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屁理屈劇場「セクハラ対策」 作.真城 悠 イラスト.神山響 (前編)

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com 
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)

「こんにちは!労働基準監督署の者です!」
 突如その声が響き渡った。
「…いらっしゃいませ。アポイントはお取りでしょうか?」
 入り口の案内に座っていた女性社員が恭しく応対する。
「裁判所の礼状がありますので、立ち入り検査をさせていただきます!」

 社長室。
「ということで、この事業所内において、セクシュアルハラスメントの被害が出ているとの通報がありましたので調査にお伺いしました」
 社長が応対した。
 五十台も半ばを過ぎており、小柄でビール腹、禿げ上がった頭はてかてかと脂ぎっており、漫画に出て来る様な「おっさん」然とした人物である。
「何を言っとるんですか。ウチの社にはセクハラなんてありませんよ!」
「それをこれから調査させてもらいます」
「業務妨害だ!出て行ってくれ!」
「労働基準監督署には逮捕権も認められています。これから聞き取り調査をさせていただきます」
 労働基準監督署は一部の警察権も認められている非常に権能の強い組織である。
 労働基準法違反を発見すれば、被疑者を逮捕・拘禁することも認められている。

 大学を出たてで初めて現場に出動したであろう若くて凛々しい新米監督官は社内中の女性従業員に聞き取り調査をした。
 しかし、全員がセクハラ被害を否定した。
 それも隠していると言う風ではなく、余りにも意外すぎる質問に「きょとん」としている風情である。

「いかがですかな?」
 勝ち誇った表情の社長が現れる。
「セクハラ被害は確認されましたかな?」
「…」
 従業員への直接聞き取り調査もまた監督官に認められた権限である。そうした場合、従業員への口止めや暴露による報復措置などは法律で禁止はされているが、横行しているのが実際のところである。
 ただ、この会社の女性社員たちはそもそも社長との接点自体が殆(ほとん)ど無いらしく、まるでそれらしい様子が無い。
 一緒についてきたベテラン監督官も「これは違うな」という表情を浮かべている。

「この落とし前はどうしてくれるんですかな?」
「職務上の権限です」
 それは強がりにしか聞こえなかった。
「…そういえば、この会社の秘書は男性が交代で勤めていますね」
「それが何か?まさかそれがセクハラだとでも?」
「場所を変えましょう」

 再び社長室。
「社長…ご存知かと思いますが、セクハラ被害は男性が加害者、女性が被害者でなくても成立するんですよ」
「貴方は何をおっしゃっているんです?名誉毀損で訴えることも出来るんですぞ」
「無論、女性が加害者で男性が被害者の事件もあります。これは映画にもなりました」
「ほほう、羨ましい話ですな」
「茶化さないで下さい!セクシュアルハラスメントというのは、職務上の条件を盾にとって望まない性的行為を強要することを言うんです。たんなるスケベではなく、人事や降格を盾にして迫るのが罪なんですよ。女性上司が男性の部下をセクハラするのは難しいことではない」
「私は男なんですがね」
「見れば分かります」
「男性社員への聞き取り調査をしても構いませんか?」
「ウチの会社を潰す気ですか?そんな事をすれば人間関係が最悪になる。あんた、自分の職場で「男にやられたか」って聞いて回られたらどう思いますか?」
「君…」
 ベテラン監督官が肩に手を置いた。「この辺にしておけ」という合図だ。
 確かに、余りにも常軌を逸している。ここは引き下がるしか無さそうだ。
「このまま帰る気ですか?」
 社長が強気になった。
「ええ。用は済んだので帰ります」
「悪いんですけど、もう二度とこないと確約してもらえませんか?」
「そうした要求は受けられません」
 調査に入った会社からのクレームなどにいちいち対応していては一種の警察権を振り回す組織としてはやっていられない。
「何度も言いますが、ウチの会社は女性社員に女性としてセクハラはしていません」
「…その様ですね」
「そちらのベテランの方、ちょっとお伺いしたいんですが」
「何でしょう?」
「男性が女性に女性としてセクハラをした場合は問題になりますよね?」
「当然です」
「男性が…仮にですが…男性に対して男性としてセクハラをした場合も…当然問題になりますよね?」
「その通りです」
 わが国ではまだそれほど例を聞かないが、現実問題としてありえない話ではない。
「では、男性が男性に女性としてセクハラをした場合は問題になりますか?」
「…?」
 質問の意味が分からない、という顔である。
「すいません。おっしゃっている意味が分からないのですが」
「もう一度言いましょう。男性が男性に対して女性としてセクハラをした場合にはセクハラになりますか?」
「『女性として』というのは、精神的にと言う意味ですか?関係としてと言う意味ですか?」
「違います。物理的な意味です」
「…それは無理でしょう。男性は男性ですから」
「ということは、法律に書かれていないので罰する根拠は無いことになりますね」
「…え…と…???それはそうですが…」
 法律には物理的に可能な行為しか犯罪として看做(みな)され、罰則が適用される事が無い。
 例えば、ワラ人形に五寸釘を打ち込んだ直後に呪いの対象者が死亡したとしても、刑法ではこれを「有効な殺害方法」と規定しないので、刑罰の対象にならない。
「そうですか。それなら安心しました。おーい!」
 社長が内線で外部に声を掛けた。
 すると、若い男性社員がお茶を運んできた。
「あ、お構いなく。もう帰りますので」
 公務員は接待や賄賂の授受が禁止なので、お茶を飲むことも原則としては禁止となる。
「まあまあ、そう言わずに。おい!扉を閉めろ」
「…はい」
 消え入りそうな声で男性社員が言う。確かに本来なら女性秘書がやりそうな仕事を男性社員がやらされているが、お茶を運ばせた程度ではこれといった法律違反にはならない。
 すると、その男性社員は入り口の扉をがちゃり!と施錠した。
「…っ!あの…私たちはもうおいとまします」
「いいじゃないですか。疑いも晴れたところで」
「…何の話ですか?」
 その瞬間だった。
「…っ!ああっ!」
 男性社員が苦しみ始めたかと思うと、背は縮み、身体は細くなり、髪が長くなったかと思うと豊かなバストが形成され、臀(でん)部が張り出し、一瞬にして性転換してしまった。
「…っ!!!」
 余りのことに硬直していた監督官二人の前で、彼…だった彼女…の衣服はピンク色のOLの制服へと変貌する。
 髪の毛は綺麗にまとめられ、その顔にはうっすらとメイクも乗っている。
 社長は慣れた手つきでそのOLに近づくとか細い肩を抱き寄せ、髪の毛に顔を埋めて匂いをかぎ始める。
「あ…」
 頬を紅潮させて嫌がるOL。この人物はさっきまで確かに男性だったはずだ。
「男性が男性を女性としてセクハラする場合はセクハラにならないんでしたね?だったら問題ないですな」
「…はあぁあっ!!??」
 余りにもムチャクチャな論理だった。
 そうこう言っている間にも社長は丸いお尻をするりと撫で上げる。
「…っ!」
 その感触になんとか声を出さずに耐えている若手社員。
「社長!なんてことするんですか!止めて下さい!」
 セクハラ現場を目の前で見せ付けられて黙っている監督官ではない。
「え?でも男が男を女としてセクハラする場合はいいんでしょ?」
「そういう問題では…」
 そういう問題とかなんとか言う以前に、この社長に見る間に男を女にして更に女装までさせる能力があるほうが大問題なのだが、問題が余りにもデタラメなので気にしている暇すらない。

「も、もしかして男性社員が全員で社長秘書を持ち回りしているのは…女性社員だとセクハラが問題になるから、男性社員を女性化してセクハラしてたんですかぁ!?」

「ああ。それなら問題にならないから」
 といって、ピンクのOLのおっぱいをもみしだく社長。
「きゃああああっ!」
 髪を振り乱し、泣いて嫌がるOL。
 はだけ掛けたブラウスの谷間からブラジャーの一部が見えている。下着まで女物に変えられているらしい。
「や、やめなさい!強制わいせつの現行犯で逮捕します!」
 間に割って入る若手監督官。
 意外に知られていないことだが、逮捕権は警察だけが持っている訳ではなく、現行犯ならばその場に居合わせた一般人でも逮捕することが可能である。

 無理矢理OLを社長から引き剥がしてベテラン監督官に委(ゆだ)ねる。

「どんな権限でそんなことを?」
「やかましい!現行犯に言い訳なんぞあるか!」
「裁判になったら何て言うんですか?男を女にしてセクハラしたと?」
「…う、うるさい!」
 確かに社長の言うとおりだった。
 事実をそのまま報告するしかないのだが、一旦そこに非現実的な現象が入ってしまうと証言として甚(はなは)だしく信憑性に欠けるものにしかならない。つまり、公判が維持出来ず、有罪と出来ない可能性が高い。
 恐らくこのまま検事に話せば不起訴釈放になってしまうだろう。

 若手の監督官は必死に考えた。
 どうにかしてこの社長を罰しなくてはならない。
 このままだとこの会社の男性社員は延々セクハラ被害を受け続けることになる。
 そして、余りにも非現実的であるため、誰に話しても信用されない。現実的にこの社長は法の管轄外あることになってしまう。
 馬鹿馬鹿しいことだが、罰するとしたら「男を女にしてはならない」という法律を国会で成立させる必要がある。だが、その見込みはゼロだろう。
 可能性としては、「強制わいせつ」には違いないので、そっちの方向で責めるしかない。

「まあ、そんなに難しく考えることは無いじゃないですか…おい、もう帰っていいぞ」
 そう言った瞬間、ピンクのOL姿だった若手社員は瞬時に元の男性の姿に戻った。
 半ば抱き寄せる形だったベテラン監督官が慌てて手を離すと、すぐに施錠したドアを開けて外に出た。
 そして、今度は外からがちゃり!という音がする。
「…っ!まさか!」
 若手監督官がドアノブをひねるが、びくともしない。外側から施錠されてしまった。

「もう一度お伺いしますが、二度と来ないで頂きたい。よろしいですか?」
 社長が迫力を持って迫ってくる。
「そんな約束は出来ない」
 強気に言い返す若手監督官。
「現行犯で目撃しています。観念なさい」
 ベテラン監督官も言うが、若干声が震えている。
「そうですか…ならばもう一度セクハラ場面を目撃…いや、体験してもらいましょうか」
「な…何を…」
 その瞬間だった。
「う…うおおおおっ!」
 ベテラン監督官が胸を押さえて前方に蹲(うずくま)る。同時にその頭髪がばさりと前方に流れ落ちた。
「あああっ!!」
 若手監督官が絶叫した。次に何が起こるか、いや今何が起こったかが容易に予想できたからである。
「こ…これは…」
 目の前で節くれだった手がすべすべの細く白魚のような手に変わっていく。
 全身が若返り、そして控え目な体型の女性へと変貌した。
 今度はピンクではなく、白いブラウスに紺色のベストとスカート姿のOLがそこにいた。
 ベテラン監督官の変わり果てた姿である。
「あ…あ…」
 酸欠の魚の様に口をパクパクさせている若手監督官。
 すると、手が勝手に動いてベテラン監督官だったOLのお尻をする~り!と撫で上げた。
「きゃああっ!」
 背中をのけぞらせて黄色い悲鳴を上げるベテラン監督官だったOL。
「ち、違うんです!手が勝手に!」
 その通りだった。
 若手監督官の身体が勝手に動いて二十代とおぼしきOL姿となってしまったベテラン監督官を正面から抱きしめ、背中をつつーっと指でなぞった。
 柔らかい感触に、ブラジャーらしき堅い部分が当たる。
 次の瞬間、両手で強くその身体を抱きしめた。
 暖かい体温がOLの制服を通じて伝わり、豊かなバストが二人の身体の間で押しつぶされた。

「い…いやあっ…やめ…てえっ!!」

「セクハラ対策」(前編)イラスト

 羞恥に頬を紅く染めながらベテラン監督官だったOLは身体をのけぞらせる。
 目の前のその顔から化粧とシャンプーのものらしい甘い香りが漂ってくる。

「き、きさまあ…なんて…ことをおおっ!」

(続く)

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