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六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合――(1) by.黒い枕

(1)

――男の趣味は、人の人生を狂わすことだった。

彼自身でも定かではない、大昔から、それを生業として、または娯楽として、男は生きてきた。
男には、不思議な力があった。
理由は分からないが、生まれたときから持っていた能力だ。
その力を使い、男は次々と、道具を作り出してきた。
己の欲望を満たすため、他者を狂わすだけの道具、を。――そして。

「…出来た」

そこは大量の物で埋もれた――けれど不思議と窮屈でない――部屋だった。
不気味な人形や、用途の想像すら難しい、道具の数々。
何よりも異臭と呼べるほどの怪異さが、その大気には満ちていた。
まるで部屋そのものが、生き物であるかのような、あるいは人知を超える巨大な生物の吐息のような、不気味な鼓動が、絶えない空間――彼だけの世界である。
男は平然と、その中で笑みを強めると、完成させた『モノ』を見やった。

それは、ひとつのフィギュア。
澄みきったピンク色の長髪に、完成された" 女"の体形。
そして、凛々しい顔立ちに反して、子供のような笑顔を貼り付けた人形だった。
鮮やかな浴衣を身に纏い、ガラス・ケースの檻の中、絶えず微笑んでいる。

「起きろ」

男が呼び、人形は目覚めた。
魂がない人の形をした物。
それが『人形』なので、ある――が、その人形は動いた。
プラスチック特有の硬さも、瞬く間に消え、心臓の脈打つ鼓動が、人間のように漏れ出した。
唯一、変わらないのは、純粋無垢な笑顔だけである。

「全ては六鏡 玲人様の、ご意思のままに」

誕生の息吹ならぬ、誕生の挨拶をする人形。
その人形だけではない。
この場に在る、全ての人形が、均しく意志と魂を通わせた。
手を打ち合わせ、喋りだす――かと、思えば、泣き声や、うめき声、と言った風に、ベクトルの違う声まで、響く。
常識とは、かけ離れた人形の花園――だが、その場で、ただひとりの人間である彼は、人形たちの騒ぎを、ありのままに受け入れた。
なぜなら、これらは彼の趣味を、手助けしてくれる最高の"パートナー"なのだから。

また――ひとつ、男の狂気を材料に、人を狂わす『だけ』の玩具が、誕生した。


【六鏡 玲人の暗躍―水野 希光の場合――】


「――ダメだ。 こんなんじゃ全然ダメだ!!」

苛立ちのまま、青年は、両腕でテーブルを叩いた。
八つ当たりされたオシャレなテーブルは、反撃とばかりに鈍い音を返し、カップの容器から逃げ出したコーヒーが、散らばっている写真に容赦なく襲い掛かる。
だが、庇う気にはなれなかった。
なぜなら、それらは意味がない、むしろ、自分自身で破棄したい、『イラナイ』物なのだから。
――というか、既に彼の拳の中、数枚の写真が噛み砕かれたように潰されていた。

「ハア、不幸だぁ」

青年は、絶望していた。
望むものが、何も手に入らない状況に。
些細な夢だというのに、夢は夢とばかりに、手から抜け落ちる。
苦し紛れに、長髪で白髪の青年は、さらに写真を握りつぶす――が、癒されない。

不満が、不服が、癒されないストレスが、心を縛り上げた。

「ユイちゃん!!分かるか、俺の気持がっ!?」

その、美しい容貌を、鬼のように歪ませ、怒りをぶつける。
物体ではダメだと思い、先ほどから目の前にいた女性に答えを求めたのだ。
はっきりいって、その顔は殺人鬼さながら――だったが、相手は優雅且つ、堂々と、彼の赤い目を受けきり、そして。

「ご主人さま。 メイド喫茶では、お静かにお願いします」
「――すみません」

メイドとして注意し、青年――水野 希光は、マナー違反を真摯に反省した。
日本的文化――特にコスプレ――が盛んな、この都市で、水野 希光(しょうり)の名前を知らない者は少ない。
外見は、クール系の美形なのに、中身はオタク、という奇妙な存在、の上――熱血系。
つまり、有り余るほどの行動力を持っているのだ。
イベントなどで、そこにいるのが、当たり前の中毒性、もっとい、熱意に、どんな人ごみの中からも、発見が容易なカリスマ美貌。
その二つが合わさった存在は、とても無視できるものではない。
実際に仲間内から、『貴公子』という、あだ名さえも、彼は付けられている。
そんな図太く、立派なオタクをしている希光が、なにを悩んでいるのか――答え単純だ。

「最高のコスプレイヤーは…どこにいるんだろう?」
「えっと、ご主人さま。 …大学受験を控えている、ご主人さまにとっては些細な問題ではないでしょうか?」
「はっ、大学受験? あんなのものよりも芸術だ!!すなわちコスプレ美女だッ!!」

バキっ、 グギっ―バズン――!!

「…なんだ?」
「――さぁ、なんでしょうね?」

希光は本当に分からなそうだったが、メイドのユイには、怪奇音の正体が分かっていた。
天才とバカは紙一重――とは、少し違うかもしれないが、目の前の客には、その単語が、相応しいだろう。
最初のころは、彼の外見に惚れ惚れしたが、中身が重度を、否、人道を外れたオタクだと、知ってからは、彼女は傍観を貫いていた。
だから、こんな『バカな主張』も、何とか受け止められるのだ。
――ただ、人生の難関で溜まったストレスを癒して貰おうとしたお客さん、もっとい、ご主人さまには、胃の負担を増加させることになったらしい。
スプーンを曲げたり、皿を割ったり――は、まだマシで、中には首を寝違えるほどテーブルから落ちたご主人さままでも、存在した。実に悲しい結末である。

「でも、どの子も、可愛い子じゃないですかぁ。 あっ、この子なんて私よりも綺麗ですよ」
「ダメなんだよ。――確かに、可愛い子や綺麗な子は沢山いるかもしれない……けど、キャラを理解していない…いや、分かってすらいない奴ら、ばっかりなんだ。ああ――吐き気すらする、マジで…っ」

スタイルや顔は、合格点のコスプレイヤーはいる。
文化的熱狂が高まるにつれて、ぞろぞろと。
しかし、希光が求める『キャラ』が備わっている完璧なコスプレは――皆無だった。

(ああ…二次元の魅力を、三次元に求めてはいけないのか!?)

心底、『キャラ』を愛している。
だからこそ、完璧な――『キャラ』を宿している――コスプレイヤー、でないとダメなのである。
故に、そんなことを現実の人間に求めても無理なんじゃないのか、とい言う、ユイを含む大勢の助言を無視して、追求を続けてきた。
望んできた。
しかし ――。

(はあぁぁぁ。 やっぱ無理なのか?)

その熱意も空振りに次ぐ、空振りに――グロッキー状態だった。

<つづく>

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