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星の海で(4) ~トイブルクのエミリア~ (2)

カテゴリ:ありすの不思議な国はこちら

(2)-------------------------------------------------------

 消灯時間が近い暗い廊下を渡り、目的地であるラヴァーズ用の教育施設に着いた。
 教育施設といっても、エミリアの自室を兼ねていて、合同官舎の一部を与えられているに過ぎなかった。
 普通の士官よりも少し広めの、2間続きの寝室兼居間。それに小さな部屋がいくつかあるだけだった。
 かつては一度に5~6人のラヴァーズ候補を同時に見ていたが、最近ではめっきりその数が減った。

「着いたわ。ありがとう、ヴァンデル士長。中に入って、そっちの部屋のベッドに寝かせて頂戴」
「はい、准尉殿。失礼いたします」

 ヴァンデル士長は少女を抱きかかえたまま、エミリアが小部屋の戸を開けるよりも早く、器用にドアノブをまわして、部屋に入っていった。
 エミリアはそれを見送りながら上着を脱ぎ、冷蔵庫からワインとグラスを2つ出してきて、居間のテーブルに置いた。

「准尉殿、言われたとおりに致しました」
「ご苦労様、こっちに来て、一息つくといいわ」
「はっ。ありがとうございます。しかし、自分は戻りませんと」
「あなたの直属の上官は誰?」
「はい、教育3班のコンカート曹長であります」

 エミリアはソファにかけてあった上着のポケットから携帯端末を取り出して、士長の上官を呼び出した。

「コンカート曹長。私は教育4班長のカセラート准尉です。ヴァンデル士長に手伝ってもらいたいことがあるので、明朝0800まで、彼をお借りします。よろしいですね」

 エミリアは相手に有無を言わさずに、電源を切った。

「あ、あの、……准尉殿?」
「私はちょっと気分がむしゃくしゃしているの。お酒の相手をしなさい」
「は、はぁ。しかし……」
「ついでに夜の相手もね。童貞君」
「は、はひぃっ!」

 こんなことで上官風を吹かすのもどうかと思ったが、ストレスを発散するには、酒とセックスが一番いい。
 長いラヴァーズ生活を過ごしたエミリアにとっては、こうした自由恋愛への抵抗も無かった。
 それに、たまには経験の乏しい若い男と寝るのも悪くないと、そう思った。

     *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

 翌朝、いつの間にかヴァンデル士長はいなくなっていた。
 エミリアは壁の時計に眼をやると、0830時を少し過ぎたところで、自分が寝過ごしたことを知った。

「ふぅ。起こしてくれれば、朝食ぐらい出してあげたのに」

 乱れた髪をかき上げながら、サイドテーブルを見ると、夕べ脱ぎ散らかしたはずの下着が丁寧にたたまれてあった。
 エミリアは苦笑しながらそれを身に付けると、キッチンで水をコップに汲んでから、居間のソファにどっかりと座った。
 テーブルの上には、走り書きで
 
   "昨晩はありがとうございました
           ライオネル・ヴァンデル士長"

とメモが残されていた。

「ふふふ、かわいい奴……」

 エミリアはコップの水を一口で飲み干すと、重要なことを思い出した。

「いけない! あの子のことすっかり忘れてたわ!」

 慌てて、昨晩士長が寝かしつけたベッドのある部屋の扉を開けると、直ぐ内側に件の少女が立っていた。

「うわっ、っとびっくりした。脅かさないでよ」
「……おねえちゃん、誰?」
「私はエミリア・カセラート。あなた、自分の名前、言える?」

 少女は無言でぷるぷると頭を振った。
 記憶を完全消去されたと、昨日言われたことを思い出した。

「ここ、どこ?」
「ここは私の部屋よ。しばらくはあなたもここに住むの」
「ここに?」
「そう。ちょっと待っててね。あ、こっちへ来て、そこのソファの上に座ってて頂戴。そうだ、のど乾いていない?」

 少女は再び無言で頭をぷるぷると振ると、エミリアの指差したソファのほうへ、とととと……っと走っていった。
 エミリアも少女の横に座り、昨日一緒に渡された資料に眼を通した。
 資料には少女の身体的特徴と、処置の内容が書かれていたが、来歴と名前の欄は空欄になっていた。

「名無しじゃ、困るわねぇ」

 エミリアが少女を見つめると、少女も困ったようにエミリアを見上げた。

「勝手につけろってことかしら? あなた、なんて名前がいい?」

 少女は黙ったまま首をかしげて、エミリアをじっと見つめた。 

「うーん……」

 腕を組んで考え込むと、少女もエミリアの真似をした。

「エルザ……なんてどう? 昔ね、私がまだ……いえ、あこがれていた女の人の名前なの。あなたもあの人みたいに、美人で優しい人に育ってくれるといいな」

 エミリアがそういって微笑みかけると、少女も同じようににっこりと笑った。

「気に入った? エルザよ。エ・ル・ザ」
「えるざ……」
「そう。エルザ、お腹空いていない? 朝ごはんにしましょうか?」

 エミリアがソファからすっと立ちあがると、エルザは少し困惑した顔をして、エミリアのキャミソールの裾を引っ張った。

「ん? どうしたの?」
「おしっこ……」
「ああ、そりゃ大変ね。トイレはこっち。一人で出来る?」

 エルザはうなずくと、エミリアに促されるように、トイレに入った。
 でも、直ぐにトイレから悲鳴とも驚きともつかない声がした。
 エミリアは何事かとトイレのドアを開けると、エルザが便座の前で立ち尽くしていた。

「どうしたの?」
「ちんちん、ない……」
「…………」
「ちんちん、ない」
「あ、ああ……ソ、そうねぇ……。でもエルザは女の子になったから、おちんちんは無いのよ」
「えるざ、おとこのこ……」
「えーと、今は違うのよ。それより、おしっこしたかったんじゃないの? そこに座って、できる?」
「ちんちん、ない」
「そっかぁ。いきなりはムリよね。いいわ、こっちへいらっしゃい。お風呂ですればいいわ。それなら汚しても、そのまま洗っちゃえるから」
「おしっこ、したい」

 エミリアは、見た目よりも更に幼いこの少女を、これからどう教育していけばいいのかと思うと、気が重くなった。

<つづく>

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