん?オヤッさんならお前が女になったと聞いた瞬間には卒倒してたぞ?まあ元々身体が弱い人だしな。」
「相変わらずですか・・・。」

ベッケンハイム現国王ヴァーハルト=ベッケンハイム。彼は先代の魔王を倒した勇者として世界中に名を轟かせている男である。
のだが、実は「勇者」という肩書きからとは裏腹に、極度の虚弱体質であったりするのをベッケンハイム国の誰もが知っている事でもある。
何せ先代の魔王ルガイアを倒した時のスピーチの際に、点滴をうちながら人々の前に立ち、最初の一言よりも吐血の方が早かったという紛れもない事実があるのだから。
ヴァーハルトがルガイアを強襲する地点に向かうまでの足取りで吐いた血の量はルガイアが流した血の量を遥かに上回っていた、という噂が誠しなやかに広がっている処からしても、彼の貧弱さを如実に表しいる。
ちなみにヴァーハルトは「こんな勇者は嫌だランキング」の上位に実物例として載っている唯一の人物でもある。

その割には息子を3人と娘を1人、妻との間に授かっているのだが。夜の行為の時は興奮して結構元気らしい。
付け加えるならば、妻のルミリアの中身はともかく見た目は10代前半にしか見えない事を敢えて注釈づけておこう。まあ、そういう訳なのである。

息子の3人のうち2人は「サイクロプスが踏んでも壊れない」とまで言われるほど元気なルミリアに似たのか健康体そのものなのだが、第2王子だけは父親をも上回るほどの虚弱かつ病弱体質であり、あまりにも多くの病気を併発しまくった状態で生きていた所為で、逆に不死と化し始めているという噂が城下では流れている。
問題なのはこれが事実だと言うことなのだが、今回の話には全く関係ないので割愛する。

さて置いて。国王は病気で頻繁に倒れるので王位継承権第一位であり紛れもない『王子様』であるアルガスが内政および外交を携わる事が多い。その為、彼は『王子』にも関わらず玉座に座ることもまた多い。
本人は「まだ国王が生きているのに、玉座に座るなどという大それた事はしたくない」と当初から主張しているが、大臣たちからは外交上の体裁などがあるからとか何とか言われている為、不承不承の状態で玉座で座って来客と面会している。
もっとも「風が吹けば隣国まで吹っ飛ぶ」と揶揄される国王の体格に比べると、大柄でがっしりとした体型であるアルガスが玉座に座る方が威風堂々としていて似合っているのも確かなのだが。
しかし、これに顔を付け加えると威圧とか威嚇とか恫喝とか恐喝とかいった言葉が前面に出てしまうのも確かなのであるのだが。

この日もヴァーハルト国王はぶっ倒れている為、アルガスが面会の間でウィルを迎える事になった訳である。ようやく話が元に戻り始めてきた。
ウィル自身も王位継承権では第四位に入るどころかこの城の王子様であるのだが、彼自身は王子よりも勇者になりたがっていたので、2年と半年ほど前に剣を片手に城を飛び出してしまっている。
それに自分が王族や貴族たちの醜い策略の中で束縛されるのを嫌っていたのも後押ししている。
アルガスもウィルの心情を知っていたので、敢えて王子として迎えいれず勇者として対面をした訳である。

「しかしなぁウィル。」
「何だい兄さん。」
「女性化したって聞いたが何か思った以上に見た目が変わってない気がするんだが。」
「いやぁ、ほら僕って見た目はどちらかと言うとお母様似だったし。自分で言っちゃなんだけど女顔だったし。」
「自分からそれを言うかお前は。」
「それに背も低かったし。元から髪質も柔らかかったし。筋肉つけようとしても見た目にはあまり反映されてなかったし。それに、それに・・・うふふふふっ・・・。」
「あー、もういい。いいから自分でふっといて何だがこの話は無しにしよう、な?」

その割にはえらくざっくばらんな会話になっていたりする。


「さてウィルよ。母上からメールで連絡を受けているが、何だかえらく難儀な事をする事になったな。」
「そうですよ、兄さん。よりにもよって『お婿さん対決』をする事になるなんて・・・。僕、男なのに・・・。」

世情というか自分のこれからの運命というか未来の展望の厳しさに思わず涙ぐむウィル。一体全体、誰がこんなややこしい運命を押し付けてきたのやら。
しかしアルガスは苦笑したりせず、至極真面目な表情でウィルに話しかけた。

「だがある意味、自分の所為でこんな事態になった事を肝に命じておけよ。周りの人達が何度も忠告をしても、お前と魔王は決着がつかない戦闘を延々と続けていたのだからな。」
「うぅ。それを言われると反論ができません・・・。」

この事態のそもそもの原因をつき付けられ、言い返せないウィルは両手の指を絡ませてモジモジとしてみせる。今の「彼女」の姿にはとても合っていて実に愛らしい仕草である。周りにいる大臣達は生暖かく優しい目でウィルを見ていた。
しかしアルガスだけは何とも気まずそうな表情を浮かべていた。いくら美少女になったとはいえ、そんな萌え姿を弟にやられても兄としてはどう反応すればいいのか解らない為である。

「まあとにもかくにも今のお前の姿は不憫すぎる。そして数週間後の茶番gいやいや真剣勝負の準備および特訓は城内でする事、そしてそれらの為に城内の全ての施設および人員を使うこと認めよう。」
「・・・兄さん、いま本音がポロリと出ていませんでした?」
「何を言うか。大切な弟がこんな馬鹿らしい、じゃない深刻な事態になっているのに、兄としてツッコミを、じゃない手助けをしない訳にはいかないだろう。それにこんな事態になったことが世間にばれたら我が一族が笑いもの、じゃない恥さらし、でもない、まあ色々と不都合があるだろうからな。」
「・・・兄さん、ボロボロ本音が出てますよぅ・・・。」

至極真面目な顔で隠すべき本音を思わずつぶやき続けるアルガスをウィルはジト目で睨めつけていた。
その後もあーでもないこーでもないと聞いている大臣達の顔がどんどん暗くなっていく会話が続き、昼過ぎに始まった面会は夕方になりかける時間になってようやく解散となったのであった。

<つづく>

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