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「カレーライス」 第一章(1)
作.ダークアリス キャライラスト&挿絵:キリセ
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第1章 医師:罪深きもの
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(1)

人は、どうしてこれほどまでに、残酷になれるのだろうか?
誰もが心の中に、悪魔を眠らせているのだろうか?
それとも、きっかけさえあれば、自らを悪魔に変えていくのだろうか?
できれば自分は一生、そんな悪魔とは無縁でいたかった。
だが、いま私がしていることは何だろうか?
一度人の道から外れたものは、二度と元の道に戻ることなど、出来ないのだろうか……?
「先生、何をしてらっしゃるの?」
薄手の白いワンピースだけを纏った少女が、心配そうに私の顔をうかがう。
長い黒髪に赤い瞳。華奢で細い体には、抜けるような白い肌の、美しい少女。
私がこの娘の体を“造った”ときは、そうだった。
だが、今のこの娘の姿はどうだ?
濡れるように美しかった黒髪は、艶のないかさかさの白髪に変わり、やせ衰えた小さな体は、赤黒い傷痕と変色した痣で覆われ、左の腕には囚人を思わせる、鈍い銀色の腕輪が嵌められている。
いったいどれほどの虐待をその身に受けたら、これほどにまで痛々しい姿に変わってしまうのだろうか?
「どうしたら、葵を守ってあげられるのかな、と思ってね」
「守る? でも先生、葵は先生に守られていますよ」
「うーん、なんていうか……そうだな、葵がもっと幸せになれる為の方法だよ」
私は椅子の向きを変えて葵に向き直り、腕を広げた。
すると葵はうれしそうに近づいてきて、私に抱きついた。
「葵はこうして、先生のそばにいられるだけで、幸せです」
葵は潤んだ瞳で私を見つめ、手をとって自分の体に触れさせる。
好意を寄せる相手に性的な奉仕をすることこそ、自分の役割であり、またそれを自らの喜びだと思い込まされているのだ。
深層意識の奥深くにまで刷り込まれた、後学習を消すことはとても難しい。
個人の人格を無視したこの処置は、“洗脳”といって良かった。
こんな事をされた人間が、幸せになれるはずが無い。
一生を籠の中の鳥のように、生きていくしかないだろう。
だが私は、葵にはできる限りのことをしてやりたかった。
知らずにとはいえ、このプロジェクトに関わってしまった者の責任として、あの口先だけの連中から葵を守らなくてはならない。
“犯した罪に対する相応の処置”“性犯罪の抑止”などという美辞麗句を隠れ蓑に、実態は偏った思想と、新たな差別構造を作り出しただけではないのか!
現にこうして、何の罪の記憶もない少女に、籠の中ですら怯える様な生活を強いているではないか!
「先生、どうしたの?」
葵が不安そうな顔で私を見つめる。
「なんでもないよ。怖がらせてしまったかな?」
ぷるぷると頭を振って、私に顔を押し付ける。
葵は私の感情の変化にとても敏感だ。心の中に芽生えた、敵意を感じ取ったのだろう。
生きる為には、そうした術を学ぶ必要があったのかもしれない。
そっと抱きしめて頭を撫でてやると、葵は顔を上げて安心したように笑顔を見せた。
「部屋が乾燥しているので、喉を痛めたようだ。何か飲みものを持ってきてくれないかな?」
「はい、先生」
葵が部屋の戸を閉めると、私はため息を付いた。
いけない、やっとここまで回復したのだから、葵を不安にさせるようなことをしては。
だが、聖人君子のように心を常に平穏に保ち、社会とかかわりを持つことのできない少女の面倒を一人で見続けるのは、やはり無理がある。
ストレスの溜まる仕事を抱えながら、幼い子供を育てているようなものだ。
そのため葵にも、ずいぶんと寂しい思いをさせている。
それにもう、私には余り時間が無い……。
運ばれてきた茶を一口すすり、傍らに立つ葵を見あげた。
褒めて貰うのを待っている、不安気な表情の葵。
私が手招きをしてやると、きゅっと抱きついてくる。
葵の背中に手を回し、額を寄せて頭を撫でてやると、やっと安心したように笑顔を見せた。
<つづく>
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第1章 医師:罪深きもの
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(1)

人は、どうしてこれほどまでに、残酷になれるのだろうか?
誰もが心の中に、悪魔を眠らせているのだろうか?
それとも、きっかけさえあれば、自らを悪魔に変えていくのだろうか?
できれば自分は一生、そんな悪魔とは無縁でいたかった。
だが、いま私がしていることは何だろうか?
一度人の道から外れたものは、二度と元の道に戻ることなど、出来ないのだろうか……?
「先生、何をしてらっしゃるの?」
薄手の白いワンピースだけを纏った少女が、心配そうに私の顔をうかがう。
長い黒髪に赤い瞳。華奢で細い体には、抜けるような白い肌の、美しい少女。
私がこの娘の体を“造った”ときは、そうだった。
だが、今のこの娘の姿はどうだ?
濡れるように美しかった黒髪は、艶のないかさかさの白髪に変わり、やせ衰えた小さな体は、赤黒い傷痕と変色した痣で覆われ、左の腕には囚人を思わせる、鈍い銀色の腕輪が嵌められている。
いったいどれほどの虐待をその身に受けたら、これほどにまで痛々しい姿に変わってしまうのだろうか?
「どうしたら、葵を守ってあげられるのかな、と思ってね」
「守る? でも先生、葵は先生に守られていますよ」
「うーん、なんていうか……そうだな、葵がもっと幸せになれる為の方法だよ」
私は椅子の向きを変えて葵に向き直り、腕を広げた。
すると葵はうれしそうに近づいてきて、私に抱きついた。
「葵はこうして、先生のそばにいられるだけで、幸せです」
葵は潤んだ瞳で私を見つめ、手をとって自分の体に触れさせる。
好意を寄せる相手に性的な奉仕をすることこそ、自分の役割であり、またそれを自らの喜びだと思い込まされているのだ。
深層意識の奥深くにまで刷り込まれた、後学習を消すことはとても難しい。
個人の人格を無視したこの処置は、“洗脳”といって良かった。
こんな事をされた人間が、幸せになれるはずが無い。
一生を籠の中の鳥のように、生きていくしかないだろう。
だが私は、葵にはできる限りのことをしてやりたかった。
知らずにとはいえ、このプロジェクトに関わってしまった者の責任として、あの口先だけの連中から葵を守らなくてはならない。
“犯した罪に対する相応の処置”“性犯罪の抑止”などという美辞麗句を隠れ蓑に、実態は偏った思想と、新たな差別構造を作り出しただけではないのか!
現にこうして、何の罪の記憶もない少女に、籠の中ですら怯える様な生活を強いているではないか!
「先生、どうしたの?」
葵が不安そうな顔で私を見つめる。
「なんでもないよ。怖がらせてしまったかな?」
ぷるぷると頭を振って、私に顔を押し付ける。
葵は私の感情の変化にとても敏感だ。心の中に芽生えた、敵意を感じ取ったのだろう。
生きる為には、そうした術を学ぶ必要があったのかもしれない。
そっと抱きしめて頭を撫でてやると、葵は顔を上げて安心したように笑顔を見せた。
「部屋が乾燥しているので、喉を痛めたようだ。何か飲みものを持ってきてくれないかな?」
「はい、先生」
葵が部屋の戸を閉めると、私はため息を付いた。
いけない、やっとここまで回復したのだから、葵を不安にさせるようなことをしては。
だが、聖人君子のように心を常に平穏に保ち、社会とかかわりを持つことのできない少女の面倒を一人で見続けるのは、やはり無理がある。
ストレスの溜まる仕事を抱えながら、幼い子供を育てているようなものだ。
そのため葵にも、ずいぶんと寂しい思いをさせている。
それにもう、私には余り時間が無い……。
運ばれてきた茶を一口すすり、傍らに立つ葵を見あげた。
褒めて貰うのを待っている、不安気な表情の葵。
私が手招きをしてやると、きゅっと抱きついてくる。
葵の背中に手を回し、額を寄せて頭を撫でてやると、やっと安心したように笑顔を見せた。
<つづく>
コメント
カレーライスはアイスクリィムに続く食べ物シリーズでしたっけか。
手間も時間もたっぷり掛けたカレーライスは、毎日更新でお送りする予定です。
手間も時間もたっぷり掛けたカレーライスは、毎日更新でお送りする予定です。
待ってましたの。
ありすちゃがエロモード全開になるのを。
とてもとても楽しみ。
ありすちゃがエロモード全開になるのを。
とてもとても楽しみ。
今回の話は、ハードコア陵辱モノです。過去あまり書いていない芸風のお話なので、P.N.もちょっと変えてw
話が進んでいくと、いろんなところから液体が出てきちゃうように、がんばって書きました。
文庫本一冊ほどの分量がありますので、ゆっくりとお付き合いください。
話が進んでいくと、いろんなところから液体が出てきちゃうように、がんばって書きました。
文庫本一冊ほどの分量がありますので、ゆっくりとお付き合いください。
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ワタシ的にはミリタリーパワーぐらいで抑えちゃってます。今回はシチュエーションとストーリーに重点を置いたので、エロ表現はキリセさんのイラストで補完してくださいまし。
アフターバーナー全開にできそうなお話は、電脳世界的なネタでひとつプロットを考えてはいるんですが、どう文章で表現するかってとこで悩んでいます。サイバーパンクって難しいなぁ。
>食べ物シリーズ
ああっ、なんか食いしん坊だと思われてる?!
「アイスクリイム」とは方向性がまったく違うので念のため。
いまのところアクセスアップにあまり貢献していないみたいで、すまんこってすm(_ _)m