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妄想劇場「復讐の時(前編)」 真城 悠&松園

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com 
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

妄想劇場「復讐の時(前編)」 真城 悠

 どうしてこんなことになってしまったのか…。
 俺は何度も考えた。
 今日だけでどれくらい考えただろうか。
 朝から何十回もだ。
 こういう場合分量はどっちで計測するのか。回数なのか総時間なのか。
 別にどちらでもいいな。

 季節はもう秋になる。
 外に出れば肌寒いどころか風が強い日には凍えてしまうだろう。
 しかしここは室内だ。
 空調は効いているのかいないのかのか分からないほどうっすらと働いており、寒さで鳥肌が立つ事も無く、熱くて玉の汗が流れ落ちることもない。
 不思議な事に、皮膚の弱い俺はこれほど長時間もこんな状況に晒されていれば、脚がかゆくてまともに立っていられないほどになるはずなのに、特に変調は無かった。
 つま先や親指の付け根なども心配していたほど痛くない。
 体重が減っているからだろうか。

 さっきから長時間ここに立ち続けていた。
 自分の都合ではなく、他人の都合の為に働くということは、つまりひたすら待ち続けることもまた仕事の内なのだ。
 恐らく、これからきっと嫌と言うほど待たされることになるのだろう…そんな予感がしていた。

 ふと視線を隣に移す。
 そこには息を呑むほど美しい美女がいた。
 そしてその美女は、何とも挑発的な衣装に身を包んでいた。

 大きく切れ込みのあるハイレグ形状のピンク色のボディスーツ。
 割り箸みたいなピンヒールに包まれたその脚は露出している部分全てを艶(なまめ)かしい網タイツに包んでいる。
 胸から上は全て露出し、長い髪が背中に流れている。
 整髪料のCMも思わせる美しい髪が1~2本ほつれており、それが何とも色っぽい。
 若干濃い目のメイクに重そうなイヤリング。憂いを秘めたその表情もたまらない。

 ボディスーツと同じ色に塗られた爪の手を両手とも身体の前に合わせており、せめて今の自分の姿を隠そうとしているようだ。

 こちらの視線に気が付いたのか、何とも言えない表情を浮かべて少し静止するとまた視線を下げた。
 こちらも余り人にばかり同情はしていられない。
 同じく視線を下げる。
 まず第一に目に飛び込んでくるのは…胸の谷間だ。

 真紅のボディースーツに押し込められた脂肪の塊は見事に空洞を形成していた。
 その突起が邪魔でそれ以上見下ろすことが出来ないが、先ほど鏡で確認した…させられた風景が広がっていることは確実だった。

 俺はバニーガールになっていた。

 いや、なっていたというと今この瞬間気がついたみたいだが、実際には数時間前から気が付いてはいる。
 いるんだが、いつまでたっても現実味が湧いてこない。だから何度も何度も現実を確認しているのだ。

 足の指先をもぞもぞしてみる。
 肌色ストッキングに加えて網タイツに二重に包まれたつま先が、体重の掛かるハイヒールの先端で押しつぶされそうになりながらその感触を伝えてくる。
 ストッキングというのは肌に密着して、何と言うか厚ぼったい印象を与える代物で、ハッキリ言って特別な感覚は何も無い。
 こうしていても、厚手のズボンを履いているのと感覚としては余り変わらない。

 旅先の温泉宿で浴衣を着たことがあったが、仮にあれがスカートの感覚に類似しているものであるとするならば、ストッキングのそれは少なくともスカートのそれではありえない。
 ここだけの話、肌色のそれであれば見た目は素脚でありながら防寒効果はバッチリなので非常に便利な代物だ。
 そこに持ってきてうっすら肌色の透ける黒ストッキングだの今みたいな網タイツだのを履きこなした日には男を悩殺しつつ快適というずるい話になってしまう。

 ともあれ、前方につんのめるかのようなハイヒール以外は下半身に関しては快適だ。
 俺は肌が弱く、冬の日にジャージ姿でランニングしたりすれば両脚が真っ赤になって腫れ上がり、猛烈なかゆさに悶絶するところである。
 だから、ストッキングなんぞ履いた日には履いた瞬間からかゆくて敵わないだろうと思っていた。
 しかしまあ、体質が変わったのかその点問題ないのは唯一ありがたいことだ。

 視線を更に先まで延ばすと、そこにはブルーのバニーにグリーンのバニー、そして黄色のバニーまでいる。
 全員がハイヒールとマニキュアの色までバニースーツに合わされている。
 そして、全員が恥ずかしがってもじもじしているが、それでもまっすぐな姿勢で立っているのが奇妙である。

 その時、人の気配がした。
 身体が勝手に動く。

 5人のバニーたちは一斉に姿勢を正し、正面を向く。

「おかえりなさいませ!ご主人様!」

 黄色い声が綺麗に揃う。
 そして…その中には自分の声も入っていた。
 バニーたちは上半身を曲げて頭を下げたまま動かない。
 俺はそうでもないが、腰まである長い髪のバニーもいるので垂れ下がってまるでお化けである。

 目の前の視界に広がる床の一部に靴が見えた。
 それが「ご主人様」のものだった。

「顔を上げろ」

 ご主人様が言い放った。
 バニーたちが一斉に上半身を起こす。
 そこには小柄なサラリーマン風の男がいた。

「ふむ…まあまあだな」

 一人一人のバニーを嘗め回すように眺める男。
 黄色バニーのわき腹をこちょこちょする。

「あっ…」

 グリーンバニーのお尻の飾りをぴろぴろと弾く。

「…っ!」

 ブルーバニーの網タイツに包まれた太腿を「ざざあっ!」と撫で上げる。

「っあぁっ!!」

 ピンクバニーのおっぱいを正面から鷲づかみにする。

「いやっ!」

 そして…レッドバニーたる自分の正面にご主人様はやってきた。

「…どうかな?この屋敷での生活は?やっていけそうか?」

松園1

「これは…どういう…ことだ!?」

「見ての通りさ」

 ご主人様は俺のバニーガール姿を嘗め回すように眺めつつ、背後に回る。

「お前は俺の身の回りの世話をしてもらう」

 俺は振り返ることが出来ない。

「こんな…格好でか」

「働くのにユニフォームは必要だろ?」

「何を考えてるんだ…」

「折角なら華やかな方がいいじゃないか…。そう思わんか?」

 ご主人様は俺の露出した腕の肩の部分に両方とも掌を優しく置いた。
 女として露出した肌に男の手が触れる経験など初めてのことだったので、たったこれだけでも全身に電流が走る様だった。

「…っ!!」

 ご主人様は腕のみならず、露出している部分を鎖骨の辺りなども撫で回した。 
 俺は必死に耐えていた。

「ふむ…やっぱりこの胸の谷間がたまらんな」

 空洞にご主人様の右手の人差し指が差し入れられる。
 そして、内壁に振れると柔肌をこちょこちょとくすぐった。

「ああっ!あっ!…あああっ!!!」

 余りにも官能的で、これまでに味わった事の無い刺激にバニーガール姿の俺はのけぞった。

「おいおい、まだ前振りにも達してないぞ?そんなんじゃ先が思いやられるぜ」

 指はそのまま谷を形成する山を上っていった。

「お、おい…まさか…」

 やがて締め付けの厳しい場所さしかかり、更に無理矢理に入り込み続ける。

 そして遂にパットの下に隠された乳首に直接爪の先が接触した。
 俺は今まで聞いたことが無い様な声を上げてその場にへたりこんだ。



 今の状態になったのは数日前に遡(さかのぼ)る。
 いや、記憶が曖昧になりつつあるので何とも言えない。昨日だったかもしれない。
 とりあえず一晩経っているのは間違いない。

 俺はごく普通の平凡なサラリーマンだった。
 勤めていた会社は、この世の「地味」という要素を抽出して固めた様な職場で、ひたすら毎日書類書きだ。
 要するに自分たちで何かを作ったり、輸入したり販売したりするのではなく、そうした会社の事務作業を代行するという仕事で、簡単に言うとひたすら書類を書きまくるということだ。

 一見簡単そうだが…実際それほど難しくない。
 一回やりかたを覚えてしまえば後はその繰り返し。
 量だけは矢鱈(やたら)に多いので拘束時間が長く、それでいて地味。
 言うまでも無いが金を取ってやる仕事なので、ミスは許されない。人の会社の給料の計算の代行もやるが、1円でも間違えると多くても少なくても大目玉を食らう。
 中には直接怒鳴り込んでくるせっかちなのもいる。たったの1円どうってことは無かろう…とは言わないが、殆(ほとん)どの場合はミスは即座に発覚しすぐに次の給料で穴埋めされるし、そもそも年末調整…といってもこれを読んでいる人の多くは興味も無いだろうが…で調整されるから、1円どころか数千、数万単位で給料なんて誤差が出るものなのだ。
 だから、計算している俺らが全く気付いていないならともかく、「今月のもらいが1円少なかった」といって目くじらを立てるのは合理的とは言えない。
 そう言って理解してくれるクライアントなんぞ殆(ほとん)どいないのが現状だが。

 神経を使う割にはその難易度も評価されにくい。
 創意工夫で仕事を効率化することも難しい。それに、結構前に自分なりの創意工夫でより効率的でかつより正確に出来る方法を提唱したら上司にこっぴどく怒られ、以来不貞腐れて流されるままになっている。

 毎日夜遅くまで残業がある割には給料も安く、これといった趣味も無い俺は日付が変わる前に家に帰ってだらだらインターネットを流していたらもう深夜…という生活を続けていた。


 確かに展望は無いが、反面絶望も無い。
 滞りなく勤め上げれば人間一匹どうにか生きて行ける程度には稼げるだろうとタカをくくっていた。
 だが、結局のところリストラされた。
 働きとしては十分だったが、会社に大人数を置いておくだけの余裕が無いんだと。

 職業安定所を活用して職を探すも、ロクなものは無かった。
 大抵、職安に求人票を出す会社というのは即戦力を求めている。
 要するに折角入ったはいいが、社員教育から始めるんじゃ却(かえ)ってロスが増えるってわけ。気持ちは分かる。
 最近の若者は根性が無いから、やっと使い物になると思った頃にさっさと辞めてしまったりする。
 世の中中々上手くいかないものだ。

 それにしても、この世の仕組みは一体どうなっているのか。
 別にマルクス主義者ってわけじゃないが、世の中には遊びほうけていて月収数千万を貰うような天下り官僚がわんさといる。
 一方で薄給ならまだしも、職の無い若いのがごろごろいる。
 人間、その気になれば10万もあればどうにか暮らして行けるのだ。
 70代にもなって持て余している金があるならその内100万円あれば10人とは言わないが、数人は食っていけるのだ。
 それはどうにかならんのか。


 そんな事を考えていた時のこと、俺は何かに導かれる様にそいつに出会った。
 細かいディティールは省略するが、要するに小学校・中学校と同じクラスにいた奴だった。
 場末とまでは行かないが、それほど高給とも言えない大衆居酒屋にどうしてそいつがいたのかは分からない。
 ともあれ、同窓会にもロクに出席していなかった俺は十数年ぶりに出会い、大いに盛り上がった。

 今にして思うと、これは「盛り上がった」と言えるのかどうか微妙なところだ。
 というのも、それほど親しくなくとも小学校・中学校と9年間も一緒だとかなり体験も共通で、クラスメートだの担任教師だのの名前を出すだけで懐かしがれる。

 そして、そいつは俺が失業中で職を探しているというと驚いた顔になった。
 自分で言うのも何だが、俺はかなり理知的な喋り方をするらしい。
 平たく言うと、喋っている相手が「こいつはかなり頭がいいな」と思うらしいのだ。
 実際、いらん雑学を多少知ってはいるが、そんなものは体系的な知識の前に比べたら屁みたいなものだ。
 だからこそ、クラスの中ではもっとも将来を期待されていたのに高校では平凡以下に落ち込み、聞いたことも無い四流大学をやっと卒業し、エリートコースとは程遠いうらぶれたサラリーマン生活を送ってはリストラされて職探しをしているのだ。

 同窓会に出ないのはそういう理由もある。
 みっともない今の自分を晒したくないのだ。
 風の噂では同窓会に出ているのは順調に働いている奴か、さもなければ自営業の家業を継いだ一部の奴くらいで、残りの奴は消息も不明だという。
 みんな三十を越え、そろそろ事故死したようなのも出て来るが、中には自殺したらしいなんて噂の奴もいる。葬式に出た奴が誰も同窓会にいなかったらしく、今も真相は闇の中だ。

 ともあれ、てっきり一流商社だのIT企業だのでバリバリやっていると思われていた俺はとんだところで哀れみを受けることになった。

 そこから話は一気に加速する。
 そいつは、俺に「住み込みで働かないか」と言い出した。
 いい年こいたおっさんが今さら苦学生みたいな環境でもあるまい。俺は構わないがお前が使いにくいだろうと断った。

 だが、彼は聞かなかった。
 この年代の男が殆(ほとん)ど誰しもそうであるように、現在の政権のばら撒き政策をなじり、金をばら撒くのではなく、職をばら撒くべしと吼えた。
 もっともな話だが、博士でも大臣でも無い俺たちが床屋政談ならぬ居酒屋政談をやったところで世の中は変わらないだろうと諭した。

 しかし、彼はまだ一般的な知名度こそ無いが有数のIT企業の創業者となっており、金は浴びるほどあるという。

「金は浴びるほどあるか…羨ましい話だ」
「お前、自分が金持ちになった想像くらいしたろ?」
「そりゃしたさ。いきなり3億円手に入ったらどうするか?とかな。ガキの妄言だ」
「そんな事は無い。俺は今自分の資産を数えるのも難しい大金持ちだが、今もその気持ちは忘れてないぜ」
「大いに結構じゃないか。幼馴染でなきゃ口も利けない立場だな」
「茶化すな」
「それで?浴びるほどの金をどうしたって?」
「まあ、運用に回して余計に増やしてる」
「そういう金の扱い方はよく分からん。相談なら検討外れだぞ」
「違うって。俺は慎重派だから運用に回した金が全部吹っ飛んでも破産しない程度しか回していない。しかも!」
「…なんだよ」
「毎年分割された預金資産がアンロックされるようにした」
「…?良く分からん」
「つまり、今から俺が120歳になるまで毎年1,000万円が『その年になって初めて使える』様になるように銀行と契約してるのさ」
「それだけで偉く金が掛かってるな」
 細かい計算はしないことにしたが…まあ大したもんだ。
「つまり、いくら運用資金だの何だのが吹っ飛んでも生きて行くだけなら問題ないってことさ」
「借金が発生したらどうする?俺ら貧乏人は確かに金は持って無いが、同時に借金の額もたかが知れてる。しかし、大金持ちはその気になれば大金を動かせるからいざこしらえる借金の額も莫大だ。俺には100万の借金をこしらえるのも大仕事だが、お前はその気になれば100億の借金を作れる。…そうだろ?」
「…良く知ってるじゃねえか」
「昔から雑学だけはあるんだ」
「その点も心配いらん。ウチは無借金経営だ」
「ホントかね」
 にわかには信じ難い話だ。そこいらの町工場だって借金しながら仕事をしてるし、好況な時に運転資金が間に合わずに倒産するなんて現象すら起こるのだ。
 一時的に大金を運用できるようにする「銀行」は人類の英知の一つである。

「ああ。昔から借金だけは嫌でね」
「良かったじゃねえか」
「ウチは知名度はまだまだだが、日本有数のあの会社やらこの会社も資産と借金を相殺すればトントンか赤字のところばっかりだぞ?」
 まあ、そんなもんなんだろう。
 そんなスケールの大きな話は無職には似合わない。

「それで?そのミリオネアさんがプー太郎に何か御用でも?」
 流石に少々卑屈にもなる。
「だから、社会貢献だよ。俺の金の一部でも使えば「職」をばら撒ける。細かい過程は省くが、経済も好転するのさ」
 要するに手間の掛かるケインズ政策ってところだ。
 市場に金が余れば景気がよくなる。
「お前一人で日本の経済を好転させるってか?」
「そこまではいかんさ。ただ、職ならあるぞって話さ」
「何をさせようってのか分からんが、事務処理はさんざんやったが特に資格があるわけじゃないから即戦力になるとは限らんぞ」
「その点は心配ない。既に働いているのがいるからOJTで何とかする」
「住み込みって話だよな?」
「大雑把に言えば給料の一部ってことだ」
「福利厚生は?」
「問題ない」

 その後細かいところを詰めて行ったが、この手の事務処理ばかりやっていた俺からしても特に問題ない職場に思えた。
 住み込みというところが違和感を覚えたが、安い家賃と考えれば割り切れる。
 何時(いつ)までも世話になる訳にもいかないので、給料は生活費が掛からないのをいいことに独立資金として貯める方向で頑張ればいいかと思い直した。


 そして働き始めたのだが…最初に部屋に通され、それまで男一人暮らしで使っていたものを運び込んだ。
 奴の家は宮殿みたいなでかさだった。
 日本にこんな土地が余っていたとは思わなかった。
 こんなクソでかい家なんて、持ってるだけで維持費に税金と凄まじい金が掛かるはずだ。だが、あいつは向こう数十年のその手の資金を値上がりも見越してプールしているはずだ。そういう性格の奴である。

 俺が知るあいつはごく普通のサラリーマン家庭育ちのはずだ。
 大学名もそれほど有名というわけでもなかった。
 正に腕一本で一代でこの豪邸をおったてるまでに成り上がったのだ。
 両親は既に無く、親戚も軒並み鬼籍に入っているらしい。
 同じく同級生だった女子と結婚している。子供はまだ無い。

 この頃の女性は相手の年収ばかり気にすると言うが、その点では満足しているのだろうな、と思った。
 彼女と会うのもまた楽しみの一つだった。

 ところが…いざ「職場」に足を踏み入れた瞬間に悪夢が襲い掛かってきた。
 そう、俺の身体は見る間に変形して行った…。

 あっという間にグラマーな女の身体に性転換したかと思うと、その場で全裸となり、準備してあった真っ赤なバニーガールの衣装に身を包んだのである。

 何が何だか分からないまま、必死の抵抗もむなしく、勝手に動く手が網タイツを自分の脚にかぶせ、バニーコートのホックを締め、ファスナーを上げ、メイクからマニキュアまでばっちりと決めたのである。
 そして冒頭の場面に繋がる。

 あのIT企業の社長、俺の幼馴染の男が「ご主人様」だ。

 ご主人様は忙しいらしく、一通り品定めをするとすぐに仕事と称して出て行った。
 俺たちバニーガールはこのでかい屋敷を手分けして掃除し、ゴミを捨て、洗濯をし、食事を作った。
 丸っきり住み込みのメイドである。
 唯一違うのは、まがりなりにもエプロンを基調とした「作業着」の一種であるメイドの衣装と違って、ホステスの格好であるバニーガール姿は非常に作業がしにくかったということだ。

 殆(ほとん)ど伸縮性も何も無いハイヒールはかがみこむことが困難で、足首を何度もくじきそうになる。
 頭に大きく付けられたバニーカチューシャと呼ばれるウサギの耳を模した髪飾りは、そうしたものが頭に付属しているという感覚が無いのでしょっちゅうあちこちにぶつかって髪の毛の留め部分を引っ張る。
 いきなりちょんまげをつけた時代劇役者はちょんまげをあちこちにぶつけるというが、それと似たようなものだろう。

 また、殆(ほとん)ど全身を包み込むバニーガールの衣装は、トイレで用を足す場合には一旦全裸にならないと難しい。
 ある程度勝手に操られているらしい女の身体は、女体の神秘を観察する前にさっさと用を足すことになった。

 そばにピンクのバニーがつきっきりで仕事を教え込んでくれたが、確かに特別なことは何も無かった。普通に家事が出来ればこなせそうなことばかりである。

 どうやらメイド…というか格好はバニーガールなんだが…は交代制らしく、夜になると別のバニーに仕事を交代した。
 それこそ「身の回りの世話」が仕事なので、深夜にご主人様が夜食が欲しいと言えばすぐに造らなくてはならない。

 自分の部屋に戻ってきた俺はそのまま布団に突っ伏しそうになった。

「駄目よ!」

 ピンクバニーが大声を上げる。

「あんたメイクしたままでしょ!布団が汚れるよ。それからユニフォーム脱ぎなさい。今日はあの日じゃないんだから」

 何やら気になる用語も出てきたが、そのまま促されてメイク落としの指南を受け、支給されているらしいジャージに着替えると今度こそ布団に倒れこんだ。

 同時に身体も男のものに戻っていた。

 俺はすぐさま携帯電話で「ご主人様」に連絡を取った。

(続く)

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