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1900万ヒット記念作品 成人劇場「少子化対策」 後編 真城 悠&松園 

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com 
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

 数十人は収納できそうなバスの入り口付近まで収束を続けたレッドカーペット…いや、ヴァージンロードは、バスの入り口の前でぴたりと止まった。

 そして、ぷしゅーという空気音と共にバスの入り口が開く。
 普通のバスならば横に数十センチの幅しかないのだろうが、このバスは横に2メートルはありそうな大きな入り口である。
 まるで、巨大なスカートを持つ花嫁でも余裕を持って乗り込むことが出来る様に作られているみたいだった。
 …恐らくその通りなのだろう。

 ジョニーと少佐の身体が勝手に動き、そのつるつるの手袋でスカートを大きく抱える様に掴むと、そのまま持ち上げ、バスの入り口の階段に足を掛けた。

「じょ、ジョニー!」
「少佐あ!身体が…勝手に…!」

 その通りだった。
 花嫁と成り果てた二人は、その身体の命じるままにジャングルの外に待機していたバスにしゃなりしゃなりと乗り込んだ。
 その大きなスカートでも邪魔にならない様にバスの中の通路は大きく広く作られていた。

 運転席には誰も座っていない。自動操縦の機械らしきものが鎮座しているのみだ。
 ジョニーが先導する。

 こうして目の前で花嫁の背中を観察する機会など、無骨な軍隊生活ではついぞなかった。
 抱きしめたくなる細くて華奢な花嫁…中身はジョニー…がもう持ち上げる必要の無くなったスカートを下ろし、床を引きずりながら前進する。

「ああっ!」
「どうした!?…っ!?!?」

 視界は真っ白だった。
 少なくともそう見えた。

 そこには「先客」がいたのである。
 大きく広く取られたソファに囲まれたバスの後部には、6人の純白のウェディングドレス姿の花嫁が座っていた。

松園さんイラストその4

「しょ、少佐!?少佐なんですか!?」

 スーパーモデルみたいな抜群のプロポーションを持つ黒人の花嫁が甲高い声を上げた。

「じぇ、ジェフか!?」

 少佐も思わず返事をする。今はその少佐自ら花嫁衣裳に身を包んだ小娘と成り果てているのだが…。

「もしかして…」

 ぐるりとソファの花嫁たちを見渡す少佐。そこに集合していた花嫁たちは、全員今回のミッションに参加した兵士たちの変わり果てた姿だった。

「な、何てことだ…」

 これが行方不明者の運命だったというのか…。
 しかし、隣国は一体何を考えているのだろう。
 潜り込もうとした兵士を片っ端からひっとらえて性転換させ、花嫁衣裳を着せているというのか!?
 飽食が災いしてドレスのモデル不足が深刻になっているとでも言うのか!?

 バスが走り出した。
 徐々に繁華街へと進んで行く。
 大きく太陽光を取り入れたその構造は、外から花嫁集団が丸見えだった。

 隣国も繁華街はこんなに発展しているのか…と感心する間も無かった。
 余りにもデタラメな展開に、お互いに話すことも出来ない。
 お互いに性転換し、晴れ姿にしてもらった状態で話すといっても一体何を話せばいいというのか。お互いのドレスのデザインを褒めあえとでも言うのか。

 するとバスが停止した。
 少佐は周囲を見渡す。
 どうやら高い建物も多いし、行きかう人の人数も多い。駅前らしいということは何となくめぼしが着くが、それ以上のことは何も分からない。

 花嫁たちは脱走の計画を立てることも出来なかった。
 身体は操作されており、自由に動く事もままならない。
 そもそも装備も全て剥ぎ取られ、女の身体にされてこんな目立つ衣装を着せられた状態で脱出など出来るとは思えない。

 すると、花嫁の一人が立ち上がった。いや、身体が勝手に立ち上がったと言うべきか。

「しょ、少佐ぁ…助け…助けて……くださ…」

 泣きそうな表情を浮かべてはいるが、ウェディングヴーケを離さないまま、しゃなりしゃなりとスカートを引きずって歩くそのたたずまいはため息が出るほど美しい。
 そのままバスを降りて行く一人目の兵士。

 窓から確認すると、繁華街に突如停止したバスから降りてきたウェディングドレスを多くの聴衆が囲み、祝福を浴びせている。
 普通は女の晴れ舞台だからめでたいことはめでたいだろうが、中の男にとってみればたまったものではない。

 バスの出口からそこにはレッドカーペットが引かれており、花嫁はそこから建物の中に消えて行く。

 同時にバスが走り出した。

 一人減ったバスの中は華やかな雰囲気とは裏腹に、誰も口をきかず、死んだように黙り込んでいた。
 彼は一体どうなってしまったのだろうか?
 そして、自分は一体どうなってしまうのだろうか?
 その不安で押しつぶされそうだった。

 すると、先ほどから何も映っていなかったテレビのスイッチが入った。
 バスの天井から吊り下げられたテレビは、本来なら数時間以上に及ぶバスの旅を退屈させないための装備なのだろう。普段は他愛の無い映画やニュースの一つも流すであろうそのテレビには、どこかの結婚披露宴が映し出されていた。

「あっ!あれは!!」

 肩を大胆に露出したドレスの花嫁が叫んだ。
 どことなく面影は残すものの、みんな余りにも別人になっているので簡単に元の姿を類推することが出来ない。

 そして、テレビ画面の中には、先ほど降車した花嫁がスポットライトを浴びながら恥ずかしそうに「花婿」に腕をからめて入場してくるところが映っていた。

「少佐…これは…」

 可愛らしくなっているジョニーが泣きそうな目でこちらを見て来る。

「お、落ち着け!落ち着くんだ!」

 とはいうものの、少佐の生まれたばかりの乳房の奥の心臓も早鐘を打っていた。
 自分たちの運命がそこには映っていたに等しいのだ。

 そう、我々はこれから全員女として男と結婚させられるのだ!!

 またバスが止まった。

「い、嫌だあ!お、男と結婚なんてしたくねえぇ~っ!た、助けて下さい少佐ぁ!」

 綺麗な声で男みたいに叫ぶ花嫁だが、自由になるのは口だけらしく、極めて女性らしい所作でドレスのスカートを引きずりながら振り向きもせずに降りて行く。

 ふと見ると、テレビ画面の中では披露宴が滞りなく進行し、何故か新郎新婦の熱いキスまでがアップで捉えられていた。その花嫁の目尻にうっすらと涙が浮かんでいる様に見えたのは錯覚ではあるまい。

 テレビ画面は一台しかないらしく、次々に降りて行った花嫁のその後を断続的に映し出し続けた。
 最初の頃に下ろされた仲間たちは、既に「お色直し」の段階に入っているらしく、ショッキングピンクの可愛らしいドレスや、真紅に黒をあしらった大人の色気を感じさせるドレス、どこかの民族衣装らしい楚々とした姿など、様々な格好をさせられていた。

「少佐…我々はどうなるんでありますか?」
「俺にだってわからん」

 既にバスの中はジョニーと少佐だけどなっていた。周囲は夕方に差し掛かるのかもう薄暗くなり、室内灯が付いている。
 少佐はもうヤケクソだった。ここまで事態がムチャクチャになってしまっていると「上官としての威厳」などを演技している余裕すらない。そもそもウェディングドレス姿で上官としての威厳も何もあったもんじゃない。
 太陽光の下ではきらびやかな美しさだったウェディングドレスだが、バスの室内灯ではどれほど強い光でもどこか人工的に見える。

 少佐は今さらながら身体を包み込む女物の下着の締め付けや、不自然に開いた胸元などの感触に思いを馳せることが出来ていた。

「うっ!」
「…?どうした」
「いえ。何でもありませんわ。少佐殿」
 にっこりと微笑むジョニー。心なしか仕草も柔らかくなった様に見える。
「ジョニー…まさかお前…」
「少佐…どうやらあたし…喋り方や仕草まで女にされてしまったみたいです…」
「なんてことだ…」
「でも、記憶や思考は男のままですわ。心配なさらないで」
「しかし…」
 バスがきっと止まった。
「あら、今度はあたしの番みたい。じゃあ少佐、ごきげんよう」
 中世の映画のようにドレスのスカートをつまんで少し持ち上げる挨拶をすると、そのまま歩いて降りて行くジョニー…だった花嫁。

 少佐は遂に一人ぼっちになってしまった。

 な、何だ…何なんだ一体…何が起こってるんだ?こんな馬鹿なことが…。

 バスはそのまま10分ほど走り続け、人気の無いチャペルの前で停まった。カメラは相変わらず他のメンバーの運命たる披露宴を映し出し続けていたが、まるで現実味が無かった。
 一部は既に二次会に突入しており、既にお似合いの夫婦となったカップルが寄り添いあって楽しそうに笑っている場面すら映っている。
 自らの意思なのか、誰かに操作されているのか、ドレスをあちこちささえながら立ち上がった「少佐」はそのままバスを降りて行く。
 バスの出入り口の下には「ヴァージンロード」が準備してあった。

 背後に2メートルはスカートとトレーンを引きずりながらチャペルに向かって歩いていく。
 誰もいない寂しいチャペルだった。

 近づくと入り口が勝手に開いた。
 荘厳な音楽が鳴り響き、「花嫁」となった少佐はしずしずと歩みを進める。
 衣擦れの音がイヤリングに引っ張られる耳に響く。
 教会の一番前にたどり着いた。これが本当のヴァージンロード…ってことか。
 確かについ数時間前に女になったばかりだから「ヴァージン」には違いあるまい。
 苦笑すら浮かんでこない。冗談にもほどがある状況だった。

 すると、そこに誰かが立っていた。

「待ちかねたぞ」
「お前は…!!」

 花嫁らしからぬ警戒した声を上げる少佐。
 その人物には見覚えがあった。
 数年前、捕虜交換の際にこの国の軍隊に所属していた軍人だ。戦場から復帰した後の戦後処理において公式の場に出席していた。そこそこの地位だったはずだ。

「どうやらお前はもう少佐に出世したらしいな。まあ、そのキャリアも今では意味が無いが」
「…この有様はお前の差し金か?」

 「この有様」と言いながら両手を広げる少佐。自らの女体と晴れ姿を見せ付けるかの様に。

「まあ、そんなところだ」
「この変態野郎…一体どういうつもりだ!?」
「変態野郎とはご挨拶だな」
「変態じゃねえか!男と結婚する気か!?」
 つかつかと歩み寄ってくる軍人。
「今の君のどこが男なのかね?」
 そう言うが早いが、女体となっている少佐を抱きしめ、唇を奪う。
「んっ!!!っ!!」
 逆らうことが出来ない少佐。
 うねる身体が軍人の手の中で衣擦れを加速させ、ドレスの内側の官能的な感触を全身に蔓延させる。
 身体を離すと、少佐ははあはあと息を乱している。
「肉体的な話じゃねえ!分かるだろうそれくらいは!」
「ま、分かるがね」
「分かっててやってるのか…このド変態が!今すぐ俺たちを元に戻せ!」
 男の声のままならさぞ迫力があるのだろうが、甲高い女の声なので威厳がまるでない。

「残念だがそういう訳にもいかん…わが国は少子高齢化に悩んでいてね」
「…何だと!?」
「煎じ詰めて言うとそれは非婚化・晩婚化が原因だ。これはどの国でもそうさ」
「何を言ってるんだお前は?」
「論理的帰結の話さ。権利ばかり主張する女どもは出産に伴う苦しみも、育児の大変さもごめんなんだとさ。その傾向は高学歴化すればするほど顕著になる」
「だからどうした?」
「女が子供を産みたくないってんなら男に産ませるしかない」
「…貴様…まさか…」
「その通り。自国の女は子供を産みたくないと抜かす。とはいえ、自国の男に産んでもらうには人権的に問題がある。となると…」
「なんてことを…」
「他国の男…それも命の価値が最も軽い軍人を嫁にもらうのが一番手っ取り早いという結論に達したのさ」
「馬鹿な…狂ってる」
「地域紛争で戦死したと思えばいいのさ。死ぬ事に比べれば男と結婚して子供を産むくらいなんてこと無いだろ?」
「ふざけるな!そんなことをするくらいなら死んだ方がマシだ!」
「だが…」
 勿体つけて立ち上がった軍人はその場をくるりと回った。
「そうでもないみたいだぞ?」
「何だと?」
「これまで結構な人数の兵隊を拉致して花嫁にしているが、これといったトラブルも無い」
「ということは、本当にこれまでの行方不明者は…」
「ああ。全員わが国民として迎え入れた。花嫁としてな」
「いい加減にしろおおお!!」
「おいおい、人でなしみたいなことを言うなよ」
「人でなし以上だろうが!お前、自分がそんな目に遭ったらどう思うか考えないのか!?」
「考えないね。お前は兵士として殺される敵のことをいちいち考えるのか?」
「…そりゃ、ある程度は考えるだろうが。兵士ってのはそういうもんだ。それを乗り越えて一流の軍人になるんだ」
「重ねて聞くが、それならお前は女とセックスする時に男にセックスされる女の立場をいちいち連想するのか?」
「そんなわけあるか!話をすりかえるな!」
「すりかえてなんかいない。まあ、つまりそういうことさ」
「大体お前だって元・男なんぞ抱いても気色悪いだけだろうが!俺ならそうだ」
「ふむ…」
 軍人が考え込む様にその場をうろうろする。
「ま、最初は誰でもそう考える」
「当たり前だ!俺ならごめんだ」
 考えるだけでぞっとする。
「その点、きちんと人格的にコントロールされるから問題ないんだ。実は記憶も思考も男のものが残ってはいるんだが、脳内で考えてるだけで表には表れない」
「それは…人権侵害じゃねえか」
「相手を殺すのは人権侵害じゃないのか?それに比べればずっとマシだろうが」
「…」
「お前にも経験があるだろうが、生まれつきの女ってのは始末に終えねえぞ?男に要求してばかり。やれツラがいいだの背が高いだの。しかも半端に学歴ばかりが高いからどんな男相手にも簡単には結婚しない。その内適齢期を過ぎてどうにもならなくなる」
「…知った事か」
「まあな。だが、その点改造女…元・男だな…はいいぞぉ?今は遺伝子単位から完璧に性転換出来るから身体の節々がゴツかったりもしない。完璧に女だ。もちろん子供だって作れる。お前も来月の今頃は生理になってるはずだ」
「そ…そんな…」
「女だから当たり前だろ?学校の保健体育で習わなかったか?」
 余りのことに少佐の頭がぼ~っとしてきた。
「最初の内は抵抗があったみたいだが、その内改造女の評判が高くなってきて、ツラが不細工だったりして結婚相手に恵まれない男どももこぞって求める様になってきた。もう、相手が元・男だろうと気にしてられないってわけだ」
「なんてことを…」
「自分にぴったり合う異性…というか女だな…を見つけるのはそりゃ大変なんだぜ?お前だって心当たりあるだろうが。だが、適当に見繕って改造してもらった女ならそこから自分好みに調教すればいい。問題ない」
「ちょ、調教って…」
「お前って国に妻子がいたよな?お前みたいなモテ男…までいかんか…普通の男には分からんだろうが、もてない男ってのは案外女にやさしいんだぜ?扱いが上手いとまでは行かんが、無闇に殴ったりなんぞまずしない。そういうのは中途半端にモテる野郎だ」
「貴様…俺に妻子がいることまで知っててこの仕打ちか!」
 といってウェディングドレスのスカートを鷲づかみにする少佐。
「まあな。つーか軍人恩給が出るだろうが。お前の国だったら死亡と推定される。行方不明者なら一年も経てば戦死扱いだ。そうだろ?」
 そんなことまで調べているのか…。
「国の予算なんてのは下らん役所の取り合いで、浴びるほど金持ってる屑(くず)のところに年金代わりにばら撒かれるのは世の常だ。なら戦死した軍人の家族の生活を見る分に少し回しても構わねえだろう」
「しかし…戦死じゃない…」
「まあな。だが、戦死したと思って今度はウチの国に尽くしてくれ。というか今日から俺の妻だから俺に尽くしてくれ」
「冗談じゃない!そんな馬鹿な話があるか!」
「現にお前の身体は今、女だぞ?しかもこれから子供を産んで育てられる様に二十代前半の女になってる。観念するんだな」
「そんな…」
「他のメンバーも同じさ。悪いがお前の人権よりもウチの国の少子高齢化対策の方が大事なんでね。所詮他国の話さ」
「だったら生粋の女がそこいらじゅうにいるんだからそいつらに産ませろ!」
「おいおい、話を聞いてねえのかよ。だから生まれつきの女は面倒くさいんだとよ。妙にプライドも高いし、無理に子供なんぞ産ませれば人権侵害だと騒ぎやがる。だからお前らが必要なのさ」
「もう…戻れないのか?」
「技術的な話は詳しくないが、多分な」
「だったらせめて家族に連絡を…」
「その花嫁姿晒して物心ついたばかりの息子に「お父さんは人妻として元気でやってます」言うのか?残酷な奴だな。素直に現実を受け入れろよ」
「うわあああああああーっ!」
 ヴーケを放り出してその場に泣き崩れる少佐…だった花嫁。
「まあ、そう気を落とすな。ウチの国は女の人権はかなり厳重に守られてるぜ。治安はいいし、特に改造女はモニターの意味もあって厳重に監視されてるから、もしも夫が暴力なんぞ振るった日には即座に警察がすっ飛んで来て守ってくれることになってる。それこそ本物の女よりも恵まれてるくらいだ」
 頭の中がぐるぐる回っている少佐の脳には半分も届いていなかった。
「それこそ職場での女の待遇も保証されている。最低でも2人の子供を産んで育てるのは義務だが、育児費用は全額国持ち。3人目以降には報奨金まで出るんだ。文句なしだろ?」
 その時だった、教会の入り口付近を飛んでいるヘリコプター型の観察マシンがまだ飛んでいるのが少佐の視界に入った。
「言うまでも無く子供は国の宝だから児童虐待は全て未然に防がれる。英才教育とまでは行かんが、全員に高水準な教育と福利厚生が約束されている。母親としては実に幸福な制度だ」
 …そうか…身に付けていた道具は全てウェディングドレスになってしまったが、あの時開放したあの小型ヘリコプター型の情報送信マシンはまだ生き残ってこの辺を飛び回り、無線によって自国に向けて情報を発信し続けているらしい。
 軍人が近寄ってきた。
「さあ、俺はもうバツイチだから披露宴なんぞ必要ないんだ。結婚式だけで十分さ」
 目の前に軍人の顔がある。身体は勝手に立ち上がっていた。だったら書類上の手続きだけで相手にドレス着せる必要もねえじゃねえか…とは言わなかった。
「前の嫁はどうしたんだ…」
「死んだよ。病死だ」
「そうか…」
 少しだけ同情する気分が胸の奥底に沸き始めた。
「しかし…お前は元・男が嫁でいいのか?本当に」
 本心から少佐は尋ねた。
「…正直に言うと分からん」
 珍しく視線を逸らす軍人。
「だが、妻を失ったショックで誰でもいいからそばにいて欲しかったのかもしれん」
「…それで前に戦場で見かけたことのある敵を嫁に娶(めと)るのか?いい趣味だぜ」
「ああ。そうさ」
「!…っ」
 また熱い抱擁と接吻が襲い掛かってきた。
「その男言葉も悪く無いが、これからは俺の妻だ。もう少ししおらしくなってもらうぞ」
「ふざけ…るな。いつかぶち殺してやる」
「残念だったな。改造女は自衛以外の暴力行為を含む一切の犯罪が出来ない。そういう風に精神的にロックされているんでね」
 背中側に引き倒された。
「きゃあっ!」
 背中と膝の裏に腕が差し入れられる。
 所謂(いわゆる)「お姫様抱っこ」の状態となっていた。
「よ…よせ…本当に…やめて…くれ…」
 泣きそうな顔で懇願する少佐。
「嫌だね。新婚夫婦と言えば『初夜』だろ?今夜は寝かさないぞ」
「馬鹿な…本当にどうかしてる…」
「お前は明日、俺の腕の中で目覚めるのさ。これから毎晩そうなる。忘れるなよ。最低でも2人の子作りは義務なんだ。セックスも仕事の内さ。楽しみにしていろ」
 事実そうなった。



「…という訳だが…諸君の見解は?」
 薄暗い会議場に苦虫を噛み潰した様な老人が雁首を揃えている。
「馬鹿馬鹿しい…そんなことがあるわけがなかろう!」
「しかし現実だ。カメラにきちんと収まっているし、状況証拠も十分だ」
「その部隊は本当に行方不明なのかね?」
「間違いありません。遺留品もゼロです。そして…」
「そして何だ?」
「隣国の婚礼業界と役所にハッキングを掛けたところ、同日に7組、翌日に1組の婚姻届が受理されています。不思議なことに花嫁の戸籍はその時点で全員新規作成されています」
「馬鹿な!」
「恐らく全員が出生要員として性転換の上、男性と婚姻させられたものと推測されます」
「何と言うことだ…」
「過去に行方不明になった兵たちの消息は?」
「現在、今回明らかになった事実を元にデータの洗い出し作業をさせていますが…恐らく同様の証拠が出て来ると思われます」
「今すぐ返還を求めるんだ!」
「既に性転換されて、結婚生活を送っている若い娘としてですか?意味が無いでしょう」
「ふざけるな!そんな人権侵害を放っておけるか!」
「無論、外交ルートを通して今回の件を抗議していきます」
「大体、遺族…というか兵の家族になんと申し開きをするんだ!おたくの息子さんは隣の国で女に性転換した上で男と結婚して子供を作って幸せに暮らしていますとか言う気か!」
「しかし…事実でしょう」
「アホか貴様は!そんな報告をしたら名誉毀損で訴えられるわい!」
「政府の頭が狂ったと思われるのがオチだ!」
「ということは…この事実は隠蔽するしかありませんな」
「仕方があるまい」
「ではどうするんだ国境線は!」
「それこそ我々政治家の仕事でしょう」
「くそ…なんてこった。恐ろしい兵器を開発しおって…」
「といっても彼らもそうおおっぴらに使う訳にもいかんでしょう。今回みたいに極秘で忍び込む隠密舞台だけを毒牙に掛け続ける…上手いやりかたです。彼らは表向きは存在しないことになってるんですから」
「それで多少人権を蔑(ないがし)ろにしても構わん人間を大量に手にいれ、しかも自国の女に相手にしてもらえない連中にあてがって、しかも少子高齢化も解消…一石三鳥ってところか?」
「肯定です」
「しかし、今でこそ相手は待ち伏せ方式でやってるが、こちらが気付いた以上もうあんなところに兵は派遣しないぞ。そうなればどうなる?」
「どう…なるんです?」
「ひとさらいだ!連中、こっちの国民をさらいに来るぞ!今だって行方不明者なんて年間何百人もいるんだ。それが少しずつ増え始めたってこちらは掴みようがないじゃないか!」
「もしかしたら…今現在もそうなのかもしれませんね」
「おいおい!冗談じゃないぞ!」
「憶測でモノを言うのは止めましょう。幸いこちらには映像の証拠がある。いざとなればこれを披露して国際社会に訴えれば…」
 その時、内線が鳴り響いた。
「どうした?」
「いや…議事堂にヘンなものが入り込んで…赤いカーペットみたいなんですけど…うわああああっ!」

 その映像データは隠蔽され、現在まで表に出てきていない。

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