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1300万ヒット記念作品の2 合成妖獣ブラック(後編)

作.りゅうのみや

鉄格子越しに見える男、ボストンが私の監視役となった。
彼からこれまでの経緯を説明してもらった。
あの猫は本来は妖獣として恐れられている存在だが、
一部は民家に住み着き残飯を漁っていくうちに
人に慣れて愛玩用として飼われることもあるらしく、
それほど凶暴ではないらしい。
中には人に恋することもあり、それに付け込んで合成妖獣計画を発案したようだ。
猫娘の意志は消えてしまったのかどうかはまだ分からない。
少なくともまだ見つかっていない。

あの緑の液体はマインドスライムが原料となっているようだった。
一度飲み込まれたら最期、
人の意志を溶かし思考を失ったところで
ゆっくりと消化して同化する化物らしい。
そう言えばあの培養液に浸された僕は、意識が朦朧として
言われるままに猫娘になるって言ってしまった。
そして、僕という存在は猫娘に取り込まれてしまった。
どうかしている、今になって思えば正常な判断が下せるのに……
でも、今のこの姿に嫌悪感はない。
極上の毛が凄くぽかぽかして温かい。
泣きそうになって目を擦れば凄く気持ち良くて、
いつの間にか蔓延の笑みを浮かべてしまう。

私、自分に恋してしまった。

「さあ、手荒なことはしたくないが、
行きたくないというのなら無理にでも連れて行く」
「私を戦争の道具に使おうというの?」
何を馬鹿なこと言ってるんだろう、自分で立候補したくせに。
「まぁ、言い方を悪くすればそうなるかな。
だがお前の態度次第で待遇も少しは良くする」
もう私には他の道などなかった。
以前の『僕』はもう死んでしまった。
今あるのはこの猫娘の体だけ。
だからもう以前の生活を期待することはできない。
「わかりました、私を生かしてくれるのでしたら
できる限りのことをします」

忠誠を誓うとようやく軟禁状態から解放された。
正直猫娘になったからといって特に目立った変化はないと思う。
本当に未知の敵に自分の能力が発揮されるのだろうか。
「さて、お前の他にも異世界からやってきた戦士がいるのだが……」
そこまで言ってボストンは口を濁した。
「にゃ? どうしたの、何か問題でも?」
ところどころ猫語が混ざるが、会話には支障がないので気にしないようにした。
それにしても私以外に犠牲者がいるとは……
「にゃあん、にゃあにゃあ」
背後から猫の鳴き声がした。
振り向くとそこには私と同じ猫娘が四つん這いになっていた。
「うわっ、いくら自分が猫娘だからってその姿勢はまずいってば!」
私はポンポンと軽く頭を叩いた。

「ふにーっ、ふーっ!」
「え!? お、お前…………まさか言葉が!」
どうやら彼女(?)には人間の言葉を使えなくなったようだ。
いや、実際には私にはある程度だが、何を言っているのかが分かるのだが、
話す能力という点では猫と同程度に陥ったようだった。
「この通り、我々にはそいつに指示などできんのだよ。
人間の言葉を使えないだけでなく、こちらの言葉も理解できないようだ」
「それって…………」
もはや完全に猫と変わらなかった。
もしかしたら思考までは冒されてないかもしれないが、
コンタクトをとれる方法がなければ意味はなかった。

「ボストン、お前ってやつは……!」
指に力を込めて爪を立てて、フーフーと粗い
息遣いをしながらボストンに抗議した。
「断っておくが、俺ならそんな非道なことはしない。
この国は確かに徴兵制があって、二十歳以上の男子は強制的に兵役に就く。
だが、自然に反する合成妖獣を、俺は認めてはいない」
「だったら…………」
「上の決定だ。
合成妖獣の件を知ったのは、既にお前らが変化を遂げた後だった」
ボストンは遠くを見つめるような、複雑な表情をした。

それ以上、ボストンに抗議するのは無意味に思えた。
それよりこの猫娘をどうするかを考える必要があった。
彼女たちはどんな気持でいるのだろうか。
「なぁ、お前は今何を思っているの?」
「にゃーにゃーにゃー(かつお節! 煮干し! 食べたい!)」
あ、あれ?
さっきまで断片的にしか分からなかった猫語を、
今では正確に理解できる。
言っている内容は片言だったけど、理解できたことが嬉しかった。
「かつお節と煮干しかー、言われると私も欲しくなってきちゃった」
「にゃ、にゃ、にゃ(ねずみも! モグラも! 雀も! 狩りたい!)」
「ちょ、ちょっと! そんなかわいい顔して小動物を狩ったらダメにゃ!」
「にゃあにゃあにゃあ(いや、ご飯欲しいにゃ!)」
「わかった、わかったから狩りだけは勘弁……ね」

どうも意志の疎通はできることがわかったが、
思考は完全に猫になってしまったようだ。
「お前には彼女らを上手く手懐けられそうだな」
「…………頼む、いくら猫っぽくなったからといっても、
せめて人間らしく扱ってにゃ。
それからかつお節と煮干しを……、なければ生魚を」
ああ悲しいかな、本能に負けてしまった。


この世界ではかつお節も煮干しもなく、
一夜干しした開き程度しかなかった。
ここは海から離れた土地らしく、新鮮な魚介類はお目にかかれないらしい。
それでも開きにされた魚を、
私は行儀悪いかもしれないけど箸を使わずに食べた。
同じように他の二匹も手と口だけで貪っている。
この手では仕方ない、人間の手と比べて器用な動作などできるはずがなく、
本当に猫のようにしゃぶりつくしかできなかった。
「ううっ、なんで……なんで行儀悪い食べ方しかできないの……」
ぽろぽろと涙をこぼす私。
「泣くな、男だろ」
「知らない、女の体って涙腺が緩くできてるのかもしれない。
でも、…………ボストン、もっと人間らしく扱ってよ」
「言っておくが俺はお前らを認めてはいない。
上の命令がなければ、ガキの子守りなどするはずもないだろっ!」
怒鳴りつけるように言い放たれて、ようやくボストンの本心を悟った。

私達の存在を否定しているんだ……

合成妖獣を生み出すことを否定するにとどまらず、
私達の存在も認めていないんだ。
これから傍にいて支えとなってくれる人が、
自分たちの存在を認めてくれないとしたらすごく悲しい。

「にゃーにゃーにゃー(お魚 いただき!)」
猫娘が横切るように通り去ったと思うと、
目の前の開きが一匹消えていた。
「ああっ、ブルー! 私の開きを返しなさい!」
「フーッ、フーッ!」
「ああっ、私にたてつくというの!? いい度胸ね、覚悟しなさい」
そう言いながら私もつられて唸り声をあげ、
四つん這いになって威嚇した。
う…、感情的になると猫の本能がむき出しになってしまう。
くすん、お嫁にいけない。

なんとか開きを奪い返した時は、辺りは悲惨な状態になっていた。
監獄って頑丈な造りをしているはずなのに、
今ではすっかり瓦礫の山と化している。
「お前ら……、なんてことしてくれたんだ…………」
ボストンは肩をワナワナ震わしながらそう呟いた。


私達はボストンと数名の護衛によって西へ50キロ離れたダース城塞に向かった。
私が戦力として投入される日が近づいてきている。
そう思うと武者震いを感じる。
でも、多分なんとかなりそうな気がしてくる。
だって、レッドと開きの奪い合いの結果、
一つの建物を崩壊するほど戦闘力が高いことを知ったのだから。
あ、レッドとは私の相方の猫娘で、毛の色が赤かったのでそう名付けた。
ちなみに私はブラックにした、安直だけど。
「ねぇボストン、もうだいぶ歩くけどそろそろ休憩しましょうよ」
「ふむ、そうだな。お前はまだいける口だが、
情けないことに部下の城が根をあげているようだしな」
早朝に出発して、今では太陽が天辺に昇っているので、
恐らく5時間以上歩いたことになるだろう。
確かにそれだけ休まず歩くとなれば戦い慣れした戦士とはいえ大変だろう。

ここは青々と茂った草木が美しく、ピクニックに最適と思える場所だった。
この光景を眺めていると本当にボストンから聞いた
怪物がいるのか疑ってしまうくらいだ。
「ほらレッド、鳥の唐揚げと開きを持ってきたわよ
……あれ? 何所、何所にいるの?」
「にゃーーーーっ!」
遠くの方からレッドの鳴き声がする。
聞こえた方へ四本足で駆けてゆく。
どうも走る時は猫になってしまうようだ。

「レッド………何してるの?」
見ればモンキチョウと戯れているレッドがいた。
いや、戯れているのではなく狩りをしているようだった。
その証拠に周囲の至る所にモグラとか雀とか蛇とか触手などが
ピクピクと痙攣しているのが見えた。
私の声に気付いたレッドはその中から触手を口に咥え駆け寄った。
「にゃーにゃーにゃー(ホラ、ホラ でっかいの 捕まえた
えらい? ねぇ、えらい?)」
あの一件以来レッドは私より格下と認めたのか、
私に懐くようになった。
戦果を見せに来るのもその一環なんだろう。
しかし、よりによって淫獣を捕まえて口に咥えるなど
ビジュアル的にまずいので、すかさず奪い取り、遠くに投げ飛ばした。
「ぎにゃーーーーーっ!(ああ、ご飯がーーーっ!)」
「そ、そんなもの食べてはいけません!
だいたいあれが何だと知っているの?」
「にゃあ!(でっかいミミズ!)」
「ち・が・い・ま・す!
あれはエッチなバケモノよ、迂闊に近づくと……」
「にゃ?(近づくと?)」
う……、何だろうやけに熱い。
体の体温がどんどん上昇するような感覚。
そういえばさっき爪で強引に奪ったから、
触手の体液を豪快に浴びてしまったけど、まさかそれか!?

「にゃああぁぁっ、……ふにゃああぁっ!」
媚薬が体に回ったのだろうか、体の疼きが一気に押し寄せて来た。
そのため発情期の猫のように悩ましい鳴き声をあげてしまう。
(にゃあ、にゃあ……苦しい………体が求めてしまう。
いや、こんなのダメ………感じちゃ……いやぁっ)
「にゃ? にゃおー(え? 欲しいの?)」
「にゃ、にゃにを言って………ふああぁっ!」
しどろもどろな返答を待たずに、レッドは私の胸を揉み始めた。
意志に反してすっかり刺激を求めていた体は、
愛撫に対して過剰なまでの反応を示す。
「やぁ、レッド……やめて、
そんな女の子同士でそんなこと………にゃあぁん!」
「にゃあ、にゃーあ(ご主人様ぁ、欲しいなら欲しいって言えばいいのに)」
自分が信じられなかった。
人間の言葉を口にする時は、嘘をつくこともできるのだが、
猫語を使ってしまうと常に本音が出てしまうようだった。
そして人間の言葉では拒絶の反応示しているのに、
猫語ではもっとしてほしいと懇願していた。

だからこそレッドは愛撫を止めようとはしないし、
私を慕っているから余計だろう。
私はこの行為を心のどこかでは否定してなかったのか……
そしてそれは私の本心。
なら、自分に嘘つくのはできない気がした。
だから…………
「レッド、もっとよ、もっと気持ち良くして」

私は股を開いて自分から求めてしまった……

「…………レッド」
「にゃぁ?」
「私達おんなじだね……
あなたも全ての始まりはネットゲームからだったのでしょ?
私は猫娘になったとはいえ、記憶まで失わなかった。
でもあなたは違う。
記憶を失い、言葉を失い、全てを失った。
私達はこれから兵器として利用されるのよ。
そこには愛情を注いでくれる人などいない。
まして私達のせいで戦争に負ければよくて国外追放、
最悪死刑もあるかもしれないわ」
「にぁー?(ご主人様、何を言って……?)」
「分からないよね、これからのことなんて。
でも私はあなたを守ってあげたい、ううん最後まで守りぬいてみせる!」
「なー?(ご主人様、ずっと一緒?)」
「うん、勿論よ!
さぁ、ボストンが待っていると思うから行きましょう。
これから始まるのは一つの国家と化け物との戦い。
でも私たちの戦いでもあるのだから」
「にゃあーーっ」
私達は二人並んでボストンの元に戻った、私にしてみたら歩きづらい四本足で。
レッドに寄り添う形で、また大好きな彼女を傍で支える想いを込めて……

(了)

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