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投稿入れ替わり小説 『僕だった彼女』 <後> by.りゅうのみや

「元に戻れそうにないわね」
「そうだな」
「だったら今の状況を楽しまなきゃ!」
「どうやって?」
「決まっているでしょ、デートよ♪」
「デデデデ、デート!?」
「そう、デートよ。せっかく目の前にこんなに可愛い女性がいて、
何もしないなんて勿体無いわよ」
それはあくまでも龍一の立場から見て、
自分の美貌にうっとりするナルシスト的な要素が
あるのなら分からなくもないが、僕の方から見れば、
自分の顔にどうやって心ときめかせろというのだ!
「何、文句あるの? 元はといえばあんたがぶつかりさえしなければ……」
「わかった、わかったから行けばいいんだろ、行けば!」
どうも彼女には敵わない。
どうしてあの男はこんな凶暴娘を好きになったのだろう?
……マゾ?

「電車に乗るのも久しぶりねー、
小さい頃はよく座席を反対に座って景色を楽しんだわ。
それで靴を脱ぐのを忘れていたから、
いつも知らないおじさんのスラックスを汚していたわ」
「小さいから仕方がないとそのおじさんに同情すべきか、
それともその頃から凶暴な片鱗が見え隠れしたと考察すべきか……」
龍一の希望で二駅離れた遊園地に行くことにした。
彼女はあまり電車に乗る機会がないためか、
えらく上機嫌だが、僕にとってみれば通学の時に利用するので、
取り立ててテンションが上がるものではなかった。
むしろ通勤ラッシュと重なるため、苦い思い出しかないのだが……
しかし……
遊園地は僕が計画として練っていたデートコースでもあった。
それを目の前に映る『僕』のために巡るとは……
「どうしたの? 溜息何かついちゃって」
「いや……、好きな人と今から行くところに誘おうとしただけに、
胸が締め付けられて……」
そう言うなり龍一は頬を膨らませて不機嫌になった。
「何よ、目の前にこんなに可愛い人がいるじゃない!
この私がいるって言うのに、少しは楽しんだらどう!?」
その発言に思わず龍一の手を掴んで、前の車両に移った。
まったく、誤解を生みかねない発言で、ますます僕に戻れないじゃないか。
わざとそうしている感じではないので、他人に対する配慮に欠けるのだろう。
「あ、着いたわよ」
電車が停車してドアが開くなり、降りるとすぐに
『一番乗り―☆』と言いながらポーズを決めた。
まったく、子供というかなんというか……

歩いてすぐの所に遊園地がある。
珍しいことに入場料は各々が払うことになった。
それほど大きくはない遊園地だが、それなりにアトラクションが揃っている。
「ねぇ、まずは鏡の迷路に行ってみましょ!」
「そ、それで楽しむのって小学生とその親じゃないの?」
「いいでしょ、乙女は常に夢を見るのよ」
その顔で乙女心云々を語るのは説得力に欠けるが、
彼女の言う通りにした。
中に入ってみると壁一面が鏡になっていて、
そのために今のこの姿をあらゆる角度で見ることができる。
「こ、これが僕だというの……」
とても不思議な感覚だった。
確かに体だけは女だが、ここにいるだけで心まで女になりそうな気がする。
「あれー、加奈どうしたの? 鏡に映る自分の姿なんか見ちゃって」
「い、いや……その、可愛いなあって………」
何を言っているのだ、男なのに自分のことを可愛いだなんて!
確かに可愛いけど、それを認めてしまうなんて!
認めることで元に戻れなくなってしまう……
それは何よりも恐れていることであり、また甘美な響きでもある。
違う、違う! 女になりたくないのにぃ、なりたくなんかないのにぃ……
どうして……、自分の魅力を認めてしまったら、
元に戻りたいという意思が弱まってしまう……
「やっと認めたのね。そう、あなたはこんなに可愛い。
可愛いのだから自分に恋をしちゃってもいい。
いいのよ、自分に恋しちゃっても。
だってあんたの性格、悔しいけど私より女っぽいのだから」

かぁ~~~~っ!

一瞬で顔が真っ赤になる。
からかっているのだろうか、それとも本心なのか。
「だって私、前々から思っていたの。
顔はこんなに可愛いのに女っぽくないって。
もしかしたら今のこの姿は世を忍ぶ仮の姿じゃないかなーって。
だからあんたと入れ替わって、今の自分が何よりも自然に思えてくるの。
えへへ、変だね、私」
それは……単に凶暴娘だからじゃあ……
でもこの体でいると、まるで私まで男の自分に
疑問を投げかけてくるような感じがして、
結局十歩も歩かないうちに入り口に戻ってしまった。

続いて向かったのはジェットコースター。
私は小さい頃に経験して、それ以来嫌いになってしまった。
「わ……、私こういうの嫌いなんです。
龍一さん、引き返しましょうよ」
もはや蛇に睨まれた蛙状態だった。
怖くて怖くて足が竦(すく)む。
「怖くない怖くない、加奈ってこういうところ嫌いなんだ」
「は……はいぃっ、怖いの嫌ですぅっ!」
そう言うなり私は龍一の袖をギュっと握って必死に訴えた。
「そっかー、大丈夫だよ。私がついているから」
ナデナデ
「りゅ、龍一さん……」
あ、私の頭を撫でてくれる。
どうしてだろう……、さっきから胸の鼓動が聞こえてくる。
私、龍一と一緒にいると心がときめく。
自分が加奈という一人の女性でありたいと思って、
それが自然であるかのように思えてくる。
……流されてはダメ。
そう思っていても、もう私の心は変わってしまっている。
心が望んでいる、女性になりたいと願ってしまう……
私、自分に、そして龍一に恋をしている……
「手、握ってもいい?
私、あなたがそばにいてくれたら怖い気持ちが
和らぐような気がしてきて……」
「うん、いいわよ。
そうやっていると本当に抱きしめたくなるほど可愛いね」
その言葉にますます戻れなくなってしまう。
でも、もう戻れなくなってしまった。
だってジェットコースターの怖さも、龍一のお陰で全然怖くなかったから……

もう日が暮れてきた。
時間的にこれが最後のアトラクションになるだろう。
「私はねー、あれに乗りたいの。
あれで遠くの景色を眺めたいの」
龍一が指さしていたのは観覧車だった。
それは恋人同士が乗る金字塔のような乗り物だった。
「そそそそ、それに乗るつもり!?」
だめだ……、かなり長い時間、景色以外といえば
相手の顔しか見ることができないじゃないか。
さっきから女性としての価値観を埋め込まれているところに、
とどめの一撃を決めようとしているのと変わらないじゃないか。
そう考えると嫌悪の思いが一気に爆発した。

「もうこれ以上女性にしないで! これ以上感情の変化を味あわせないで!
辛いの……、怖いの……、私が私でなくなっちゃう……
心の変化についてこれないの……、ダメ…私、本当にダメなの……」
はっきりいって情緒不安定だった。
心はとっくに女性になっているものの、頭がそれに伴っていない。
あるいは理性が酷い葛藤となって押し寄せてくる。
そのためこれ以上変わることが怖くなってしまった。
それなら元に戻る算段を練ってもいいのだが、
それを考えるほど男としての価値観は、もう喪失している。
女になるのは怖い、でも男に戻ることもできない。
男でも女でもない中途半端な性別、それが今の私だった。
それだけにちょっとした気持ちの揺らぎで心が大きく動揺する。
私は地面に座り込んで泣き出した。
「う……うええぇん。変わりたくない、私…女になりたくない!
止めてぇ、ねぇ、お願いだから止めてよぉ!」
入れ替わったのは私のせいだったのだが、それでも誰かにすがりたかった。
その時、龍一が私を思いっきり抱きしめた。

「ごめんね……」
「え? あ……、あの…」
「ごめんね、私がちょっとふざけたばっかりに、
加奈をこんなにも悲しませちゃって……」
「りゅう……いち?」
「確かにぶつかったのは紛れもなくお前だ。
でもだからといって入れ替わったのはお前のせいじゃない。
分かっていたのに、悪ふざけでデートに誘って
困らせる結果になってしまって……」
「龍一さん……」
龍一は今までの凶暴娘ではもうなかった。
まるで愛しい恋人を傷つけてしまったことに、
自責の念を抱いている彼氏のようだった。
「もう、戻れないのだったらお前にだけ女にさせるのは歯痒くて仕方がない!
お前が女性になるのであれば、私も責任をもって男になる!」
「え……、龍一さんそれって……」
「お願いだ、私と付き合ってください!」

……
…………
時間が止まったかのような感覚。
何を言っているのか理解するのに少し時間を要した。
言っている意味を理解すると元自分の顔が突然別人のように見える。
ま、眩しい、眩し過ぎる。
あまりにも頼もしく、また恰好良く見えたので、直視できなかった。
「あれ? 加奈……ひょっとして嫌だった?」
「いえ……、凄く嬉しいです。
嬉しいけど、それはあなたの本心からなの?
信じて……いいの?」
「ああ、お前は私の彼女に理想的な女性だよ」
その言葉を聞くと私は考えるより先に龍一に飛びついた。
「私、龍一さんのこと好き!
『元私』だったから、そして龍一だから好き!」
「私も加奈のこと、好きだな」
二人はライトアップで辺りが夢色な景色の最中、唇を交わした。
初めてのキスは女性になれたことを嬉しく思うあまりよく覚えていなかった。

もうすっかり暗くなったので、二人は駅に戻りそれぞれの家に帰ることにした。
お互いの住所と駅からのルートを教え合った。
「じゃあ、もうここでお別れだね。
家、わかるよね加奈?」
「はい龍一さん。今日は本当に楽しかったです。
私、初めてのデートがあなたでよかった……」
「そう言って頂けると嬉しいな。
まぁ、これからよろしくお願いな」
「はい、さようなら龍一さん」
そう言って初めてお邪魔する、元彼女の家に向かった。

翌日……
「いっけなーい、寝坊しちゃった!
おかーさん、目覚まし鳴っていた!?」
「鳴っていても目を覚まさなかったじゃない」
「うわっ、もうこの時間!
トーストだけもらうから、服着替えていってきまーす!」
女性になっても相変わらず寝坊は変わりそうにない。
これはあの人が、寝坊癖があったのか、私の意識の問題なのか……
私は大急ぎで洗面台で顔を洗って髪をとかし、服を着替えたら家を出た。
女性になって最初の登校日で早々に遅刻なんて洒落にならない。
幸いなことに私の家は電車に乗らなくていいほど近いところなので、
少しダッシュするくらいで間に合いそうだ。

「よぉ、おはよう加奈」
え、その声は……
「りゅ、龍一さん♪」
石田龍一、つまり以前僕だった彼女だ。
その姿は以前の私のように気弱そうな表情ではなく、
物怖じしない男らしい顔つきだった。
「その制服姿とっても可愛いよ」
「そ、そんな……、私着こなしとかよく分からなくて、恥ずかしい限りです」
「ううん、そんなことないよ。
可愛かった私の体だから何を着ても似合うよ」
「あ、ありがとう龍一さん……」

キーンコーンカーンコーン

「うわっ……やっべー、予鈴が鳴っちゃった。
急ぐぞ、加奈!」
「うん、龍一さん」
二人は学校を目指して駆けていった。
秋の恋の空気をいっぱいに吸いこんで……
                (おしまい)


あとがき
TSの分類に挙げていいのか微妙だけど、入れ替わりものでした。
タイトルの命名はいつも苦労します。今回も直球です、すみません。

コメント

>お互いがだんだんと相手の性格に侵食されてきて
無理です(笑)
そんなにレベル高くないので。
まぁ、私のできる範囲で何とか主人公が強気で
相方が滅茶苦茶なよなよした甘えたに仕上げました。
タイトルはマインドちぇんじ☆、チェンジとありますけど
性格が入れ替わるのではなく、そういう役回りになってきたというのが性格ですが…
近日公開予定。

そうですそうです!

お互いがだんだんと相手の性格に侵食されてきて、
主人公でいえば我が儘で粗暴な性格に変わっていくという(笑)

是非とも書いて頂きたいです!

あ、ありがとうございます!
いや~、楽しんでいただけて何よりです。

リクって、主人公が次第に粗暴にってことですね?
う、うーむ、私の執筆レベルの限界を軽く越えているような気も……
引退を考えていたけど、リクに応えるか検討しようかな……

先日の「サッカー部へようこそ外伝」といい、
やっぱり面白かったです。

でも、どうせなら入れ替わって次第に性格まで移ってしまう(逆転?)ってのも読んでみたい気がします(笑)

お時間があれば書いていただけると嬉しいです。

いや~、サブ主人公が活発な正確だと話が創りやすくていいな~。
もっともギャグが好きな私の手が加わるため変人に仕上がりますがw

次回作は変貌の百合姫の後日談を予定しています。
多分それが最後の作品になるかと思います。

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