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奇人変人の食卓(5) by.黒い枕

「……っで、落ち着きましたか? 辻 健児さま?」
「くっ……っ!」

一通りに叫び終わってから、災厄の元凶に突っ込んだ健児。
しかし、難なく敗北した。
手を後ろに取られ、地面に押さえつけられる。
押さえつけているのは勝喜の連れ人――アリサと呼ばれる女性だ。

(何なんだ、この女。 どこかの裏世界の暗殺者かッ!? 早すぎて動きが見れなかったぞっ!?)
「ははは、凄いだろ? アリサは俺の組織を纏めてくれるほど腕の立つ女だからな」

予想は的中した。
いや、もしかしたら妄想以上にヤバイ相手なのかもしれない。
だから――普通の料理人が勝てないのは理解したから――速く解いて欲しいと、願う。

(む――胸がぁっ!!)

背中から胸部に集う力。
それが、今までなかった乳房と言う器官をギスギス、と苛めていた。
柔らかく、それでいてツラい痛みが生まれる。
体勢の苦しさよりも、胸の圧迫感による感覚と疼きが嫌だった。
嫌悪に背筋が泣き喚く。
四肢に力を込めて動かそうとするのだが、抜け出せない。
やればやるほど抑えも強くなる。当然、不快感も深まる。
まさに、悪循環。
助けを期待するも――。

「む、むね、………おむねさんが、……負け、ちゃったぁ…あは、」

紗千は当てにならない。壊れたままである。
こんなものなどいらない、と思うが壊れたように手を動かし悲哀に暮れている様子に反射的に沈黙してしまう。
なおも、ヒリヒリ痛い乳。
そこで健児はかつての失言を後悔した、否、呪った。
今の状況は過去の過ちへの罪――そう思うしかやっていけない。だから、呪う。
主に大きく実った乳房を。ぶにん、ぶにん、と拉げるふたつの球体を。

(マジ、ごめん!! 昔は大きいほうが良いって言ったけど……小さいほうが良いは、コレっ!!)

見当違いの謝罪――それは皮肉であり、『女性』に対する罵詈雑言であり、彼女の悲しみを理解していないが故の思いだった。
そう、彼は男なのだ。
少なくとも、中身は『男』なのである。
故に、男の立場で健児は感想――世の女性が聞いたら、たちどころに怒り心頭になり、襲ってくること間違いなしの暴言――を述べた。
育てたくても、育たない。
女にとって、それは身長の長い短いが問題と同義のことなのだ。彼女たちにとっては、胸は自慢させたい身体的特徴のひとつなのだ。
健児の考えは、女性――一定以上恵まれなかった女性たち――の侮辱でしかなかった。
女の胸の価値観を知らない男の、無知な過ちである。

「まあいい。次の勝負だ! 次っ!」
「だったら、外せや――ボケがっ!!」
「ん? あっ、忘れてた。 ワリィ、ワリィ。 ご苦労さん、アリサ解いていいぞ」
「は……っ!」

胸を痛めつけられる自分を差し引いて、勝手に話を進める変態男。
どこまでも自分勝手なのだろうか。
目の前で行われた、と言うよりも現在進行形で行われていることを忘れて先へ先へ、と話を進めていく。
以前と変わらない短気を懐かしむべきなのか。悲しむべきなのか。怒るべきなのか。
しかも、囚われのお姫様――、一応は男である健児――にではなく、部下のほうに謝罪をしているではないか。
ココは怒るべきだ――と思うのだが、健児は文句を返さず立ち上がった。

(変に反論して…また、押さえつけられたら、たまらない……っ)

直接服が接触していて――体全体が――脳を苦しめるほど、むず痒い。
その上、冷たい床にベッタリ、と貼り付けられた所為か。
健児は妙な感情を抱き始めていた。
元来から乳房をつけていない身とは言え、直感的に何か可笑しいのは分かる。
落ち着かない。
落ち着けない。
訳も分からない束縛感。
それは不快なような、快のような不思議な温かみだった。
少し前は嫌でしかなかった感覚が、軽めのお酒のように脳を愉快にさせる。
理由は分からないが、狂騒を思わせる疼きが、まん丸で、しなやかで、そして巨大なふたつの球体から身体に広がっていく。
何かが広まり、気をぶれ動かす。
じっと、してられないのか、健児の両腕は自然――と。

「…………あっ…ん」

――自身に備わってしまった女の胸に手を当てた。無論、優しく、丁寧に。
そして広がる意味不明な世界。未知の不快と快。快と不快。
チョン、と触れたのに重い鈍器で殴られたように神経を感電した。
意識が沈む。否――澱む。
ほんの少し、揉み解しただけで脳にスパークが駆け巡り、喉からは正真正銘の雌の声が漏れ出した。

(こ、こんなに……感じるのかよっ!?……気持ち、いい…って俺は何してんだっ!?)

無意識に揉んでしまい、あまつさえ甘い世界にのめり込んでしまいそうな寸前で、健児は正常な意識を取り戻した。
肌は所々、赤色に染まりだし、息はどこか心許ないものになっている。

「……はぁ……はぁ……………あっ!」

えらい、乱れよう、である――だから、周りの人間たちが、気が付かない訳もなかった。
視線が彼に、いや『彼女』に集中していた。

「……ケンにぃ、…ん、まぁー、ドンマイ……」

気遣う心と書いて、突き落という意味の瞳を向けている恋人の紗千。

「……」

無言、無表情。
それが、これほどまでに人の心を抉るモノだったのは人生18年の中で初めてだ、と悟りを開く――『美少女』。
『彼女』はアリサと呼ばれる女性の視線に苦しんだ。そして最後に。

「ぎゃはははっ?!! 男の癖に、ひゃはは、やばぁ、変態だ! 変態がいるっ?!」

耳障りな哄笑。変態で、マッチョで、怪人らしい物体――如月 勝喜だ。
羞恥が心と身体を焼き殺す。
皮肉にも余計に『女』――らしく彼は耀いた。瞳は既に涙目だ。

kenji2_2.jpg
挿絵.うつき滄人


健児は火照りと恥辱のコラボ状態の身体を、危なげに操作し――。

「ぎゃっはははは、おま、お前、もう一生女で…………ぶぅっっ!??」

鉄の塊、フライパンを怪人目掛けて投げた。
勢いはなかったモノの見事に顔を覆い隠すように的中。
確かに、今の行動は変態以外の何者でもなかったと彼自身でも思った。
しかし、しかし。

(コイツにだけは―――――――――言われたねええぇぇぇ!!)

人には譲れないものがあるのだ。 ―――人として。
けれども、他人から見れば、健児と勝喜……どっちとも変態のレッテルを貼られるそうである。
幸か不幸か。
健児は最後の最後まで、その事実に気付いていなかった。

<つづく>

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