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投稿TS小説 貧しいマント(3)  by.りゅうのみや

急いで走って公園まで辿り着いた。
ここから萌の足跡を導き出せばいいのだが……。
萌がどんな行動をするのか、もう一度頭の中で整理してみた。
ああ見えて以外に行動派で、思いついたまま実行に移すタイプだった。
それから……、そうだ猫だ!
萌は無類の猫好きで、初めて出会った時も猫を助けようと四苦八苦している時だった。
行動派、そして猫を助けるのを度々する……
それから考え出した結論はいたってシンプルだった。
「あいつ、猫助けようとして迷子になったのだな!」
僕は公園の周囲で特に危険な場所を洗いざらい探してみることにした。

まずは林道、ここは道から少しでも外れたならば、
ジャングルのような構造になっていて迷いやすい。
「おーい、萌! いるのか! いないのか! 返事をしてこーい!」
……
………しかし、虱潰しで探しても成果はなかった。
林の中を駆け巡ったため、服は泥だらけになっていた。
くそっ、萌のやつ、最後の最後まで面倒を掛けてくる。

林道でなければ、あとは川辺りが危険な場所なのだが……。
あいつ、川を渡ったりしてないだろうな。
川となると範囲が広くなるが、林と違って発見率もかなり上がるはず。
そうなると、死角となっている場所の方が、
捜査の行き渡っていない場所である可能性が高い。
川の近くで、死角となりやすい場所といえば……あの鉄橋の下あたりが怪しい。
もう老朽化が激しいために使われなくなった鉄橋がある。
あそこなら交通量もほとんどないし死角となりやすい場所に違いない。
朝食もろくに食べていないためか、疲労が目に見えて激しく、
歩くのも精一杯であった。
なんでこんなに必死になってるのだろう。
それは自分でもわからなかった。
ただ萌を見つけ出したい、それだけが動機となっていた。

相変わらずここは誰もいないなと感じた。
民家などほとんどなく、主要な交通網があるわけでもなく、完全に田舎の風景だった。
鉄橋は道がもはやガタガタに裂けていたり割れていたりで、
とても自動車を走らせる環境ではなかった。
「萌ー! どこだ萌ー!」
『にぁーっ』
鉄橋の下から猫の鳴き声が聞こえてきた。
猫とくればピンと来ないはずがなかった。
僕は河川敷に降りて鉄橋の下を重点的に探してみた。

いた!

萌は鉄橋の中腹にある、支柱の小さな陸地の片隅に猫と一緒にいた。
いや、倒れていた。
最悪の事態を想像して急いで駆け寄ろうとした。
「うわわ、意外と流れが速いな」
夕べに降っていた雨のせいか、いつもより若干流れが速く感じた。
雨がなければ渡りきることもできる川なのだが、今は増水もしていて非常に危険だった。
しかしまだ幼い僕にとって、身の安全のことなど頭に入ってなかった。
「どうすれば渡りきることができるのだろうか…。
そうか、直線距離で行こうとするから流されるんだ。
もっと上流から歩けば斜めに歩くことによってうまく辿りつけるぞ」
一応科学的な理論だが、それでも無茶もいいところだった。
靴を脱いで、意を決して川に足を入れた。
いつもなら足首程度の深さしかない川も、今日は弁慶の泣き所の高さまで達していた。
思っていたより大分流されていったが、
予め上流から渡ってきたので、渡りきれない距離ではない。
現に、もう川の半分を渡り切っていたのだ。
「あとは流れに従いつつも溺れない程度に下っていけば……」

……
…………
はぁはぁ、ようやくたどり着いた。
「おい、大丈夫か萌?」
「う……うぅん」
よかった、単に眠っていただけか。
しかしこいつのボーイフレンドになる人は災難なんだろうな。
いや、その役をいままで僕が担っていたのだが…。
「ふぁ~っ、よく寝た。……あれ? あなた誰?」
「誰って…もちろん、ゆ………ああぁぁっ!」
うっかりしていた、急いでいたためまだ変身をしていなかったのだ。
そのため今の僕は萌のよく知っている『ゆんちゃん』ではなく、
『すぐる』という全くの別人だった。
「え……えっと、ゆうの男友達で、すぐるっていうの」
「すぐる…?」
「そ、そうなんだ。
萌がいなくなったというので、一緒に探していたの」
「え、そうなの? ……あなたがゆんちゃんじゃないの?」
「え…っ、ど、どうしたのいきなり」
「だってボロボロに擦り切れているけど、
そのマント、ゆんちゃんがよく着ている『貧しいマント』じゃないの?」
しまった!
つい促されるままにマントを羽織ってしまったのが災いした。
「い…いや、あの、それは……え~っと」
「ゆんちゃん!」
「は、はいっ」
いきなりドスの入った声にびっくりして、言い訳の言葉をやめた。
「この川を渡って私のために助けに来たのはゆんちゃんしかいないのよ!
誰か別の人ならここまで自分の身を張ってまで来ることはしないでしょう?」
確かに余程の理由がなければこうまでして助けたりはしないだろう。
冷静になって考えれば、川を渡らなくても誰かに知らせれば済む話だった。
でもそうしなかった、なぜなんだろう。

「もう、ゆんちゃんのニブチン。
ゆんちゃんは私のことが好きだから必死になって助けに来たのでしょう!
なんでもっと自分に素直になれないの?
自分に嘘をついてるゆんちゃんより、ありのままのゆんちゃんでいて…
お願い、私が好きなゆんちゃんでいてくれて…」
僕が……、萌を…好きだって?
考えもしなかったことだった。
ただ、萌とは女友達で、それ以上でも以下でもないと思っていたから。
もう一度、萌と出会って今までのことを思い返してみた。
すっごく明るくて、子猫を助ける勇気があって、少し変わった性格の持ち主。
ずっと僕のことを慕っていて、その笑顔を見るとドキッと感じることも何度かあった。
でも、萌にとっての僕の存在はすぐるではなく、ゆんちゃんなのだから。
女の子同士で好きになったらいけないと思って、
ずっと自分の気持ちを押し殺していたのかもしれない。
改めて萌を見てみる。
ドキッ、ドキドキドキ……
あれ、何だろうこの胸の鼓動は?
萌をここまで愛しいと思ったことはなかった。
そっか、そうだったんだ。
初めて会ったときからお互い惹かれ合っていたのかもしれない。
だからまずは友達として付き合っていたのかもしれない。
「……そうかもしれない。私…、萌のこと好きだと思う」
「じゃあやっぱり、ゆんちゃんなのね?」
「そのまま、お互いの気持ちに気がつかないまま、
引っ越しした方が良かったのかもしれないのだけれど…」
そう言いながら私は煙玉を手にして地面にたたきつけた。

ボンっ!

霧が晴れるとすぐるという男の子の姿はもうなく、
萌のよく知っているゆんちゃんになっていた。
もちろんマントは外側が赤になっている。
「ああ、私は大里優(すぐる)。でも萌だけにとってはゆんちゃんだよ」
「……ゆんちゃん、ゆんちゃん!」
大粒の涙を流しながら、私の胸に飛びついてきた。
「私、ゆんちゃんのことが大好き! もうゆんちゃんから離れたくない…」
そこまで言われると、私も女冥利(?)に尽きるといったものだ。

……
…………
それから私は二人で河川敷に戻る作戦を練っていた。
「で、萌はどうやってここまで来たの?」
「どう…って、普通に。猫が出られなくなったので私が助けようと、
ここまで普通に歩いてきたけど?」
「どういうこと? この速い流れを『普通に』渡れるはずがない」
「あの時は、まだ雨が降ってなくて、無理なく来れたけど」
あ、そっか。
確かに雨が降り出したのは夕べだったからな。
「で、猫を助けた時には気付いたけど、
その時には雨が降ってきて、とても渡れるような状態じゃなかったの」
なるほど、つまり今のこの流れでは渡りきれないということか。
私一人であれば河川敷まで渡りきることはできるかもしれないが、
もう一人、厄介になるとなれば話は別だ。
まったく、こいつはいつもいつも面倒なこと引き起こして、
結果的に私がその処理を負う羽目になる。
ついさっき恋人同士になったというのに、
早くも溜め息をつくことになろうとは…。
もっともさっきの演出のために女の子になったこの体だと、
私でも危なっかしいのかもしれない。
「まあ、萌に目を瞑ってもらって、もう一度戻ったらそれで問題ないのだが…」

え…、目を瞑るって言ったな、私。
それって、人から見たら結構眩しいってことだよな。
そういえばけんちゃんも始めて変身を見た時には眩しさでしばらくの間、
目が見えなくなるとか言ってたような……。
変身する時の光によって人に知らせてみたらどうだろうか。
なかなか良策だと思った。
だが、ちょっとやそっとの光なら見逃してしまうかもしてない。
また、短い間光ったとしても、それはそれで見逃してしまうだろう。
そうなると、よほど強い光を放ちつつ、なおかつ連続して変身しなければならない。
変身の時にかかるエネルギーはそれなりにある。
しかも朝食をとってないのだから変身も制約がかかってしまう。
となれば、辺りを見渡しつつ、人がいることに気づいた時に変身する方が、
いないのにそうするよりずっと効率が良いと判断した。
それに捜索隊も派遣されていると思うので、光は直接救援信号として役立つ。
「よし、萌、誰か人が来てこないか注意深く見張っていて!」
「アイアイサー!」
「あ、…アイアイサー?」
「ゆんちゃんは怪盗キッドだから、その部下である私は命令に忠実であるべきです。
隊長、私は何としてもこの任務を遂行してみせます!」
いやいやいや、それはどこぞの軍隊みたいだったぞ。
しかしキラキラしたおめめで周囲を見渡している萌を見てると、
反論したくてもできそうになかった。
はぁ、まぁ張り切ってるだけましか。

……暫くして、
「あ、隊長。向こうに何人か人がいるのが見えます!」
「どれどれ、あぁ本当だ」
遠くにいるためはっきりしないが、捜索隊がこの付近に範囲を広げたのかもしれない。
よし、機は熟した。
「萌、今から合図を送るよ。
強い光がピカピカと光輝くから、猫は服の中に、
萌は地面に蹲っていいと言うまで目を開けちゃダメだよ」
「うん、わかった」
萌は言われたとおり服の中に猫を入れるとそのまま地面に蹲った。
さて、私の体力が尽きるのが先か、それとも捜索隊が発見するのが先か。
そう考えると身震いするが、そこでけんちゃんのよく使うあの言葉を思い出した。
『真のヒーローは逆境に立たされた時に本領を発揮するものであって、
弱きを助けようとするその思いこそ、必勝の秘訣である』
今の私はヒーローではなく、ヒロインなのだが、
確かに萌を助けようとする思いは誰にも負けてはいないかった。
けんちゃん、お前は最高の友人だよ。
今の私には迷いが一片たりともなかった。
ただ萌を救う、それだけが熱い情熱として漲っていた。

そして、私は力を解放した

ビカビカビカビカビカ
今までの中で一番強い光を、それも途切れることなく
変身することによって連射的に光を放っていった。
急激に体の中のエネルギーが消耗しているのが分かる。
お願い、早く……、早く私に気付いて……。
けんちゃんのあの言葉をもう一度思いに留め、
さらにより一層、強く光が周囲を照らしていった。
「おい、あそこを見ろ!」
「人だ、ライトか何かで救援信号を送っているぞ!」
意外と早く私たちの存在に気付いてくれたようだ。
もうこれで、私の役目は終わったようだ。
そう思うと急に緊張の糸が切れたのか、

ドサッ!

私はそのまま地面に倒れた。
「……え? ……ゆう? ゆんちゃん? ねえ、どうしたの?
…………………ゆ、ゆんちゃん!」
萌は私の姿を見て思わず飛び退いた。
「ねぇ、起きて、ゆんちゃん、
いいって言ってないのに目を開けたのは悪かったけど。
ねえ、お願いだから目を覚まして、
お願いだから、いつものように『また私を困らせることばかりしちゃって』と言ってよ!
お願い、ゆうううぅぅぅーーーーーっ!」
私の耳元で、誰かの声がしていた。
しかし、私の耳には届かなかった。

<つづく>

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