FC2ブログ

Latest Entries

奇人変人の食卓(3) by.黒い枕

45分後。
「………………………………………」
「ごめん――ケンにぃ」

二人の女性が揚げている旗は両方とも青の旗。
そして青の方にいるのは上半身裸の変態仮面――如月 勝喜と言うことは……。

「俺が………こんな……変態に……?」

何が起きたのか健児は理解出来ず、ただ二つの旗を交互に見ていく。

(何でだ、何で負けたんだ………)

出したのは定食屋でも作っていた唐揚げセット。
確かに特別ではないかもしれないが、手加減抜きで食材も良質なモノを選んだ。
また、相手の過程を観察していれば、それなりに出来ていても一般人程度の実力。
しかも、出したのも自分と同じような簡単なチャーハン。
少なくとも、否、間違い無しに勝てると思っていただけにショックが大きい。

「……勝ったのに、…この敗北感は何だ……?」

一方、勝利の反応にしてはあまりな、対応とリアクション。それを見た健児は益々、心を痛め――紗千に詰め寄る。

「――紗千っ!! それ食わせてくれっ!!」
「えっ、もう全部食べちゃった」
「なぁ――――っ」

あっちの審査員ももう食べ終わっており、布巾で丁寧に口を拭いている。
納得出来ないのだから自身で確かめたいのに、それ自体が美少女たちの胃の中。

「お前………何かの変な術みたいなもんで操られているんじゃないか?」
「残念だけど、……違うよ、ケンにぃ…」
(じゃあ、何で俺が負けたんだっ!!)

納得できないのは当然と言えば、当然。
料理の旨さとは、食材の差もあるが実質的な料理人の実力で決まるものだ。
それが健児たち業界の常識である。
幾ら上質の食材を使われようが調理が、お粗末なら一万の食材が千円以内の材料に負けることもある世界。
健児はそう学び、そう技術を磨いてきた。
しかし、勝喜自身の動きを見ても大したモノはなかった。 ならば、勝敗の決め手は食材なのだろうか。
だが、そこまで実力さを埋める食材なのあるのだろうか――。

「おい、お前一体何をしたんだっ!?」
「ふっ、愚問だな。 誰が敵にそんなことを教えると思っている?」
「質問を質問で返すなっ、いいから答えろっ」
「ふふふ、まあいい。 どうせ真似できないからな………」
(腹立つな、この変態……っ)
しかし、堪えた。
負けてもなお、否――負けたからこそ健児は好奇心を止めずに、追求した。そして……。

「――――――でっ…"これ何?"」


唖然として勝喜に尋ねた。念の為に指を指して。

「?………何って、今回のチャーハンで使った食材の――妖精界名物のウエレの卵、
同じく名物のエレピックの舌、んでもってペガサスの角、さらに魔のトライアングル付近の異海よりくるキメラ・クラゲから取れた油、人の魂で育てたニンジン、玉ねぎ、そして秋田こまちだ!」
「もう、一度聞くぞ、これは何だ……っ」
「ふふふ、耳までとお、「っんな、モノを乙女に食わせたんかあぁ―っ?!!」……ぶごっ!!???」 

予測スピード、おそらく時速210キロ・オーバーで勝喜の顔に打ち込まれた皿。
倒れる勝喜を無視して、来た方向に顔を向ける。
もっとも、犯人はすでに分かっているのだ。
心の底から湧き出す確信とは裏腹に、反射的に映してしまった光景――テーブルに勇ましく足を着け、腕を振り下げていた恋人がいた。
実に憤激してる

(まぁ、紗千の気持ちは分かる。――――つうか、食わなくてよかった………!)

自分のキッチンに出された大皿に盛られた食材――と称してきたゲテモノ。
否、もはやモンスターの残骸であり、肉片だった。
ペガサスと呼ばれた角や何かの油らしきモノはまだマシで。
ニンジンや玉ねぎなのに色が青・黄色・緑の三色カラー。
卵の殻の筈なのに柔らかそうな触手を蠢かしている濃い翠色をしたモノ。
舌と思われるモノでさえ色は普通なのだが真ん中に尖った部分が規則正しく三個並べられていて、それが左右の対象で生えている。
まさしくモンスター映画世界である。
――何を食わせたのだろうか、知りたいような知りたくないような。ベクトルの違う追求欲に苦悩する。

(唯一、まともなのが米しかないなんて………)

軽く現実逃避した。だが、一方では苛烈な話し合いがされていた。

「い、いきなり何をするっ! 何をっ!」
「何だじゃないわよ?! あんたそんなモノをアタシに食わせたのよお!!」
「ちょっ、落ち着け、確かに、見栄えは悪かろうが珍味だったろう?」
「確かに美味しかったけど、それ以前の問題でしょお、がぁぁっつつ!!」
(……つうか……アレ、……アレを見ても俺のよりも旨いのか………………)

ヒートアップする勝喜と紗千、そして落ち込む健児。
さっきから微動だせず、食後のお茶を楽しんでいるアリサが妙にシュールである。

「ええい、何にしても負けは負けだ!! ペナルティー発動っ」
「えっ!?」
「なぁっ!!?」

突然、魔方陣らしきモノが健児の足元で輝き、その光が体にまで感染していく。
全身が発光する。
そして閃光が強くなるほど、体が熱くなる。
まるで体そのものが光そのものになった気分だった。
脆弱ながらも膨れ上がっていく体温。
近づこうとする紗千だったが、見えない壁に進行が阻まれた。

「こら、変態!! ケンにぃに何すんのよぉ!?」
「ははは、そこで大人しく見ておけっ。 というか年上に敬語使えよお!!」
「あんた、何て変態で十分じゃないのよ。 むしろ変態そのもの?!!!」
「――っ、そ、そこまでいうかっ!!?」
(いや、そんなアホなこと、していないで…何とかしてくれよ、…ぉ…)

自分がこんな目に遭っているのにコントをしている恋人と張本人。
かなり殺意が沸いてくるが、それどころではない。
熱がいつしか炎の領域に達しているような錯覚さえも見舞われる。 
とにかく、熱い。
爪を刺し、かき回したい衝動に手を動かす健児だったが、まるで幻のように体と手が交差してすり抜ける。
そして――。
「―――――――――――――――――――おぁっ!」
「ケンにいぃ――――!!」

健児の体から発せられる閃光が極限まで高まり、爆発する。
叫ぶ、紗千の声が遠のいていく。意識が――遠のいていく。

「は――はは、『楽しめよ』、辻 健児」

変態怪人、如月 勝喜の叫び声と共に彼の視界は真っ白に支配された。

<つづく>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/7131-3985a36d

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2020-02