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おっ、 おんなの子あつかいするな~っ!!(1)

by.isako

「おんなの子あつかいするな~っ!」
俺の叫びに姉の楓はけらけらと笑う。
「俺は真剣なんだぜ」
「だってぇ、もみじって可愛いすぎるんだもん。ねえママ」
「そうねえ……黄色いリボンでどうかしら」
ああ、母さんは天然すぎる。
「さすがママ」
「母さん、ちょっと待ってよ」
「ウイッグつけますから動かないでね」
小さいころからの習慣で強くいわれると逆らい難い。
「え? あ、うん」
入れ替わって手のあいた姉が憎まれ口をたたく。
「だいたいさあ。今回はもみじが女装したいって言ったんじゃない」
それを言われるとぐうの音も出ない。
「あらあら、まあまあ、姉妹喧嘩は止めましょうね」
突っ込みたいところだけど姉には効果があったらしいので黙っていた。

 俺は正真正銘の男子で昔なら元服も終っている15才だ。名前の紅葉は『もみじ』じゃなくて『こうよう』ってんだ。世間では美少女でとおっている姉と顔が似ているし体毛も薄いので女装すればちょっと見間違えるかもしれないけどね。昔の恥をさらせば小学校の低学年まで母さんが俺に女の服を着せていたので自分でも女の子だと勘違いしていたくらいだ。男だと知ったときのショックは大きかったぜ。考えられないって? 事実なんだからしょうがないだろう。姉もぐるだったのですっかり騙されていたのさ。その後は男らしいスポーツに打ち込んだし中学は俺の過去が知られていない所を選んだ。
 そんな俺がここにいたって女装を希望したのは一つ年上のある女性に一目ぼれしたためなのさ。姉と同じ高校に通うその女性一瀬玲子さんが今日体験入学の女生徒の案内役を務めるんだ。

「これでどう?」
母さんの声に視線を上げると鏡の中に久しぶりに見る女の自分がいた。裏卒業写真を撮ると姉に脅迫されて女装したのが最後だから3年ぶりのご対面である。
「なんだか、もみじのほうが私より可愛くない?」
「きっと性格が素直なせいだぜ」
「なんですと!」
そう言いざま繰り出された姉の足払いを俺はなんなくかわす。有段者の姉に鍛えられ体さばきだけは上達した。
「やめなさい」
俺たちは素直に謝った。我が家では母の言葉は絶対である。そのお人が俺に女装させたがるので問題なのだが……。それにしても女すぎないかな。
「もっと簡単な変装でもばれないんじゃないかな」
「そうねえ」
と母さんは思案顔。これは脈ありかも。
「だめだめ」
「なんでだよ、姉さん」
「小学生のころと違って骨格、特に骨盤に差ができているから歩き方なんかでばれ易いのよ。だから全く疑いをもたれないくらい変装しないとね」
「楓の言う通りね」
姉の一言で俺はとてつもなく目立つ外見で体験入学に参加することになった。

 当日、体験入学に付き合うという姉の申し出を丁寧に断って俺は1人で家を出た。母は説明会からの参加なので少し後になる。
 視線を集めている気がした。きっと久しぶりの女装なので緊張しているからだろう。まあ多少は服装の影響もある。フリル一杯の青いドレスは一歩間違えばゴスロリと間違われそうだ。
 そうそう男しか経験したことのない諸君には俺の行動が理解できないかもしれない。ああ、もちろん意中の人と会える機会を早く作りたいのは確かだ。けれど理由はそれだけじゃない。男として会うのと女として会うのではずいぶん違うのも確かなのさ。憧れの人の本質を知りたいんだ。
 女と思い込んで女性の中で育ち、その後も姉の腕力に抵抗できるようになるまで数限りなく女装して女と接したきたために女性不審なのだろう。天使のごとき少女も一皮むけば悪魔……そんな例は枚挙にいとまがない。

 最後の角を曲がり校門まで300mほどのところで俺の足は止まった。軽薄そうな男が視線を彷徨わせている。嫌だと思っていると話しかけられるのは世の常なのだろうか。
「そこの可愛らしいお嬢さん。甘井学園ってこの辺りかな」
俺は黙って校門を指差した。
「あちゃー、俺の目は節穴かっての。ところで君も体験入学? 可愛い娘がいたらこの学校に決めようと」
黙って通り過ぎようとした。それほど時間に余裕があるわけでもない。
「冷たいなー。名前は? 俺はアズマジン。雷でアズマ、神さまでジンさ」

200902_a2.jpg
イラスト:春乃 月

「失礼します」
「後でお茶しない?」
昭和生まれには見えないけど……俺があきれて視線を向けると敵は脈ありと見たのか一歩前に踏み出してきた。
「男に興味はありません」
男は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で叫んだ。
「女ならいいのか? あ、なんだそうか!」
そう言いながら立ちすくんでる男を残し俺はその場を足早に立ち去った。変人にこれ以上付き合う暇はない。

 校門のところで振り向いてみると男はいなかった。口からでまかせだったのだろうか……まあ、そんな感じの奴だった。男同士でも友達になれそうもない。

 校門の向こうにはあの人がいた。敷きつめられたイチョウの葉の上に立つ一瀬玲子さんが、俺にはまるで黄金の雲の上の天女に見える。
 体験入学は在校生による学校案内で始まり、昼食後父母もまじえた説明会そして体験授業と続く。
 学校案内にはいくつかのコースがあり、あの人はマイナーな体育系の課外活動を中心としたコースの担当だった。学園では有名な存在の彼女が選ぶにしては地味なことに俺の依頼で調べた楓が驚いていた。
 受付に母さんから渡された封筒をおいて真直ぐにあの人のもとへ。多少ふらふらしたのは迷ったわけではなく緊張のせいだぞ。
「よ、よろしくお願いします」
「あら。えーっと」
そのとき受付をしていた女生徒が数枚のカードをあの人に渡した。
「もみじちゃんね」
「よ、よろしくお願いします」
まあ、もみじは呼ばれなれた名だからしかたないだろう。
「さてと。もう時間だから案内を始めましょうね」
 周りを見ると男が8名、女は俺を入れて3名だ。希望者が少なかったためもあり男子も合流していた。私立甘井学園の高等部は結構ユニークな存在である。偏差値も高く進学率も高いが、いわゆる一芸入試も採用しておりスポーツなどで秀でた生徒は優先してとっていた。彼らは少なくとも国内ではトップレベルであり、中には国際舞台で活躍するプロまでいる。姉の楓は柔道で入ったのだが、実は学業も優秀であった。
 楓いわく、
『社会とか暗記しなおすの面倒じゃん』
 俺? えーっと今日モチベーションを得られたら猛勉強開始ってところかな。

「もみじちゃん」
「へ?」
「横に来て」
「はい」
 後ろで遅れがちな俺を側に呼んでくれたのを素直に喜べない自分が恨めしい。
 なぜかって? 彼女目当てで集まった男子のうちの幾人かが俺の方にねっとりとした視線を投げかけていたのさ。母いわく、女装した俺は胸のない姉と比べて遜色ない美少女だそうだ。むろん賢明な母は楓のいないところでささやいたのだが。
 認めるのは悔しいけれど、男から見ると姉は一瀬さんとはまた違った魅力がある。もちろんその実体を知らない場合に限るけどね。
 そして女はそのあたりには敏感だ。一瀬さんはライバルを排除するのだろうか。
 それならそれでかまわない。勉強せずに済むってものだ……。
「大丈夫かしら」
一瀬さんの囁きは良い匂いと共にくる。
「なにがですか、先輩」
「玲子って呼んでも良くってよ」
「玲子先輩、なにが大丈夫なんですか?」
「なんだか心ここにあらずって顔だったから」
「そ、そんなぁ。私は真剣です」
「男どもの視線が気になるのかな? 他の10名は私目当てで集まったようだし」
「どうして?」
俺の顔は真赤だったに違いない。何しろ俺も一瀬さんが目当てなのだから。
「あら、他の10名はスポーツの経験なんてなさそうだもの」
そう言いながら一瀬さんが肩の筋肉をつかんだので俺は硬直した。
「たくましいわね」
「そんな」
「あら女の子に失礼なことをいったかな」
ここで一瀬さんは声を大きくした。
「集まったのが奇数なので私がもみじちゃんと組みます。皆さんも男女それぞれ横の人と組んでね。ではまず正式にクラブと認められている所からまわります」

<つづく>

コメント

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isakoさん、嬉しいメッセージをありがとうございます☆
お体に気を付けながら頑張って下さいね(^^*

感謝

 あむぁいさん、春乃月さん、素敵なイラストありがとうございました。
 もっとイラスト描いてもらえるようにがんばります。
 一気に2章を書き上げるぞ!

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第1章の始まりは(1)の上に。題名も。

 翌日からはもう授業が始まる。私たち3人は偶然みな4組だった。1年生は7クラス、AとBは内部生の6年制、1から4組が高校を受験した外部生で一部の一芸入試組を含んでいる。そして5組は高レベルの一芸入試組でなかにはスポーツのプロも含まれていた。ただ人数も少なく毎日授業を受けにくるわけでもない。生徒たちは通信教育クラスとかプロ組、あるいは星組と呼んでいる。

 教室に入ると黒板に五十音順に席の配置が書いてあった。ココロは機嫌が悪い。ソラと俺は、風魔(かざま)と神名で前後の席なのに彼女はイカズチだから窓際の2番目の席なのだ。すぐに席変えがあるはずとココロを慰めていると前の席の人が登校して来たので場所を空けた。
「おはよう神名さん」
「あ」
体験入学のとき一緒に昼食を食べた娘だ。俺に見覚えがあると言っていたっけ。そういわれて改めて見るとどこかで会ったような気もする。
「おはよう。どうして名前を」
「さっから校門のところで配っているわ」
彼女がとり出したのは俺が一面にでかでかと出ている学園新聞だ。ぎりぎりのところで通り抜けたらしい。しばらく注目を浴びそうだ。
「あなたのお名前は」
「青木、青木晶(しょう)」
4人でまわったクラブの話をしているうちに予鈴が鳴り担任が入ってきた。
 堀田という男性教師は20代らしいく元気な声で出席を取り始めた。
「青木ショウそれとも……アキラかな?」
俺は思わず叫んでいた。
「アキラ君!」
相手も思い出したらしい。
「そうだ、もみじちゃんだ!」
青木晶が小さいころ男の子として育てられていたのをこの時はじめて知った。

 そして翌日、学園新聞の号外が出た。
『神名紅葉、初恋の人と再会! 運命の彼氏は女の子?』

(第1章 終わり)

 俺は狐につままれたような顔をしていたに違いない。甘井学園には今年も夏の甲子園へいけそうな野球部がすでにあった。
「女子野球部ということでしょうか」
「女子野球の大会参加も視野に入れているけど目標は男子チームの撃破ね」
「硬式でですか」
「もちろん。もみじちゃんは不可能と思うの?」
「相手によりけりでしょう」
「うん。一応ね男子チームとやる時はこちらも2名まで男子を先発させていいようにと交渉するつもりよ」
「バッテリーですか」
「詳しいわねえ。もちろん女子だけで戦いたいけど勝つのが目的だからね」
「交渉というと公式戦では」
「とりあえず公式戦は女子の大会のみで、男子との戦いは練習試合ってところが妥当じゃないかしら。それで参加してくれるかな?」
「野球の経験はありませんけど」
「そりゃそうでしょう。まだまだ野球をやっている女子は少ないからね。あなたが入ってくれれば後ろの2人も来てくれそうだし、それに何より神名楓も参加してくれるから強力よ」
「姉が?」
俺が一瀬さんに近づけるようにしてくれたのだろうか。
「ひどいのよ。親友の頼みを聞いてくれずに妹が入るならなんて言うんだから」
「親友」
結局俺の猛烈な受験勉強と女装は必要なかったってことか。さっさと紹介してもらえば……。いやいや俺はそれを望まなかっただろう。
「あら聞いてないの。私と神名は中1からずっと同じクラスなの」
「姉は柔道の特待生で入りなおしたんではないのですか」
6年コースにも形ばかりの進級テストがある。楓はそれを拒否した。
「形はそうだけど学校側も事情は知ってるから。あの神名だもの」
「はあ」
日本柔道会界の希望を踏みにじる女ということだろうか。確かに国際試合拒否は単なるわがままだ。でも出場するかどうかは個人の自由だろう。
「それに比べて妹さんの可愛いこと」
「そんなー」
2人きりの世界は2つの咳払いで打ち破られた。ソラとココロの質問を受け一瀬さんは簡単に状況を説明してくれた。
「あなた方3人と……入ってくれるのよね」
俺も2人もうなずく。
「うん! これで神名(可愛くない方のね)を入れて12名になるから今日クラブとして成立するわ。生徒会の手続きは終えてるし学校側の許可ももらってある。もちろん予算も確保済みよ。用具は今からそろえるから来週早々には練習開始ね。さてこの書類に署名してくれるかな。もみじちゃんの姉さんにも書いてもらって学校側に提出したいから」

 一瀬さんが書類を持って部屋を出て行ったあとあずかった鍵で部屋を閉めて事務室へ向かう。もちろん2人も一緒だ。渡り廊下まで戻ったところで突然ココロが話しかけてきた。
「あのさあ」
「何かしら」
「野球ってなんだ?」

紅葉どんな外見なんだろう。オラわくわくしてきたぞ! の巻

 その後1時間ほどして道場を出た時には、すっかり疲れきってしまった。楓の発言で気を良くした北沢キャプテンのマンツーマン指導が原因だ。男としては待ってましたと言うべきなんだろう。2才年上のお姉さまが、しかも楓とは全く別の生物のような体のつくり(例えば胸とかバストとか乳……あ、なんでもない)のお方がこちらを女と信じて組み手をしてくださるのだから。しかし実際は男と見破られては大変と生きた心地もせず、楽しむどころではなかった。『私もよくよく運のない男だ』
 それに比べて同行の2人に疲れた様子はない。おまけになんだか楽しそうだ。
「2人とも元気そうだから興味があるクラブがあるならまわってみる?」
「もみじが行きたいところでいいわよ」
「私も」
「そうねー」
中学時代所属していたバスケや郊外のスクールに通っているテニスは行って見たい気もする。しかし見たいのは男子の部活であり、この姿では入部してもマネジだ。うーん、ぞっとしないぜ。かといって女子のクラブへ行けば柔道部の二の舞になる。それに対外試合は嫌などという勝手な条件は飲んでもらえそうになかった。
 それなら気になることを片づけよう。
「私、先に生徒会室に顔を出してくる」
「付き合うわよ、もみじ」
「え?」
「私も」
「あ、ありがとう」
2人が一瀬さんを見る目が険しかったのでできれば1人でと思ったのだけど無理らしい。2人は神名もみじに好意をもってくれていた。女同士なら親友になれたかも知れない。でも俺は男、彼女たちを裏切っている存在だ。だからどうも強く出れない。
 生徒会室は主に文科系の部室がある旧校舎の1階にある。渡り廊下を歩いていると後ろから駆け寄る足音とともに声をかけられた。
「早かったのね」
一瀬さんだ。
「柔道部に時間がかかったので他へまわる前にと思って」
「ありがとう。お友だちも?」
1人の方がよければという暇もない。
「嬉しいわ。部室にどうぞ」
「部室? ですか」
一瀬さんは生徒会室の前を通り過ぎて階段に向かっている。
「ええ。生徒会室は待ち合わせ場所よ。校内マップにも記載されていないから」
一瀬さんのクラブ活動で文科系の空き部屋を使っているとすればスキースノーボードだろう。シーズンオフにもオフトレなどで活動するなら会う機会を増やすチャンスだ。どうせ冬にはいないんだし。
「興味があります。アルペンの板で滑ってみたいなあ」
「なんのこと?」
突然一瀬さんが立ち止まり振り向いたので軽くぶつかってしまう。
「す、すみません」
顔が真赤になったのが自分でもわかる。
「そんなに緊張しなくても」
「あ、あ、あのー、てっきりスノーボードの勧誘かと」
「入ってくれるの? 嬉しいなあ」
「はい!」
「もみじが入るなら私も……たぶん2名追加ね」
「ええ」
「うんうん、冬も楽しくなりそうね。さて」
一瀬さんは鍵をあけドアをさっと開いた。
「1年生諸君、新野球部へようこそ」

 面白がってよってきた楓の合図で喜劇が始まった。といっても北沢さんは真剣だし、そんな相手を見ればこちらもふざけてはいられない。第一気を抜けば怪我をする可能性だってあった。
 始まってすぐにわかったのは楓の強さだった。北沢さんが高校柔道界で立派な結果を出したのは俺も知っている。驚いたことにその動きが余裕で見切れた。
 得意技といえば逃げるしかないこちらとしては延々と組み手争いを続けるのが唯一の作戦だ。それでも少しすると2分間しのげそうなことがわかる。もちろん相手にも。
 いっそう激しくなった攻めを余裕をもっていなしながら時計を気にしたとき手が北沢さんの胸に触てしまった。無意識につるぺったんの楓相手のつもりで体が動いたのだろう。
 うっ、ノーブラ?
 一瞬の隙を見逃さず北沢さんは俺を引き付け左足を送る。それをぎりぎりですかしたところで時間切れになった。
「それまで!」
「すごいわ、もみじちゃん」
すかされてバランスを崩した北沢さんを支えたので抱き合った形のままだ。男であることがばれそうな気がして慌てて離れた。
「偶然ですよ」
「私の内股の切れは悪くなかったもの。恐るべき素人だわ。柔道始めるべきよ」
「それはちょっと」
側に来た楓に助けを求める視線を向けたのだが、簡単に裏切りやがった。
「入部してくれないと困るわ」
「姉さん」
「あなたの友だち2人は、とても有望なんだけど、一緒じゃないと入らないって言うんだもの」
俺は慌てて楓の手を引いて道場の隅に連れて行った。女子柔道部員の期待に満ちた視線が痛い。
「まずいよ、姉さん」
「なにがよ」
この人はまた俺が男なのを忘れたのだろうか。
「女装だけでも問題なのに、女子として柔道をするわけにはいかないよ」
「あら私は男子とも乱取りするわよ。良い男なら」
「でも試合はさあ」
「うーん。確かに神名楓の妹が男だとばれるとまずいわねえ」
この際表現の微妙な歪みにこだわっている場合じゃない。
「だから無理だって」
「私に任せて」
「そりゃ姉さんに頼むしかないさ」
楓は俺を押しながら皆の下へ戻り予想外の話を始めた。
「妹の紅葉は北沢キャプテンの指導で柔道が好きになったようですが」
「え゛?」
「あら、うれしい」
「スポーツの上のこととは言え争いは嫌だとぬかすので対外試合免除ということで入部を許可していただければ」
「私は認めるわ。だってあなたの良い練習相手が務まるでしょうから」
そういう北沢さんの発言に楓はにんまり笑いながら俺の方を見た。
「計ったな」
姉の耳元でこうささやいたのが俺の唯一の抵抗だった。

 付属するコーチ用の個室で着替えて道場に入った。隅にいたココロは元気に手を振りソラは小さな笑みで迎えてくれる。手を軽く上げて2人の側に座る。
 この建物は1階にロッカールームやトレーニングルームがあり、2階が大道場そして3階は、普段は閉鎖されているが、観覧席になっていた。だから離れてはいるけれど男子の様子も見える。中条は道着に着替えており冷やかしではなさそうだ。
 大きな咳払いが聞こえたので慌てて楓の方に注目する。
 キャプテンの3年生の説明によると夏以降は8名の2年生が主体になるということだ。3年生は強豪ぞろいでレギュラーに食い込んだのは楓だけだったはずだから今年は厳しいだろう。先輩たちの自己紹介に続き俺たちも挨拶することになった。
 少し離れていたココロからすることになる。変なことを言わねばいいが。
「一年生のイカズチココロです。残念ながら柔道のことはよく知らないので今日の見学を楽しみにしています」
次は俺。
「神名楓の妹の紅葉です。姉が普段練習している道場を見たくて見学に来ました。私も柔道の経験はありません。よろしくお願いします」
先輩たちは一応拍手してくれたが、がっかりした様子は隠せない。スポーツがいかにもできそうなココロや楓の妹に柔道の経験がなく見学だけと言い切ったのが残念なのだろう。無論1人だけ例外がいた。楓である。しかし本当にソラに才能があるのか。
「カザマソラです。もみじと一緒にいるのが希望です」
おいおい。
 ただ1人めげない楓はさっさと手順を決め練習を始めた。柔道自体は俺には珍しい物ではないので2人の連れの様子をうかがう。驚いたことに2人は熱心に見ていた。
「2人とも好きなの?」
「そりゃまあ」
「ええ」
「意外」
「もみじを好きじゃへんなのか」
「そうなの?」
「いえいえ。柔道よ」
「はじめて見るけどこう言うのは嫌いじゃない」
「お姉さん、強い」
「お……ぃ妹が言うのも変だけど姉は天才よ。あのさ、神名楓って聞いたことないの?」
2人は知らないという。昨年の活躍で楓は再び全国的に注目を受けてマスコミにもよく名前が出ていた。まあ誰もがスポーツに興味あるわけではないからなあ。
 
 しばらくしてアップの終った楓がソラを誘いに来た。さっそく指導する気らしい。なぜか対抗意識を燃やし始めたココロも立ち上がった。見ていると2人は動きがいい。楓が感心しているのが遠目でも良くわかった。
 観客に徹して過ごそうとする俺のところへキャプテンがやってきた。中重量級の北沢さんは身長が俺と大して変わりないので肥満型ではなく、脂肪は胸と尻に限局していた。おまけに美人である。一瀬さんを知らなかったら心が動いたかもしれない。俺って年上が好きなのかな。
「もみじちゃんはやらないの?」
「えーっと」
「見学の方には先輩を思う存分投げ飛ばせるっていう特典があるのよ」
「遠慮しておきます」
「じゃあ私のほうから相手をお願いするわ」
「なぜですか私は素人なのに」
「あなたのお姉さんがこう言ったのよ。5分以内に一本取る自信がない相手が世界中に1人だけいるって」
「それが」
「あなたなの」
もう! 楓のやついらぬことを。

 自分が男であると言う驚愕の事実を知った後、強くて優しくいつも守ってくれた姉は姿を消し、意地悪で女装を強いるドSの姉が俺の目の前に立ちはだかった。まあ楓が言うには可愛い妹が消え、汗臭い小僧が現れたそうだからお互い様なのかもしれない。
 姉との喧嘩に負ければ女装させられるのは必至である。俺は戦い続け中学生のころにはどうにか逃げおおせるようになっていた。勝てないのかって? それは無理だと思う。姉は天才だ。俺が一度でも勝てばさらにその上の強さを身につけるのは目に見えている。俺はかわし逃げ続けるだけだった。

 北沢さんに手を引かれ止む無く立ち上がる。
「柔道の経験はないの?」
「ええ、正式に指導を受けたことはありません。でも」
「でも?」
「たぶん受身は大丈夫だと思います」
北沢さんは振り向いて楓に声をかけた。
「神名さん、もみじちゃんのこと私が投げても大丈夫かなあ」
「平気ですよ、きっと。思い切りやっちゃってください」
「了解」
「え~」
冗談じゃないぞ。いくら楓からは逃げおおせるといっても、これまで他人とやったことはなかった。通用するのかどうかも全くわからない。
「心配しないで」
「そう言われても」
「2分間逃げ切ったらもみじちゃんの勝ちよ」
そっちかよ。

 午前中の行事が終った所で食事にした。もちろん2人も一緒だ。俺はそれなりに2人を気に入っていた。確かにちょっと……かなり変な電波系ではある。しかしそれを言い出したら女装の俺は変態系だろう。
 少し出遅れたので人気のカフェテリアは満員だ。だから購買でパンを買って噴水のある中庭にでた。巨大な胃袋をもつ高校生のためにここの購買は下手なコンビにより売り場面積が大きく中学のときのパン争奪戦が嘘のようだ。
「もみじ、噴水の側で食べよう」
「暑そうじゃない?」
「きっと涼しい風が。ねえソラ?」
「ええ」
春の日差しは風がないと汗ばむほどだったが、近くのベンチに座ると2人の言う通り涼しい風が吹き心地よい。2人はここでも俺を挟んで座った。一瀬さん一直線でなければ心ときめくような美少女2人が近くに寄ってきてくれるのは嬉しいのだけど張り合う2人に均等に視線を配るのは難しい。特に口数の少ないソラは体を密着させたり触ってくるので冷静さを保つのに苦労する。
 別にソラが異状というわけではない。第一俺は女と思われているはずだし、女同士のコミュニケーションでは手をつないだり触りあうのはよく見られる現象だ。ただ日本人の習慣とは馴染まない所もあるので全員が必ず行うわけではなかった。
 サンドウィッチ2個とカフェオレ、物足りないけど女子学生としてはこれ以上は食べづらい。帰宅してからたくさん食べればいいさ。
 ヨーグルトを食べながら2人の個人事情を聞き出そうと務めた。なんだか暖簾に腕押しでもやもやしたところが多い。ただ2人とも自宅が遠いので学生マンションを借りているのは確かだ。
「1人暮らしに興味あるなら、週末になら遊びに来てもらってもいいよ。今はまだ片付いてないから」
「私も」
「ありがとう2人とも。でも週末はたぶん予定で埋まるから。ちょっと姉さんと約束がね」
「そう」
「いつでもいいよ、また言って」
見上げると秋のように空が高い。そういえば昼からは降水確率100%って言ってたのに……。まあ予定じゃなく予報だからね
 2人も食べ終わっていたのでトイレに誘い、少し髪をなおしてから柔道場へ向かった。

 楓は道場の玄関で待っていた。男子はぼつぼつ集まっているが、女子は俺たち3人だけのようだ。いくら一瀬さんが気軽に参加できると言っても、団体でインターハイ、金鷲旗、全国高等学校柔道選手権の三大大会を制し、皇后杯で優勝する者がいるんじゃ敷居が高い。かといって強ければ良いというわけにもいかない。潤沢な予算が欲しければ、学園の方針通り競技自体を楽しむレベルの部員も必要である。おまけに国際大会を拒否して柔道連盟の覚えの悪い姉のいるこの学園に優秀な経験者は集まらなかった。
「あらもう1人もお友だち?」
楓は嬉しそうだ。
「もみじの友人の雷神(ライジン)です」
「ええ?」
「ちょっとココロ」
「雷神と書いてイカズチ・ココロって言います。よろしくお願いします、お姉さま」
「カザマソラです。よろしく」
2人が楓に挨拶している間、何となく男子部員の方を見ていた俺は凍りついた。別に視線を集めているからではない。入学式であれほど目立てばそのくらいは止むを得ない。驚いたのは中学時代のクラスメートがいたせいだ。
 女装の過去を隠すため中学は学区から少し離れた私立に通っていた。俺がそのまま高等部に行かなかったのは一瀬さんのことがあったためで、たいていはそのまま進学する。中条健史がここに進学するとはとても意外だった。
 数秒後中条の視線が他の3人の方に逸れ恐怖の瞬間は過ぎ去った。ばれなかったらしい。
「大丈夫?」
気がつくとソラが心配げに見ている。
「え?」
「顔色」
「心配ないわ」
ソラの優しさに感激するまもなく楓が割り込んできた。
「ちょっともみじ、説明聞いてた?」
「え」
「ほらあなたも、道着とアンダーそれにスパッツよ」
見ると2人とも同じものを持っていた。
「姉さん、壁際で見学だけならこのままでも」
「だめだめ、道場は神聖なんだから。着替えていらっしゃい」
「ちょっと姉さん」
俺は慌てて楓を脇に引き寄せた。
「え? ごめん妹が話ししたいらしいから、ちょっとそこの2人をロッカールームまで案内してやって」
「いいわよ」
楓と親しいらしい部員がソラとココロを案内して行った。
「で、なんなのよ紅葉。今さら逃げようって言うの。あんたがいなくなったらあの2人も間違いなく消えそうじゃない」
「もう小学生じゃないんだから、一緒に着替えはまずいよ」
「あ!」
「『あ』って?」
「あなたが男なの忘れてた」

Re)2009-07-14 | あむぁい

 ありがとうございました。楽しみにしています。

春乃月さんにイラストお願いしました。
今月中の納品が目標です。

(2)

 入学式は土曜日にあり週明けの月曜日は新入生歓迎会に当てられていた。明日からは平常どおりの授業である。
 楓は柔道部の準備のため早く家をでたので1人での登校だ。嬉しそうな顔の母さんに見送られて家を出た。甘井学園の生徒の大多数は鉄道かバスあるいは両方を使って通学する。俺の家は偶然近いので徒歩で充分、いや20分くらいだ。えー、これはだじゃれだ。
 この年になってまた女装するとは思わなかったけど7月までの我慢だ。9月からは隣の市の高校に編入すれば良い。もちろんそれまでに一瀬さん情報をしっかり集めなければ。
 そのとき突然強い風が吹いたので慌ててスカートとウィッグを抑えた。鬘を使うのは女性らしく見せるため髪のボリュームを増やすためである。もともと長さは肩くらいまではあった。
 スカートの裾を治していると挨拶された。ココロとソラの2人である。
「おはよう2人とも」
 
 そうそう、そういえばココロと同じ字を書くジンという男はココロの従弟だそうだ。そしてジンとソラは許婚(いいなずけ)同士。ただし嫌でも無理やり結婚させられるというほどきつい縛りではないと説明された。
 2人とも何かの家元の家系なのだろうか。考えてみればいわくありげな姓と名だった。平凡な俺の周りでは、これまでそんな話を聞いたことがない。もっとも幼児期を自他共に(母さんと楓は別にして)女と信じきって育った男を世間では平凡と言わないかな。
 特に話題があるわけではないけど、俺は話し始めた。なぜかって? 女っていうのは、そういうものだからだ。だてに9年間少女時代をすごしたわけではない。
「ここで会ったということは2人とも我が家のご近所様?」
駅は学校の反対側だし、バス停はもっと校門の近くにある。だから至極当たり前の推論だ。
 俺の質問にソラは小首をかしげ、ココロはにやにや笑いを浮かべた。何事にも例外はある。男の俺よりも口が重い女も居ないわけではない。
 反応が鈍いので他の話題に移る。男なら論理的矛盾がある点をついて会話を続けても良いところだが、女の会話はそういう具合には進まない。
「そういえばココロにも許婚はいるの?」
「まあね」と答えたココロの視線はソラに向けられている。
「すてきな人なの?」
「どうかなあ」
2人の視線が絡み火花がちり冷たい風が吹きぬける――ような気がした。この話題もだめ……。ひょっとしてココロの許婚をソラが好きなのか。さてと、偽女脳では話題を見つけるのが難しいぞ。そうだ! なんとかソラの興味を楓の柔道部に引き付けることができないかなあ。
「でさあ、今日の歓迎会だけど2人は見学するクラブとか決めてるの?」
 歓迎会は午前中体育館に全員を集めて行われ、午後からは自由行動が許される。
 俺はソラに向かって言ったのでココロは興味はあるらしいが黙っている。
「もみじは?」
「私は――2年生に姉がいて楓と言うんだけど柔道部所属なの――最初に見に行くつもりなんだ」
「では私も」
案ずるよりなんとやら。ソラは意外に簡単に同意した。
「2人だけはずるいな。私も行って良いの?」
「え? ええ、もちろん」
妙に張り合う2人が一緒なのは少し気になるけれど楓なら何とかするだろう。

 歓迎会は生徒の自主運営だ。それなりに出し物が工夫されており見ていても楽しかった。文科系クラブは実演が多くミニ文化祭のようである。
 会の中ほどで学園のクラブや同好会の特徴の説明があった。壇上にたったのは生徒会副会長をしている憧れの一瀬さんだ。男子の席からため息が上がる。下がれ下郎! あのお方は俺のものだ。
 見ていて一つ気になることがあった。3年生の現会長が後ろにいて彼女を前面に押し出している。ということは、9月に行われるはずの次期会長選に推薦しているに等しい。ひょっとして恋のライバルなのか。今のままでは圧倒的に不利だぞ。
 ああ、いけない一瀬さんの話を聞かなきゃ。
「以上のように運動クラブには高いレベルのものが多く、それに応じて赫々(かくかく)たる成果をあげています。でも当学園の課外活動の特色はクラブが一部のスポーツエリートのためだけにあるのではなく、誰でも参加できるようになっているところにあります。こう言ってしまうと私がまるで学園側の回し者のようですが」
後ろの方の席で見学していた教師たちから笑い声が上がる。楓に聞いたところによると現会長と一瀬さんは教師と激しくやり合って生徒会の自主管理の範囲を大きく進展させていた。
「後ろの大きなお友だち、ご静粛に。確かに経験のない方が強豪クラブに入ってもレギュラーの席を取れないかもしれません。でもこう考えてはいかがでしょう。全国レベルの選手と練習できると。各クラブとも練習試合を多く取るように工夫しており……。ああ、その前に複数のクラブに所属するように勧めていることをお話しておくべきでしょうね。ですからどのクラブも練習試合には充分な人数を集めることができるのです。たとえば私も陸上部のハイジャン、テニス、それと冬にはスノボのダウンヒルの練習をしているんですよ。もちろん高校に入ってから始めたものばかりです。それから文科系……」
そのとき両脇の2人が俺の方をじっと見詰めているのに気付いた。
「なにかな?」
「あの人?」
清んだソラの瞳は台風の目のようだ。
「もみじ、副会長さんと知り合い?」
ココロの目はスパークしたように輝いている。
「どうしてそんなことを」
返事が返ってきやすそうなココロに問いかけた。
「だって、もみじの様子がさ」
ばれてもしかたないかな。何しろ憧れの人なんだから。
「あのね、2人は来なかったみたいだけど去年の体験入学のとき案内してくれたのが一瀬さんなの。でも私は大勢の中の1人だったからもう覚えてくれていないと思うな」
 そのとき盛大な拍手を受けながら壇から降りて通路を歩いてきた一瀬さんが真横で足を止めた。
「そうだ、もみじちゃん」
「れ、玲子先輩?」
「クラブの見学が終ったら生徒会室に顔を出してね」
「は、はい」
「もみじ?」
「もみじ!」
「なはは。覚えてくれていたみたい」

風神さんもかります。でもクールで無口なキャラじゃなかったらどうしようの巻

 しばらく待ったけどココロは戻らない。そのうち母さんとカメラマン楓が到着した。母さんのオーラは既に父親たちの視線を釘付けにしている。各ご家庭に今宵は不穏な空気が流れるのは間違いない。まあ母さんは決して狙っているわけではないのだが。
「ソラちゃん、ご両親は?」
「いない」
「ごめんなさい」
「いい。それよりあなたは雷神にもそう呼びかけるのか」
「ココロに?」
「同じ扱いを所望する」
所望って……帰国子女かなあ。
「じゃあ、ソラ」
「どう応えればいい」
やれやれ。
「あなたも私の名前を呼び捨てでいいのよ」
「もみじ」
そう言いながら少し頬を赤らめたソラは可愛かった。あれ、自己紹介したっけ?

 ソラと式会場になっている体育館に向かおうとすると楓に袖を引かれた。さっきからもう数十枚撮影したのにまだ注文があるのか、それとも何かお気に召さないのかな。楓は少し離れた木陰まで移動した。
「ちょっとちょっと」
「なになに?」
楓は腕を首にまわしてきた。虫の居所が悪くて送襟絞でもかけてくるのかと思ったが、真面目な話である。
「あんたの新しい友達」
「ソラのこと?」
「そのソラちゃんを柔道部に勧誘したいんだけど」
「えぇー」
思わず振り向くとソラはぼーっと空を見ている。別に洒落じゃないぞ。
「あれは逸材だ!」
「でもぉ」
他の人たちが体育館に向かったため1人取り残されて立っているソラは、細くて折れそうな外見よりもっと軽量に感じられた。
「あの娘の動きに隙がないのがわからないの?」
「俺は姉さんのような格闘家じゃない」
「言葉遣い!」
「良いだろう、内緒話くらい」
「だめだめ。昔から言ってるでしょう。誰かに聞かれるおそれはないにしても行動が粗暴になるの」
「わかったよ。でもソラが柔道経験者とは思えないわ」
「少し練習すれば高校レベルなら無敵よ」
「うーん」
楓の言うことが嘘とは思えない。何しろ中学のとき猪熊滋悟郎杯の無差別級で優勝したこともある超一流なのだ。なぜ柔道連盟の要請を蹴って国際大会に出ないかは俺だけが知っている秘密である。いや正確には一度だけ出たことがあった。
「協力してくれればあんたの一瀬玲子攻略に全力を尽くすと誓うわ」
「その話乗った」
「言葉!」
「もみじにおまかせよ」

 ユニークな方針をとる甘井学園でも入学式はあまり変わらない。学長や来賓の退屈な挨拶が続いて眠くなってしまう。
 うとうとしかけると右側から突っつかれた。ソラは左に腰かけており右は空席だったはずだ。
「ココロ!」
「やあ、もみじ」
「あなた」
と言いかけて俺はあわてて左を見た。ソラとココロは互いに知り合いだろうし、ココロが隠れた所を見ると何か因縁があるのかもしれない。式の最中に騒ぎを起こされては大変である。姿は見てないけれど楓によれば一瀬さんが在校生の一部を指揮して式の裏方をしているのだ。
 ソラと視線が合う。
「なに?」
「ココロ、きたよ」
「そう」
「やあ風神ちゃん」とココロ。なるほど風魔天、略して風天なら風神に通じる。左手に風神、右手に雷神じゃ俺はさしずめ屏風の折り目って所かな。
 ソラは興味なさそうにどっかの議員が話をする壇上に視線を戻す。右手を見るとココロが処置なしという表情をして首をすくめた。どういうことなんだろう。
「ソラと知り合いじゃないの?」
こうささやくと、とっても意外な返事が返ってきた。
「許婚(いいなずけ)だよ」
俺は我を忘れて大声で言った。
「何ですって! あ、すみません」
一瞬の沈黙のあと会場は爆笑の渦に飲み込まれ、議員はすごすごと祝辞を終えた。
 3日後の始業式に配られた学園新聞の一面には『No1新入生神名紅葉、長話で有名な○×議員を一声で撃退』と大きな見出しがあった。

「そのーアズマジン(雷神)君と知り合いなの?」
というか漢字では雷神で同じだぞ。俺と同じく女装……ってわけでもないよな。アズマは俺より背が高く180以上ぽかったけどココロは160少しだ。ただそのぶん元気が圧縮されているようにも見える。
「それは秘密です。さあ行こう」
「え、ええ」
ココロは俺の手を引き歩き始めた。今日は乾燥しているのか手をつなぐとき冬のように少し静電気が走る。
 ジンとココロ、似ている。どう見ても関係ありそうだけど――。双子の姉か妹? いや同じ名前は(読み方が違っても)つけられないだろう。いや名をつけるまでに両親が離婚していて別々に引き取られれえば可能なのかな? それなら秘密という理由も分かる。しかし初対面でそんなこと聞けないよなあ。
「どうしたの元気ないじゃない、もみじちゃん」
「べ、別に」
「ねえ、もう言っちゃってるけど、もみじちゃんって呼んでいいかな。私のこともココロって呼んでいいよ」
男一匹同級生から『ちゃん』は勘弁して欲しかった。
「もみじって呼び捨てでお願い」
「うん、もみじ。もう親友だね」
「あははは」
少なくともこのハイボルテージ電波娘から俺が逃げられないのは確かだ。
 すでに校内に入っていたので周りを確認する。
「ココロ、まずあのテントで受付するみたいだよ」
「そう。あっ、やべ!」
可愛い声に似つかわしくない男っぽいセリフに振り向くとココロの姿はない。捜すべきかと迷う前にまた見知らぬ声が呼びかけてきた。
「どこ、雷神(らいじん)は」
相手はなんだかクールで細身の美少女だ。同じようにぴかぴかの制服を着て可愛いけどココロよりも俺の好みに近い。あっ、ひょっとして雷神ってココロのあだ名かな。
「ココロのこと?」
「そうとも言う」
「さっきまで一緒だったんだけどなあ。でもきっとすぐ戻るよ」
「そう?」
なんだかさっきから涼しい風が吹いているから、トイレにでも行ったのだろう。女の子は近いものね。
「先に受付の手続きをしておかない?」
「手続き?」
「入学式にでるんじゃ?」
「それが今日の目的と理解している」
うーん、俺の好みに近いは撤回だな。こいつもココロなみの電波を発信してやがるぜ。
 譲ろうとしたが少女が動かないので先に書類を出して出席者名簿に名を書く。名を聞くのを忘れていたので少女が記入している後にまわった。当たり前だが俺はたいていの女子よりは背が高いのでよく見える。名簿には『風魔天』とあった。ふうまてん? 忍者の子孫か? 疑問を口にするまでもなく受け付けの人が読み方をたずねている。少女は淡々と答えた。
「かざま・そら」

返事遅れて申し訳ありませんでした

『2009-07-09 | とくめいさん』様
 読んでいただいてありがとうございます。ご期待にそえると嬉しいのですが……。

『2009-07-10 | ton』様
 応援ありがとうございます。短編なら入学前で完結させる予定でしたが、突破してしまいそうです。いえ、しました。面白さを持続できればいいのですけど……。

『2009-07-11 | 春乃』様
 こちらこそ素敵な絵を使わせていただいて楽しいです。(ついでに風神も拉致を……)
 続くようならあむぁいさんを通じて挿絵をリクエストできるシステムがありますのでよろしくお願いいたします。

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おお、盛り上がってますね。主人公、紅葉の方も春乃さんにイラスト化して頂こうかしら。一応、念のため『女装なのか、完全に女の子になっているのか真偽不明』ぐらいな感じでー。
To isakoさん 外見リクエストとかあればお願いします。

第1章 可愛い弟には女装させよ

第1章 可愛い弟には女装させよ

(1)

 入学式当日も俺は1人で家をでた。カメラ係と張り切っている楓は学園の有名人、それにお察しとは思うけどドレスアップした母さんが注目を浴びるのは間違いない。多少は我慢するつもりではいるけれど最初から最後まで衆人環視のもとにおかれるのは勘弁して欲しかった。
 最後の角を曲がり校門まで300mほどのところを歩いていると女子の声で呼び止められた。
「神名さん?」
振り向くと見知らぬ少女がいた。妙に派手だ。別に服装をさしての言葉ではない。何しろ俺と同じ真新しい甘井学園の制服を着ているだけなのだ。
「ええ」
彼女は妙にテンション――ボルテージの高い声で言った。
「神名もみじさんって言うんだね」
「はい。でもどうして」
「だってぇ……ほら学園新聞にでたじゃない」
「あ、ああ」やれやれ。「で、あなたは?」
「なにを言って。あら初対面だったわね」
朝から電波系かよ。そういえば体験入学のときも妙な男に会ったっけ。確か名前は……
「姓は雷でイカズチ、名は神でココロよ」
「え?」
「もみじちゃんは女の子なら好きになれるかな?」

(つづく)

春乃さま>いつも素敵な作品をお納めいただき有難うございます。
雷神は見ていて元気が出るイラストですね。
来月以降かもしれませんが‥ 相方(?)の風神の公開も楽しみです(^^)

 記事には注目の1年生第1位神名紅葉(もみじ)とある。読み方はともかく、これは俺の名なのだ。
 なぜばれたのだろう。合格発表は受験番号だけで行われた。手続きの書類は自分で受け取りに行ったけど、もちろん女装していたわけじゃない。
「母さん、体験入学のときの書類にはなんて書いたんだっけ」
「知り合いの親御さんに会うといけないと思って、私の旧姓の森野とひらがなのもみじよ。万一のときは親戚の娘といえば良いものね」
「ママも紅葉もポイントずれてるわよ。入学どうする気なの」
「姉さんこそ変だよ。新聞部の勘違い、間違いに過ぎないんだからさ」
「何言ってるの。普通じゃあんたの女装を見破るものはそうそういないだろうけど、疑いの目で見れば写真の少女が誰かなんて判っちゃうわよ」
「確かに楓ちゃんの言うことにも一理あるわねえ」
「母さんまで……だって今から受験しなおすわけにはいかないんだぜ。浪人しろってこと?」
「女装が趣味とカミングアウトするとかは」
「冗談じゃない」
それじゃ俺と一瀬さんの目はなくなってしまう。
「良いことがあるわ」
「なに?」
母さんの良いことには注意が必要である。とんでもない発想をする人なのだ。
「女の子のもみじちゃんとして入学すれば良いのよ」
楓はもう大喜びだ。俺の頭は頭痛に……。母さんは淡々と説明を続けた。
「そして一瀬玲子さんと親しくなって彼女の放課後や週末の行動範囲を確認するの。あとは転校して校外でアタックすればいいでしょう」
ひょっとして珍しく名案がでたのかな? 俺の女装が作戦に入っているのは母さんの趣味の様なものだし。
「でも入学手続の書類は男にチェックしたよ」
「もみじちゃんを見ればきっとうっかり間違えたんだなあって担任の先生が直してくれるわよ」
「うーん。振り仮名は?」
「もともと戸籍に振り仮名はないんだし、可愛いからってもみじって呼んでくださいって言えばそれで大丈夫よ」
「転校先では?」
「書類を調えて男らしい恰好で行けば誰も疑わないと思うな」
「ママ、ナイスアイデア。紅葉、決めちゃえ!」

 こうして俺は小学校以来6年ぶりに女生徒になった。

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 甘井学園の体育系クラブでメジャーなのは、男子なら野球・サッカー・バスケット、女子ならバレーボール、ソフトボールそれに楓のいる柔道部といったところだ。もちろん他にも強いクラブはあるし、クラブに参加せず全国レベルの選手もいた。中でもゴルフとテニスはプロまでいる。
 一方俺たちが一瀬さんに案内された小規模のクラブの中には乗馬やラクロスなど日本の高校ではめったにお目にかかれないものもあった。一部は人数が少なく同好会扱いのものもあるが、この学園では同好会でもかなりの予算が下りる。
 一瀬さんはどのクラブでも顔が広く、特に男どもの鼻の下の長さといったら。とにかく俺たち11人は彼女の軽妙な語り口で次第に打ち解けていった。もっとも彼女をめぐるライバルであるのに変わりがない。
 歩き回って疲れたところでちょうど時間になりカフェテリアで昼食をとることになった。一瀬さん近くの席は取り合いになる。午前中最高の位置にいた俺は遠慮して最初から隣のテーブルを選んだ。女子の目はきびしい。欲張るとろくなことがないんだ。
「となり良いかしら」
「ええ」
声をかけてきたのは別の見学グループの少女だった。清楚でおとなしい感じはきっと男どもの注目を集めるだろう。俺? 俺は一瀬さん一筋さ。一目ぼれした俺の勘に間違いなかったのは十分確認したからね。
「体育会系のクラブの見学をされたの?」
「そうです」
「面白いところありました?」
問われるままにいくつかのクラブの話をした。しかし相手は話より俺の顔が気になるらしい。パスタのトマトソースでもつけたかな。
「私の顔になにか?」
「あら、ごめんなさい。どこかでお会いしたことなかったかしら」
「初めてだと思いますけど」
「この市の方でしょう。私も小学校2年まで住んでたんですよ」
失礼にならぬ程度少女の顔を見つめたつもりだったけれど彼女は顔を赤らめた。
「やはり初めてだと思います」
「勘違いのようですね。ところで駅前に会った……」
突然始まった昔話に俺も夢中になった。そのころは自分を女だと思っていたんだっけなあ。
 
 母さんが到着したので席を立った。オープンテラスにいたので携帯をかけるまでもなくすぐ気付いたんだ。母さんは姉を上回る美人だし、誰かさんと違って胸周りのスタイルも良いのでとても目立つんだ。今日は母親らしい落ち着いた服装できてくれたけど、普段の服装なら上級生たちが群がったと思う。
「もうお友達ができたの?」
「合い席しただけだよ」
「あら、そう。お名前は?」
そういえば名前を聞かなかった。でもお互いこの学園を選んでも俺は男の姿で来るから次回も初対面ということになる。
「聞いてこようか?」
「そこまでいいわ。可愛い方ね」
「あっちが一瀬さんだよ」
「あら」
一瀬さんを見る母さんの目は普段と違い鋭く、まるで値踏みをしているようだった。
「どうしたんだよ」
「だって気になるでしょう。あなたが久しぶりに好きになった異性だもの」
「久しぶりって?」
中学時代は男であることを自分に証明することで精一杯だったからこれが初恋だと思っていた。
「ほら、あきら君だっけ」
「止めてよ、母さん」
お察しのとおりあきらは男の子で幼馴染である。そして俺がはじめて好きになった……あ~蕁麻疹がでそうだ。

 学校側の説明会は1時間ほどで終った。その後の模擬授業はパスすることにする。久しぶりの女装で疲れたし、ここを第一志望にすると決心した以上この姿をあまり人前でさらすのは賢明ではないと考えたのだ。


 それからの数ヶ月間、楓にも頭を下げて教えてもらいながら俺は猛烈に勉強した。
 俺にいわせれば努力の成果、楓いわく『教え方が良かった』そして母さんは『紅葉は元々頭の良い子なの』……というわけで俺は合格し憧れの一瀬さんにアタックする日を夢見て日々を過ごしていた。
 問題が起こったのは学園の終業式が近づいたある日のことである。学校からそのまま春の合宿に直行すると言っていた楓があわてて帰ってきた。
「大変よ大変よ!」
「どうしたの蘭ねえちゃん」と俺。
「あのね、コナン君――ふざけてる場合じゃないって」
母さんは俺たちの冗談にどう入り込もうかと思案中だった。
「ねえ、ヒロインは蘭じゃなくラナではかったかしら」
「もう、母さんまで。とにかく大変なの。これを見てちょうだい」
楓が取り出したのはタブロイドサイズの学校新聞らしかった。1面に大きな写真があり、注目の新入生として一瀬さんとうつる俺の女装姿がある。

わっ、イラストにお話しがついたのですね!
使って頂けて嬉しいです☆(^^

初めまして。

面白いです。文章もテンポが良く、非常に読みやすくて好みです。
続きが分かりそうで全く分からないのがいいですね(笑)

応援してますんで、是非、完結なさってくだい。

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 校門のところで振り向いてみると男はいなかった。口からでまかせだったのだろうか……まあ、そんな感じの奴だった。男同士でも友達になれそうもない。

 校門の向こうにはあの人がいた。敷きつめられたイチョウの葉の上に立つ一瀬玲子さんが、俺にはまるで黄金の雲の上の天女に見える。
 体験入学は在校生による学校案内で始まり、昼食後父母もまじえた説明会そして体験授業と続く。
 学校案内にはいくつかのコースがあり、あの人はマイナーな体育系の課外活動を中心としたコースの担当だった。学園では有名な存在の彼女が選ぶにしては地味なことに俺の依頼で調べた楓が驚いていた。
 受付に母さんから渡された封筒をおいて真直ぐにあの人のもとへ。多少ふらふらしたのは迷ったわけではなく緊張のせいだぞ。
「よ、よろしくお願いします」
「あら。えーっと」
そのとき受付をしていた女生徒が数枚のカードをあの人に渡した。
「もみじちゃんね」
「よ、よろしくお願いします」
まあ、もみじは呼ばれなれた名だからしかたないだろう。
「さてと。もう時間だから案内を始めましょうね」
 周りを見ると男が8名、女は俺を入れて3名だ。希望者が少なかったためもあり男子も合流していた。私立甘井学園の高等部は結構ユニークな存在である。偏差値も高く進学率も高いが、いわゆる一芸入試も採用しておりスポーツなどで秀でた生徒は優先してとっていた。彼らは少なくとも国内ではトップレベルであり、中には国際舞台で活躍するプロまでいる。姉の楓は柔道で入ったのだが、実は学業も優秀であった。
 楓いわく、
『社会とか暗記しなおすの面倒じゃん』
 俺? えーっと今日モチベーションを得られたら猛勉強開始ってところかな。

「もみじちゃん」
「へ?」
「横に来て」
「はい」
 後ろで遅れがちな俺を側に呼んでくれたのを素直に喜べない自分が恨めしい。
 なぜかって? 彼女目当てで集まった男子のうちの幾人かが俺の方にねっとりとした視線を投げかけていたのさ。母いわく、女装した俺は胸のない姉と比べて遜色ない美少女だそうだ。むろん賢明な母は楓のいないところでささやいたのだが。
 認めるのは悔しいけれど、男から見ると姉は一瀬さんとはまた違った魅力がある。もちろんその実体を知らない場合に限るけどね。
 そして女はそのあたりには敏感だ。一瀬さんはライバルを排除するのだろうか。
 それならそれでかまわない。勉強せずに済むってものだ……。
「大丈夫かしら」
一瀬さんの囁きは良い匂いと共にくる。
「なにがですか、先輩」
「玲子って呼んでも良くってよ」
「玲子先輩、なにが大丈夫なんですか?」
「なんだか心ここにあらずって顔だったから」
「そ、そんなぁ。私は真剣です」
「男どもの視線が気になるのかな? 他の10名は私目当てで集まったようだし」
「どうして?」
俺の顔は真赤だったに違いない。何しろ俺も一瀬さんが目当てなのだから。
「あら、他の10名はスポーツの経験なんてなさそうだもの」
そう言いながら一瀬さんが肩の筋肉をつかんだので俺は硬直した。
「たくましいわね」
「そんな」
「あら女の子に失礼なことをいったかな」
ここで一瀬さんは声を大きくした。
「集まったのが奇数なので私がもみじちゃんと組みます。皆さんも男女それぞれ横の人と組んでね。ではまず正式にクラブと認められている所からまわります」

この後、雷神が女の子に変身して再登場でしょうか?
女装少年と女の子(とTS娘?)という組み合わせは、このサイト内では珍しいような気がしますので、個人的にも続きを楽しみにさせて頂きます。

雷神さんお借りします

 当日、体験入学に付き合うという姉の申し出を丁寧に断って俺は1人で家を出た。母は説明会からの参加なので少し後になる。
 視線を集めている気がした。きっと久しぶりの女装なので緊張しているからだろう。まあ多少は服装の影響もある。フリル一杯の青いドレスは一歩間違えばゴスロリと間違われそうだ。
 そうそう男しか経験したことのない諸君には俺の行動が理解できないかもしれない。ああ、もちろん意中の人と会える機会を早く作りたいのは確かだ。けれど理由はそれだけじゃない。男として会うのと女として会うのではずいぶん違うのも確かなのさ。憧れの人の本質を知りたいんだ。
 女と思い込んで女性の中で育ち、その後も姉の腕力に抵抗できるようになるまで数限りなく女装して女と接したきたために女性不審なのだろう。天使のごとき少女も一皮むけば悪魔……そんな例は枚挙にいとまがない。

 最後の角を曲がり校門まで300mほどのところで俺の足は止まった。軽薄そうな男が視線を彷徨わせている。嫌だと思っていると話しかけられるのは世の常なのだろうか。
「そこの可愛らしいお嬢さん。甘井学園ってこの辺りかな」
俺は黙って校門を指差した。
「あちゃー、俺の目は節穴かっての。ところで君も体験入学? 可愛い娘がいたらこの学校に決めようと」
黙って通り過ぎようとした。それほど時間に余裕があるわけでもない。
「冷たいなー。名前は? 俺はアズマジン。雷でアズマ、神さまでジンさ」
「失礼します」
「後でお茶しない?」
昭和生まれには見えないけど……俺があきれて視線を向けると敵は脈ありと見たのか一歩前に踏み出してきた。
「男に興味はありません」
男は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で叫んだ。
「女ならいいのか? あ、なんだそうか!」
そう言いながら立ちすくんでる男を残し俺はその場を足早に立ち去った。変人にこれ以上付き合う暇はない。

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