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1300万ヒット記念作品の2 合成妖獣ブラック(前編)
作.りゅうのみや
キャライラスト.hazike

「レイ将軍、もはやこれまでです!
今すぐこの砦を放棄すべきです」高台で戦況を見張っていた兵士がそう告げた。
王都より西にある荒野からゴブリン部隊が襲撃してきた。
知能が低いとはいえ剣の達人で、戦闘経験も豊富なのか我が王国騎士団を徐々に追い詰めていった。
ハイドライドにこの人ありといわれた老将軍も明らかに焦りが見られる。
「……そうか、ここで戦力を失えば王都そのものを危機にさらしてしまうか……
悔しいが戦力温存のため南東にあるダース城塞まで撤退しろ!
そこが最終防衛ラインになるであろう」
「はっ、直ちに撤退の合図を送ります!」
そう答えるとすぐに合図を鳴らすために去っていった。
……ふっ
敗戦か。
この砦は南に位置する港町バレンシアを防衛する重要拠点だというのに、
王都を防衛するために見捨てることになるとは……
財政の大半を海洋貿易で担っているだけに、
放棄すれば恐らく半年もすれば祖国は財政破綻により滅亡するであろう。
それに……、三千もの住民を見殺しにせざるを得ないとは……
王都のために多少の犠牲をいとわない私は非道かもしれない。
しかし、他に道はないのだ。
すまない、バレンシアの住民よ……
砦から命からがら逃げ伸びた兵およそ二千五百。
陛下より与えられた半数の兵力を喪失してダース城塞での守勢を余儀なくされた。
歴史によると四百余年間敵の侵攻を
防いだといわれる鉄壁の守備力を誇る最後の砦である。
「将軍、これ以上の敗北はできない状態に陥っております」
「グロッサム、それくらいわかっておる」
「もはや一刻の猶予はないと存じます。
ここはやはり古文書にあるとおり、
合成妖獣の運用を検討されてはいかがですか」
「貴様、わかって言っているのか!」
普段は温厚な老将軍だが、
グロッサム副官が古文書のことを口にすると途端に激昂した。
ハイドライド城にまつわる古文書にはこうあった。
≪闇より現れし怪物あり
その者、地のあらゆる動物より遥かに強し
太刀打ちするには毒には毒をもって制するべし
すなわち人間と怪物を合体させるべし≫
辛うじて読める内容は想像を絶するものだった。
人間と怪物を足し合わせるというのか……
その他の記述はボロボロに風化してとてもでないが解読できる状態ではなかった。
他にも対処法が載っているのかもしれないが、
残念ながらその古文書から得られる情報はそれくらいしかなかった。
「わかっております。
しかし、それ以外の他の手段が一体あるというのでしょうか。
持てる全ての戦力をもってしても敗北を喫したこの状況に!」
私は右手を強く握りしめた。
自分の非を指摘されたのが悔しいからではない、
私が及ばないばかりに非道な合成妖獣を生み出す
という状況が歯痒くて仕方がなかったからだ。
「確かに合成妖獣を用いなければ
屈強なゴブリン集団に打ち勝つことはできないだろう、
だがしかし、それで本当に我々の勝利といえるのか、グロッサム」
「将軍、何が言いたいのです?」
「わかっているはずだ、魔族の者とそう変わらないのだよ。
古にこういう化け物が存在したという、合成魔獣キマイラを!」
その昔、人間と魔族との争いがあったとされている。
戦争が膠着状態に陥った時、
魔族のある者が地上にある生物を用いて新たな魔獣を生み出した。
ライオンの頭と羊の胴体、蛇の尻尾を兼ね備えた得体も知れない生命体。
一時はキマイラによって人間は絶滅寸前までおいやられたらしい。
自然界に存在する動物を誤用して、
虐殺するために利用する魔族にどれほどの憎悪を抱いたか計り知れない。
いくら戦いに勝つためとはいえ、
合成妖獣を生み出すというのは耐えがたいことだった。
どうして人間が魔族と同じように身を落としてよいだろうか……。
「人道的なことはどうでもよいと考えております。
それよりもダース城塞を失うとハイドライド及び
周辺の都市合わせて五万人の命を危険に晒すことになります」
「むぅ……」
昔からグロッサムはそういう男だった。
合理的な考え方に傾き過ぎるために正邪の判断を二の次にしてしまう。
しかしその一方でこのままでは砦を奪い返して
バレンシアを解放することも不可能である。
いくら鉄壁の守備を誇る城塞といえども、半年すれば財政破綻により内部から崩壊する。
決定的な戦力をいち早く戦列に加えることは急務であるのは確かである。
「……くっ、苦々しいが合成妖獣の件、貴様に任せる」
重い口から出た言葉はグロッサムの提案に同意する内容だった。
「はっ、最悪の状況を想定して、実験段階ではありますが
合成妖獣の研究に取り掛かっております。
後は手頃な人間さえ整えればすぐにでも出来上がると存じます」
「何、今何と言ったのか!?」
私はあまりの出来事に耳を疑った。
「貴様、あれほど私が口を酸っぱくして忠告したのを忘れたわけではないだろう!」
「へぇ、ちゃんと聞いておりますぞ。
『合成魔獣を作るな』と。
しかしそのための実験については一言も口にされたことはありませんが」
「なっ……! 貴様……」
狡猾なグロッサムの性格をすっかり忘れていた。
こやつがそういった相談をする時は、いつも私が軍議で忙しい時に持ちかけていた。
当然忙しいので十分な対応をせず、一言怒鳴りつける程度に済ませていた。
そうか……今まで謀られていたのか。
「それでは早速作業に取り掛かります。
では、これにて失礼」
そう言うなりそそくさと去っていった。
「……人というものは、その内に魔族の心が入っているのかもしれんな」
誰に言うわけでもなく、ただそう呟いた。
「あちゃー、数学が赤点か、参ったな」
僕はポリポリと頭を掻いてそう呟いた。
もう一度通知表に目を通して見る。
国語4 古典3 数学2 英語3 社会3 理科3…………
他の教科も決して良くない評価に家に帰るのが凄く嫌になってきた。
親に見せられないな、これは。
僕は溜め息混じりに自宅のネットを開いた。
こう気分が凹んでいる時はオンラインゲームでもしようか。
そう思いgoogleで無料のゲームはないか検索してみた。
「えーと何々、ゴブリンによる侵略から一つの小国家を守れ……か」
どうやら主人公、つまり自分の分身はゴブリンに対抗すべく、
怪物との合体を果たして強大な力を得るといったストーリーのようだ。
へぇ、メガ●ンみたいな感じなのかな。
ちょっぴり興味を抱いた僕は紹介されたゲームに入会登録することにした。
登録に必要な要項に目を通してみた。
えーっと名前に性別、それに……身長に体重?
なぜ登録にそのようなものを記入する必要があるのだろうか。
不可解な要項はそれだけではなかった。
血液型から握力や視力など、基礎運動能力や僕の身体的特徴を
訊ねる内容がほとんどだった。
なぜこんなものが必要になるのだろう。
普通ならそこで警戒心を抱くべきところを、
気落ちして冷静な判断ができなかったせいだろう、
促されるままに記入していった。
「よしっ、後は同意ボタンを押せば登録完了っと」
僕は利用規約の内容など全く目を通さず
『同意する』ボタンをクリックした。
すると突然意識が朦朧としてきた。
眠気を催す凄く不快な気分……
「うぅっ、これは一体……?」
僕は机に顔を伏せた状態で意識を失った。
<つづく>
キャライラスト.hazike

「レイ将軍、もはやこれまでです!
今すぐこの砦を放棄すべきです」高台で戦況を見張っていた兵士がそう告げた。
王都より西にある荒野からゴブリン部隊が襲撃してきた。
知能が低いとはいえ剣の達人で、戦闘経験も豊富なのか我が王国騎士団を徐々に追い詰めていった。
ハイドライドにこの人ありといわれた老将軍も明らかに焦りが見られる。
「……そうか、ここで戦力を失えば王都そのものを危機にさらしてしまうか……
悔しいが戦力温存のため南東にあるダース城塞まで撤退しろ!
そこが最終防衛ラインになるであろう」
「はっ、直ちに撤退の合図を送ります!」
そう答えるとすぐに合図を鳴らすために去っていった。
……ふっ
敗戦か。
この砦は南に位置する港町バレンシアを防衛する重要拠点だというのに、
王都を防衛するために見捨てることになるとは……
財政の大半を海洋貿易で担っているだけに、
放棄すれば恐らく半年もすれば祖国は財政破綻により滅亡するであろう。
それに……、三千もの住民を見殺しにせざるを得ないとは……
王都のために多少の犠牲をいとわない私は非道かもしれない。
しかし、他に道はないのだ。
すまない、バレンシアの住民よ……
砦から命からがら逃げ伸びた兵およそ二千五百。
陛下より与えられた半数の兵力を喪失してダース城塞での守勢を余儀なくされた。
歴史によると四百余年間敵の侵攻を
防いだといわれる鉄壁の守備力を誇る最後の砦である。
「将軍、これ以上の敗北はできない状態に陥っております」
「グロッサム、それくらいわかっておる」
「もはや一刻の猶予はないと存じます。
ここはやはり古文書にあるとおり、
合成妖獣の運用を検討されてはいかがですか」
「貴様、わかって言っているのか!」
普段は温厚な老将軍だが、
グロッサム副官が古文書のことを口にすると途端に激昂した。
ハイドライド城にまつわる古文書にはこうあった。
≪闇より現れし怪物あり
その者、地のあらゆる動物より遥かに強し
太刀打ちするには毒には毒をもって制するべし
すなわち人間と怪物を合体させるべし≫
辛うじて読める内容は想像を絶するものだった。
人間と怪物を足し合わせるというのか……
その他の記述はボロボロに風化してとてもでないが解読できる状態ではなかった。
他にも対処法が載っているのかもしれないが、
残念ながらその古文書から得られる情報はそれくらいしかなかった。
「わかっております。
しかし、それ以外の他の手段が一体あるというのでしょうか。
持てる全ての戦力をもってしても敗北を喫したこの状況に!」
私は右手を強く握りしめた。
自分の非を指摘されたのが悔しいからではない、
私が及ばないばかりに非道な合成妖獣を生み出す
という状況が歯痒くて仕方がなかったからだ。
「確かに合成妖獣を用いなければ
屈強なゴブリン集団に打ち勝つことはできないだろう、
だがしかし、それで本当に我々の勝利といえるのか、グロッサム」
「将軍、何が言いたいのです?」
「わかっているはずだ、魔族の者とそう変わらないのだよ。
古にこういう化け物が存在したという、合成魔獣キマイラを!」
その昔、人間と魔族との争いがあったとされている。
戦争が膠着状態に陥った時、
魔族のある者が地上にある生物を用いて新たな魔獣を生み出した。
ライオンの頭と羊の胴体、蛇の尻尾を兼ね備えた得体も知れない生命体。
一時はキマイラによって人間は絶滅寸前までおいやられたらしい。
自然界に存在する動物を誤用して、
虐殺するために利用する魔族にどれほどの憎悪を抱いたか計り知れない。
いくら戦いに勝つためとはいえ、
合成妖獣を生み出すというのは耐えがたいことだった。
どうして人間が魔族と同じように身を落としてよいだろうか……。
「人道的なことはどうでもよいと考えております。
それよりもダース城塞を失うとハイドライド及び
周辺の都市合わせて五万人の命を危険に晒すことになります」
「むぅ……」
昔からグロッサムはそういう男だった。
合理的な考え方に傾き過ぎるために正邪の判断を二の次にしてしまう。
しかしその一方でこのままでは砦を奪い返して
バレンシアを解放することも不可能である。
いくら鉄壁の守備を誇る城塞といえども、半年すれば財政破綻により内部から崩壊する。
決定的な戦力をいち早く戦列に加えることは急務であるのは確かである。
「……くっ、苦々しいが合成妖獣の件、貴様に任せる」
重い口から出た言葉はグロッサムの提案に同意する内容だった。
「はっ、最悪の状況を想定して、実験段階ではありますが
合成妖獣の研究に取り掛かっております。
後は手頃な人間さえ整えればすぐにでも出来上がると存じます」
「何、今何と言ったのか!?」
私はあまりの出来事に耳を疑った。
「貴様、あれほど私が口を酸っぱくして忠告したのを忘れたわけではないだろう!」
「へぇ、ちゃんと聞いておりますぞ。
『合成魔獣を作るな』と。
しかしそのための実験については一言も口にされたことはありませんが」
「なっ……! 貴様……」
狡猾なグロッサムの性格をすっかり忘れていた。
こやつがそういった相談をする時は、いつも私が軍議で忙しい時に持ちかけていた。
当然忙しいので十分な対応をせず、一言怒鳴りつける程度に済ませていた。
そうか……今まで謀られていたのか。
「それでは早速作業に取り掛かります。
では、これにて失礼」
そう言うなりそそくさと去っていった。
「……人というものは、その内に魔族の心が入っているのかもしれんな」
誰に言うわけでもなく、ただそう呟いた。
「あちゃー、数学が赤点か、参ったな」
僕はポリポリと頭を掻いてそう呟いた。
もう一度通知表に目を通して見る。
国語4 古典3 数学2 英語3 社会3 理科3…………
他の教科も決して良くない評価に家に帰るのが凄く嫌になってきた。
親に見せられないな、これは。
僕は溜め息混じりに自宅のネットを開いた。
こう気分が凹んでいる時はオンラインゲームでもしようか。
そう思いgoogleで無料のゲームはないか検索してみた。
「えーと何々、ゴブリンによる侵略から一つの小国家を守れ……か」
どうやら主人公、つまり自分の分身はゴブリンに対抗すべく、
怪物との合体を果たして強大な力を得るといったストーリーのようだ。
へぇ、メガ●ンみたいな感じなのかな。
ちょっぴり興味を抱いた僕は紹介されたゲームに入会登録することにした。
登録に必要な要項に目を通してみた。
えーっと名前に性別、それに……身長に体重?
なぜ登録にそのようなものを記入する必要があるのだろうか。
不可解な要項はそれだけではなかった。
血液型から握力や視力など、基礎運動能力や僕の身体的特徴を
訊ねる内容がほとんどだった。
なぜこんなものが必要になるのだろう。
普通ならそこで警戒心を抱くべきところを、
気落ちして冷静な判断ができなかったせいだろう、
促されるままに記入していった。
「よしっ、後は同意ボタンを押せば登録完了っと」
僕は利用規約の内容など全く目を通さず
『同意する』ボタンをクリックした。
すると突然意識が朦朧としてきた。
眠気を催す凄く不快な気分……
「うぅっ、これは一体……?」
僕は机に顔を伏せた状態で意識を失った。
<つづく>
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