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クジラの人魚姫3-1

作:黒い枕
キャラデザ&挿絵:倉塚りこ 

「うはは、はあっ~~!! 金だぁ!! 金だあ!! 金だああ!!」
「どうでも良いけど……人前ではちゃんと化けの皮被っとけよな……」

大金を抱きかかえ叫んでいる少女と、それを傍観する女性。
姉妹なのか。
その可愛らしい顔や、綺麗な顔は似てなくもない。

「大丈夫よ、そんな失敗はしないわ。むしろ、気を付けるべきは貴方の方よ…"セラス"ちゃん」
「……ッ」

目に見えて肩を落としていた女性が、その一言で、ぎらりっと、睨み返す。
もっとも、発言者である少女――本当は人の親"父"――は、平然としていた。

(誰がセラスちゃんだ!誰がっ!)

鼻歌まで口ずさんでいるのも怒りの対象だが、何よりも許せなかったのは『セラス』と呼ぶこと。
セラスなどという人物も居ないし、そもそも自分は――女性でもないのだ。

「誰がセラスだ!俺はクジラだっ!」

自分は、自分こそは――白方 玖史羅なのだと叫ぶ外見、クールスタイルな美女。
グラマーな体と華麗な顔を持っていても、その中身は立派な青年――。

「もう、泣いたら可愛い顔が台無しよ、スマイル。スマイルよ…セラスちゃん」
「だ、だからぁぁぁ…ッ!」

と、行かないまでも、少年なので、女性としての生活と、その『ルール』に短気になっていた。
女という仮面をかなぐり捨てて、外見は美少女である実の父親の胸倉を掴んだ。

「おおぉ!こらこら…約束はどうしたの?大丈夫よ、稼いだお金でちゃんとセラスちゃんの洋服も買ってあげるから……あうっ!?」
「誰が服が欲しいって言った!?…いいか!?セシリウスにこのことをチクったら、どうなるか分るな――」

今のクジラが接客に加わってからの水族館の成果――札束を持ちながら、場違いな説得をする外見は美少女だが、中身は最低な親父を締めるのに良心の呵責はなかった。
なんせ、無意識に気絶させてしまうほど容赦がない。
そして、その激情のせいか、彼は背後に迫る人間に、まったく気付けなかった。

「にゃあああっ??!」

にゅぐ、にゅぐりりっ。
胸を強く潰され、クジラは、猫のような声を上げた。

「ひぃ…んあっ!い…いつから…あん!」

おぞましき感触に視線を下へ向ければ、そこには幾つもの指が、ぎょにううっ、と暴れている。
見覚えのある手。
『白方 玖史羅』――の丈夫な指が、彼の乳を叩き伏せていた。

「丁度、帰って来たところです。…言い訳は聞きません、セラスさんペナルティー、一回っ!!」
「せ、せしりうすぅぅ!! か、かん…勘弁――あひぁン?!!」

乳の両脇を抓り回し、ここぞとばかり『彼』――自分の体にいるセシリウスと言う人魚は、乳首を捻った。
膨大な刺激に身体から力が奪われた。
この愛撫だけで腰を抜かしそうである。

「あふっ…んんっ、あが、ぁ」

まるでクッションを押しつぶすかのように、またも乳を握られた。
苦痛に襲われながら、体が如実に愛を、快感を渇望する。

(も、もう嫌だ。 なんでこんなことに――っ)

瞳に涙が溜まる。悲しみの涙。
未だに納得出来ないお仕置きの理不尽さに、怒りも募った。

「ひ、んんっ…あっ…ん」

けれども、セシリウスの敏感な体は、クジラの心を容易く削っていく。
彼の意地が折るか、折れないかの、際どいところで―ー『ペナルティー』の終了である。

「はい――終了……気を付けて下さいよ」
「ンはあっ……はぁ…はぁ」
「セラスさん?」
「わっ――分かっているわよ。く…っ…"クジラ"くん」

後ろから勢いよくモミモミした相手に謝った。しかも、『クジラ』――と、呼んで。

(この…この野郎!…あ、胸、がぁ…)

屈辱を噛み締めながら、苛めから開放された乳。
どうやら苛められたことで、何かが半覚醒してしまいジンジンと疼いて、落ち着けない。

(うう…ぅっ…どっ、どっどこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ!この乳はああ!?)

プルプル、ゾワゾワ、――悦と苦の相反する感情を生み出す巨大な乳房。
それが心を慰めてはくれることは皆無だった。
むしろ、あざ笑うかのように、波揺れて、痛みも、快感も、クジラの脳に送るのだ。

「本当に気をつけて下さいよ――?」

執拗に注意を施してくるセシリウス、いや『白方 玖史羅』。

「う、うん…気をつけるわ…ごっ…ごめん――」

仕方無しにこちらもセシリウス、と言うか、『セラス』に成りきり、もう一度『ごめんなさい』。
と、謝罪を述べる。
本心はまったく納得も、反省も――していないが。

「約束は約束ですし……ちゃんと守って貰わないと、俺が困ります」
「もう!! 分かったって、いってるじゃない!!」

――セシリウスと、何故か沙希が言うには、秘密漏洩を防ぐために、お互いのフリは必要である。
それは確かに一理ある。
クジラも、そう思うところもあった。

だけども、今のこの状況は明らかに違うだろう。
セシリウスと、沙希の私欲が、ふんだんに盛り込まれているようで、何もかもが気に入らない。

「じゃあ、風呂にしましょうか」
「えっ――?まだ……6時ごろ、よ……?」

結局、セシリウスと沙希の決定にクジラは従うしかなかった。
主な原因は、味方がいないこと、二人が強引すぎて、上手く拒絶できないこと。
そして――。

「いや、夏の熱さで汗がひどくて……人間って、こんなに熱さに弱かったんですね」
(うわっ!! ダッ、ダメ…だ! みっみちゃあ――っ)

この眼だ。まるで南の海の真珠のような輝きを宿す『白方 玖史羅』の眼が彼の自制心、反抗心、疑問、その全てを――破壊してしまうのだ。
ナチュラルに話をしているだけなのに、体が竦む。
反抗心も消え去り、むしろ、悪いのは自分ではないかとさえも、思う。
否、――『自分が、悪いのだ』。

「ほら、セラスさんも、仕事で汗を掻いて気持ち悪いでしょ?」

今では、お互いのフリどころか、一緒に入浴することすら義務付けられる始末。
気が付かない内に、と言うか相談も宣言もなく強制的に混浴して以来、ずっと、なのだ。
彼女は意気揚々とクジラの両肩を持ち、姿勢を立て直すと、背中を押した。
もう決定なのだろう。

「あ…!ちょ…待ってよ、クジラくん!」

(うぐっ!! まずい~~ぃ!!このままじゃ――まただああぁ!!)

裸を見せるだけに留まらず、身体を隅々まで洗われる。
それこそ胸を擦られ、股を布で拭かれ、髪すらもセッティングされてしまうのだ。
過剰なお世話が、実に屈辱である。

(一人で入れるのにぃぃ…これじゃあ子供扱いじゃないか……うっうう)

メイドに世話をされているお嬢様の気分なのだと、思い直せばいいのかもしれないが――嫌なものは嫌でしかない。
本音では言えば――風呂ぐらい一人で入りたい。

「――今、…入らないと……ダメ?」

だから、堂々と『クジラ』に成りきっている――セシリウスに、クジラは訴えた。
急激に身についた嘘泣きのスキルで、彼女の顔を見つめる。
もはや自身の顔なのに、他人のように感じてしまうことを悟られないように、して。

「ダメです! 第一に――セラスさんも仕事で汗掻いたでしょ?」
「うん…そうだけど………」

だが、彼女は靡かない。
そして、確かに汗を掻いたままは気持ちが悪い。気色が――悪い。
それは認める。
お風呂を拒む一方で、クジラも、体を綺麗にしたいという欲望がはち切れそうだった。

「何たって、セラスさんは『女の子』なんですから清潔にしないとダメですよ?」
「~~っ!」

心でも読んだような皮肉の言葉に嫌な感じが、彼の脳を叩いた。
彼女のシャレなのか、弾みで出たのか。
分からないが、果てしなく不安になってしまう。

(まさか、本当にこのまま――ッ)

あってはならないセシリウスの考えに、クジラはゾッとした。
混浴に対する困惑と高鳴りを一瞬とは言え、忘れてしまうほどに。

(俺のままでいようとしてるんじゃ…ないよな?)

このまま男で、『クジラ』でいようとしているなど、疑いすぎだ。
だから、これはただの思い過ごし――の、筈だ。

(冗談だよな。…なっ?)

心では嘘だと決め付けているのに、一向に不安を隠せなかった『セラス』は、意気揚々としている『クジラ』に、お風呂場まで送られた。

<つづく>

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