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投稿TS小説 魔封の小太刀(3)

by.luci

 まだ夕方だと言うのに、校舎の裏手は既に宵闇という位だった。そこが数日前、生徒の遺体があったから、かも知れない。
 そこに少年が一人、俯きながら佇んでいた。
「お前が悪いんだ。俺じゃない。俺が好きなの知っててあいつとつき合ったりしたからこうなったんだ。俺は悪く無い」
 顔を歪めた表情は、後悔からではなく愉悦からだ。身体が震えるのは恐怖ではなく明日からの楽しい日々のせいだ。
「なぁ、俺が後ろに立った時、びっくりしたか? 俺の後ろにいる奴らに落とされた時、怖かったか? 俺は爽快だったぜ、馬場」
 少年の背後にあった黒い影は、次第に大きくなって少年の身体を包み込んでいた。しかし目を瞑り悦に入っている彼には解らなかった。
「明日っから、千草は俺が慰めてやるよ。ちょっかい出す奴はこいつ等が始末してくれるしな」
 辺りに嘲笑が響いたかと思うと、それが悲鳴に変わるのに時間はかからなかった。

* * * * * * * * * * * * * * * *

* * * * * * * * * * * * * * * *

「玲先生、さようなら」
 一人一人、着替えを終った子ども達が三々五々帰って行く。数十分前まで、彼等の声が響いていた道場は、今は俺だけになっていた。
 魔を退治する、言葉にすれば格好いいが、実際には胡散臭さはあるし、実入りも少ないらしい。らしい、というのは、交渉はおやじ殿がしているから、俺は解らない。涁もきっとそうだろう。それに羽振りがいいとも思えない。
 いい大人がぶらぶらしている訳にも行かないし、昔から道場を開いていることもあって、俺が稽古をつけて日銭を稼いでいる。
 女性化して今日が初稽古になった。俺は少し期待をしていた。肉親以外には「玲」だと思われないのではないか? そんな淡い期待。
 しかしそれはあっさり裏切られた。誰も疑わない、というより元々が女としか見られていない。
 あまり言い続けるといけないと思って、おやじ殿や涁の前では考えないようにしていたが、こうして静かな場所で一人になると、違和感で心が折れそうになる。それまでの自分を否定されているような、誰も見てくれていないような。
 ここにこうしているのに、「玲」という存在は違うところを指している。実態がない、というのが適切かも知れない。
 身体の変化の戸惑いや、おやじ殿が嬉々として買ってくる女の子の服を着用することについては、毎日の生活で大分慣れてはきた。しかし、それを積極的に受け入れようと思っていない。涁も何かにつけて「女の子なんだから」というし。
 いい加減にして欲しい。早く元の姿に戻りたい。そうでなければ、精神的におかしくなりそうだ。
 戻ると言えば、稽古の最中に涁の車の音がしたな。例の賊の足取りが掴めたんだろうか。先程とは違う期待が沸き上がっていた。

「玲、朗報だ」
 相変わらず、涁は唐突だ。しかし今はその単刀直入さがいい。
「太刀の行方が分った?」
 ニヤっと笑いながら俺の側に腰を下ろした。
「今回は骨が折れたぜ。お前、●●市って知ってるか? そこに昔からウチと懇意にしてるところがあって……」
 要するに、人づてに怪しい淀みを探して、その一つがそれらしいと言う事だった。
「確信があるんだよね? なら早く行こう。夜になれば動き出すだろうし、今から行こう、涁」
「いや、今日は駄目だ。明日行く」
 直ぐにでもこの身体から解放されたいって言うのに、明日? 今日だってまだ終った訳じゃない。なぜ他人事のように冷静でいられるんだ?
 俺は立ち上がって叫んでいた。
「涁が行きたく無いなら、一人で行く! のんびり後から来い!」
「ちょっと待て玲。バックアップがいなかったらまた前回と同じだろうが。熱くなり過ぎたら見えるものも見えなくなるぞ」
「他人事だからって……! 信じて貰えてないけど、女の姿なんて早く止めたいんだっ。大体バックアップって言ったって、涁より俺の方が上だろう?! 太刀にも触れないじゃないか!」
 言った直後、俺は涁の苦々しい表情を見た。その顔と興奮し過ぎたせいか出始めた頭痛で、俺は幾分冷静になっていた。
「……どう思おうと勝手だけどな。おやじに了解して貰わなくちゃいけないだろうが。どうせおやじの事だ、明日行けって言うだろう? だから明日なんだよ」
 そのまま立ち上がり、背を向けて歩き出した。

 冷静になってみれば、戻りたい一心で涁に当たっただけかも知れない。それに、言うべきじゃない事を言ってしまった。
 御厨の家は、代々魔封の太刀を使い、人に仇なす魔を封じて来た。しかしこの太刀を扱える人間は、御厨の家でも、その代に一人いるかいないか。おやじ殿の代は兄弟がいなかったためか、使える人間がいなかった。誰も鞘から抜く事も出来なかった。魔封を生業としてきただけに、経済的には大打撃だった。だから涁と俺が産まれた時は期待された。
 特に涁は長男だっただけに期待が大きかったようだ。俺は物心ついた時には太刀が傍らにあった。尤も、この辺の記憶は曖昧なんだが……。
 剣の腕は別としても、涁も好きで内偵をしている訳ではない。十分解っていた筈なのに……。
 おやじ殿の部屋に行こうというのか、道場から出ようとしている涁を慌てて追いかけた。
「……し、涁?」
 涁の着ているスーツの袖を軽く掴んだ。涁が立ち止まると、喜怒哀楽の無い視線が降ってきた。
「あ、いや、ごめん。言い過ぎた」
「……」
「涁……」
「言葉遣い! 妹だろうと弟だろうと、もっと年上をリスペクトしろ。 ……もう怒ってねーよ」
 感じた事も無かったけれど、涁の大きな手がぽんぽんと俺の頭を叩いた。涁の顔を覗こうとしたけれど、大股で歩き始めたそれを見る事は出来なかった。

<つづく>

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