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【奥さまはマジよ❤】
作.ありす 挿絵.T
「うーん……。どうも今ひとつだわ」
私はイラストレーター。
と言っても、ネットに自分の描いたイラストをアップして、絵柄を気に入ってくれた人から、わずかばかりのお金をいただいて注文通りの絵を描くという、趣味混じりのお小遣い稼ぎをしているのだ。
生活費は旦那が稼いできてくれるから、気が向かなければ描かなくてもいいし、私の趣味にど真ん中ストライクの注文が入ったときは、それこそ何日でも徹夜を続けて力の入ったイラストを仕上げることもある。
旦那は理解ある人で、そんな私のわがままを許してくれる、とってもいい人だ。
でもそんな旦那にも、ひとつだけ不満がある。
いや、不満だなんて、そんな恐れ多いこと……。
これは全くの私の趣味の問題であって、旦那に非があるわけではない。
私の極めて特殊な、ごくフツーの男性に告白したら間違いなく後ろ指を指され、罵られても文句が言えない、個人的な趣味嗜好から来るワガママだ。
それは判ってはいるんだけど……。
「キミがこれが似合うはずだからって、言ったんだぜ?」
旦那は口を尖らせて言う。
いえ、ごめんなさい! 私的にはおkです。旦那グッジョブと褒めてあげたい。
けど、私が言いたいのは、そういうことではないのだ。
足りないのは旦那じゃない。
旦那は広がったスカートの端をつまみながら、自分の姿を鏡に映し、体をひねったりしながら、私の漏らした不満の原因が、どこにあるかを探していた。
そう、今旦那は私のコーデで女装をしている。
“イラストを描くからモデルになって”という私の頼みを聞いて、ちょっとゴスロリっぽいドレスに薄化粧をして、真っ白なフリルつきエプロンと、頭にはヘッドドレスも着けている。
線が細く、背も平均より小さめの旦那は、ことのほか女装が似合う。
いえ、ホントに!
何しろ私が旦那に強引とも言えるプロポーズをしたのは、まだ彼が大学生だった頃のこと。
彼が大学の学園祭で優勝した、女装コンテストの姿に、一目惚れしたからなのだ!!
そうよ! はっきりと言いますともさ!
私 は 男 の 娘 と B L が 大 好 物 だ っ ! !
ええ、旦那には言えませんよそんな事。もちろん世間様にも。
私はこの趣味をひた隠しに隠しながら、ひっそりとアレなイラストを描いて、一人ニンマリとする地味~な生活を送っていたのだ。
けれど、今思い出しても、あの時の彼の“男の娘”姿と言ったら!!
「なぁ、どこが悪いんだ?」
ああ、この“嫌だけど無理やりさせられている”表情がたまらない!!
「ううん、ごめんなさい! 旦那最高よ! 大好き!」
私はぎゅっと旦那に抱きつく。
「わわっ! ちょっと……」
旦那の女装は今も完璧だ。
学生時代の初々しさはないけど、完璧なゴスロリメイド姿だと思う。
けどね、そうじゃないのよ。もう一つ、足りないものがあるのよ。
旦那の性指向は残念ながら極めてノーマルだ。
その男好きしそうな外見とは裏腹に。
こんなにかわいいのに、素敵なのに!
な ん で オ ト コ が い な い の よ っ !
いえ、ごめんなさい。私の方がヘンなんです。特殊なんです。
だっていいじゃない。腐女子だもの! <みつこ>
世間様には私と同じような趣味の女性だってたくさん……いえ、比率的にはちょっとかもしれないけど、私だけじゃないのよ。こういう趣味の人は!
「ねぇ、ちょっと出かけない? その格好で」
「えええっ!? やだよっ! キミが頼むから、誰も見てない家の中ではこういう格好もするけど、外に出るなんて」
「だって、昔は一緒に出かけてくれたじゃない? かわいい服着て、デートもしたじゃん」
「学生の頃の話だろ? あの頃はまだ冗談で通じたけど……」
いや、今だって十分イけると思うんだけどな?
「とにかく駄目だよ。それに本当は今だって恥ずかしいんだから、はやくデッサン終わらせて、着替させてくれよ」
えー? せっかくのゴスロリメイドなのに、その姿で買い物に行ったり、家事をしてくれたっていいのにぃ!
でもいいんだ。今日はネットから仕込んだ悪巧みが……フフフ。
「ねぇ、ちょっとこれを見ていてくれない?」
「ん、なんだい?」
私はイラストを描くのに使っている、机の上のPCに接続されたヘッドフォンをとり、旦那に付けさせてモニタを指さした。
私自身は、その画面を見ないようにして、マウスをクリックする。
これは、極めて強力な催眠暗示プログラム。
明滅するモニタ画面と、ヘッドフォンから流れてくる音が、見ている者を深い催眠状態にするのだ。
うふふ。思惑通りに旦那はトランス状態に入っているみたい。
優しくて素直な性格の旦那は、こういうのにかかり易いことも、先刻承知のうえだ。
「ねえ、アナタはかわいいメイドさんよね?」
「……はい、ワタシは、かわいいメイドさんです……」
「その姿で買い物をしていたら、オトコが放っておかないと思わない?」
「……はい。この姿で、買い物をしていたら、オトコが放っておかないです」
「きっと素敵な男性が、あなたに声をかけてくると思うわ」
「……はい、きっと素敵な男性が、ワタシに声をかけてきます」
「そうしたら、アナタはその素敵な人に、一目惚れするわよね?」
「……はい、ワタシはその素敵な人に、一目惚れします」
「その素敵な男性と、素敵な時間を過ごしたいと思わない?」
「……はい、その素敵な男性と、素敵な時間を過ごしたいです」

「決まり。今から買い物に行きましょう」
「……はい、今から買い物に行きます」
「街で素敵な男性を見つけて、ここに連れて来るのよ。あ、大丈夫。私は暫く出かけているから、アナタが帰ってきたとき、この部屋には二人だけ。素敵な時間を過ごしてね」
「……はい素敵な男性を見つけて、この部屋で二人だけの素敵な時間を過ごします」
「じゃ、行ってらっしゃーい❤」
旦那は買い物かごを持つと、メイド姿のまま出かけて行った。
ゴメン! 旦那! 私は悪い女です。悪い妻です。
自分の趣味のために、旦那を生贄にしてしまいました。
だって、旦那も悪いのよ?
こんなにこんなに、腐女子魂を萌え上がらせるんですもの!
実際にこの目で、見てみたいと思うじゃない?
め く る め く B L な 耽 美 世 界 を っ っ ! !
<♂おしまい♀>
「うーん……。どうも今ひとつだわ」
私はイラストレーター。
と言っても、ネットに自分の描いたイラストをアップして、絵柄を気に入ってくれた人から、わずかばかりのお金をいただいて注文通りの絵を描くという、趣味混じりのお小遣い稼ぎをしているのだ。
生活費は旦那が稼いできてくれるから、気が向かなければ描かなくてもいいし、私の趣味にど真ん中ストライクの注文が入ったときは、それこそ何日でも徹夜を続けて力の入ったイラストを仕上げることもある。
旦那は理解ある人で、そんな私のわがままを許してくれる、とってもいい人だ。
でもそんな旦那にも、ひとつだけ不満がある。
いや、不満だなんて、そんな恐れ多いこと……。
これは全くの私の趣味の問題であって、旦那に非があるわけではない。
私の極めて特殊な、ごくフツーの男性に告白したら間違いなく後ろ指を指され、罵られても文句が言えない、個人的な趣味嗜好から来るワガママだ。
それは判ってはいるんだけど……。
「キミがこれが似合うはずだからって、言ったんだぜ?」
旦那は口を尖らせて言う。
いえ、ごめんなさい! 私的にはおkです。旦那グッジョブと褒めてあげたい。
けど、私が言いたいのは、そういうことではないのだ。
足りないのは旦那じゃない。
旦那は広がったスカートの端をつまみながら、自分の姿を鏡に映し、体をひねったりしながら、私の漏らした不満の原因が、どこにあるかを探していた。
そう、今旦那は私のコーデで女装をしている。
“イラストを描くからモデルになって”という私の頼みを聞いて、ちょっとゴスロリっぽいドレスに薄化粧をして、真っ白なフリルつきエプロンと、頭にはヘッドドレスも着けている。
線が細く、背も平均より小さめの旦那は、ことのほか女装が似合う。
いえ、ホントに!
何しろ私が旦那に強引とも言えるプロポーズをしたのは、まだ彼が大学生だった頃のこと。
彼が大学の学園祭で優勝した、女装コンテストの姿に、一目惚れしたからなのだ!!
そうよ! はっきりと言いますともさ!
私 は 男 の 娘 と B L が 大 好 物 だ っ ! !
ええ、旦那には言えませんよそんな事。もちろん世間様にも。
私はこの趣味をひた隠しに隠しながら、ひっそりとアレなイラストを描いて、一人ニンマリとする地味~な生活を送っていたのだ。
けれど、今思い出しても、あの時の彼の“男の娘”姿と言ったら!!
「なぁ、どこが悪いんだ?」
ああ、この“嫌だけど無理やりさせられている”表情がたまらない!!
「ううん、ごめんなさい! 旦那最高よ! 大好き!」
私はぎゅっと旦那に抱きつく。
「わわっ! ちょっと……」
旦那の女装は今も完璧だ。
学生時代の初々しさはないけど、完璧なゴスロリメイド姿だと思う。
けどね、そうじゃないのよ。もう一つ、足りないものがあるのよ。
旦那の性指向は残念ながら極めてノーマルだ。
その男好きしそうな外見とは裏腹に。
こんなにかわいいのに、素敵なのに!
な ん で オ ト コ が い な い の よ っ !
いえ、ごめんなさい。私の方がヘンなんです。特殊なんです。
だっていいじゃない。腐女子だもの! <みつこ>
世間様には私と同じような趣味の女性だってたくさん……いえ、比率的にはちょっとかもしれないけど、私だけじゃないのよ。こういう趣味の人は!
「ねぇ、ちょっと出かけない? その格好で」
「えええっ!? やだよっ! キミが頼むから、誰も見てない家の中ではこういう格好もするけど、外に出るなんて」
「だって、昔は一緒に出かけてくれたじゃない? かわいい服着て、デートもしたじゃん」
「学生の頃の話だろ? あの頃はまだ冗談で通じたけど……」
いや、今だって十分イけると思うんだけどな?
「とにかく駄目だよ。それに本当は今だって恥ずかしいんだから、はやくデッサン終わらせて、着替させてくれよ」
えー? せっかくのゴスロリメイドなのに、その姿で買い物に行ったり、家事をしてくれたっていいのにぃ!
でもいいんだ。今日はネットから仕込んだ悪巧みが……フフフ。
「ねぇ、ちょっとこれを見ていてくれない?」
「ん、なんだい?」
私はイラストを描くのに使っている、机の上のPCに接続されたヘッドフォンをとり、旦那に付けさせてモニタを指さした。
私自身は、その画面を見ないようにして、マウスをクリックする。
これは、極めて強力な催眠暗示プログラム。
明滅するモニタ画面と、ヘッドフォンから流れてくる音が、見ている者を深い催眠状態にするのだ。
うふふ。思惑通りに旦那はトランス状態に入っているみたい。
優しくて素直な性格の旦那は、こういうのにかかり易いことも、先刻承知のうえだ。
「ねえ、アナタはかわいいメイドさんよね?」
「……はい、ワタシは、かわいいメイドさんです……」
「その姿で買い物をしていたら、オトコが放っておかないと思わない?」
「……はい。この姿で、買い物をしていたら、オトコが放っておかないです」
「きっと素敵な男性が、あなたに声をかけてくると思うわ」
「……はい、きっと素敵な男性が、ワタシに声をかけてきます」
「そうしたら、アナタはその素敵な人に、一目惚れするわよね?」
「……はい、ワタシはその素敵な人に、一目惚れします」
「その素敵な男性と、素敵な時間を過ごしたいと思わない?」
「……はい、その素敵な男性と、素敵な時間を過ごしたいです」

「決まり。今から買い物に行きましょう」
「……はい、今から買い物に行きます」
「街で素敵な男性を見つけて、ここに連れて来るのよ。あ、大丈夫。私は暫く出かけているから、アナタが帰ってきたとき、この部屋には二人だけ。素敵な時間を過ごしてね」
「……はい素敵な男性を見つけて、この部屋で二人だけの素敵な時間を過ごします」
「じゃ、行ってらっしゃーい❤」
旦那は買い物かごを持つと、メイド姿のまま出かけて行った。
ゴメン! 旦那! 私は悪い女です。悪い妻です。
自分の趣味のために、旦那を生贄にしてしまいました。
だって、旦那も悪いのよ?
こんなにこんなに、腐女子魂を萌え上がらせるんですもの!
実際にこの目で、見てみたいと思うじゃない?
め く る め く B L な 耽 美 世 界 を っ っ ! !
<♂おしまい♀>
コメント
嫁、ひど……っ
ああ、これが以前話題になった鬼嫁というやつですか。
ああ、これが以前話題になった鬼嫁というやつですか。
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うずらちゃんも、きっと酷い目に❤