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「分裂譚」 ~ ♂殖栗 玉造シリーズ♀ (2)
テキスト.ありす
挿絵.松園
(2)-------------------------------------------------------
勝手の良くわからない自分の体に戸惑いながら、少々緊張しながら何とか用を足すと、ほっとひと心地ついた。
トイレから出て洗った手を手ぬぐいで拭きながら部屋に戻ると、コピーの奴が正座してニコニコしながら待っていた。
「で、どうだった?」
「何が?」
「おしっこしてきたんだろ? 興奮したか?」
「するか!!」
濡れた手ぬぐいをコピーの顔に叩きつけてやった。
「うぷっ! 乱暴だなぁ。で、どうだ? そろそろその気になってくれたか?」
「まだだ。 っていうか、そんなにがっつくなよ」
おれは今にも押し倒そうと、手を伸ばしてくるコピーを手で追い払いながら言った。
「じゃ、せめてそのシャツ脱いで見せてくれよ」
「やだよ。この下、裸なんだから」
裸になったら、力づくでコイツに押し倒されそうだ。
「知ってるよ。だから脱いでくれって言っているんだろ?」
「あん? 何でそんなこと知ってるんだ?」
「さっきトイレから出て、洗濯機にシャツとパンツを放り込んでいただろう?」
ああ、寝汗で気持ち悪かったから、着替えたんだよ。
女の体って、デリケートだからな。
「その後、干してあったTシャツしか、着なかったじゃないか」
「覗いていたのかよ!!」
パンツはどう考えてもすぐに脱げて足をとられそうなので、仕方なくTシャツだけ着たのだ。
体が小さくなったおかげで、ワンピースみたいに裾が長くなったから、まぁいいかと妥協したのだ。
「かわいいお尻だったなぁ……」
「思い出すな!」
「まだ後ろ姿だけしか、見せてもらっていないんだぞ」
「見せたわけじゃなくて、盗み見したんだろ!」
「だから、な、正面も見せてくれよ! お願い! このとおり! 神様仏様観音様俺様……」
と、コピーの奴は手をすり合わせ、床に頭をこすりつけながら懇願した。
そこまで卑屈になるなよ、情けない……。
「し、仕方ないな……」
「おお、見せてくれるか!」
「脱ぐから、ちょっとあっち向いてろ!」
「なんで?」
「恥ずかしいからだよ! 向かないと脱がないぞ!」
「どうせ、もっと恥ずかしい……いえ、ごめんなさい! 素直に従いますぅ」
握りこぶしを作ってけん制すると、コピーはあわてたように後ろを向いた。
仕方が無いので、Tシャツの裾をつかんで脱ごうとしたところで、ふと手が止まった。
「あらかじめ言っておくが……」
「なんだよ、まだひっぱるのか?」
「その、おまえ、ちょっとがっかりするかもしれん……」
「なんで?」
「ちょっとな、胸がな……」
「小さいのがか?」
「はっきり言うな! っていうか何でわかった!」
「さっき横チチだけは見たからな。しかし……」
「本当に、お前はもう……」
「「がっかりだ……」」
ヘンなところでハモるな!!
「おれはせっかくなるなら、もうちょっとこう、なんていうか、むっちりしたのがよかったんだが……」
Tシャツの上から軽く自分の胸に、手を当てて少し揉んでみた。
「まったくそのとおりだが……あ!」
「ん? どうした?」
「俺のも、小さいのかな?」
「知るか!!」
「勃起しなかったら、ショックだな……」
「多分、分裂したことで、いろいろと足りない分があるのかもしれんなぁ」
「そうだな、気にしないことにしよう……って、うぉっーーーーー!!!!」
「今度は何だ?」
「生えてねぇ……」
「何っ!!?? 見せてみろっ!」
「いやぁっ、変態っー!」
「何いってやがる! って、あるじゃねぇか、粗末なのが」
「自分に向かって言うか? この貧乳」
「何だと?!」
「いや、不毛だからやめよう。生えてねぇってのは毛のことだから……」
「強引だな。って、俺も生えてないや」
「お前それで生えていなかったら、ロ…」
「それ以上言うな。いろいろと問題あるんだから」
「なぁ、お互いこうなったのって……」
「ああ、2級品だから?」
「「はぁ~」」
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
「いいからほら、脱げよ。ヤろうぜ」
「気楽に言うなよ。組み敷かれるのは、おれの方なんだぞ」
「お前が上でもいいけど」
「や、それはなんとなくプライドってものがな……」
「それは俺の方のセリフじゃないのか?」
「あくまでも、お前がしたいから“しかたなく”させてやるという形じゃないと……」
「ヘンなコダワリだな。そもそも怪しい薬を買って飲んだのは、お前だろう?」
「いいじゃねえか、損な役回りなんだから、ちっとは気ぃ使え!」
「なんでもいいよ。それじゃ、オーソドックスにキスから……」
と、コピーは目を閉じて、顔を近づけてきやがった。
唇を突き出して目を閉じてくる自分を、改めてアップで見ると……
「ん……。ぷっ! くくく……くわっぁはははははっはは……」
「なんだよ?」
「ぷははははははは、おで、おで、おでこに 、ふふふふぅ~ぷぅふふふふふふっ!」、
「ふ?」
「ふくぅ……、“複”ってぇ、あはははははははははは!!!!!!!!」
「これかぁ? 笑うなよ」
「だって、だってぇえ~~、あっはははははははは!!!」
駄目だ! 笑いがとまらねぇwwwww
ひとしきり笑い続け、最後は呼吸困難になりかけて、ようやく止まった。
「落ち着いたか?」
「はぁ、はぁ、はぁ……、まぁ何とか」
「仕方ない、絆創膏あるか?」
「聞かなくても判るだろう、冷蔵庫の一番上だ」
「考えてみたら変なところにしまってあるよな……あった。これか」
「ひんやりするから、貼った時に気持ちいいだろう。何に使うんだ?」
「またお前が笑い出さないように、おでこに貼る」
「じゃ、マジック……」
「上から“肉”とか書くんじゃないだろうな?」
「よくわかったな」
「わからいでか! つーか、それじゃ同じだろ! また笑いが止まらなくなるぞ」
「それもそうだな」
「さっさとヤろうぜ、読んでくれている読者の人だって、いい加減見放したくなるぞ」
「お前は何を言っているんだ?」
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
「じゃ、キスからいくぞ。ちゃんと目を閉じろよ」
「うん、わかった……」
また吹き出して笑い転げていては先に進めないので、おとなしくコピーの言うとおりに目を閉じた。
そっと包み込むように抱き寄せられて、頤(おとがい)に手を当てられた。
頭の後ろを撫でるようにさすられると、緊張して力が入ったまま下を向いた顔が、自然に上向きになって、唇に感触があった。
キスってこんな感じなんだ……。
恥ずかしながら、この歳までそんな経験はなかった。
軽く2,3回、伺うような軽いキスの後、今度はぎゅっと閉じていた唇を割るようにして、舌を入れられた。
まるでノックするようにして、歯茎や小さな歯を小突かれているうちに、なんとなく緊張感が消え失せ、舌の愛撫を受け入れ、応じてしまっていた。
気持ちがよかったのだ。
後で思い出して怖くなるほどに。
ディープキスとともに、頭や背中を優しく撫でられているうちに、そんな気分になってしまっていたのかもしれない。
おれはコピーの手が、着ていただぶだぶのTシャツの中に入れられたところで正気を取り戻し、コピーとの体の間に腕を押し込んで、体を離した。
「はぁ、はぁ……」
「なんだよ? これからいいところなのに……」
「……いまのは、ちょっとヤバかった」
「濡れたか?」
「うるさい! お前、なんでそんなにキスがうまいんだよ?」
「この間買った雑誌に書いてあったじゃないか。“女をメロメロにさせる、キスの極意”」
「こっちは女の子初心者なんだから、いきなり高度なテク使うな! 本気になりかけたじゃないか!」
「いや、自分でも不思議だったんだがな……」
「なんだよ」
「なんつーかお前、体ふにふにで柔らかくて、なんか甘いような良い匂いがするんだよ。髪だってサラサラだし」
「は、恥ずかしいこと言うなよ。体が女になっちまったんだから、そ、そんなの当たり前だろう」
「だからさ。女の子とキスしているんだと思うと、なんか、こう……。それに、お前だって抵抗しなかったじゃないか。舌いれても。その気になっていたんだろ。で、濡れたか?」
「な゙っ、う、うるさいっ! とにかく、本気のキスなんかすんな!」
恥ずかしいが、コピーが言うとおり、“濡れ”ていた。
あれで感じるんだ。この体……。
「おあずけ食らいたく無いから、本気にさせるつもりで、キスしたんだけどなぁ……」
「お前、自分相手によくできるな、あんなキス。冷静に考えると、ちょっとコワいぞ?」
「いやまぁ、お前は俺をみても自分だと戸惑うかもしれないが、正直俺から見ると“他人”なんだよ、お前は。本来は俺は男だしな」
「う……、それって、ずるいぞ」

このときのおれは無意識のうちに、少しばかり顔を赤くして、体をかばうようにして縮こまりながら、上目遣いでコピーをにらんでいたのだが、それが余計にコピーを興奮させているなんて、思ってもいなかった。
「お前のほうがずるい!」
言うなり、コピーの奴はおれにしがみつくように抱きついて、そのまま布団に押し倒された。
突然の行動に身構えるまもなく、羽交い絞めにされて、まったく身動きできなかった。
「ぐ、ぐるじい……。やめ……、マジで、つぶれる……」
あらん限りの力で思いっきり手足をばたばたさせると、ようやく解放された。
「す、すまん。痛かったか?」
「けほっ、いきなり……、けほっ、襲い掛かるなよ。死ぬかと思った」
「……俺も、萌え死ぬかと思った」
「自分にかよ……」
「今も言ったろ? 俺にとっちゃ、はっきり言って他人だと。頼むから泣きそうな上目遣いで見つめるな、どうにかなりそうだよ」
「やっぱり不公平だ……」
「“女は男の10倍気持ちイイ”んだろ。たっぷり味合わせてやるから、それでバランスが取れる」
「ううう、仕方ない。でも、やさしくしてくれなかったら、泣いちゃうぞ?」
「はいはい、大丈夫だから安心して」
「どうもさっきっから……。あ」
「今度はなんだ?」
「その、緊張しちゃって……のど渇いたかも」
「……」
ジト目のコピーが、おれを責める様な表情になる。
うう、だって……。緊張で喉が渇いてひりひりするんだよ。
別に焦らしているわけじゃないんだが……。
「お水、くれないの?」
覚えたばかりの“俺向け❤萌え❤”ポーズをちょっと試してみる。
涙目じゃなくって、笑顔で。
溜息をついて立ち上がったコピーは、冷蔵庫からウーロン茶のペットボトルを出した。
そのまま戻ってこようとして、おれの顔を見てから思い直し、戸棚からコップを取り出した。
そしてやや乱暴な足取りで戻ってきて、おれの正面にどでん! と胡坐をかいた。
手を伸ばしてコップを受け取ろうとすると、手で払われた。
「条件がある」
「何?」
「俺はもう正直限界なんだ。今すぐお前を無理矢理にでも押し倒したくてしょうがないのを、すごーーーーーく我慢しているんだぞ。それを忘れないように」
「わ、わかった」
「今度ストップかけたら、泣こうがわめこうが、無理矢理にでも犯すからな!」
無言でこくこくと2回うなずくと、コピーは剣呑な顔つきでおれを睨んでから、コップにウーロン茶をついで渡してくれた。
「できれば両手でかわいく飲んでくれ」
それでコピーの機嫌が直るのならと、飲みながらコップを両手で持ち替えなおして、うんうんとうなづいた。かわいく飲んでいるように見えるか良くわからないが、コピーの表情が緩んだのでうまく出来ているんだろう。
ひと心地ついて、ぷはーとやったら、また睨まれた。
やべ、オッサン臭かったか?
しかたない。こっちも雰囲気作りに協力することにしよう。
「ありがと」
と言って、頬にキスしてやった。
顔は仏頂面をしているけど、ほっぺたは真っ赤だった。
あ、なんかかわいいかも。
「まだ飲むのか?」
「ううん。もういい」
コピーはおれからコップを受け取ると、そのコップにウーロン茶をついで、ぐいっと飲み干した。
ふと気がついて、できるだけかわいらしく言ってみた。
「コップ……」
「ん? なんだ?」
コピーは怪訝そうな顔でおれを見た。
「間接キスだね❤」
にっこりと笑顔で言ってやった。
コピーの言い草ではないが、さんざん待たせたんだ。
コレぐらいサービスしてやらないと、本当に乱暴に犯されてしまう。
だが、そのとたんにコピーは“ぷほっ!”とちょっとむせ、コップを放り投げるようにちゃぶ台の上におくと、本日二度目の強引な押し倒しを食らった。
やべ、ちょっと効果が強すぎたか?
「く、くるしいよ……」
「す、すまん。だがお前は俺自身なんだからかもしれないが、あんまりツボをつくな」
「ご、ごめん」
「だがその調子で頼む。男の仕草でやられたら、萌えないからな」
と、口では言いつつも押し付けられているコピーの股間は、かなり硬くなっていた。
「自分で脱ぐか? それとも脱がせて欲しいか?」
と、コピーが言うので、任せることにした。
“果物の皮をむくのも……”と、コピーも同じ考えに違いないと思ったからだ。
くすぐったいのと、恥ずかしいのとを我慢して、されるがままにだぶだぶのTシャツを脱がされてやると、コピーは満足そうにおれの体を眺め、自分も全部脱ぎ捨てた。
「でも、なんだかんだいって、勃ってるんじゃ……」
「お前だって、濡れてんぞ」
と、いきなり剥き出しのアソコを撫でられた。
「ひゃぅん❤!」
「……」
「って、今の、お……ワタシの声?」
「本当に女の子みたいだった……」
「「(////)…」」
「何でお前まで赤くなっているんだよ」
「いや、それが俺の反応だと思うと、ちょっとな。恥ずかしい声出すなよ……」
「お前だってなってみればわかるよ。出ちゃうんだから、しょうがないだろ」
「壁が薄いんだから、隣に聞こえたらまずい。今度そんな声出したら、口にタオル詰め込むからな」
「いきなりSMプレイかよ」
「陵辱プレイも思いのままって……」
「それは後でな……」
「いいのか?」
「いいから続きしろ! こっちもその気になって合わせているんだから、醒めさせるな! ちっとも気分がでないだろ?」
「まぁ、最初から自分にそんなのは、期待していないが……」
「おれ……。ワタシは……ちょっとだけ期待かな?」
「あん?」
「だって、女の快感は男の10倍って、さっき言ったじゃないか」
「この変態さんめ!」
「きゃん❤!」
脇をくすぐられて、思わずまた女の子みたいな声が出た。
やってることはバカップルみたいだが、自分同士だと思うと落ち込むので、開き直ることにしよう。
<つづく>
挿絵.松園
(2)-------------------------------------------------------
勝手の良くわからない自分の体に戸惑いながら、少々緊張しながら何とか用を足すと、ほっとひと心地ついた。
トイレから出て洗った手を手ぬぐいで拭きながら部屋に戻ると、コピーの奴が正座してニコニコしながら待っていた。
「で、どうだった?」
「何が?」
「おしっこしてきたんだろ? 興奮したか?」
「するか!!」
濡れた手ぬぐいをコピーの顔に叩きつけてやった。
「うぷっ! 乱暴だなぁ。で、どうだ? そろそろその気になってくれたか?」
「まだだ。 っていうか、そんなにがっつくなよ」
おれは今にも押し倒そうと、手を伸ばしてくるコピーを手で追い払いながら言った。
「じゃ、せめてそのシャツ脱いで見せてくれよ」
「やだよ。この下、裸なんだから」
裸になったら、力づくでコイツに押し倒されそうだ。
「知ってるよ。だから脱いでくれって言っているんだろ?」
「あん? 何でそんなこと知ってるんだ?」
「さっきトイレから出て、洗濯機にシャツとパンツを放り込んでいただろう?」
ああ、寝汗で気持ち悪かったから、着替えたんだよ。
女の体って、デリケートだからな。
「その後、干してあったTシャツしか、着なかったじゃないか」
「覗いていたのかよ!!」
パンツはどう考えてもすぐに脱げて足をとられそうなので、仕方なくTシャツだけ着たのだ。
体が小さくなったおかげで、ワンピースみたいに裾が長くなったから、まぁいいかと妥協したのだ。
「かわいいお尻だったなぁ……」
「思い出すな!」
「まだ後ろ姿だけしか、見せてもらっていないんだぞ」
「見せたわけじゃなくて、盗み見したんだろ!」
「だから、な、正面も見せてくれよ! お願い! このとおり! 神様仏様観音様俺様……」
と、コピーの奴は手をすり合わせ、床に頭をこすりつけながら懇願した。
そこまで卑屈になるなよ、情けない……。
「し、仕方ないな……」
「おお、見せてくれるか!」
「脱ぐから、ちょっとあっち向いてろ!」
「なんで?」
「恥ずかしいからだよ! 向かないと脱がないぞ!」
「どうせ、もっと恥ずかしい……いえ、ごめんなさい! 素直に従いますぅ」
握りこぶしを作ってけん制すると、コピーはあわてたように後ろを向いた。
仕方が無いので、Tシャツの裾をつかんで脱ごうとしたところで、ふと手が止まった。
「あらかじめ言っておくが……」
「なんだよ、まだひっぱるのか?」
「その、おまえ、ちょっとがっかりするかもしれん……」
「なんで?」
「ちょっとな、胸がな……」
「小さいのがか?」
「はっきり言うな! っていうか何でわかった!」
「さっき横チチだけは見たからな。しかし……」
「本当に、お前はもう……」
「「がっかりだ……」」
ヘンなところでハモるな!!
「おれはせっかくなるなら、もうちょっとこう、なんていうか、むっちりしたのがよかったんだが……」
Tシャツの上から軽く自分の胸に、手を当てて少し揉んでみた。
「まったくそのとおりだが……あ!」
「ん? どうした?」
「俺のも、小さいのかな?」
「知るか!!」
「勃起しなかったら、ショックだな……」
「多分、分裂したことで、いろいろと足りない分があるのかもしれんなぁ」
「そうだな、気にしないことにしよう……って、うぉっーーーーー!!!!」
「今度は何だ?」
「生えてねぇ……」
「何っ!!?? 見せてみろっ!」
「いやぁっ、変態っー!」
「何いってやがる! って、あるじゃねぇか、粗末なのが」
「自分に向かって言うか? この貧乳」
「何だと?!」
「いや、不毛だからやめよう。生えてねぇってのは毛のことだから……」
「強引だな。って、俺も生えてないや」
「お前それで生えていなかったら、ロ…」
「それ以上言うな。いろいろと問題あるんだから」
「なぁ、お互いこうなったのって……」
「ああ、2級品だから?」
「「はぁ~」」
「いいからほら、脱げよ。ヤろうぜ」
「気楽に言うなよ。組み敷かれるのは、おれの方なんだぞ」
「お前が上でもいいけど」
「や、それはなんとなくプライドってものがな……」
「それは俺の方のセリフじゃないのか?」
「あくまでも、お前がしたいから“しかたなく”させてやるという形じゃないと……」
「ヘンなコダワリだな。そもそも怪しい薬を買って飲んだのは、お前だろう?」
「いいじゃねえか、損な役回りなんだから、ちっとは気ぃ使え!」
「なんでもいいよ。それじゃ、オーソドックスにキスから……」
と、コピーは目を閉じて、顔を近づけてきやがった。
唇を突き出して目を閉じてくる自分を、改めてアップで見ると……
「ん……。ぷっ! くくく……くわっぁはははははっはは……」
「なんだよ?」
「ぷははははははは、おで、おで、おでこに 、ふふふふぅ~ぷぅふふふふふふっ!」、
「ふ?」
「ふくぅ……、“複”ってぇ、あはははははははははは!!!!!!!!」
「これかぁ? 笑うなよ」
「だって、だってぇえ~~、あっはははははははは!!!」
駄目だ! 笑いがとまらねぇwwwww
ひとしきり笑い続け、最後は呼吸困難になりかけて、ようやく止まった。
「落ち着いたか?」
「はぁ、はぁ、はぁ……、まぁ何とか」
「仕方ない、絆創膏あるか?」
「聞かなくても判るだろう、冷蔵庫の一番上だ」
「考えてみたら変なところにしまってあるよな……あった。これか」
「ひんやりするから、貼った時に気持ちいいだろう。何に使うんだ?」
「またお前が笑い出さないように、おでこに貼る」
「じゃ、マジック……」
「上から“肉”とか書くんじゃないだろうな?」
「よくわかったな」
「わからいでか! つーか、それじゃ同じだろ! また笑いが止まらなくなるぞ」
「それもそうだな」
「さっさとヤろうぜ、読んでくれている読者の人だって、いい加減見放したくなるぞ」
「お前は何を言っているんだ?」
「じゃ、キスからいくぞ。ちゃんと目を閉じろよ」
「うん、わかった……」
また吹き出して笑い転げていては先に進めないので、おとなしくコピーの言うとおりに目を閉じた。
そっと包み込むように抱き寄せられて、頤(おとがい)に手を当てられた。
頭の後ろを撫でるようにさすられると、緊張して力が入ったまま下を向いた顔が、自然に上向きになって、唇に感触があった。
キスってこんな感じなんだ……。
恥ずかしながら、この歳までそんな経験はなかった。
軽く2,3回、伺うような軽いキスの後、今度はぎゅっと閉じていた唇を割るようにして、舌を入れられた。
まるでノックするようにして、歯茎や小さな歯を小突かれているうちに、なんとなく緊張感が消え失せ、舌の愛撫を受け入れ、応じてしまっていた。
気持ちがよかったのだ。
後で思い出して怖くなるほどに。
ディープキスとともに、頭や背中を優しく撫でられているうちに、そんな気分になってしまっていたのかもしれない。
おれはコピーの手が、着ていただぶだぶのTシャツの中に入れられたところで正気を取り戻し、コピーとの体の間に腕を押し込んで、体を離した。
「はぁ、はぁ……」
「なんだよ? これからいいところなのに……」
「……いまのは、ちょっとヤバかった」
「濡れたか?」
「うるさい! お前、なんでそんなにキスがうまいんだよ?」
「この間買った雑誌に書いてあったじゃないか。“女をメロメロにさせる、キスの極意”」
「こっちは女の子初心者なんだから、いきなり高度なテク使うな! 本気になりかけたじゃないか!」
「いや、自分でも不思議だったんだがな……」
「なんだよ」
「なんつーかお前、体ふにふにで柔らかくて、なんか甘いような良い匂いがするんだよ。髪だってサラサラだし」
「は、恥ずかしいこと言うなよ。体が女になっちまったんだから、そ、そんなの当たり前だろう」
「だからさ。女の子とキスしているんだと思うと、なんか、こう……。それに、お前だって抵抗しなかったじゃないか。舌いれても。その気になっていたんだろ。で、濡れたか?」
「な゙っ、う、うるさいっ! とにかく、本気のキスなんかすんな!」
恥ずかしいが、コピーが言うとおり、“濡れ”ていた。
あれで感じるんだ。この体……。
「おあずけ食らいたく無いから、本気にさせるつもりで、キスしたんだけどなぁ……」
「お前、自分相手によくできるな、あんなキス。冷静に考えると、ちょっとコワいぞ?」
「いやまぁ、お前は俺をみても自分だと戸惑うかもしれないが、正直俺から見ると“他人”なんだよ、お前は。本来は俺は男だしな」
「う……、それって、ずるいぞ」

このときのおれは無意識のうちに、少しばかり顔を赤くして、体をかばうようにして縮こまりながら、上目遣いでコピーをにらんでいたのだが、それが余計にコピーを興奮させているなんて、思ってもいなかった。
「お前のほうがずるい!」
言うなり、コピーの奴はおれにしがみつくように抱きついて、そのまま布団に押し倒された。
突然の行動に身構えるまもなく、羽交い絞めにされて、まったく身動きできなかった。
「ぐ、ぐるじい……。やめ……、マジで、つぶれる……」
あらん限りの力で思いっきり手足をばたばたさせると、ようやく解放された。
「す、すまん。痛かったか?」
「けほっ、いきなり……、けほっ、襲い掛かるなよ。死ぬかと思った」
「……俺も、萌え死ぬかと思った」
「自分にかよ……」
「今も言ったろ? 俺にとっちゃ、はっきり言って他人だと。頼むから泣きそうな上目遣いで見つめるな、どうにかなりそうだよ」
「やっぱり不公平だ……」
「“女は男の10倍気持ちイイ”んだろ。たっぷり味合わせてやるから、それでバランスが取れる」
「ううう、仕方ない。でも、やさしくしてくれなかったら、泣いちゃうぞ?」
「はいはい、大丈夫だから安心して」
「どうもさっきっから……。あ」
「今度はなんだ?」
「その、緊張しちゃって……のど渇いたかも」
「……」
ジト目のコピーが、おれを責める様な表情になる。
うう、だって……。緊張で喉が渇いてひりひりするんだよ。
別に焦らしているわけじゃないんだが……。
「お水、くれないの?」
覚えたばかりの“俺向け❤萌え❤”ポーズをちょっと試してみる。
涙目じゃなくって、笑顔で。
溜息をついて立ち上がったコピーは、冷蔵庫からウーロン茶のペットボトルを出した。
そのまま戻ってこようとして、おれの顔を見てから思い直し、戸棚からコップを取り出した。
そしてやや乱暴な足取りで戻ってきて、おれの正面にどでん! と胡坐をかいた。
手を伸ばしてコップを受け取ろうとすると、手で払われた。
「条件がある」
「何?」
「俺はもう正直限界なんだ。今すぐお前を無理矢理にでも押し倒したくてしょうがないのを、すごーーーーーく我慢しているんだぞ。それを忘れないように」
「わ、わかった」
「今度ストップかけたら、泣こうがわめこうが、無理矢理にでも犯すからな!」
無言でこくこくと2回うなずくと、コピーは剣呑な顔つきでおれを睨んでから、コップにウーロン茶をついで渡してくれた。
「できれば両手でかわいく飲んでくれ」
それでコピーの機嫌が直るのならと、飲みながらコップを両手で持ち替えなおして、うんうんとうなづいた。かわいく飲んでいるように見えるか良くわからないが、コピーの表情が緩んだのでうまく出来ているんだろう。
ひと心地ついて、ぷはーとやったら、また睨まれた。
やべ、オッサン臭かったか?
しかたない。こっちも雰囲気作りに協力することにしよう。
「ありがと」
と言って、頬にキスしてやった。
顔は仏頂面をしているけど、ほっぺたは真っ赤だった。
あ、なんかかわいいかも。
「まだ飲むのか?」
「ううん。もういい」
コピーはおれからコップを受け取ると、そのコップにウーロン茶をついで、ぐいっと飲み干した。
ふと気がついて、できるだけかわいらしく言ってみた。
「コップ……」
「ん? なんだ?」
コピーは怪訝そうな顔でおれを見た。
「間接キスだね❤」
にっこりと笑顔で言ってやった。
コピーの言い草ではないが、さんざん待たせたんだ。
コレぐらいサービスしてやらないと、本当に乱暴に犯されてしまう。
だが、そのとたんにコピーは“ぷほっ!”とちょっとむせ、コップを放り投げるようにちゃぶ台の上におくと、本日二度目の強引な押し倒しを食らった。
やべ、ちょっと効果が強すぎたか?
「く、くるしいよ……」
「す、すまん。だがお前は俺自身なんだからかもしれないが、あんまりツボをつくな」
「ご、ごめん」
「だがその調子で頼む。男の仕草でやられたら、萌えないからな」
と、口では言いつつも押し付けられているコピーの股間は、かなり硬くなっていた。
「自分で脱ぐか? それとも脱がせて欲しいか?」
と、コピーが言うので、任せることにした。
“果物の皮をむくのも……”と、コピーも同じ考えに違いないと思ったからだ。
くすぐったいのと、恥ずかしいのとを我慢して、されるがままにだぶだぶのTシャツを脱がされてやると、コピーは満足そうにおれの体を眺め、自分も全部脱ぎ捨てた。
「でも、なんだかんだいって、勃ってるんじゃ……」
「お前だって、濡れてんぞ」
と、いきなり剥き出しのアソコを撫でられた。
「ひゃぅん❤!」
「……」
「って、今の、お……ワタシの声?」
「本当に女の子みたいだった……」
「「(////)…」」
「何でお前まで赤くなっているんだよ」
「いや、それが俺の反応だと思うと、ちょっとな。恥ずかしい声出すなよ……」
「お前だってなってみればわかるよ。出ちゃうんだから、しょうがないだろ」
「壁が薄いんだから、隣に聞こえたらまずい。今度そんな声出したら、口にタオル詰め込むからな」
「いきなりSMプレイかよ」
「陵辱プレイも思いのままって……」
「それは後でな……」
「いいのか?」
「いいから続きしろ! こっちもその気になって合わせているんだから、醒めさせるな! ちっとも気分がでないだろ?」
「まぁ、最初から自分にそんなのは、期待していないが……」
「おれ……。ワタシは……ちょっとだけ期待かな?」
「あん?」
「だって、女の快感は男の10倍って、さっき言ったじゃないか」
「この変態さんめ!」
「きゃん❤!」
脇をくすぐられて、思わずまた女の子みたいな声が出た。
やってることはバカップルみたいだが、自分同士だと思うと落ち込むので、開き直ることにしよう。
<つづく>
コメント
ヤバい、ヤバいよ!
ツボにはまりまくりですよ。
ニヤニヤが止まらない!
後、四回これが続くとか、もう萌死ねるかもしれない。
ツボにはまりまくりですよ。
ニヤニヤが止まらない!
後、四回これが続くとか、もう萌死ねるかもしれない。
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でも、抜けないかもw コメディですので……。