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サッカー部へようこそ 外伝ルート<1>

うずらさんの投稿作品に対する、りゅうのみやさんによる二次創作です。
本編とは別モノ、と言うスタンスでお楽しみくださいませ。

オリジナル:サッカー部へようこそ by.うずら (1) (5) (10) 最終回(13)

最終回ラスト直前からの分岐となります。

(本編からの簡単なあらまし)
「……直くん?」
「あ、こずえ」
なんだか泣きそうになってる。
まだ濡れている頭をそっと抱き締めた。
「どうしたのー?」
「えっ、いや、その」
しどろもどろになってる。
隠し事、下手だよね、直くん。
ムリに聞きだすつもりはないけど、ほら、落ち着くでしょう?
「言ったら楽になるかもしれないよ」
黙ったまんま。
もう、強情なんだから。
しゃべってくれるまで、こうしてよっか?
「ごめんな、こずえ」
「えっと、なに?」
急に謝られても困るよぉ。
思い当たることもないし。
「俺が、その、お前を女に」
「私は元々女だけど……あ、えっと、あの、処女のこと?
あれは直くんにあげたかったんだから、気にしないでよ」

(以後外伝ルートです、ではお楽しみに)


「いや、そのことじゃねえ。お前に取り返しのつかないことを……」
泣き崩れる直くんを見て、ただならぬ事態に遭遇したのだと感じた。
私のせい? 私が心を許してしまったせいで、自責の念を抱いてるのかな。
「すっ…直くん、どうしたの? 私…何かいけないことしてしまったの?」
私は直くんをさらにギュッと抱きしめ、右手で後頭部を何度もさすった。
「俺は……取り返しのつかないことをしてしまった…。俺は、将を……殺してしまった……」
ぐったりとうなだれた直くんはささやくようなかすれた声でそう呟いた。
「将……? だれ…、それに殺したって…」
「将! お前のことだよ、俺はお前の体と心を殺してしまった……!」
怒鳴りつけるような大声で、最後は震えではっきりと聞き取りづらい口調でそう語った。
「直くん?」
「俺が、俺が全部悪かったんだ。将、お願いだから戻ってくれ!」


……
…………
……………………
あの後収拾のつかなくなった直くんをなだめるのに三十分はかかった。
どうしてだろう、あんな辛い顔を見ると私まで悲しくなってしまう。
「で、どうしたの? 私はどんなことがあっても直くんの味方だよ」
「ああ、すまない。……お前は実は将という男だったんだ」
「え、え? 言ってる意味が分からないよ。それに私は正真正銘の女だよ」
そう言いながらも背中からつーっと嫌な汗が流れた。
これから言うことは相当深刻な話なんだろう、私はごくっと生唾を飲んだ。
「男だった将は、俺にしつこく付きまとってくる女を振るために彼女になってくれて、でも俺の邪な思いから元に戻れなくなってしまったんだ…」
「直くん!? え、えっ、どういうこと? それに泣かないで。私まで泣いてしまう」



……
直くんはことの全様を語ってくれた。
私が男だったこと、親友のよしみで身代わりになったこと、
そして……、直くんが言ってた本当の私としての人格や記憶を喪失したことも。
最初はよくできた作り話とさえ思えて受け入れられなかった。
でも、私が携帯した生徒手帳と、私の携帯に録音した音声は私が男である重要なな手掛かりとなった。
いや、いずれも決定的な証拠とまでには至らなかった。
生徒手帳は将という人のものを間違えて持っていたかもしれないし、音声録音も私の携帯に誰かが無断で録音したのかもしれない。
無茶苦茶の理論だが、どうしても認めたくなかった。
でも、それ以外にも先程の二点までには至らないとしても今の自分の存在を脅かしかねない幾らかの証拠品が見つかった。
自分の存在に疑いが差し掛かってしまい、私は自分の記憶を辿っていくことにした。
直くんと出逢ったこと、そして結ばれる少し前の記憶。
それ以外の記憶ならある程度思い出せるのに、その重要な二点はまるでその部分だけ黒いもやがかかっているようで、どうしても思い出せなかった。
大好きな人との出逢い、そしてデートをいとも簡単に忘れるなんて考えられない。
私はとうとう自分がほんの少し前まで男だった事実を認めてしまった。
大粒の涙がポロポロと零れ、泣き悲しむ私に今度は直くんが抱擁してくれた。
今の私には、ただ直くんを強く抱き返すことしかできなかった。


……
…………
すごく複雑な気持ちだった。
直くんと結ばれてよかったという想い、でもそれは本当の私の意志からではないという複雑な心境、『今の私』という人格は一体誰なんだろうかという恐怖。
私は…どうすればいいのだろう。
『今の私』の意志としたらそれでも直くんを受け入れたいという想い。
もし『将』が何らかの形で意識を残しているなら、どんな反応を示すのだろう…?
憤り? それとも悲痛や悲嘆? 無力感? 直くんを許さないのだろうか?
『今の私』と『想像の中の将』の二つの感情が二律背反となって私の心を激しくえぐる。
「…ごめん、こずえ。辛い思いをさせて」
二人の人格が存在したからだろうか、本来の持ち主には将、私にはこずえと呼び方を使い分けているように見えた。
そして今の言葉は文字通り将ではなく、私に対して謝罪している。


私にはどう反応すればいいのか正直分からなかった。
だれをどれほど大切に思うか、簡単のようでいて実は結構難しい。
本来は慰めの言葉をかけるべき人は私だけではないはずだった。
もちろん今悲しんでいるのは紛れもなく私だけ…。
将はここにはいない、その現実はあまりにも残酷だ。
それでも私まで失いたくない、そういった思いがもしかしたらその言葉には含まれていたのかもしれない。
そうだとしても直くんは将を一番に気にかけているべきだと思う。
だから私は…、
「泣かないで、私はもう大丈夫だから」
泣き崩れる直くんを優しく抱きしめ、唇が触れ合う程度の軽い口づけをした。
「ぐすっ、こずえ。そして将、許してくれとは言わない。俺を憎め、憎み続けることでお前が正気でいられるなら憎まれるほうがましだ」


バチン!
一瞬何が起こったのかは自分でもわからなかった。
私の右手は自分の意思に反して直くんの頬を強くぶっていた。
状況を飲み込むと、それに伴い言いたいことがあふれかえってしまう。
「どうして、どうしてそんなこと言うの! そんなことして将が喜ぶとでも思うの!?
結果的に酷い目に遭ったけど、それでも直くんのこと好きなのに、どうして憎むことができるの!」
「こずえ…」
「まだ将が死んだわけではないと思うの、ただ記憶を失っているだけ。
記憶を取り戻せばきっと将は助かるわ」
「でもどうやって…それにたとえ戻ったとしてもこずえはどうなるんだ?」
「方法は分からない、でも可能性がないわけではないと思うの。
あと私は…あくまでも仮定にすぎないけど、消えるかもしれない」
「え…どうして」
「ダルマ落としのように本来そこにあるべきものが喪失した時にその隙間を埋める、あるいは修復するかのように別のものが存在するようになる。
将の記憶と性格を喪失した空っぽの体、それを女性の状態で遭遇したから女性としての人格が最も理想的だと判断したのだと思う。
女性の人格と架空の記憶に書き換えて存在するようになったもう一人の自分、それがこずえ…」
「俺が引き金を引いたのか、こずえという人格を…」
「あの皮の呪いみたいなものかもしれないから、仕方なかったのよ。
で、将の記憶を取り戻せば私は自然の摂理にしたがって、つまり二重人格のような不安定な状態より単一人格のほうが都合が良くなる。
その時、私という人格は消えてしまうかもしれない。
私は将の代わりに作りだされれた影だから、本体が目覚めたのなら私は消えてしまうと思うの、そうなるか自信はないけど」
私は考えうるパターンの中で、最も望みの高そうな予測を告げた。


「そ…んな……」
へなへなとくずれ落ちる直くん、それでも力を振り絞ってこう尋ねてきた。
「お前はどうしたいんだ、消えてしまうんだぞ」
「うん……せっかく大好きな直くんに逢えなくなるのはすごく悲しい。
でもあなたが好きなのは影としての私ではなく、消えてなくなった将だと思うの。
だから私は消えてもいい……と思う…」
最後のほうは涙で途切れ途切れになっていた。
影とはいえ、本来の性格と記憶ではないだけでそれ以外は一人の人と全く違いがない。
これもある意味で人の命が絡んでくる。
軽はずみで決定を下すことなどできない。
今だってそう、私の中の警報ブザーがひっきりなしに警笛を鳴らしている。
それでも将を、そして直くんを助けたかった。
「俺、絶対将を取り戻してみせるから、だからもう泣くな!」
「うん。将……、待っててね…」



………
………………
それからというもの私はひっきりなしに直くんとデートを重ねている。
いや、正しくは記憶を辿るために思い出の場所を巡る道案内役として抜擢しているのだけど。
直くんとの疑似デートは本当に楽しい。
それでも楽しんではいけない、直くんに情がうつらないように気を配っている。
仲良くなることは将に対する裏切り行為なのだから。
実家にはもう帰ることはできない、変わったのは私の記憶だけなのでこの姿を見てもまず私が将だと信じてもらえないだろう。
直くんもそれを気にしているのか、あの部屋を貸してくれてそこで生活をしている。
少し後ろめたい気がするけれど、仕方のないことだと諦めている。
夜になって今日一日を振り返って日記をつける。
あの日以来だからもう一ヶ月分は書いてることになるのかな。
直くんが描く将という人物像のこと、学生生活のこと、一人暮らしのこと、
そして……直くんとの疑似デートでいろいろ感じたこと。
だから最後はいつも直くんに対する淡い想いを綴った日記となっていた。
本当はそうしたことを書面に残すことなどあってはいけないと思って、
何度もノートを破り捨てようとした。
けれども私が消えてしまうことを考えると、すごく辛く感じる。
別に誰かに私のような人がいたことを伝えたいのではない、
ただ自分が『確かに存在した』という証が欲しかった……。
私が消えたとしても、私がいつまでも残っていられるのはそれしかないという思いを胸にして。

<つづく>

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