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クジラの人魚姫3-3

作:黒い枕
キャラデザ&挿絵:倉塚りこ 

(おかしい――っ。なんでこんなことに――)

裸のまま黙々と作業を続けていたクジラは、唐突に現実に戻った。蒸し暑い風呂場に。
心配したのだろうか――『クジラ』が、顔を近づける。

「どうしたんですか?セラスさん?」
「あっ!ごめんなさい……考え事していたわ…」

声を掛けられ、覚醒したクジラが見たのは、泡に侵蝕された人の肌。
自分自身の背中であり、今は他者のモノになってしまった背中が――彼の目の前に存在している。

「んんっ…」

過去を思うことを中断して、今遣るべきこと――セシリウスの背中を洗うこと――を、
クジラは再開した。

「ここ――がいい? クジラくん?」
「ん、もうちょっと、強めで――」
「――くぅんっ!!」
「そうそう、そんな感じで……」

クジラは奇妙な緊迫感に侵され、忙しく指を動かした。
自分が自分ではなく、しかも女。
そして目の前に居るのは、自分ではない自分で、その上、男。
同じ条件なのに、体が入れ替わって以来、どうにも彼女は、彼女だけはキビキビしていて――腑に落ちなかった。

(……く、そォ…このっ)

何もかもが、自分を裏切っているような感じて、しょうがない。
だから、彼なりの意味返し――背中を怒り任せに擦る――を、しているのであるが。

「なんか背中を擦るのが、上達しましたよね。 さすがは元の体ってことはありますね」

彼女には心地いいマッサージ代わりでしかなかったらしい。
上機嫌に、さらなるお願いをセシリウスはしてきた。

「じゃあ…次はコッチをお願いしますね」
「う、うん…うっ…うう……」

次の場所を洗うため、回転して来たセシリウス――外見上はクジラ――と向き合う。
どきん、どきん。
心臓が、どうしようもなく、騒いだ。
自己暗示で、鏡と向き合っているだけだと思えばいいのだが――。

「…っ、ほら万歳して――」
「はい――」

セシリウスを万歳のポーズに移行させてから、脇をゴシゴシとタオルを宛がう。
汗を掻いたと言うのは本当だった。
クジラの鼻腔に男の――本来の体臭――が、送り込まれる。
自分自身のモノだった薫りが、今は無性に彼の心をかき乱した。

「……大丈夫ですか?」
「――ンァ!だっ大丈夫――よ」
「そうですか、なら――そろそろココ、洗ってください」

彼女が指示す物体に――ゴクリと、クジラは喉を鳴らした。
反射的に唾を飲み込み、体が居竦まる。
馴染み深い場所。
いけないモノではない。
むしろ、自分にない方が可笑しい――モノ。

(どうしてだ、よ…ぉ。 ただの――)

元は自分の男性器が、彼女の股間から堂々とぶら下がっていた。
切なく脳が焦げ堕ちる。
ただの男性器のはずなのに……。

(大丈夫……大丈夫…だ)

――ジョり、ジョり――。
引くわけにもいかず、前かがみに『クジラ』の下半身に近づく。
そして、優美な指と泡立つタオルを彼女の一物に向かわせ、擦った。
優しく、丁寧に。
元は自分の男性器と、今は自分の物である女の指が擦り合う音が――卑猥すぎだ。

(いいのかなぁ。こんな――卑猥なことをして…っん)

自身のモノだったペニスに対して複雑な気持ちになったクジラは、自分とセシリウスとの行為の卑猥さに、疑問を持った。

(ん…っ…もうセシリウスだって一人で…っ入れる…筈、なのに…ぃ…っ!)

毎度のように思う――この明らかにエロい行為は必要なのか、と。
いや、絶対に必要ではない筈だ。

「――もう、いいや。 ありがとう」
(うわっ…助けて…って、何を考えているんだ!?俺っ!?)

妄想が先走る。
裸体同士の弄りあいから――裸体同士の性行為への発展する妄想だ。
それも、肉体はそのままで。
彼自身が受身となりセシリウスが責める。
想像したくないのに、周りの湯気と体内の温度に妄想は進む。
歯止めが利かない。
ドキドキしながら、従っていくクジラ――いや、『セラス』。

「はい、じゃあ次は俺の番ですから、セラスさんは背中を向いてください」
「っ~~!!」

妄想と現実の声がシンクロする。
体を回転したことで揺れ動く乳――は、一先ず置いといて、クジラは錯乱する心を落ち着かせようとした。
が――。

(うああぁぁ!!早く終わってくれえええぇぇ!!!)

力強く背中の皮膚が擦られた。ジンワリと石鹸の香りが理性を削っていく。

(ああ…早くう…んっ…)

むずむず。そわそわ。
クジラは胸の奥から湧き上がる、のほんとした熱さに、心の安定を奪われた。

「んっ――はんっ…」
「気持ちいいですか?」
「う、うん。まあ…」
「じゃあ、こっち向いて万歳して下さい」

自分が行った命令を、セシリウスが返してくる。
オウム返しのようだと苦笑する反面、やはり指示に従う。
彼女は、クジラの脇を撫で回すと、次に胸板を横断するように巨大な乳房を擦った。

「んあっ。 ひあ、あっ――ン!!ちょっ、ちょっと強いよぉ」
「なにいってるんですか、これぐらいが丁度いいんです」
「ンンっ…あふゥ」

確かに力は背中の時よりも弱く、胸モミモミの刑よりも軽い。
けれども、蒸れた蒸気と増加する体熱に何時の五倍――肌は敏感だった。
少し震えるだけで全身を舐められているようだ。

「んあっ!!やめ――っ」
「もう、落ち着いてくださいよ。 ちゃんと洗わないと肌が荒れますよ!」
「ふぁ!あっ、だっだっ、だってえ――ぇ」

(ヤ、ヤバいぃ。 ヤバいぃ――ぃよおお!!)

頭の血を冷やしたい。氷風呂に入って高鳴る胸の興奮を鎮めたい。
だが、追い討ちをかけるように、またも胸を擦られた。
思わず彼は乳に抱きつく。

「もう、しょうがないですね」

胸への洗浄を遮られたことに不満を漏らす彼女だが、クジラの方も後がないのだ。
痛みが生じるほど自身の胸を抱き絞める。
悲しいが、己自身が抱き付くには問題がないほど彼の胸は大きく、丁度、抱き枕を抱いているような安心感なのだ。
手放したら、最後――泣き出してしまいそうで、ますます腕に力が入る。

「…まあ…いいです…もう下げてください…」
「あひぃっ……はあ、はぁ……ふぅぅ――っ」

既に恥辱で、限界だった。
しかし――まだ試練は終わってはいない。

「じゃあ、股座に行きますよ」
「……っ!…んっ……っ!!」

セシリウスは屈み込むと、片手をクジラの股座に急接近させた。
そう、今度はクジラの――女性器――、番なのだ。

「――くふぅんっ!」

乳よりも、力の入れ具合は軽かった。遥かに――軽やかだ。
しかし、心に響く屈辱は、桁違い。
クジラは目尻に涙を溜める。

(うくぅぅ――っ。くふ、ンっ……)

何の障害も、そこにはない。
まっ平らな股と毛の集まりに、泡が付着する。
火が噴出しそうなくらい顔が熱くなった。

「ねえ――正面からじゃなく……後ろから洗ってくれるかな?」
「またですか――しょうがないですね。前からの方が綺麗に洗えるのに――」

ぶつくさと文句をいいながら、セシリウスは背後に回りこむ。
明らかに不満そうだが、譲れない理由があった。
後ろの頭部だけでも彼女が視界にいると――不本意ながら、怖いのだ。

「ご、ごめんね――クジラくん」
「いいですよ。 それじゃあ続けます、ね」
「……うん…っ」

それは女体から来る弱気なのか、その指の動きからくる生理的悪寒なのか。
――邪なことを仕出かしそうな『クジラ』の手が、背後から迫る。

「――ッッ!? …はうぅ、くうっ!!」
「変な声を上げないで下さい!誤解されちゃうじゃないですかあ…ほら、もう背中を洗っていますから……」
「ふぁ……くぅっ?!」
「もう一度言いますけど…へ・ん・な・こ・え…出さないで下さいね…っ」
(そんなこと――っ!! いわれてもおおぉ!!)

言われるまでもなく、分っている。この声は、喘ぎ声だ。
厭らしい臭いを、これでもかと言うぐらい含んでいる――色気づいている声である。

(ぁ…あっ…感じ…んああっ!)

簡単に火照る淫猥な『セラス』が、クジラには許せなかった。
涙を、さらに目尻に溜め込み、恥辱のあまりに、胸に抱きつく。しかし――。

(んあっ……くうぅ…っ…あ…)

妄想をしてしまう。
胸を愛撫され、お尻をタッチされ、女性器を犯される妄想を。
相手にその気がない筈なのに、どうしても思ってしまう。
セシリウスが堂々としている分だけに、ひどく――惨めだった。

白方玖史羅(挿絵03)

「――お湯を掛けますよ」
「――っ!」

湯は泡ごと汚れを流したが、残念なことに体に溜まった欲情は流してくれなかった。
気休め程度にもならない。
むしろ、さらに脳が逆上せて、『彼』を意識してしまう。

「じゅあ、入りましょうか――」

足元がふらついたため、彼女の手を借りて、湯船に入るクジラ――と、セシリウス。
一緒に、バスタブにも入る二人。
すっと前から、これが彼らの入浴だった。

「ふぅ!やっぱり汗掻いた体には風呂が最高ですね、セラスさん」
「~~っ!…っえ?…あ…そぅ…ね」

セシリウスの方は、兎も角、クジラの方はリラックス出来ていないようである
とても安らいでいる表情ではない。
――と、言うか。

(あああぁ!!もう!!なんでこんなことに――ィっ!!?)

完全に、恥らう乙女の顔だ。

(あっ…あううぅ――っ!い、いやっ…んん!)

結局――この日も何事もなかったのだが――クジラは自分の被害妄想に悶えるのだった。

【続く…】

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