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―俺が人形のはずがない!―    by.Cマリオ

キャライラスト:あまつ凛
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初めに言っておくが、これは過去の話だ。

俺は遊園地に来ていた。
まあ、漠然と遊園地といわれてもいろいろあってどんな所かまではわからないだろうが、皆がもつ遊園地の要素をこれでもかってくらいに詰め込んだアトラクション施設だ。…簡単に言えば、国内最大級のアトラクション施設と言えばみんな察してくれるだろう。
今日は久しぶりの休日としてある女性と待ち合わせをしている。
久しぶりというのはどれくらいかと言うと最近始めたバイトが忙しく、一カ月、毎日朝ご飯を食べず、バイト先のまかないだけで衣食住のうちの食を全て済ませてしまうようなほどの日常からするとかなり久しぶりだということが分かってもらえると思う。
そのため、今待っているある女性にとても不愉快な思いをさせてしまったため、償いとしてこの場に招待し、ご機嫌取りをしようとしている真っ最中なのだ。

(しかし、遅いな…。50分くらい経つぞ。それに人が多く集まり始めたし。)

この遊園地内のどこら辺にいるかと言うともちろん入場口だ。待ち合わせとしては駅前でもよかったんだが彼女曰く、駅の待ち合わせに飽きたそうだ。なので彼女の言うとおりに従い、駅ではなく遊園地の入場口付近のベンチに腰を下している。しかし、遊園地などといった数人以上で楽しむ娯楽施設の前で一人でぽっつうんっといるとなんだか孤独感に似た寂しさを感じる。理由は簡単だ。目の前には若い学生くらいの少年少女たちがわいわいと話しながら誰かを待っていたり、人数が集まったのか入場口を通って中に入っていく光景を50分近く見ているからだ。
それに今日が日曜ということもあるだろうが、いつもより客足が多く、二、三割増しで客の人数が多い。今が春先であることが大きな影響をもたらしているのであろう。卒業旅行。今の時期には多く見られる学生たちの最後のイベントだ。
そんな彼らの姿見て、ふと自分が行った高校時代の卒業旅行を思い出し、少し暖かい気持ちになりながら右手首にに付けた時計を見る。

(10時のはずだよな…)

現在時は10時より50分以上経過しており、もうすぐで長い針が11の数字のところまで来そうなくらいだった。
待ち合わせ場所もしくは時間を間違えたのでは?っと思い、ジーパンの右ポケットから最新機!ではないが小奇麗な携帯電話を取り出し、バイトの合間合間に送った彼女とのメールのうち、時間と場所らしき名前が書かれている一件の受信メールを開く。
そこにはやはり10時と書いてあり、場所も今居るベンチのことを指していた。
少し眉を歪めながらも他に時間の指定や、場所の変更したことを告げるような内容はないだろうかと思い、一つずつ彼女から送られてきたメールを見直し始めた。

「お~い。希流く~ん」

再びメールを確認するべく、視線を携帯電話に落としたが、聞き覚えのある声と、自分―雪宮希流を呼ぶ声に気付き、発せられた方向を見る。
そこには一カ月ぶりに見る“彼女”の姿があった。

---

「ごめん!一時間近くも遅刻しちゃって、私から場所も時間も指定したのに…。」

彼女は少し罰の悪い表情をしながら両手を合わせて祈るように謝っていた。
正直待たされたことに対しては別に気にしていない。目の前の彼女が時間を守るのが苦手なのは知っているからである。しかも今回は彼女のご機嫌取りのために行われたデートだ。まあ、これほど長いことはなかったが…。
…話の流れで分かっているとは思うが今、彼女、彼女と目の前にいる女性を呼んでいるが別に三人称の“彼女”という意味で使っていいたわけではない。そうこの目の前の彼女は俺の恋人であるからだ。
今回のお機嫌取りも彼女がデートしてくれないとご立腹な様子がうかがえるようなメールを送ってきたことから始まる。なぜ電話ではないのかと思うだろうが、それには理由があり、彼女が口では遠慮しがちな性分なためだからだ。今回のデートでも彼女が満足しているかどうかは言葉として表しては絶対にしてくれないだろう。だから最大限の配慮と誠意をもって接しなければ今回のご機嫌取りという名のデートも失敗という形になってしまう可能性もあるのだ。

「大丈夫。待つの嫌いじゃないからさ。それよりも行こうか。」

彼女にウソを言うのはベターではないがそれなりのデートらしさの雰囲気を保たないとこの場では及第点をもらえないかもしれない。俺は彼女をエスコートする形で先に買っておいた入場券を取り出し、入場口に向い歩き始めた。それに対して彼女はニコニコしながら俺の腕に寄り添う形で腕を巻きつけてきた。今日はこの笑顔を最後まで保ち続けられるように配慮しなければならない。俺の彼女に尽くすデートプランをある程度用意したから大丈夫だろうと考えながら彼女の様子を窺う。けれど、彼女に今日は尽くそうと考えていたが、それ以上に彼女と会って浮かれている自分がいることに気付いた。彼女の笑顔を見ると何故だか先ほど卒業旅行に来ていた少年少女たちを見ていた時の気持ちの暖かさよりもさらに暖かな感情が渦巻いていることにうすうす気づいたからだろう。

(楽しいな~こういった“普通な日常”。……世界が平和でありますように。)

……しかし、初めにも言ったがこれは過去の話だ。

「お~い、なに呆けてるんだ?正気にもどんな!」

ベシッ

俺の顔面に“大きな中指”がデコピンの要用で放たれた。
その一撃は俺が現実逃避していたことを自覚させ、さらに絶望を知る大きな衝撃の一つとなった。けれど物理的には差ほど大きな力を入れていなかったのだろう、2、3歩後ろに後退したくらいで、倒れるほどもものではなった。

………けれど、逆にいえばある程度力を入れたデコピンなら倒れるのだ、今の俺にとっては。

放ったあとそのままにしてある中指を見る、大きさが“今の俺の頭の3分の2”くらいあるだろう指先を…。そして、さらに指先の根元をたどり、睨むように見る、“今のこの指の持ち主である俺の顔をした誰か”を……

「どうですか? いい加減、私の身体は気に行っていただけましたかな?」

目の前の俺は先ほどの乱暴な口調とは違い丁寧な言葉で話す。しかし、誰がどう聞こうとも相手をおちょくるような口調で、なおかつ自分が優越感に浸っているような表情でこちらを見下ろしていた。俺はニヤケテいる自分の顔を見るのが嫌になり、左の方に視線をずらす。

「あれれ~?どうかなさいましたか~?…ああそうか!自分の姿を見たいのですね!」

目の前の俺は、俺にとってありえないほどの巨人で、両手を使えば今の俺の身体全体を包むことも容易ではないだろうかと思わずにはいられないほどの巨体を動かし、あるものを俺の前に突きつけた。それは今の俺の身体より大きな物で、洗面器などでよく見られる大きさのものだ。それは光を反射させ、映るものを両サイド反転させて映らせるというとても便利な道具だった。鏡だ。目の前の俺が俺に突きつけてきたものは鏡なのだ。俺は突きつけられた鏡で今の自分の姿を見てため息を吐いた。何度見ても変わらず、元に戻らない姿。
突きつけられた鏡の中には金髪のカッシャを付けた可愛らしい“人形”の姿があった。

(どうしてこんなことになってしまったんだろう……)

俺は綺麗な金髪をグシャグシャにしながら頭を抱えその場にへ垂れこんだ。

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