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ねこにゃんにゃんにゃん❤ (1)
作.ありす
キャライラスト.巴
(1)
世の中、実に不思議なことが、たまには起こったりする。
だが、1年前に人類を襲った怪現象は極め付けだった。
それは満月の晩に夢を見ると、その夢の中に出てきた動物と合体してしまうという、ふざけた現象である。
つまり、満月の晩に迂闊にも眠ってしまい、あまつさえ猫の夢でも見てしまったとする。
すると次の日の朝目覚めたときに、猫人間になってしまっているというわけだ。
人類はこの未曾有の事態にパニックになりかけた。
しかし、幸運にもこのふざけた災難を免れた人々もいたわけで、既にあれから1年が経過した今では、全人類共通の対策を行うようになったわけだ。
全人類共通の対策……といっても、何のことはない。
“朝まで寝ない”ことである。
かくして、約一ヶ月に一度、満月の晩は人類総徹夜というイベントが、ほぼ強制的に行われる様になったわけだ。
夜の帝王万歳!
駄菓子菓子、何事にも要領の悪い人間がいる。
満月の次の日に半分動物と化している、愉快な人間はどこにでも、僅かばかりいるものである。
「で、今回は猫なわけだ?」
「うにゃ~」
“小鳥遊 圭(たかなし けい)”。 同じ病院でほぼ同時刻におぎゃーと生まれ、新生児室のベッドから自宅、幼稚園、小学校、中学校、今通っている高校の席にいたるまでずーっと隣同士。あるいはそれに近い位置を占めているコイツは、その要領の悪い人間の典型であった。
「それで、原因は何なんだ? “猫の手帳”でも読みながら転寝でもしたのか? それとも“鍋島怪猫伝”の映画でも見ていたか?」
「うにゃ、うにゃ」
「おい、まさか人の言葉も話せなくなったとか、言うんじゃぁないだろうな?」
「ソンニャコト,ニャイケド……」
「? 何だって?」
「はにゃせるよっ!」
「な、なんだその、かわいい声は。ぷはははは!」
「笑うにゃよぉ。今朝起きたら、声が変わっちゃってたんにゃ」
微妙に発音がおかしいのは、やはりネコ化度が高いのだろうか?
「ま、それはいいんだが……」
俺は普段よりもいっそう小柄になり、どこかネコミミ娘のような、危ない可愛さを思わせる容貌に変化してしまった半猫友人に、疑問をぶつけてみた。
「オスか? それともメスか?」
その言葉にぴくっとなった半猫友人は、思いっきりかばんを俺にぶつけ、さらに両の頬に見事な引っかき傷を残して走っていった。
そんなに怒ること無いだろう。
だが、まさか?
いや、しかし……。
うむ、これはぜひとも確かめる必要があるのかもしれん、試練だ。
などとアホなオヤジギャグを心の中でつぶやきながら、俺はチンタラと登校した。
一足先に教室へ着いていたわが半猫友人は、既にクラスの連中の注目の的になっていた。
どういうわけか、今朝は動物化しているトンチキが多い。
なんだあ? 夕べ何かあったのか?
その中でも、わが半猫友人は一際目立っていた。
ま、無理もない。長年付き合って見慣れているはずの俺から見ても、“妙にかわいい”のだ。
とても男……いやオス?には見えない。
「ねー、いいからこれ着てよ、絶対似合うから!!」
「いやだにゃぁ、そんにゃの~」
怪しげな猫語(?)を混ぜながら、我が半猫友人が女子から逃げ回っていた。
女子用の制服を突きつけられながら。
「あ、ひろしぃ~! たすけてにゃぁー!」
「あ、申し遅れました。私、“有栖川 広”と申します」
「誰に自己紹介しているんだにゃ。 ボクを助けてにゃ!」
「いいじゃないか、制服ぐらい着てやれよ。俺も見てみたい」
「“女子”の制服だにゃ! そんにゃの嫌にゃぁ~」
「めったに無い機会だろう? 着させてもらえ。意外な自分を発見するかもしれん。これも試練だと思って」
あ、さっきのオヤジギャグがつい……。
「こにょ薄情もにょ~っ!!!!」
哀れ、我が半猫友人は黄色い声を上げる女子どもに引きずられて、教室から消えていってしまった。
どこへ連れて行くつもりなんだ、あいつらは? 女子更衣室? いや女子トイレ?
おい、我が親友よ。どこでも良いが、そこが男子禁制の秘密の園であったのなら、後でじっくり感想を聞かせてくれよ~。
などと心の中で頼んでみた。
<つづく>
キャライラスト.巴
(1)
世の中、実に不思議なことが、たまには起こったりする。
だが、1年前に人類を襲った怪現象は極め付けだった。
それは満月の晩に夢を見ると、その夢の中に出てきた動物と合体してしまうという、ふざけた現象である。
つまり、満月の晩に迂闊にも眠ってしまい、あまつさえ猫の夢でも見てしまったとする。
すると次の日の朝目覚めたときに、猫人間になってしまっているというわけだ。
人類はこの未曾有の事態にパニックになりかけた。
しかし、幸運にもこのふざけた災難を免れた人々もいたわけで、既にあれから1年が経過した今では、全人類共通の対策を行うようになったわけだ。
全人類共通の対策……といっても、何のことはない。
“朝まで寝ない”ことである。
かくして、約一ヶ月に一度、満月の晩は人類総徹夜というイベントが、ほぼ強制的に行われる様になったわけだ。
夜の帝王万歳!
駄菓子菓子、何事にも要領の悪い人間がいる。
満月の次の日に半分動物と化している、愉快な人間はどこにでも、僅かばかりいるものである。
「で、今回は猫なわけだ?」
「うにゃ~」
“小鳥遊 圭(たかなし けい)”。 同じ病院でほぼ同時刻におぎゃーと生まれ、新生児室のベッドから自宅、幼稚園、小学校、中学校、今通っている高校の席にいたるまでずーっと隣同士。あるいはそれに近い位置を占めているコイツは、その要領の悪い人間の典型であった。
「それで、原因は何なんだ? “猫の手帳”でも読みながら転寝でもしたのか? それとも“鍋島怪猫伝”の映画でも見ていたか?」
「うにゃ、うにゃ」
「おい、まさか人の言葉も話せなくなったとか、言うんじゃぁないだろうな?」
「ソンニャコト,ニャイケド……」
「? 何だって?」
「はにゃせるよっ!」
「な、なんだその、かわいい声は。ぷはははは!」
「笑うにゃよぉ。今朝起きたら、声が変わっちゃってたんにゃ」
微妙に発音がおかしいのは、やはりネコ化度が高いのだろうか?
「ま、それはいいんだが……」
俺は普段よりもいっそう小柄になり、どこかネコミミ娘のような、危ない可愛さを思わせる容貌に変化してしまった半猫友人に、疑問をぶつけてみた。
「オスか? それともメスか?」
その言葉にぴくっとなった半猫友人は、思いっきりかばんを俺にぶつけ、さらに両の頬に見事な引っかき傷を残して走っていった。
そんなに怒ること無いだろう。
だが、まさか?
いや、しかし……。
うむ、これはぜひとも確かめる必要があるのかもしれん、試練だ。
などとアホなオヤジギャグを心の中でつぶやきながら、俺はチンタラと登校した。
一足先に教室へ着いていたわが半猫友人は、既にクラスの連中の注目の的になっていた。
どういうわけか、今朝は動物化しているトンチキが多い。
なんだあ? 夕べ何かあったのか?
その中でも、わが半猫友人は一際目立っていた。
ま、無理もない。長年付き合って見慣れているはずの俺から見ても、“妙にかわいい”のだ。
とても男……いやオス?には見えない。
「ねー、いいからこれ着てよ、絶対似合うから!!」
「いやだにゃぁ、そんにゃの~」
怪しげな猫語(?)を混ぜながら、我が半猫友人が女子から逃げ回っていた。
女子用の制服を突きつけられながら。
「あ、ひろしぃ~! たすけてにゃぁー!」
「あ、申し遅れました。私、“有栖川 広”と申します」
「誰に自己紹介しているんだにゃ。 ボクを助けてにゃ!」
「いいじゃないか、制服ぐらい着てやれよ。俺も見てみたい」
「“女子”の制服だにゃ! そんにゃの嫌にゃぁ~」
「めったに無い機会だろう? 着させてもらえ。意外な自分を発見するかもしれん。これも試練だと思って」
あ、さっきのオヤジギャグがつい……。
「こにょ薄情もにょ~っ!!!!」
哀れ、我が半猫友人は黄色い声を上げる女子どもに引きずられて、教室から消えていってしまった。
どこへ連れて行くつもりなんだ、あいつらは? 女子更衣室? いや女子トイレ?
おい、我が親友よ。どこでも良いが、そこが男子禁制の秘密の園であったのなら、後でじっくり感想を聞かせてくれよ~。
などと心の中で頼んでみた。
<つづく>
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