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My Little Princess (3)

作.うずら
キャライラスト&挿絵.いずみやみその

<3>
 何を言っているのだろうか。戸惑っているうちに、イルマがしゃがみこんで手をのばしてきた。いとも容易く、持ち上げられる。顔の位置がほぼ同じ。だが、足は地面から遠く、空中をさまよっていた。怒りよりも混乱が強く、怒鳴るにしてもどう怒鳴ればいいのかわからない。
「はぁ、まさかあのメイフィールド殿がこのようになるとは。効果は人によると聞いていましたが、ここまで……」
「イルマ、あなたばかりずるいです。わたくしにもアリッサを抱かせてください」
「どうぞ、お気をつけて」
 イルマの顔に一瞬の躊躇がよぎったあと、私は姫様の元へと移動させられた。細い、白い腕。普段荷物を持つということのない姫様にとって、私は重すぎたようだった。
 よろめき、踏ん張りきれずに絨毯に倒れこんでしまった。当然、私はその上からのしかかる形になってしまう。ウィッグもその勢いで飛んでいってしまった。
「きゃっ」
「ぁっ」
「だ、大丈夫ですか? やはり、姫様には重過ぎましたね」
「え、ええ。ですが、こう、素晴らしいです」
 本来ならばここから飛び退り、安否を気遣うべきだ。が、逃げないようになのか、無意識なのか。背中に腕が回されて、抱きしめられている。いいにおいがする。甘さの中に酸味のある好ましい香り。
「さて、メイフィールド殿」
 イルマによってふたたび宙に浮き、今度はゆっくりと地面に下ろされた。ズボンの裾を踏んづけてしまっているが、それでも自分の足で立てるとほっとする。
 立ち上がった姫様とイルマに挟まれるような位置。見上げると、イルマからは頭一つと半分。姫様からでも、ひとつ分ぐらいは差があるだろうか。先ほどまでと反対だ。まるで自分が無力な存在になってしまったかのような不安感に襲われてしまう。
「メイフィールド殿?」
「な、なんでしょうか」
 再び呼びかけられ、声が上ずってしまった。これまでの人生で付き合ってきたそれとは違う、小鳥のさえずりのようにか細い。もしかしたら声変わりする前の私は、こんな感じだったのかもしれない。だが、それは、ひどくあいまいな記憶で、到底、自分が発したものだとは思えなかった。
「いつまでもその姿では、誰かに見られたときに問題でしょう。すぐ、用意しますね」
「え、あ、はい」
「わたくしもお手伝いします」
 二人はそろって、イルマが持ち込んだ荷物の方に行ってしまった。袋を開け、きゃわきゃわとかしましい。
 しかし、先ほどの口ぶり。すぐに戻れるみたいだ。であれば、イタズラを叱る程度で済ませてしまってもいいかもしれない。……イルマに関しては、厳重注意が必要だが。
 方針は決まった。暇になってしまったし、自身の状態ぐらいは確認しておきたい。幸い、すぐそばに大きな鏡が置いてあった。本来は姫様の身支度に使うものだが、何も言われはすまい。
 裾を引きずりながら歩いて行く。その先には、可憐な少女がいた。
 白銀の前髪は眉のところで、後ろ髪は肩まで。どちらもまっすぐ切りそろえられている。見慣れない髪型だが、全体的に小ぶりな顔立ちに不思議と似合っていた。彫りの深い姉上たちとはまた違った美がそこにはあった。金細工と硝子細工の対比のようなものだろうか。華奢で繊細で、触るのも躊躇う様な、そんな雰囲気だ。
 それを、無地で無骨な、しかも丈があっていない服が台無しにしていた。別に豪奢なドレスを身に着けたいと思うわけではない。だが、もったいない。
「ふぅ」
「アリッサ、ため息などついて、どうしたのです?」
「きっと自分のかわいさに見とれていたのですよ」
 後ろに立たれているのに気がつかなかった。それほど夢中になっていただろうか。恥ずかしく思い、急いで否定した。いや、するつもりだったのだが、二人の手のものを見て、問わずにはいられなかった。
「そんなことはあり、ま、せ……そ、それは、いったい?」
「アリッサの服です」
 すっぱりと言い切られた。奇妙な形状だし、見たこともない生地だ。
 待て。違う。たしか一度だけ、似たものが爾国の住人によってもたらされたことがある。あの男は"キモノ"と言っていたか。東の島国で、独特な文化を形成しているという話だが、わが国と縁はない。そのときも王妃様が一着買われただけで、そのままになっていたはずだ。そもそも、まともに着方が分からないものをどうしろというのか。
 って、ああああっ、こんなことを考えている場合ではない、今、それを私が着ることになるのだ。
 ……いや、その前に。先ほどは私を戻すということを話していたのではなかったか?
「そのようなこと、だれも言ってないですよ。ねぇ、姫様」
「はい。わたくしたちはただ、アリッサがその服装ではかわいそうという話をしていただけです」
「は、話せばわかります。ひ、姫様? ……イルマ殿?」
「うふふふふ」
 じりじりと距離を詰めてくる二人。その目は、獲物を見つけた狼と酷似していた。逃げようにも、一瞬のうちにイルマにつかまってしまった。抵抗しても意に介す様子がない。
 だぼつくシャツとズボン、下着はあっという間に取り去られた。女性に全裸をさらすだけでも抵抗があるというのに、相手は姫様だ。しかも、体は完全に少女のものになっている。見たくもないが、鏡のせいで嫌でもその姿は目に入ってくる。
 以前は上下一体となった布地を身体にまきつけると聞いたが、これはどうやら違うらしい。その証拠に姫様が手にしているのは、パニエに加え、極端に短いスカート。美しい光沢のある黒地にピンクや白の花が咲き誇っている。
 下着も履かされぬまま、ふわりと広がったそれらに足が通される。イルマの力にはこの体では勝ち目が無いようだ。いいように動かされてしまう。
 床に下ろされるなり、今度は同配色の上着だ。
 やけに口の広い袖に手が通された。前ですっぱりと切れた部分が交差され、脇の紐で固定される。これだけだと心もとないが、たしか、王妃様が買われたものには"オビ"と呼ばれるものがついていたはずだ。それでがっちりと固定できるらしい。
「姫様、すみませんが、アリッサを頼みます」
 いままで私を確保する役割を担っていたイルマが、姫様と交代した。ぐるりと向きを変えられ、鏡と対面する羽目になる。
「かわいいですよ、アリッサ」
 姫様にそうささやかれるが、何も言う気になれなかった。貴族にあるまじき極度に短いスカート。裾らしき部分や袖口にあしらわれたレース。情けない思いを強いられたまま、待つことしばし。
 予想に反して、イルマが持ってきたものはコルセットに似ていた。背中側からくるりと回され、前面を紐で編み上げられた。
「はい、これで完成」
 腰のあたりに軽く力が掛けられた。体をひねると、胴体の幅よりも巨大なリボンが飛び込んできた。コルセットにでもピンか何かで固定したのだろうか。少し身体を揺すったぐらいでは、落ちそうにない。
 最後に、底がやけに分厚い編み上げブーツが履かされ、ようやく解放された。ただでさえ慣れない感覚に加え、不安定な靴。勘弁してもらいたい。

My Little Princess キャラ


<つづく>

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