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みここさんの投稿作品

キャライラスト.倉塚りこ
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序章

「そんな大役、オレにはとても――」
まさか。
危機は機会とか言うけど、でも、これは間違い無く、
――危機だ。
そんなことも知ってか、知らずかオレの大先輩である御影先輩は爽やかに微笑んで優しく告げる。
「良いよ大丈夫、昇君の監督としての腕を信じてるから僕は彼女から手を引いたんだ。」
「いやでも、妹さんを主演になんて無理です。」
ただ、先輩の妹さんだったら一応引き受けれたかも知れない。
けど、俳優と監督を掛け持つ世界の御影大先輩の双子の妹さんなんて引き受けて失敗なんてしたら……!
さらに、先輩でさえ性別を見間違えそうになるほど綺麗、となると妹さんなんて見とれて集中が……わ、悪かったな思春期でっ!
今でさえ先輩が上品に潜め笑いを浮かべているのに、少し心が揺れる。
「でね、別に僕の手にも負えない怪力破天荒美少女だから押し付け……引き受けさせてる訳ではないから安心して。」
心が激しく動揺していたから、先輩の呟いた言葉はオレには届いていなかった。
そして、先輩は世界の誰もを魅了した天使のようで小悪魔のような笑みを浮かべて囁く。
「ロケハンも衣装合わせも手伝ってあげる。なんなら、俳優として出ても――」
「分かりました。……妹さんを主演女優にさせて下さい。」
無理だ。この人にかなう訳がない。
溜め息を堪えて愛想笑いを見せると彼女――間違えた彼と軽い握手した。
「妹と僕をよろしくね。」
「此方こそ、宜しくお願いします。」
「さて昇君、もうすぐかな。」
「何が、ですか。」
「相変わらずの冷静だね。」
瞬間――扉が吹っ飛ばされた。
「何ですか、今のっ!?」
「流石に、これには冷静陥落だったか。」
そして、その扉は勢い余って窓ガラスを割って外に飛んでいく。
それにつられて沢山の資料が飛ばされ、割れた窓ガラスから漏れ出す冷たい風が身体を色んな意味で震えさせる。
気が付いたら、事務所は災害地となっていた。
そして、扉があったところにいたのは――
「お兄様は馬鹿ですっ!……わたしが、いつ女優になるなんて言いましたか?」
御影先輩にそっくりな、少し華奢で儚げで、しかし、どこか凜とした仁王立ち姿の美少女だった。

「紹介しようか。僕の双子の――」
――世界の身体に机が勢い良く当たる。
そのまま倒れる御影先輩に、もう一人の御影は、そっぽを向いている。
「御影先輩っ!?」
慌てて抱きかかえて、意識を確認する。
しかし、毒リンゴでも口に含んだかのように御影姫――いや、王子は寝息さえ立てていなかった。
脈を見る。すると、正常に動いているようだった。
「案外、冷静なのね。」
割れた窓ガラスから、景色を眺めて少女は言う。
「世の中、ビジネスライクに生きなければ確実に呑まれますから。」
自分が思ったよりも、淡々とした声が自分から漏れた。
なんだかその声が、気持ちが悪かった。
少女は此方を振り向くと、先輩とは違った純粋でストレートに憂いを浮かべた笑顔を見せた。
「わたしね、女優なんて嫌いも嫌い。取り繕うなんて奇妙だから嫌。兄様といる時のわたしなんて言語道断」
その表情と台詞が印象的で、それなのに、それだから、どんな反応が正しいのか分からなかった。
だから、適当な明るい笑みを貼り付けて、「オレなんて、取り繕ってばっかですよ。」
「綺麗に笑うのね。」
「これも営業スマイル、ですけど。」
「面白い、かも。」
すると、御影少女はオレの目の前まで駆け寄ると兄に似た妖艶な微笑みを浮かべた。
「わたしとゲームしない?貴方は、監督作品でわたしに完璧な演技をさせる。わたしは貴方の仮面を剥ぐ。どっちが早いかしら?」
くすくす、と上品に潜め笑う。やはり、御影の血か。
でなければ、有無を言わせないその高貴な威圧感は、どこからくるのか。
だが、仮面ってなんだ?よく、分からない。
「とりあえずお受けしときます。」
その回答に不満なのか――長机が苦しそうな音を立てた。
「とりあえず、なんだね?」
真っ二つに折れた長机を見ながら、請求書は御影持ちにしておこうと考える。
「趣旨が良く分からないので。」
なぜか、彼女は溜め息を漏らした。
「貴方、名前は?」
「赤沢 昇だ。」
「ノンちゃんね、分かったわ。」
「何がノンちゃんですか、一割の分かってないかと。」
少女はわらう。少年はためいきをつく。
「それは、貴方の腕よ。」
「オレは、演技指導に関してだけです。」
「で、演技指導は?」
「貴方に合った脚本来るまで待ってて下さい。」
「はいはい、監督さん。で、これ名刺。」」
――名刺にはトリフィック トリック事務所の御影 音琴(ネコト)と書かれていた。
――御影 音琴


赤沢 昇。
彼の印象は、最低、最悪、鬼、悪魔。以上。
あの人なら大丈夫かなって思ったけど(ちっちゃいし、童顔だし)、撮影入るとビジネスライクな表情から専門家の表情へとすり替わる。
「そこの主演、被ってる」「涙、流せるだろ」「ただの音読なら、餓鬼でも出来る」「もういい、今日は帰れ」
毎日毎日、悪夢に出てきて、早くも二週間。もう我慢の限界の限界。
わたしは、寝たままの体制で拳を振り上げる。
下ろしたらベッドが大破する→兄様が来る→事情話す→仕事の話は無くなる
そうだったらいいけど多分無理。
兄様でさえ、打ち合わせで彼と一緒みたいだし。
うやむやが止まらなくてわたしは、勢い良く
――振り下ろすッ!
「痛っ!え、何?」
ありえない。痛い。手が心臓みたいにドクドクと音を立てる。
さらに言うと――声が、変。
いきなり低くなって、でも聞き覚えがあるような声で、

ピーンポーン

遠くから、インターホンの音。
でも、今はそんな場合なんかじゃない!
――刹那!破裂音!破壊音!爆音!
それらがわたしの耳の鼓膜を鋭くなぞった。
それは、インターホンの方からの音だった。
慌ててそちらに駆け寄ると、ドアが大破している所には、
「……何がおこってるか説明して戴きたいんだが。」
雨であったにも関わらず、傘をささないで濡れたままの姿の――わたしが鋭く睨んでいた。
「な、何?お兄様ですか?」
「僕は後ろ。」
真後ろから声がして、振り返ると兄様がいた。
「でも、お兄様ってどういうこと?お兄さんは、音琴がお嫁さんになるなんて認めないからね?」
相変わらず似た顔で、わたしには表現できないほどの優しいようで黒い笑みを――わたしではないわたしに向ける。
わたし二人目は溜め息をついて、
「御影先輩、その微笑み――演技ですか。なら、説明して下さい。」
淡々と、でもやや苦しげに頭を抱えて言う。そのことに、晴れやかな笑みを浮かべ兄様は二人目を撫でた。
「流石、昇君。冷静かつ賢いね。」
要するに赤沢君は、わたしの姿にさせられたらしい。
「けど、兄様は赤沢君と一緒じゃ――」
「主演、これは入れ替わりだ。鏡見て来い」
わたしは言葉も告げれず、姿見の方へ走っていった。


御影音琴が、かえって来るのも時間の問題だと赤沢は思った。
オレの部屋に姿見なんて、存在しない。
「で、オレ達を変えた目的は。」
「ふふっ、方法じゃないのが、キミらしいね。妹を抱きしめようとするだけで肋骨折られるのは辛いし。」
「要するに、器は違えど暴力的でない妹さんを可愛がりたいと」
「怒ってるかな?犠牲者にしてしまって」
「いえ、御影先輩は、オレの憧れの御影先輩ですから。」
「手が怒りか何かで震えてるよ?でもね――」
「お兄様たち、何話してるのですか!」
御影は、小さな少年と小さな少女を愛おしそうに抱き締めた。
「可愛い顔の昇君と可愛い性格の音琴、二人の音琴を纏めて愛してるからねっ。」
その少年は、暴れた。
「監督、殴って下さい!一思いに!」
その少女は、淡々と首を横に振った。
「流石に御影先輩に、そんなこと――」
「やれ!やるのよ!」

「やれやれだね」
「「兄様/先輩のせいだ/ですから。」


序章終わり

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