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狼は女神の匂い ? Ⅳ (2)   amaha

(2)
 ミントの北門から出て2kmほどからが18禁エリアになる。アダルトIDを持つVRS使用者のみが入れ、持たないものには何も無い草原だけが続くマップである。いずれの場合もシームレスなのだが、通過時に妙な感覚があった。皮膚がピリピリとくすぐったい。そして通過後はなんだが空気が肌にまとわりつく感じだ。
 朝比奈さんに聞いてみようと馬を走らせる。僕と朝比奈さん、それに助っ人の2人は騎乗しており、モモとジョアが先頭の馬車に乗り、後ろの2台はオートマタ(Automata 、自動人形)に任せてある。いつものように朝比奈さんが先導していた。
「ムヨウ、ちょっといいですか」
朝比奈さんは振り返り、助っ人2人が最後尾にいるのを確かめた。僕は2人に18禁エリアが初めてだと知られたくないと伝えてある。囁き(wis)を使うにはパーティーを一度抜けねばならず、頻回に使用すれば2人も不快に感じると思い避けていた。
「なにか不快感でも?」
「不快じゃないんですけど、なんだが感覚に変化が」
「ここじゃ触覚などの係数が変化するし、ここでしか働かぬ設定もあるから」
「それって」
「18禁だからね」

 18禁エリアでは性的・暴力的体験が可能になる。傷つけば盛大に出血するし、セックスも可能だ。だから僕の感じた違和感は女性として性行為を受ける準備が整ったと言うことなのだろう。心の準備は全然できていないのに。

 その時風が吹き、いい匂いがした。
「ムヨウ、香水でもつけたのですか」
「いや、洗いざらしだ。アンナは」
言うと同時に朝比奈さんは馬を寄せ身を乗り出し僕の首筋に鼻を近づけた。
「良い香りがするよ」
「何も付けていませんけど?」
「香水いらずってとこかな」
「まさか、オプションですか」
「役に立ちそうなものは全てチェックしたから。最初からスキルを上げておくこと以外なら全部可能だったしね」
自分の腋を嗅ぐと確かに良い香りがする。しかし最初に感じたのはもっと魅力的だった。
 首を伸ばして朝比奈さんに顔を近づける。
「あっ」 
驚く僕の顔を見て朝比奈さんは一つ頷いてこう言った。
「アンナがなにか感じたなら、男の匂いがするってことじゃないかな」
僕には返事をする余裕がなかった。排泄の必要がないこの世界であり得ぬ湿りが局部にある。改めて自分が女性キャラであることを意識した。しかも通常のオンラインゲームと違い性交可能だ。
「気分でも……顔色はむしろ良いけど」
「いえ。えーっと、あのー、やはりこのエリアについての説明を」
無論僕だって公式の説明は読んでいる。だから以前朝比奈さんが申し出たエリアの説明は必要ないと断っていた。(現実世界では美女の)朝比奈さんからゲーム内のこととはいえ、セックスの説明をしてもらうのに抵抗があったんだ。でもこれじゃ、見栄は張っていられない。何しろその日馬を降りるまで僕は股を鞍に擦りつけ続けたんだから。

 その日は野営地を決めるまでNPC盗賊にさえ教われることなく過ぎ、最初の歩哨のルルが位置につくのを確認して僕は朝比奈さんのテントに入った。

 いわゆる18禁エリアは、厳密にではないが、次の三つに分けられると思う。
 一つ目は安全な街での恋愛や夫婦関係、せいぜい不倫までの世界だ。これは三つの王国内に何か所も設けられていた。
 二つ目はアブノーマルなセックスまで楽しめる地域、例えばマラタムの沿海州にあるチチアの遊郭街である。そこではゲームマネーさえあれば歴史上のいかなる悪徳も体験できるといわれていた。
 三つめは辺境、マラタムの南西諸島、フルリの高地地帯、そして、ここアカシアの草原地帯である。そこには他では見られない特殊なモンスターの生息地や無法地帯があり、プレーヤーは意に沿わぬわいせつ行為を受ける可能性があった。もちろん逆も可能だ。ただし辺境を目指すVRS利用者が全て特殊な性癖を持つわけではない。ここでは一攫千金も夢ではなく、全員が望む超レアなアイテムを獲得することが可能だった。

 朝比奈さんは雑嚢にもたれリラックスしていた。夜間はパーティー会話を切っているので囁きで話すことにする。
「お疲れのところすみません」
「いいのよ。私たちは寝ても現実世界へは戻れないんだし」
「そういう意味ではNPCに近いのでしょうか」
「現実からは切り離されているという意味ではね」
「なんだか巻き込んでしまったようで」
「志願したのだから気にしない」
そう単純ではないと思うけど、今日はその話をしている暇はない。
「ところで」
最初に気になることを聞いてしまおうと僕は決心していた。
「なにかしら」
「この体の設定ですけど」
「ええ」
「なんというか、効き難いんですけど、そのー感じ易いんでしょうか」
「別にかまわないわ。結論からいうとごく標準よ」
「そうなんですか」
「だって部署こそ違うとはいえ、会社の同僚がモニターしてるし、職務なんだから変更には理由が必要だもの」
「でも体から発散する匂いとか」
「周りに良い印象を与えるのは重要でしょう」
「外見も?」
「まあ私の好みが入っていないと言い訳する気はないわ――そして、もう一つ正直に言うと、あなたの興味をひくための体と言うことかな」
「僕の」
「社があなたのお母様を疑っているのは感じたでしょう?」
「ハッキリ言ってましたよ」
「あら、そうだったかしら。まあ、そういうわけだから、あなたも巻き込まれたわけじゃなく計画的じゃないかと――怒った?」
「そうじゃなくて、それなら互いのキャラクターが入れ替わったのは、朝比奈さんは知らないにしても、スタッフの計略なのでしょうか」
朝比奈さんは小首をかしげて目をぱちぱちした。どことなく女性的なジェスチャーは外見と合わない。
「それはなさそうね。アンナのスキルはこれまで使い慣れたものだし、私たちが向かう北では戦闘スキルが必要なことは誰もが充分知っているはずだもの」
「なるほど」

<つづく>

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