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投稿TS小説 魔封の小太刀(8)

* * * * * * * * * *  * * * * * * 

 あれは八郎太殿の首と……。何故殺めたのだ?! お前は私を逃がしてくれたではないか!
 許さぬ、決して許さぬぞ!
 愛しい八郎太殿の首は冷たい。もう、私に微笑みかけてくれぬ……。あの日の約束も果たされぬまま……。
 
 八郎太殿、実は、私の輿入れが……平気なのか? 私が、その……あ……。
 ――! 本気で言っているのか? 刀を作り終えたら? それは、この国を出るということか?
 あぁ、八郎太殿! その言葉、真だろうな? 私と一緒で後悔はしないのだな。
 ふふ、嬉しすぎて涙が出てしもうた。今一度強く抱、あっ。そちもおったのか?!
 ……すまぬ、邪魔をしたな。今日のところはこれで帰るとしよう。
 興奮したせいか顔が熱い。少し冷やさねば……あぁ、刀ができるのが待ち遠しい。


* * * * * * * * * * * * * * * * 

 朝日がカーテンの隙間から差し込み、それが瞼をくすぐったのか、自然と目が覚めていた。
 あれは、前の夢の続き? というか時間軸はそれ以前……。温かく嬉しい感情が湧きあがって、追体験したような感じだった……。
 それより、あの水鏡に映った顔は、今の俺と同じ顔……。あれは俺なのか? 前世? 本当に起きた事なら、どのくらい前の事なんだろう? 
 前世ならそれでもいいが……何故こんなにも気になるんだ。胸が苦しくなるんだ。何か、何かが引っ掛かって、むず痒い。
 昔の事なら宝珠丸が知ってる可能性もある。それとなく聞いてみるか。
 せめてこの霞だけでも晴らさないといけない気がする。そう、強く心が訴えかけてる。それが今のこの姿の説明にも繋がるような、そんな気がする。


(宝珠丸、聞きたいことがある)
『知りうる範囲であれば』
 俺は言葉を選んだ。
(俺たちは肉体の感覚を共有してるのか?)
『いかにも――それで?』
(お前の生きた時代の夢を見てる気がする。そこにはこの姿そっくりの女と刀鍛冶が出てくる……)
 俺は見たままを伝えてみた。しかし。
『ふむ、それだけでは何とも探りようがないのぅ』
(同じように夢をみてるんじゃないのか?)
『見る気になれば。無論お前の意識を探ることもできるが、今はしておらぬ』
(そうか……)
『まぁ、急いても仕方なかろう。吾はちと疲れた。もうよいな?』
 それきり宝珠丸は逃げるように意識を消し、返答しなくなった。
 宝珠丸は知らないという。しかし、何かがある気がしてならない。そう、何となく、宝珠丸には嘘があると思えてならない。
 俺の中に入っているんだ。夢も、俺の意識も、そう、こういう思考も分かっているに違いないのに。何故それを隠そうとするんだろう。知られたくない事もあるのは理解できるが、こちらばかり丸裸なのも嫌な感じだ。
 宝珠丸が当てにならないなら、自分で調べるまでか。といってもどうしたもんだろう?
 鬱陶しいくらい長い髪をかき上げながら、夢の内容をもう一度思い返してみた。
 城は山城だった。刀鍛冶の名前は、八郎太。女の、というか俺の名前は? 確か首を持ってきた侍が……そう、姫と呼んでた……。姫ってどこのだろう? いや、それ以外に聞いたような――あっ八郎太はお濃と。
 年代が分かりそうな情報は記憶になかったのは残念だった。しかし俺の中の何かが、これだけでもいいと、一刻も早く調べろと言っている、そんな気がした。


「今日どこに行ってたんだ?」
 食事を取りダイニングの椅子で一段落取っているところに?が話しかけてきた。正直言って、あまり話をする気分ではないのだけれど。おやじ殿はテレビを見ながら大笑いしている。
「実は、最近変な夢をみるんだ」
 俺は掻い摘んでお濃、八郎太、そしてその時の様子を話していた。
「――そうか。それで? 心理学の本でも借りてきたのか? それとも、前世とでも思ったのか?」
「どちらかと言うと後者。だから、図書館行ってこの辺りの歴史を調べてきたんだ」
 ちらっとおやじ殿を見ると、こちらには背を向けて頬杖をついている。?は俺の隣に座って少し目を細めて俺をまっすぐ見ていた。
「で、戦国時代くらいか、この辺りは後藤という家があったらしい。知ってる?」
 頭を振る?に、言葉を進めた。
「後藤武篤、この人が最後で家系図には三男二女いたらしい」
「なんでその時代、というかそいつがいた時代だって思うんだ? 仮に前世としても特定できないだろう?」
「それは……口伝があって、それに刀鍛冶の事が」
「それが八郎太だっていうのか? 馬鹿らしい。全然意味ないだろ。もっとこう――何か理由があるんだと思ったぞ。お前、そんな事に感けてないで直ぐ連絡取れるように待機しとけよ」
 文句だけ言うと、返事も待たずに?は自室に行ってしまった。
 確かにそれが特定する証拠とは言い難いのは分かってる。でも、直感的にそう思った。この系図の女がお濃で、この口伝にある刀鍛冶が八郎太だと。
 ?には話せなかったけれど、もう一つ興味深い事も分かった。御厨は後藤家の家臣だった。それが後藤家が近隣の豪族に滅ぼされると権力を得、地域を支配したのだ。
 裏切り? ただの偶然?
 もし、前世というなら、もし、御厨が後藤を裏切っていたなら、俺の姿がお濃と瓜二つというのは皮肉に満ち溢れている。或いは、何か作為的なモノがあるような気がするのだ。
「玲、その話面白そうだけど、この件が終わってからにしような」
「?!」
 突然耳元で囁かれ、椅子から立ち上がっていた。湧きあがる鳥肌と寒気に細い両肩を抱いていた。
「お、おやじ殿っ、変な事しないでください!」
「……ふふん、隙があるが悪いのだ。目の前の事に集中集中」
 笑い声を残して去っていくおやじ殿に、俺はやはり嫌悪感を感じずにはいられなかった。

<つづく>

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ありがとうございます。
色々あって、執筆スピードは落ち気味ですが、るしぃさんはウチの主力なのです。

Blood Lineも全部読んできました。

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