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GANTZ 26 figma付初回限定版 に付いた投稿TS小説(4)

作.amahaさん

(4) 死闘

 緊張して球体の前に立つと、2回戦の開始を告げられた。ため息をつく暇もなく情報が与えられる。球体がつけた敵のコートネームはパペッティア(人形遣い)である。前回のケンタッキーよりは強そうだけれど……。
「ちょっと待って。1対5っていうのは不利すぎないか」
表示データには良く似た5体の異星人の姿があった。
『それで1人なのねん』
「さすがに強引すぎるだろう。敵が管理者に鼻薬でもきかせたんじゃないのか」
『評議員ははした金では買収されないよん』
「じゃあなぜ?」
『奴らは元々そういう生体なのねん』
っていうか大金なら買収されるのかよ。しかし球体を責めても始まらない。これはおそらくナビゲート用に作られたAIにすぎないのだから。
「もう少し詳しく」
『たとえばアムちゃんの手には可愛らしい指が5本あるけどそれに対して敵はクレームをつけることはできないのねん』
なるほど敵の手はミトンのように2つに分かれているだけだ。
「でも細い指が戦いに有利とも思えない」
『そうでもないのよん。標準タイプの武器には小さなボタンや引き金を操作しないといけないものが多いから』
「それは確かに」
許された予算が限られているというので、少し前武器を選ぶため球体にカタログを出させて一通り見ていた。敵の詳細が分かってから購入することは許されていない。
 あの手ではこの戦いで使われる携帯火気は素早く使えないはずである。前回使用した銃で楽勝なのか? 俺の視線の先に開いている球体の引き出しには早く手に取れと言わんばかりに銃がきらめいていた。
 しかし……2回戦だというのに簡単過ぎないだろうか。手を伸ばさずにもう少し考えた。ひ弱すぎる地球人は――俺のことだ――肉体改造をされている。女性化したのはスポンサーが欲を出してオプションに金を出したからで、戦いに関してはある程度公平に(あるいは一方的な展開にならぬよう)バランスをとるきまりらしい。
「敵の装備はわからないの?」
『アムちゃんもみたカタログから選んだとしか言えないのねん』
携帯火器が使えないなら近接戦闘を仕掛けてくる可能性が高い。特に1人で5体の肉体を持つならいくつかは捨て駒にできる。
 俺は銃とともに大刀とナイフを選んだ。デザインは地球風に改造してあるが性能は別物で鋼鉄をバターのように切れる。標準武器を地球風の外見にするのは視聴者にアピールするためで実用的にはほとんど意味はない。
 次に着替えようとスーツを手に取ると前回と違い分厚い部分や固い部分がある。
「これは?」
『アムちゃんの柔らかい肉体を保護するためなのねん』
「ふーん」
やはり接近戦は避けられないようだ。俺は操り人形のような外見の異星人の映像を頭に刻み付けた。


 今回も俺のホームでの戦いになる。ただ範囲はやや東にずれたので前回の舞台のコンビニや俺の自宅は戦場から外れた。
 転送されたのは午後10時ころ、場所は学校の近くのスーパー付近、初日に姫野と買い物をした店だ。姫野と2人の平和的な光景と同じ場所でおこなわれる戦闘を比較させる演出でも球体は企んでいるのだろうか。しかし勝利の次にスポンサーの意向を気にせざるを得ないと言っても可能な限り住民を巻き込みたくない。ここは俺の町なのだ。
 俺は近くの川まで移動した。川幅は広く河川敷も充分ある。護岸工事中なので夜間は無人だ。俺は作戦を実行に移した。用意したジャマーを作動させたのだ。これは例の生体反応を映す装置を無効化するものである。だから俺の正確な座標はばれず、この一帯が敵には黒く抜けた画面として表示され、ばらばらの5体をここにひきつけることができる。
 迷彩を作動させ透明化しやや高い場所で待つ。前回より事情がわかっているのでかえって恐怖を強く感じ体の震えが止まらない。
(きた!)
 堤防道路に現れた1体はヨチヨチカクカクと斜面を下りジャマーに近づいていく。見える?……熱光学迷彩を使用していないのか。それどころか夜の闇に少し燐光を発しているようにさえ思えた。
 罠?……襲撃すると姿を消していた残り4体が襲ってくるとか。考えているうちにもう1体が堤防道路に現れた。このまま迷っていても5体がそろってしまうだけだ。威力偵察といくしかあるまい。
 俺は銃を構えなおし引き金を引いた。
 銃と言っても投射されるのは小型ミサイルのような物体だ。速度と有効射程から大きな軌道修正はできないもののホーミング機能を持っていた。前回の戦いで素人の俺が上空の鳥人間を1度の攻撃で倒せたのはそのおかげだし、この武器を選ぶ大きな理由の一つだ。そして遠距離からの攻撃では爆発力の強いタイプを選ぶことができる。
 命中! 派手な閃光とともに敵の体が吹っ飛ぶ。
 近づいているはずの2体目に向き直ろうとした視界の隅に死んだはずの敵が起き上がる姿があった。そしてよちよちとジャマーに歩む。
 かさ張るジャーマーの予備は持っていない。破壊されれば迷彩は無効になり最悪5体を同時に相手することになる。
 射線と発射音で俺の居場所に気付いたらしい2体目は、まだ十分離れていた。
 武器を大刀に持ち替え足音を立てぬように1体目に近づき切り付けた。刃が相手の燐光部分に触れたとき俺の勝利の確信はもろくも崩れ去る。大刀の一撃が防がれた。と言ってもバリアではない。その証拠に刃はゆっくりと敵に迫っている。融けかけた冷凍食品を切っているような感じだ。
 もたついている間に敵はゆっくりと俺の方に向き直った。俺の姿も燐光に包まれているので相手に見えているらしい。そして予想外に素早い手刀の一撃が俺の左わき腹に突き刺さった。咳が出て血の味がするが、気胸は免れたらしい。
 俺は満身の力を大刀込めて押しつづける。あと10cm……。
 2打めは腹部に。スーツのその部分をアーマーのように厚くしてくれた球体に感謝しながら俺は押し続けた。
「ギャァー」
刃が敵に食い込み始めた。気味の悪い悲鳴が河川敷に響き渡る。俺は目を閉じて最後まで押し続けた。
 目を開けると相手はもう動かない。さっと振り向くと2体目はかなり近くまで迫っている。死んだ敵の腰にある見慣れない装置を引き剥がし迷彩の作動を確認してから移動した。
 クレーン車の影に隠れ、スーツAIの診断を聞きながら持ってきた敵の装置を調べてみた。相手の手の構造からすれば当然かもしれないが装置には大きなボタンが1つとレーバーがあるだけだ。オンオフと出力調整なのだろう。延びたコード先のコネクターを自分のスーツのものと比べてみた。一つも合わない。スーツ自体別の規格らしかった。
 止血剤と鎮痛剤の投与を終えたAIの許可が出たので周囲を再確認する。
 2体目はジャマーにかなり近づき3体目は既に堤防道路を越えている。あと2体の姿はなかった。各個撃破を狙う俺にしてみれば願ったりかなったりの状況である……敵はバカなのか。そう思いながら2体目のほうへ移動して行く。
 しかし1回戦を偶然勝った程度の俺でさえ必死で作戦を考えてきたのだ。相手を過小評価するのは危険だろう。まあ過大評価も戦いには禁物とは思うけれど。
 10mほどまで近づいた所で刀を構えなおして一気に間合いを詰める。刀身は十分長いので突きなら相手の手刀の届かない所から攻撃できる。アウトレンジ戦法というわけだ。
 切っ先が燐光に触れると迷彩は無効になり相手は振り返った。手刀は構えたもののそのまま動かない。
 しめた。あきらめたか? あと5cm。そのとき先ほど傷めたわき腹にまた衝撃が加わる。わけが分からないけれど刀は放さず押しつづける。一気に体内を突き抜けた(内部には奇妙な防壁はない)とき左肩にこれまでにない強い痛みが走った。どういうわけかもっと離れていると思っていた3体目がすぐ脇にいる。2体目に突き刺さった大刀を抜いている暇はないのでナイフで応戦した。相手の手刀の動きは力強いがスピードはさほどでもない。まあ歩みに比べればずっと……おかしい。間合いを取ろうと引いたとき3体目は苦労せずについてくる。どうも最初の2体より歩くのが速いようだ。これでは距離をとって迷彩で一度隠れ、怪我の具合を調べるわけにはいかない。おまけに肩の痛みはひどく左腕が上がらないので上手く動けなかった。見る間に俺は追い詰められ敵はリズミカルに突きを繰り出してくる。ワンツー、ワンツー。
 よく見ると敵が腕を伸ばした瞬間に手先が燐光部分から出ていた。とっさに敵の攻撃を腹部で受けナイフで2度なぎ払う。
 背後で水のはねる小さな音がしたとき俺が振り向いたのは、偶然というより戦いの素人の集中力のなさのゆえだろう。3体目に確実に止めをさすのが常道のような気がする。
 後ろには水滴をたらしながら近づいてくる4体目と5体目の姿があった。
 あわててその場を離れて姿を消す。肩の痛みはさらにひどくなりAIは警告を発していた。
 足跡を残さなかったのを確認し、先ほどのクレーン車の影に戻る。AIの指示に従い添え木代わりにスーツの一部を硬化させ左腕を胸で固定すると痛みはずいぶん楽になった。もちろん鎮痛剤も効いているのだろう。しかし薬のせいで少し思考がぼやける。腰のポーチからカフェイン入りの飲料をだし飲んだ。
 敵3体の様子を確認すると大怪我をしたはずの3体目がのろのろとジャマーのほうに歩み、4体目と5体目は周囲を警戒しながら大刀の落ちている先ほどの場所にいた。死体は処分したようだ。
 ジャマーが破壊されればこちらの位置は敵に筒抜けになる。あと……3分くらいかな。3体目の戦闘力はかなり奪ったはずだけどそれでも2対1、しかも動きはこれまでとは比較にならないくらいなめらかだ。残された時間を有効に使おうと武器の確認をしながらこれまでに得た情報を確認することにした。
 大刀は敵の足元に転がっているので手持ちはナイフとミサイル銃だ。弾丸は爆発力の大きいものは残10、普通のものが1カートリッジ(30発)、爆発力のないものが1カートリッジである。最後のものは物陰に隠れた敵をいぶりだすとき使うタイプで貫通力は大きい替わりに殺傷力は小さく急所に当たらねば敵は倒れない。
 敵の2体は無傷、そして肉眼では燐光のように見える力場で覆われておりその中では高速の物体はまるでそこが粘着物質内のように強い抵抗を受ける。だからミサイル弾が爆発しても敵を吹っ飛ばすだけで肉体に損傷を与えることはできない。
 ナイフでゆっくり刺していけば殺せるだろうが、それはあくまで敵が反撃しない場合だ……待てよ。爆発力のない弾なら届くんじゃないだろうか、小さいとは言えミサイルなのだから。そして2体を引離すことができれば。だめか、おそらく肉眼で確認できる程度の弾速になってしまう。
 それにしてもどうして奴は最初から動きの早い2体を参加させなかったのだろう。5対1で2もしくは3体を犠牲にしても良いという作戦で来られたら俺はもう死んでいたに違いない。
 俺は球体が示した奴らの画像を思い出していた。5体のサイズはばらばらである。実際最後の2体も一つはずんぐりとしており、もう一つはスラリと背が高い。いったいどういう生物なのだろう。肉食動物から進化したのは間違いない。狼やライオンのように集団で狩りをしたのだ。もっとも群れではなく1個体なのだが。例えていえば提灯アンコウのようなものかな。そうなら疑似餌に飛びついた俺はもはや奴の口の中にいるわけだ。
 もうあまり時間がない。炸裂弾で奴らをできるだけ引離して一か八か勝負をかけてみよう。追い詰められた今の俺には……。
 まて! 考えろ。敵の作戦の意味がやっと分かった。
 俺は残された時間を観察に費やし、3体目がジャマーを破壊した瞬間にカートリッジを交換しながら弾を打ちつくした。敵本体に届いたかどうかは不明だけれど今ならそれぞれが孤立している。ナイフを抜き全速で意識のある脳を持つはずのずんぐり野郎に駆け寄った。

 ナイフの先がずんぐりした敵の頭部に食い込むまでの数秒は永遠に感じられた。AIが強力な薬をつかったのか繰り返される敵の手刀の打撃の痛みは感じない。勝利を確信した瞬間俺の胸から大刀の刀身が生えてきた。固定してあった左腕も肘の先で切り離され、だらしなくぶら下がる。
 自分の武器で貫かれるとは……
 俺は負けたのか。笑顔の姫野の幻を見ながら俺は意識を失った。

<つづく>

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