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「カレーライス」 第二章(1)

作.ダークアリス キャライラスト&挿絵:キリセ

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第2章 葵:贖罪
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(1)

 ワタシは胸をどきどきさせながら、お部屋のベッドに潜り込んだ。
 先生は優しい。
 何も判らない振りをして、子供みたいに甘えて、泣いて、笑って、食べて、そしてエッチなことをしてもらっていれば、それだけでとても幸せ。
 ここは私がようやく辿り着いた、心休まる場所。
 もう、誰にも邪魔されたくない。
 面倒くさいことは、何も考えたくない。
 先生にペットみたいに可愛がられて、先生がいつもゴキゲンならば、葵は他にはもう何もいらない。
 この幸せだけをずっとかみ締めていたいのに、一人でいると忌まわしい記憶が甦ってくる。
 それがいつのことだったかも、もう定かではないけれど、一生消えない心の傷。
 ワタシはこの傷口が広がっていくのが怖い。
 先生が塞いでくれなかったら、きっとワタシはバラバラになってしまう……

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


「君には、OOL法の最初の被験者になってもらう」
「OOL法? なんだいそれ?」

 連続強姦殺人の犯人として捕らえられ、有罪が確定して死刑になると思っていた俺に、刑吏は聞きなれない事を言った。

「“Outside Of Law”、法の庇護を受けないものという意味だ。幾つかのプログラムが予定されているが、死刑制度を根絶するための、実験的な贖罪の方法のひとつだ」
「贖罪? 俺は死刑にはならないってことですか?」
「終身刑というのが正しいだろう。生きている限り、君には犯した罪を償ってもらう」
「いっそのこと、死刑にしてくれたほうが楽なんですがね。この世に未練はないし、さっさとやっちゃってくださいよ」
「君には反省の色が見られない。したがって、死刑という安息は与えられないとの裁判員たちの一致した見解だった。そこで、君には新しく制定される予定のOOL法の、被験者第1号となってもらうことになったのだよ」
「それはさっき聞きましたよ。で、具体的にはどうすりゃいいんですか?」
「君には被害者と同じ体験をしてもらう。被害者のほとんどはもうこの世にいないがね。被害者がどんな気持で君に殺されたのか。残された遺族の悲しみがどんなものか。それをその身で味わうことが君への罰であり、遺族への償いとなる。そして罪を償った後は、同種の犯罪を防止するための、人柱となるのだ」
「人柱?」
「君の犯した連続強姦殺人という犯罪は、今後も根絶は難しいだろう。だがそれが合法であれば、罪に問うものはいない」
「そんなところに生まれたかったですね」
「そう思う犯罪者、いや、犯罪予備群の歪んだ願望の捌け口に、君にはなってもらう」
「俺は男ですよ。そんな物好きがいますかねぇ? いや、ゼロだとは言わないが」
「君の体は作り変えられる。君の犯した罪を償うのにふさわしい。くっくっく……」

 刑吏の下卑た笑いに、俺は怖気を感じた。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 見知らぬ天井。目を覚ますと、俺は自分の体が小さくなったような、変な違和感があった。
 全身がだるく、手を動かすのも億劫に感じたが、体を軋ませながら上体を起こした。
 かけられていたシーツがはらりと落ちて、自分の体が目に入った。
 いやに白い……だがなんだ、これは? 乳房が膨らんでいる?
 決して大きいとはいえなかったが、触ってみると柔らかな弾力で指が押し返され、同時に胸に“触られた”感覚がした。

 「こ、これは……!」

 慌ててシーツをめくって下腹部を確かめると、見慣れた自分のものはなく、無毛の股間の下のほうに、肉の割れ目があった。

「気がついたかね?」

 いつの間にか部屋に入ってきた男に声をかけられた。

「こ、これは一体!?」
「見たとおりだよ。君の体を作り変えた。罪を償ってもらうためにね」
「な、なんだと!」

 腕を伸ばし男に掴みかかろうとすると、左の手首の直ぐ上に、銀色の幅広の輪が付けられているのに気がついた。

「おや? 君は左利きだったか? まぁそんなことはどうでも良いが」
「作り変えたってどういうことだ。それにこの腕輪はなんだ!」
「太るなよ。腕を切り落とさなきゃならなくなる」

 男は俺の質問には答えず、冷たい声で言い放った。
 その男の態度に、俺は本能的に恐怖を感じた。

 そして少女の体に作り変えられた俺は、屈辱的な――洗脳といっていい教育プログラムを受けさせられた。

 そして数ヵ月後には、奴隷という言葉さえ生易しい、地獄の日々に叩き堕とされた。

 俺の処女を奪ったのは、俺が犯した犯罪の被害者遺族だった。でも性行為の結果などではなかった。
 まだ違和感の残る女の体を裸に剥かれて、身動きできないように縛り付けられ、男性器を模した木の棒を、無理矢理にねじ込まれたのだ。
 あまりの衝撃に俺は嘔吐しかけた。だが口枷を嵌められ、逆流した胃液の苦みを口中に留めさせられたまま、股間から血が噴出すまで、突付き続けられた。
 激痛に身をよじりながら、赦しを請うこともできないままに気を失い、気がついたら全裸で、どこかの公園に縛り付けられていた。
 いつの間にか集まってきた浮浪者たちに輪姦されながら、俺は自分が同じ仕打ちをした被害者の、恐怖に満ちた顔を思い出していた。
 自分もあんな顔をしているのだろうかと、ぼんやりと考えながら、激痛でさえも麻痺しかけた体に、無抵抗のまま陵辱を受け続けた。


 夜明け近くになってようやく開放された。だが起き上がる気力もなく、冷たくてざらざらとした硬い地面の上で、俺はボロボロになって異臭を放つ精液にまみれていた。
 人の気配を感じて見上げると、中年の女が俺を見下ろしていた。
 その瞳は、ぞっとするほど冷たい光を放っていた。
 まるで、“今すぐにでも殺してやる”といわんばかりに。

 (もう、赦してくれ……)

 慈悲を乞う声が、喉まででかかった。
 だが女の目からは殺気が消え、感情のこもらない笑みを浮かべた。

「今が冬でなくて良かったわね。もしそうなら、あなたは寒さで凍え死んでいたわ。私たちの娘みたいに!」

 そう言い放って、俺につばを吐きかけて去っていった。

 何かを言う気力も無く、その場に寝転がされたまま、俺は文字通り全身の痛みが少しでも和らぐことを祈りつつ、じっと目を閉じていた。
 しばらくすると背広姿の男たちに、毛布で包まれて抱えられ、車に乗せられた。

「今度はどこに、連れて行かれるんだい?」

 そう尋ねたが、男たちは一言も発しなかった。

<つづく>

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陰惨で(・∀・)イイ!!

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