FC2ブログ

Latest Entries

緊急の場合は 1-2 by.amaha

(2)

 朝シャワーを使ったときには緊張した。女子の体に興味がないといえば嘘になる。それに佳奈子はかなりの美少女だ。
 しかし興味本位で触れるのは彼女に対する裏切りのような気がした。相手を異性と意識する四五年前までは親友、いや兄弟姉妹同然の仲と思っていた。佳奈子が男なら今でもずっと一緒にいたと思う。

 そんな訳で極力冷静に洗い始めたのだが、やはり男と違いなめらかで敏感な肌に戸惑い、ずいぶん時間がかかってしまった。
「長すぎるぞ」
と黒猫がドアの隙間から顔を出す。
「わかったってば」
 照れ隠しに湯を相手にかけ、シャワーを切り上げた。時計を見ると確かに時間が迫っている。あわてて体を拭いて用意を整えた。

 幸い遅刻にはならず、初日はスタートした。
 同じクラスだったので普段の佳奈子の雰囲気は知っているし、猫からの情報もある。ただ、今日は静かだねなどと言われるのは避けられなかった。女どもの会話の速さについていけず、どうしても聞き役になってしまう。
 ともかく何とか放課後まで無事に過ごした俺は部に少し顔を出し、手首の調子が悪いとつげ、走りこみだけで帰らせてもらった。
 中一まで同じ道場に通ったので多少の心得はあるが、そのあとは時々祖父の古武道をかじった程度なので、佳奈子の柔道の真似ができるわけはない。もちろん二週間ずっと仮病で通すのは無理だ。しかし手首をかばって動けば体捌きの違いも多少はごまかせるだろう。

 汗の臭いを消すための様々な臭いが漂う女子ロッカーで着替え外に出る。そこで意外な人物が俺を、いや佳奈子を待っていた。
「少し時間いいかな」
 荒木レイカだ。
「ええ」
 そう返事をして肩を並べて歩いた。雑誌のモデル並みに綺麗なので、今の自分が佳奈子だということを忘れて緊張してしまう。
 レイカと佳奈子は親しい。猫情報では休日に二人で何度か買い物に行っていた。それにクラスでも会話をしている場面を見かけることが多かった。
 
 レイカは中庭に入ると立ち止まった。
「姫くん休んだでしょう」
「うん」
「急用で二週間くらい親戚の家に行くって担任が言ってたけど」
「ええ」
「きのう、あなた達が放課後一緒にいたのを見た人がいるんだけど、関係はないのかしら」
 女子の情報網恐るべし。
「ないわ」
 嘘でごまかすのはまずい。レイカとの友情にヒビが入れば佳奈子が悲しむ。
 最後の会話が気になったので、レイカと俺に関してなら――佳奈子自身のプライバシー以外――猫から詳しく聞いていた。
「あなたは察してたと思うけど……姫くんのことが、何ていうか、気になってきたことを」
「憎からず思ってるってこと?」
「まあそんな感じ」
「何となくね」
「じゃあ、ひょっとして」
 推測になってしまうが言ったほうがいいだろう。ただ、レイカの内心をのぞき見するようで気が引ける。
「差し出がましいとは思ったけど、それとなく聞いてみた。でも、途中で邪魔が入ってはっきりとは」
「良ければ聞きたいんだけど」
「うん」
「でも、その前に1つ確認」
「なに? なんだか怖い顔だけど」
「あなたはどうなの、姫くんのこと」
「だから単なる幼なじみで」
「姫くんの方は?」
「同じだと思うけど、どうして?」
「二人きりで話したこともないのに気になるのは……決して一目惚れしたからじゃないわ」
 まあ、そうだろうさ。それにしても真剣なレイカは身震いするほど美しい。俺は見とれていた。
「あなたの話を聞いているうちに興味を持ったのが第一歩なの」
「レイカには昔のことをよく質問されたわね」
「うん。なんだか羨ましかった」
「でも、レイカは綺麗だけど(自分で言うのはなんだか悔しいが)雛芳はごく平凡じゃない」
「あなたになら言えるけど、私は男の子にもてる」
「そりゃまあ」
「それなりに自分に自信があって告白するんだろうけど、見てるのは明らかに私の外見だけなの」
 俺も同じだと思うぞ。
「レイカは優しいし、お話するのがとても楽しいけど」
「あなたは私の内面を見てくれているもの。男なんて、普通の男はそんなところは見ない。餓えた野獣のようなものよ」
 いや、まあ、心当たりはありまくりである。
「姫くんなら、私を一人の人間として見て判断してくれると思うな」
 買いかぶりすぎです、レイカさん。
「もっと平凡だと思うけど」
「近すぎて見えないのかもよ。それより彼はなんて言ったの、私のこと」
 俺は佳奈子の記憶とずれないよう正確にいうことにした。
「えーっとね。『密かに憧れている』って言ったと思う」
「やったわ」
 レイカがうれしそうに微笑んだので、なんだか恥ずかしくて頬が熱い。
「どうして、あなたが赤くなってるの?」
「だってほら、兄か弟のような感じだから他人ごととは思えなくて」
「ふ~ん、とにかく戻ってきたら会えるようにして、お願い」
 正直言って天にも昇る気持ちだった。
 見た目は学内一の美少女だし、佳奈子の評価がとても高いのを今の俺は知っている。そして佳奈子の判断を俺はとても信頼していた。
「わかった」
「ありがとう」
 そう言ってレイカが抱きついてきたので俺は舞い上がってしまった。

 
 戸惑いながらも俺なりに上手に佳奈子を演じたと思っている。
 授業もしっかり聞いた。筆跡は俺のものなので、ノートをとるのはまずい。だから帰宅後入力しなければならないから集中するしかなかったんだけどね。
 部活も何とかこなした。部員に混じっての着替えや乱取りにはさすがに困ってしまうが……
 俺が身代わりをしていたことが佳奈子にバレたら殺されるかもしれない。
 中でも一番の収穫はレイカをよく知ることができたことかな。
 これまでの超美少女という評価は、本人自身も拒否しているが、あまりに表面的すぎる。彼女の中には佳奈子に負けない優しさや魅力がいっぱい詰まっていた。

 そんなこんなで二週間はまたたく間に過ぎた。
 その日、放課後そろそろ猫と共に山頂公園に行こうかと思っていた日、登校した俺は意外な、まさに想像もしていたなかった人物と会った。
「おはよう佳奈子」
「か、か、佳奈……姫くん!」
 あわてて教室の隅に引っ張っていく。
「あ、あなた!」
「えへへ、治ったわよ。偽物の加奈子ちゃん」
「なぜ?」
「刑事さんは急用で帰国、じゃないや、帰星らしいわよ」
「え~!」
 俺の黄色い悲鳴が教室に響き渡った。

(おあとがよろしいようで)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/9327-8134c3df

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2020-08