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おっ、 おんなの子あつかいするな~っ!!(3)

作.isakoさん
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第1章 可愛い弟には女装させよ

(1)

 入学式当日も俺は1人で家をでた。カメラ係と張り切っている楓は学園の有名人、それにお察しとは思うけどドレスアップした母さんが注目を浴びるのは間違いない。多少は我慢するつもりではいるけれど最初から最後まで衆人環視のもとにおかれるのは勘弁して欲しかった。
 最後の角を曲がり校門まで300mほどのところを歩いていると女子の声で呼び止められた。
「神名さん?」
振り向くと見知らぬ少女がいた。妙に派手だ。別に服装をさしての言葉ではない。何しろ俺と同じ真新しい甘井学園の制服を着ているだけなのだ。
「ええ」
彼女は妙にテンション――ボルテージの高い声で言った。
「神名もみじさんって言うんだね」
「はい。でもどうして」
「だってぇ……ほら学園新聞にでたじゃない」
「あ、ああ」やれやれ。「で、あなたは?」
「なにを言って。あら初対面だったわね」
朝から電波系かよ。そういえば体験入学のときも妙な男に会ったっけ。確か名前は……
「姓は雷でイカズチ、名は神でココロよ」
「え?」
「もみじちゃんは女の子なら好きになれるかな?」

「そのーアズマジン(雷神)君と知り合いなの?」
というか漢字では雷神で同じだぞ。俺と同じく女装……ってわけでもないよな。アズマは俺より背が高く180以上ぽかったけどココロは160少しだ。ただそのぶん元気が圧縮されているようにも見える。
「それは秘密です。さあ行こう」
「え、ええ」
ココロは俺の手を引き歩き始めた。今日は乾燥しているのか手をつなぐとき冬のように少し静電気が走る。
 ジンとココロ、似ている。どう見ても関係ありそうだけど――。双子の姉か妹? いや同じ名前は(読み方が違っても)つけられないだろう。いや名をつけるまでに両親が離婚していて別々に引き取られれえば可能なのかな? それなら秘密という理由も分かる。しかし初対面でそんなこと聞けないよなあ。
「どうしたの元気ないじゃない、もみじちゃん」
「べ、別に」
「ねえ、もう言っちゃってるけど、もみじちゃんって呼んでいいかな。私のこともココロって呼んでいいよ」
男一匹同級生から『ちゃん』は勘弁して欲しかった。
「もみじって呼び捨てでお願い」
「うん、もみじ。もう親友だね」
「あははは」
少なくともこのハイボルテージ電波娘から俺が逃げられないのは確かだ。
 すでに校内に入っていたので周りを確認する。
「ココロ、まずあのテントで受付するみたいだよ」
「そう。あっ、やべ!」
可愛い声に似つかわしくない男っぽいセリフに振り向くとココロの姿はない。捜すべきかと迷う前にまた見知らぬ声が呼びかけてきた。
「どこ、雷神(らいじん)は」
相手はなんだかクールで細身の美少女だ。同じようにぴかぴかの制服を着て可愛いけどココロよりも俺の好みに近い。あっ、ひょっとして雷神ってココロのあだ名かな。

200902_a3.jpg
イラスト.春乃 月

「ココロのこと?」
「そうとも言う」
「さっきまで一緒だったんだけどなあ。でもきっとすぐ戻るよ」
「そう?」
なんだかさっきから涼しい風が吹いているから、トイレにでも行ったのだろう。女の子は近いものね。
「先に受付の手続きをしておかない?」
「手続き?」
「入学式にでるんじゃ?」
「それが今日の目的と理解している」
うーん、俺の好みに近いは撤回だな。こいつもココロなみの電波を発信してやがるぜ。
 譲ろうとしたが少女が動かないので先に書類を出して出席者名簿に名を書く。名を聞くのを忘れていたので少女が記入している後にまわった。当たり前だが俺はたいていの女子よりは背が高いのでよく見える。名簿には『風魔天』とあった。ふうまてん? 忍者の子孫か? 疑問を口にするまでもなく受け付けの人が読み方をたずねている。少女は淡々と答えた。
「かざま・そら」
 しばらく待ったけどココロは戻らない。そのうち母さんとカメラマン楓が到着した。母さんのオーラは既に父親たちの視線を釘付けにしている。各ご家庭に今宵は不穏な空気が流れるのは間違いない。まあ母さんは決して狙っているわけではないのだが。
「ソラちゃん、ご両親は?」
「いない」
「ごめんなさい」
「いい。それよりあなたは雷神にもそう呼びかけるのか」
「ココロに?」
「同じ扱いを所望する」
所望って……帰国子女かなあ。
「じゃあ、ソラ」
「どう応えればいい」
やれやれ。
「あなたも私の名前を呼び捨てでいいのよ」
「もみじ」
そう言いながら少し頬を赤らめたソラは可愛かった。あれ、自己紹介したっけ?

 ソラと式会場になっている体育館に向かおうとすると楓に袖を引かれた。さっきからもう数十枚撮影したのにまだ注文があるのか、それとも何かお気に召さないのかな。楓は少し離れた木陰まで移動した。
「ちょっとちょっと」
「なになに?」
楓は腕を首にまわしてきた。虫の居所が悪くて送襟絞でもかけてくるのかと思ったが、真面目な話である。
「あんたの新しい友達」
「ソラのこと?」
「そのソラちゃんを柔道部に勧誘したいんだけど」
「えぇー」
思わず振り向くとソラはぼーっと空を見ている。別に洒落じゃないぞ。
「あれは逸材だ!」
「でもぉ」
他の人たちが体育館に向かったため1人取り残されて立っているソラは、細くて折れそうな外見よりもっと軽量に感じられた。
「あの娘の動きに隙がないのがわからないの?」
「俺は姉さんのような格闘家じゃない」
「言葉遣い!」
「良いだろう、内緒話くらい」
「だめだめ。昔から言ってるでしょう。誰かに聞かれるおそれはないにしても行動が粗暴になるの」
「わかったよ。でもソラが柔道経験者とは思えないわ」
「少し練習すれば高校レベルなら無敵よ」
「うーん」
楓の言うことが嘘とは思えない。何しろ中学のとき猪熊滋悟郎杯の無差別級で優勝したこともある超一流なのだ。なぜ柔道連盟の要請を蹴って国際大会に出ないかは俺だけが知っている秘密である。いや正確には一度だけ出たことがあった。
「協力してくれればあんたの一瀬玲子攻略に全力を尽くすと誓うわ」
「その話乗った」
「言葉!」
「もみじにおまかせよ」

 ユニークな方針をとる甘井学園でも入学式はあまり変わらない。学長や来賓の退屈な挨拶が続いて眠くなってしまう。
 うとうとしかけると右側から突っつかれた。ソラは左に腰かけており右は空席だったはずだ。
「ココロ!」
「やあ、もみじ」
「あなた」
と言いかけて俺はあわてて左を見た。ソラとココロは互いに知り合いだろうし、ココロが隠れた所を見ると何か因縁があるのかもしれない。式の最中に騒ぎを起こされては大変である。姿は見てないけれど楓によれば一瀬さんが在校生の一部を指揮して式の裏方をしているのだ。
 ソラと視線が合う。
「なに?」
「ココロ、きたよ」
「そう」
「やあ風神ちゃん」とココロ。なるほど風魔天、略して風天なら風神に通じる。左手に風神、右手に雷神じゃ俺はさしずめ屏風の折り目って所かな。
 ソラは興味なさそうにどっかの議員が話をする壇上に視線を戻す。右手を見るとココロが処置なしという表情をして首をすくめた。どういうことなんだろう。
「ソラと知り合いじゃないの?」
こうささやくと、とっても意外な返事が返ってきた。
「許婚(いいなずけ)だよ」
俺は我を忘れて大声で言った。
「何ですって! あ、すみません」
一瞬の沈黙のあと会場は爆笑の渦に飲み込まれ、議員はすごすごと祝辞を終えた。
 3日後の始業式に配られた学園新聞の一面には『No1新入生神名紅葉、長話で有名な○×議員を一声で撃退』と大きな見出しがあった。

<つづく>

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