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投稿TS小説 シェリーの甘い企み (1) by.りゅうのみや

「こ、これが俺の人生だというのか…」
薄れゆく意識の中そう呟く。
俺は相良涼、28歳でバリバリの鳶(とび)職をしている。
高層マンションの建設に従事していた際、
突然の横風に煽られバランスを崩し転落した。
命綱であるロープを体にくくり付けてあるものの、
度重なる使用によってあちこちが損傷していたのだと思う、
生命線は非常に脆かった。
とにかく10m以上の高さから落下したのだから、
即死は免れたもののいずれ死を迎えるのは目に見えているだろう。
痛みはない。
いや、もしかしたらどこかで痛みを伝達する
神経が切断されて、脳まで達していないためかもしれない。
ははっ、これでもうおしまいかな、
痛みを認識できないほど損傷してるなんて…。

「相良さん、相良さん」
どこかで俺を呼ぶ声がする。
しかし今の状況で返事をする余力さえなかった。
「相良さん、私はあなたの脳に直接話しかけているのです。
返事くらいできますよ」
なっ…、俺の考えていることがわかるというのか?
「はい、バッチリと」
「おまえは誰だ、なぜ俺とこうして対話できるんだ!」
「私は精を食らうもの、名はシェリー」
「精を…?」
「ええ、簡単に言うと人の生命力を糧とするもののけですわ」
にわかには信じられなかった、しかしそれが本当なら
俺の命を奪うのが魂胆であろう。
「命を奪いに来たというのか、人でなし!」
「あら、人聞きの悪いことを、あなたはもうじき死ぬのよ。
無駄死にする生命力を奪って何が悪いの?」
くっ、そう言われると反論のしようがない。
「それに単に命を奪うのではなく、あなたを生き返らせてあげるわ」
「生き返らす……、どうやって?」
「人は絶えず分岐点に立つわ、どの就職先を選ぶか、どの人と結婚するかというように。
それによってその人の人生は大きく変わるわ。
あなたは鳶職の仕事をしていたのだから、常に危険と隣り合わせであった。
要するに危険とは無縁の仕事をすれば人生なんて簡単に変えられるわ」
確かにそうかもしれない、身の危険を感じた事例など
それこそ数え切れないほどあった。
しかし、俺には他に道がなかった。
学力も並以下だし、何か技術を身につけているわけでもなかった。
あるのは体力のみだった、だからこそ鳶職はある程度必然的だった。
それに…
「それは結果論であって、後からああすればこうなるのにという机上の空論に過ぎないぞ。
過去は変えられないのだから、その仮定は成立しない!」
「言ったでしょう、私はもののけだって。
過去に行くことくらいどうってことないわ。
あ、ちなみに今この時間は止めてあるから、あなたが勝手に死ぬことはないわ」
「なに! というと過去の自分に会いに行くことによって、未来を変えるということか!」
「違うわ、どうやって歩くこともできない体で過去の自分に会うことができるの?
これから行くところはあなたがまだ生まれる前、受精する直前まで遡るわ」
「……は?」
言っている意味が分からなかった。
分岐の話からいくと、だいぶ初期の段階まで戻ることになる。
しかも受精することと、どう分岐を変えるかは、全く関連がないように見えた。
「おいシェリー、頓珍漢な話を持ちかけて俺を困らせるだけに来たのか。
お前の狙いは何だというのだ」
「では単刀直入に言います。あなたは人体実験の被験者として選ばれました。
あなたはこれから女性になってもらいます。良かったですね、パチパチ~」
抑揚のない口調でそう答えた。
「おい、人体実験ってどういうことだ。なぜそのようなことを!」
「言ったでしょ、私はもののけ。知識欲のためなら道義上の抑制力なんてないわ」
とんだ化け物に選ばれたものだ。
俺もつくづく運がないというか…。
「そう嘆くこともないわ、今の命は確かに奪うけど、
その見返りに女性になることで、鳶職に就くこともなくなり、
結果的に生き永らえるわ。英語で言うならギブアンドテイクっていったところかしら」
どこの口がそう言ってるのかな、こいつ…。
いや、今はテレパシーみたいなもので対話してるのだったかな。
まぁ、悪い話ではないのかもしれない。
28にもなっていまだに独身、彼女いない歴も同じ年、
鳶職の辛い環境から解放されるというのは何よりもありがいことのように思えた。
しかし、だからと言って女性になるのは抵抗があった。
生活はどうなるのか、定職につけるのだろうか、様々な不安がよぎる。
そして…異性になることそのものが道を踏み外した行為に思え、判断に迷った。
「言っておくけど、あなたに拒否権はないわ。
時間を止めておくのもエネルギーを消耗してゆくし。
早速あなたの精をいただくわ♪」

ひゅううううぅっ

シェリーが言い終わると同時に体の真上に小さな竜巻が現れた。
ぐっ、ち、力が……俺の生命力が奪われていくというのか…
竜巻に吸い取られてゆくかの如く、俺の精は見る見るうちに消え去っていく。
残っているのは相良涼という意思と抜け殻になった肉体のみとなった。
「ごちそうさま~。
くすくすっ、あなたの精とっても美味しかったわ」
意志としては猛烈に反発しているものの、精を吸い取られた俺は反論しようがなかった。
怖かったのは、何よりさっきまでの甘ったるい話し方ではなく、
どこか妖艶でそれでいて不敵な笑みがこもった口調だったことだ。
「じゃあ、人体実験に…、いえお礼に女性になってもらいましょう。
あなたが生まれる前の世界に行ってらっしゃい」
そう言うなり俺の周りの景色が歪んでいった。
道路が、空が、そして作業現場がぐしゃぐしゃになって、闇に消え去った。
しかし、五感を失った俺にそうした変化に気付くことはなかった。

どれほどの時間が経過したのだろうか。
いや、時間軸の観点からすれば、経過ではなく遡ったというべきだろうか。
とにかく俺の五感は元に戻っていた。
ここは…どこだ?
なんとも不思議な空間だった。
四方八方ピンク色の壁に覆われており、どこが上で、どこが下か分からない。
「くすくす、今日は相良さん。ご機嫌いかが」
シェリーの声だ。
相変わらず笑う時は含みのある笑い方をするので、不安を抱いてしまう。
「シェリーか、おい、ここはどこなんだ」
「ここは膣の奥の方よ、あなたの母親の」
「なっ……」
また言っていることが分からなかった。
「あなたの両親は、今子作りに励んでいるわ。
言わなくてもわかるでしょう、セックスよ」
「っ…」
想像したくないけど、これってもしかして……
「あなたが本来いた時の29年前、この行為によって
一つの精子と卵子が結びついて男の子が生まれたのよ。
誰だか言わなくてもわかるでしょう」
あまりの衝撃の余り言葉か出なかった。
そんな瞬間を目の当たりにするなんて…。
「簡単にどうやって性別が決定するか教えてあげるわ。
まず卵子には性別を決定する染色体がXしかないわ。
それに対し精子にはXあるいはYのどちらか一つだけ持っているの。
受精することによってYの精子にはXの卵子と結びついてXY、つまり男の子に。
逆にXの精子にはXXの性染色体ができて女の子になるわ」
「え~っと、つまりお前がこれからするのは、
受精する精子がYのやつではなく、Xのやつのとなるように工作するのか?」
「…あなた、頭に蛆が湧いてるんじゃないでしょうね?」
たまに態度が豹変するんですけど、この人。
対応に困るが、それでももののけの割にまだマシと諦めるしかないのか…。
「いい、あなたという人は射精することで放出される数億という精子の中で、
たった一つしか存在しないのよ。Xの染色体を代わりに受精させるなんて、
生まれてくる人はあなたじゃないに決まってるわ」
あ……、ようやく話が見えたぞ。
確かにシェリーは性別を決定する染色体は、精子だとXかYの
どちらか一つしか持っていないと言っていた。
俺は男だから精子はYの染色体を有していたはずだ。
それに対し、Xの精子をどこか別に用意するとなると、
必然的にそれは俺ではなくなってしまう。
「ようやくわかったようね、数億個の精子は言い換えれば
数億人分の赤ん坊になる可能性を秘めた全く別の人のことよ。
あなたじゃない遺伝情報と受精させたら未来に戻っても、
相良涼という人物は最初からいない存在になるわ」
そうだったのか……、しかし数億人分の1という途方もない確率の中生まれたのか…俺。
ん…じゃあ、ある矛盾が生じるぞ。
「おいシェリー、それじゃあどうやってXの染色体を生み出せばいいんだ。
そのままだとまた男の子が生まれるだけだろう」
「私はもののけ、大抵のことができるわ。
受精する瞬間を狙ってYの染色体をXに入れ替えてみせるわ。
そのためにはあなたの働きが必要だわ。
あなたには私お手製のマイクロ人間に意志を移しておいたから、
ばっちり作業ができるわ」
「俺に、性染色体を入れ替える作業をしろというのか……、無茶な」
「無茶でも何でもいいでしょ、もうあなたには戻る場所なんてないのに」
戻る場所か……。
俺はまだ生きたかった、それが断たれるというのは非常に悔しかった。
「俺……、生きたい」
どんな形にせよ生き延びたいという思いが、他のどの感情より勝っていた。
「じゃあ決まりね、そろそろ射精する頃合いだと思うから、頑張ってね~」

<つづく>

コメント

Re: タイトルなし

さっそく対応してみました。
連休中はレスポンスは悪くなるのですが、可能な限り早急に対応しますのでsよろしくお願いします。
ほかの作品のメールも届いています。

あむぁいさんごめんなさい、公開して初めて気づく、後悔の念。
改行を私の手違いでできてない状態になってたようですね。
修正&改良verを送信しました。

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