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クジラの人魚姫1-1 

作:黒い枕
キャラデザ&挿絵:倉塚りこ 


――水は命の源だとか、海は生物の母だとか――抜かすものが多いが、そうは思わない。
大事なモノではあるが哺乳類たる人間がワザワザ泳ぎを習い、船という練り物で遠くまで進出する。
ナンセンスだ。
飛行機がない時代ならいざ知らず、今の時代に海にロマンスを求めるのは時代錯誤だろう。

そう、白方 玖史羅(クジラ)は水や海が苦手だった。
過去の『トラウマ』から、17歳まで変わることがなかった少々偏った思考、それが今この場においては、より確固なモノとして信じた。
――なぜなら、現在進行形で激流に飲まれて溺れているからだ。

厳密にいえば泳ぎの練習の際に海流に飲まれ、海の中を数十分、漂流していた。
それでも意識を保っていたのは奇跡以前に、――”まず、ありえない”。
だが、極度の水嫌いな玖史羅には水関係の知識が欠如しており、酸欠でなく水の中にいるというストレスで意識を朦朧として気がつかない。
意識がある異常性に。

(やっぱ、水や海には碌な事が起きない。 ――はぁぁ、生きている内に告白するんだったあぁ)

どこまでも”異常”に気が付かない玖史羅は海流に任せるまま、海のモズクになろうとしていた瞬間、明らかに自然じゃない力によって誘導された。
組み合わせるように、誰かの手が脇に固定されている。
薄目を向ければ、何の因果か自分とは正反対に海を愛している悪友の海風 辰(トキ)が必死に水を掻き分け、光の強まる方へ向かう。

(たすかった……のか……)

安堵感すら上手く表現出来ない玖史羅は、為されるがまま倍増していく光に晒され、海の外へと連れ出された。
久しぶりの大気との対面、そして呼吸―― だが。

(あれ、………? あんまし、変わってない!?)

息苦しさの解消や、生還の喜びが、不思議と沸かない。
寧ろ、先ほどよりも苦しいというか、不慣れな違和感が――拭えない。
そう思いつつも、海から岩に打ち上げられる。

「うぐぅ」

比較的に滑らかな削面の岩肌に乗せて貰えるも、想像以上に痛々しく苦悶が喉から漏れる。
鼓膜が水分を吸収した所為か、何時もとは違う感じで響いてきた。
彼自身には、艶やかな女の潤んだ喘ぎのようにしか聞こえない。
それでも疑問を置き去りにして動かなければいけないのだが、先ほどから体の動き――というか、神経接続――が上手くいかず、辛うじて瞼を動かせる程度。
もしかしたら、神経障害級の怪我をしてしまったのか。
頭がメチャクチャ痛いぐらいしか、痛覚は訴えてこないから脳そのものに重大なダメージを受けてしまったのかしれない。

(――――? 頭―――? ――なんか忘れているような?)

疑問が脳内でさら飛び交うも、今は自分のことで精一杯。
視界の中では海風 辰の胸板が急接近した。
心配で持ち上げたのだろう。
玖史羅の水嫌いを笑いながらも、奥底には優しい熱さを持っている水屋は――そのまま。

(えっ!? ちょっと!!? おまっ―――)

緊急危機に神経接続が迅速に回復していくも、遅かった。
遅すぎた。
親友で、悪友で、巨乳派な海風 辰の顔面が玖史羅の顔へと近づき――。

ずぎゅぎゅううぅぅ――――っつつつ!!!

「んんむうぅ―――!!?? んぶうううぅ――!!!?」

猛烈に唇を奪った。
それも人工呼吸でなく、舌を巻き込む性欲の行為――つまりは唯の接吻――だ。
むぎゅるる――。むぎゅうう――。
そればかりは海風の右腕は玖史羅の乳房を圧縮し、揉み押した。
これも人工呼吸なんて生易しいものではない――知識の疎い盛った雄による力だけの愛撫――だ。
口を奪われ、右乳を弄ばれている。
玖史羅の中で何かが燃え上がり、意識と肉体の結び付きを融合させた。
動く左手、冴え渡る右腕――迷わない。
今なお無骨な舌使いで支配されながら、冷静に背中に回された”敵”の左手を緩ます。

――そして。

――――――――そして、玖史羅は。

「んば――ぁぁ!! 何するんじゃあああぁぁ、この変態があああぁぁ!!!」
「めばっ!! ろおおぉ――!!」

吹き飛ぶ男――海風 辰。
親友や悪友の分類から――変態に成り下がった男。
息を荒げて、玖史羅は怨敵とばかりに睨み、吼えた。

「このど変態!! お前、巨乳好きとかいっときながら、男好きだったのか!! ――そんな目で俺を見ていたのかあぁぁ!!?」
「待てィィ!!? あっ、いや――待ってください!! 確かに変態は認めましょう!! だけどホモ呼ばわりは断固として異議を申し立てるっ!!」
「フザケンなっ!! ――ホモだ!! ホモだっ!! お前は生粋の男好きだああ!!」
「むぐ、はっ!!? ち、違うぅ――!! なんでそうなるんですか!? 確かに俺は貴方に人工呼吸とはちょっと違ったことをしたかもしれませんが、なんでそれがホモ呼ばわりされないといけないんですかああぁぁ!???」
「男を襲ったからに決まっているだろうがああぁぁ―――――っ!!??」
「―――へっ、………おと…こ…?」

白々しく呆ける海風にもう二、三発殴ろうと岩肌を登ろうとした。
だが、未だに下半身の神経は上手く機能していないのか、後ろの方でピチピチと魚のヒレみたに海水を蹴り上げているだけ。
完全に障害が残るかもしれない恐怖が僅かに膨らむが、今は不埒な男を退治する方が鮮血だった。
仕方なく両腕で前へと進む。

「えっと、男――なんですか?」
「あ”っ!!」
「あっ、いや――あの男なら、そのお胸のものは――なんで御座いましょうか?」
「さっきから、何を――ぉぉぉおおお??!! 何じゃこりゃ――っ!!?」

ぷるん、ぷるん。
そこにあるのは見事な双乳。
汚されていない南の島の海のような蒼い髪に隠されながらも、柔らかな膨らみを外へと突き出している。
現実を信じられない玖史羅は、取りあえず揉んだ。
何故といわれれば、男の性なのか、それともただ未知なるものへの挑戦だったのか――
区別は難しいが、確かめるにはソレしかなかった。

――むにょり、――ぬにょり。

突出した乳を指で揉んだ感触は胸元に響く、そして脳内に微かな火花を起こした。
濡れた分、卑猥な変形音が辺りを支配した。

「ほ、本物………なのか!?」

絶望に綺麗な顔が、歪み瞳は不安に澱む。
掛かる蒼い髪を辿れば自身の頭にたどり着く。
それでもなお調べようとした彼の両手にタイミングを合わせたのかのように耳に触れた。
耳――というよりも、煌びやかに光る”ひれ”に。

「うんわっ!? な、なに…これ」

胸も想像外の感触だったが、耳として頭部の両脇に生えていた、ひれの感覚は文字通り人外の領域だった。
擦るだけで生み出される衝撃は痛いのか悦ばしいのか、理解出来ぬまま脳を熱く焦がし、瓦解させていく。
脳が乖離する危険すら感じられた未知の神経に早々と手を手放した。
しかし、焦りのせいで両手が余計な方――下半身のところに落ちた。
ザラザラ、と小さく硬いモノは幾つも合わさっているような不気味ながらも精密な造形物。
不本意ながら水族館のオーナーの息子でもある玖史羅には肌に触れるだけで正体を突き止めた。
尤も、何故その物体が下半身にあり、――”触れられている”―― ことすら理解出来てしまうのだろうか。
無意識に喉を鳴らし、恐る恐る下を見た。
ぶら下がり実っている大きな膨らみの―― さらに下を。

「人魚の――下半身?」

ちょうどお臍を避けるようにして侵蝕の歩みを止めている鱗の軍勢。
その下のパーツは人間が立つために必要な足――でなく、魚が動くときに必要な胴体と癒合した尾ひれ――だ。
間違いなく、腰から下は魚の尾ひれで上下に動かせる。
彼の意思で海水を大きく跳ねさせたり、小さく飛ばすたり、することも可能だった。
先ほどの誤作用は足が悪かったのではない。
白方 玖史羅自身の――感覚の方が間違っていたのだ。 そもそも”構造”が違うのだ
数十回、ピチピチ足掻いた玖史羅の顔から血が消え去り、唯でさえ白い美肌が生気を無くす。 青ざめたなどと表現するよりも冷め切った顔は、怖いほど表情が希薄だった。

「な、なぁ――トキ? 俺って何に見える ――?」
「そりゃあ、美乳を持っている美人の――”人魚”―― ですよ。」
「はは…は……嘘…じゃない……んだ」
「――アレ、なんで俺のことを………あぁ、そうか貴方、クジラの親父さんのところで新しく働く人でしょ。――そうか、そうか、あの人――人魚姫の劇でお客さん招こうって腹か……やるねぇ」
「お……親父ィィ!!?」
「うわっ!!」

彼に僅かな希望と――元凶の存在――に目星をつけた。
あの男なら、息子を犠牲にしてまで水族館を護ろうとするだろう。
なんせ、一時には女装を強要し、客寄席のキャンペン・ガールにしようとした程だ。

“妖しい薬を購入して、息子に――自分に試し――人魚なってしまった”。

弱くなった握力で拳を作り出しと、本当の敵に矛先を向ける。
今の姿なら深海の奥底に眠っている三つ槍がとてもよく似合うだろう。
可能性の少なくても彼には何かの所為にするしか精神が落ち着かないし、彼にとって一番都合が良かったのが実の――親だった。

「あ、あの……本当に大丈夫です――って、おお沙希、”クジラ”が目覚めたか?」
「沙希――!?」

自分のことしか眼中になかった玖史羅だったが、親友の声に後ろを振り向く。
海水に落っこちないように苦労しながらも方向転換し、ボートの上から手を振る少女の姿を見つけた。
競技用の黒い水着に包まれ、Cカップの胸と足先へと進む体のラインが眩しい。
遠くにいても分かるぐらいの美少女だ。
尤も、遠くでも髪の毛の一つ、一つさえも捉えられたのは、――まぁ、お約束とばかりに愛のお陰だった――のである。

そんな彼女の横にいる人物が起き上がる。
重々しく体を起き上がらせ、顔を揺さぶり覚醒していく。
水をたくさん吸い取った衣服を邪魔臭そうに扱いながら、呼吸を整えている。

(ん――あれっ、――誰だ?)

幼馴染――麻倉 沙希【さき】――以外は流石に遠くて鮮明には分からないが、兎に角、男だ。
男が沙希と一緒にいること自体が嫌な玖史羅は自身の不幸よりも先に嫉妬の炎を燃やした。

(んん? ――そういえば、何で”クジラが目覚めた”っていったんだ?)

白方 玖史羅は間違いなく自分自身――例え、性別はおろか、人外になってしまった――が、それでも自分は自分だった。
――他に”白方 玖史羅【クジラ】”がいる訳でもないのに。
水に滴り、纏わり付く髪を流しながら、近づくボートを見続ける。
そして、ボートが岩肌とジャンプで行き来出来るほど近くなり――。

「――――誰、あんた?」
「…………―――――――――っつつつ?!?!」

――“二人は邂逅を果たした”。

何時ものと同じように眼つきギラギラさせながら、” 玖史羅”は僅かな戸惑いを露にし、
――”人魚”―― を見下ろした。
そして人魚である”セシリウス”は岩肌に腰を任せながら、波に揺らされ動く、
――” 白方 玖史羅”―― を見上げた。

くじら

「えっクジラ。この人と知り合いなの?」
「おいおい、もしかして――親戚か何か? だったら俺への誤解を解きつつ、紹介してくれ――親友よ!!」

能天気な沙希と辰の声が空しく塩気が豊富な風に飲み込まれ、二人――”一人は人間ではない”――は己に降りかかった災難を改めて理解し始めた。

<つづく>

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