FC2ブログ

Latest Entries

投稿TS小説 魔封の小太刀(7)

* * * * * * * * * *  * * * * * * 

 山城の中はいつもと変わらぬ。変っているというなら、それは私の方。
 先日来、あの方に逢うことまかりならんと父上に言われ、仕方なく日々を過ごしてしまった。しかし今日は約束の日。是が非でも行かなくてはならぬ。
 すでに刻限は近づいてしまっている。もし、道中迷いでもしてあの方と遭えなかったら……いや、そんなことになろう筈がない! 誰に止められようと必ずあの方の元へ行く。
 日頃の行いが良いからか、神の導きか、侍たちに会わずに城を抜け出せたぞ。
 ……城からの山道は足下が悪くてたまらぬ。月明かりだけでは心許ない……しかし、ここを駆け下りなくては……。
 愛しいあの方。今日、やっと念願が叶う。なんと待ち遠しいことだろう。
 約束の刻限は過ぎているが、なに気にすることはない。あの方が私を置いていく筈がない。そら、もうそこの木陰から顔を覗かせる筈……。
 ……多分、誰にも見とがめられぬよう、注意して来ているのだろう。だから遅いのだ。そう、待っていれば、必ず……。
 来た!
 いや、待て、人数が……。
 あ! お前は! 何故ここにおるのだ! 私は、私は!
 それはなんだ?! 何を持っているのだ? 太刀ではない! それは……首、か!?
「あああ

    あああ?!」
「どうした、玲?!」
 泣き叫びながら目が覚めた俺の前に、いきなり視界に飛び込んできたおやじ殿の姿。夢のせいで混乱していたせいか、おやじ殿がひどく不快な存在に思える。
「な、なんでもないです。取りあえず出てってください」
「そうか?」
 心配しているのかどうなのか、おやじ殿の顔を見る余裕は俺に無かった。
「……玲、汗でぴったりなTシャツは見る分には楽しめるが、寝るときには着替えておけよ。風邪をひく」
「!」 
 俺は自分の胸元を隠しながら枕を投げつけていた。
 それにしてもなんてイヤな夢だったんだろう。古い時代だったと思う。着物を普通に着て、街灯などない時代……。
 夢は自分の深層心理を映し出すと聞いた事があるが、あれが俺の深層心理なのだろうか? それとも前世?
 輪廻を信じるなら、前世がなんであろうと気にすることはないのだろう。が、今の俺の姿と夢の中の女が妙にオーバーラップして気になってしまう。
 細部に渡ってリアルだった。それに、あの高揚感と喪失感。待ち合わせに行くときの胸の高鳴りは、明らかに恋だった。だからこそ死を確信したときの胸を切り裂かれるような痛み。今でも手が震えてくる。
 男に対する恋心を体験したようなものか。しかし不思議と違和感がないのはどうしてだろう。……いや、寧ろ心地よいとさえ……違う! 俺は、女であることを容認した訳じゃない!
 ぶんぶんと頭を振ると、涙に濡れた目尻に髪がまとわりついた。

 それから数日。
 不思議な事に、数日追うのを止めた途端、それまでなかなか尻尾を掴ませなかったというのに、自分の方から痕跡を残すようになっていた。
 以前宝珠丸が言っていたように。
 俺が聞いた噂を検討し、次の一手について話をしようと、何故か俺の部屋に涁がきていた。
「遅くまで残ってると、得体の知れない何かの姿を見るんだそうだ」
「ふん。動き出したのはいいが、後手に回ったな。玲、お前の方は感じないのか?」
「よどみを感じる程度。宝珠丸は何かないのか?」
『お前が感じるのと同程度だ』
 涁が溜息を吐いた。
「まぁ、他人に憑いたり被害がないなら良しとするか」
『吾の言うとおり、待てばよい。そろそろ贄が必要になるころよ』
 生け贄? それはどういうことだ?
「何を言ってる? 安西が何をしようとしてるのか知ってるのか?」
 俺の言いたいことを涁が代弁していた。
『簡単なこと。魔は人の魂を喰らい、肉体を喰らう。が、肉体は現世で必要なもの。憑いた人の魂が減れば、それを満たそうとするのは道理じゃ』
「そんなこと一度も言わなかったじゃないか! て事は、生徒を狙ってるって事か?!」
『それが分かるなら苦労はないのぅ』
 ふざけた言い方をしやがる。むかつきながら、声を荒げようとした時、涁が割って入った。
「いや、まぁ、宝珠丸の言うことももっともだろ。俺たちはできることをやればいいんだ」
 大人な意見だけど、納得はできない。前もって言ってくれれば何か後手に回らずに済んだかも知れないのに。
 この調子だと、まだ言ってない事もあるんじゃないだろうか?
「宝珠丸、もう隠してる事はないんだろうな?」
『得にならぬ事はせぬ』
 微妙な言い回しだ。得になるなら隠すってことか? ……しかし、こいつの協力なしじゃ安西はともかく封魔の太刀を取り返すのは難しいし……。
「……期待してるから」
 出来る限り張りのある声でそう言うことにした。
「ところで玲」
 徐に近付いてくる涁の顔。以前はイヤな事などなかったのに、あの日から傍に近付かれるのがイヤになっている。兄弟でそんな事はあってはならないだろうに。
 少しだけ身体を引いた。
「な、なに?」
「お前、ちゃんと眠れてるのか?  目の下クマがひどいぞ」
 そんなに?  鏡鏡……って、女じゃないんだ! 顔なんてどうでもいいだろ。涁も俺が手鏡を投げ捨てた様子を見て変な顔してる。
 確かに眠れていない。あの夢を毎日見てるのだから。
 毎日女としての感情に晒されて、起きれば自己嫌悪して。そんな毎日じゃ眠りたくなくなる。
 誰かに話して、そう思っても、おやじ殿も涁も俺の事を初めから女としか見てないし、真剣に聞くとは思えなかった。だから、夢の内容も、夢を見るから寝たく無い事も知らない。
「何してるのか知らんが、今日はとっとと寝ちまえよ。いざと言う時身体がついて来なくなるぞ」
「……うん」
 俺は取りあえずそう答えるしかなかった。

<つづく>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/6929-54c62998

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2020-08