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六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(19) by.黒い枕

命じられれば、しっかりと従うものの、やはり恥じ入り、眼前まで来たら瞳すらもぎゅっと閉じてしまう楓希――これでは従順な奴隷ではないか。
人形とは違い、確かな自我があり、個性が彼女にはあった。

(そこは、はいっ…でしょ!なんで顔を赤くするんですか!?)

とてもじゃないが、見ていられない。
人形なら、本当の【人形】なら、そうするべきだと憤慨する希光。
彼女自身の価値観は――作り主から作られたものだが、その精神構造は――少なくとも【楓希】そのものなのだ。
そして、その精神が、魂が叫ぶ。

(…私なら…臭いも気にしないのにィィー!)

彼女には、かつてマスターだった楓希には、恥があり、後悔があり、切なさまで備わっていた。
人形にはいらない感情である。
人形には――『愛』さえ、あればいいのだ。それが、希光の中にいる精神の結論である。
同時に――。

(やっぱり…無理が有りますよ…)

お互いに、【人形】にも、【人間】にも成りきれない、とも考え至った。
幾ら、あの方の、六鏡 玲人の命令とは言え――辛い。
辛すぎた。
【楓希】の心は、そう言う風に作られていないのだから……。

(私だって、文句の一つも言いたくなりますよぉぉ――六鏡さまぁぁぁ!!)

矛盾した命令に設定。
六鏡の絶対さと、人形としての穢れない恋慕の板ばさみ。
――現に、希光は脳内とは言え、絶対なる主に”不満”を抱いてしまったことすらも、気付かない。

「あ、あの…マスター?」
「もーう!マスターじゃなくて、ショウくんでしょ…あっ!だろ…!?」
「は、はい…スミマセン。あっでも…考え事をしていた…みたいだったから……うぅ!」

激情のまま思わず素を出してしまう希光だったが、もう一人の異端者は、もっと酷い。
敬語を使わないで良いと命令しているのに、屈服することしか頭に無いのである。
屈服することと、愛することは、ほんの少し違う。
誇りを持っているか、どうかの違いで――ぶっちゃけ言えば、目の前の『女』は、快感に酔っているだけなのだ。
なので、ますます腹が立つ。こんなにも自分が悩んでいるのに、と。

「少し様子を見ようと思ったけど…止めだ…」

もう少し、様子を見てから、『最後のチャンス』に掛けようとしたが、時間の無駄だった。いや、もう手遅れかもしれない。

「ショウくん……?」
(だから…その、ああこのような言い方をして大丈夫かしらーな顔は止めろォォ!!お願いだから…)

うじうじと、恋人を演じていることを快く思っていない楓希。
ただ肉体から来る高揚感に現を抜かしているだけで、マスターを、自分を愛しているわけではない。
【楓希】として、誇りを持って、働いてきただけに――彼には、果てしなく、ムカついた。

「……んはぁぁ!もういいから…こっちこい…」

もっとも、ただイライラしているだけでは事態の好転は望めない。
兎に角――自分に課せられた『設定』を守りつつ――行動あるのみである。
希光はベッドに腰を掛けると、楓希を手招きした。

「ほら…座れ…」
「は…え?あ、あの」
「ああもう!いいから…俺の上に座れって言っているんだ…」

優柔不断で迷っている彼女。
支配力を働かせて従わせた方が良かったかもしれない――が、それでは意味がない。
仕方なく、力任せに体を引き寄せると、彼女は可愛らしい叫びを発した。

「ひゃあ!?あ…そんな!ダメ…です!」

聞く気はない。いや、聞きたくもなかった。
馴染み深い声が、恥かしがり、命令に背こうとする口調。
体も、もがいている。
さながら、腕の中で暴れる子猫のように。

(まっ…メッキを剥がしたら…こんなものでしょう)
「どうした?んん?これも、マスターの命令なんけど…」

内心、元マスターとは言え、”マスター”を苦しめていることに罪悪感が生まれる。
マスターとして義務を全うするように作られたが――マスターとして定めた人物を愛するように、尽くすようにとも作られているためである。
だから――尚更、止めることは出来なかった。

「あ…済みません。あの…これから何を…?」
「何を…って…そのナニだよ」

一瞬、キョトンと呆ける楓希。
だが、流石は元男なのか――二秒と掛からずに、絶叫する。

「え――?あ、ちょ――!?」

声を張り上げると共に、起き上がろうとしたため、体ごと捕まえ、ぐぐっと、押さえ込む。
丁度、胡坐を組んでいる自分の上に収まるように。

神経を支配されてはいないとは言え、力尽くで体を圧迫されれば似たようなものである。
案の定、楓希は、その瞳をウルウルさせて、哀願してきた。


「離して下さい!…嘘ですよね?マスター…っ…そうですよね…」

無論、本気だ。
無言のまま、力で彼女を支配するとベッドの奥へと運ぶ。

「嘘じゃないぞ…お前はなんだ?俺に仕える人形の【楓希】じゃないのか?」

そして、彼が口を開いたのは、楓希が『下』になり、希光が『上』となった瞬間だった。
準備万端である。

「そうです…ですが…でも、こんな行き成り…」
「だってお前は、マスターに戻るのが嫌なんだろ?」

なんて言い表せばいいのか分らないが、兎に角、快楽のままに楓希は【楓希】を受け入れている。
いや、受け入れた気になっているのだ。
少なくとも、性行為のことを視野に入れていなかったのだから、余計に【楓希】として、失格である。

「は、はい…そうです。わ、私はマスターにぃ…でも…でもまだ――」
「なら、早いも遅いも関係ない。違うか…?」
「違、い…ません」

正論で攻めているだけに、見る見るうちに楓希は消沈していく。
もはや、その顔には恋慕で頬を染めておらず、ただただ恐怖に引き摺っていた。
それでも従おうとしているのだから、そこは評価してあげよう。
あくまでも、『人間』としての話だが……。

「なら…お前はどうするべきだ?」
「ま、マスターが望むがまま、だっ…抱かれますぅ…っ」

合意するものの、瞳をきつく閉じ、肉体を大きく揺らす彼女。
ぷるぷると、巨乳が淫靡に異性を誘うが、それでも、乗り気ではないのは確かであり――同時に、彼女が、まだ『彼』に戻れることを示していた。

(ああ…良かった。私はこれで……)

一種の賭けだが、希光の企みは成功したと言える。
【人形】としての矛盾を指摘して自我の復活を促すだけではダメだった。
そこで彼は、「彼女に、自分が『女』であることの自覚することに重みを置き、その異性との性行為の迫力を持って、正気に戻らせようとしたのである。
そして、今、完全に恐怖に支配されている――眼前の”少女”が、その答えだ。

「…さあ!どうする!?今ならまだ間に合うかも――しれませんよ!?」
「も、元に…」
「なに!?聞こえないぞ…?」
「私は…元にっ…」
「元にい?」
「――戻りたくなどありません!!」

希光の問いかけに、震える少女から突如、積極的な女性に変わる。
叫びと同時に、彼女は希光に抱きつく。
ぎゅううぅ――と。

「……ア、レ…?え、ええ――と?」

希光の誤算であり、敗因。
それは、六鏡玲人の思惑と、『彼女』の本当のあり方を誤解していたことである。
『水野希光』の体と、『楓希』の体を入れ替えたことがゲームなのではない。

「んんっ!」
「んちゅ…あむぅ!んんっ…」

【楓希】の精神と肉体も含めてこそ――【ゲーム】だったのだ。

「はぁはぁ…うふふ、マスター。フブキが、気持ちよくして、差し上げますね…?」

積極的にキスを仕掛けてきた楓希の妖艶な笑みに当てられた希光は、なす術もなく『男』としての初夜を――強いられてしまうのだった。

<つづく>

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