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呪いはわが身に (5) by.isako

(5)

 長尾が東から会いたいと連絡を受けたのは休暇前日の夜だった。
 会うと即答できなかったのには、二つの理由がある。一つは機械化した東がしてきた仕事の内容を知っていること。もう一つは加賀美しおんとしての東が気になって……一目惚れしたかもしれないこと。だから、もう一度会うのは辛かった。
 しかし使い捨て携帯からかけてきた東の口調は真剣そのものである。おまけに明日会う約束の東ミナのことだと言われては、できる返事は一つしかなかった。
 ミナ、香川ミナと東鉄也は長尾の大学時代の友人である。国際問題研究会で知り合い、常につるんでいたものだ。長尾が疎遠になったのは卒業後一人軍に入ったことが原因で、駐留先から戻ってからは結婚した二人を何度か訪ねたことがある。

 長尾が選んだのは渋谷駅から15分ほどのビルにあるイタリア料理の店で、座席が16ほどの小さな店である。学生時代に利用したことがあり、東もよく知っていた。
  待つほどもなく加賀美はやってきた。店には学生風の男性客が三人と一組のペアがいたが、男四人の視線は東に釘付けになる。にこやかな笑顔で向かいの席に座った加賀美は特にめかし込んでいるわけではない。服も簡素なパンツルックだし、化粧も薄かった。どうやら先日は、意識して目立たぬ化粧をしていたようだ。長尾を驚かせないためにだろうか。
「お待たせしたかしら」
「いや」
 今きたところだと続けようとして、 まるで三文芝居のデートのようだと苦笑が浮かぶ。
「なにか変かしら、私」
「いや、君のことじゃない」
「ほんとにぃ?」
 一人きりのウェイトレスが注文を聞きに来たのでしばらく会話は中断する。
 加賀美はパスタとサラダを長尾はディナーセットを頼み、冷えた白ワインをボトルで注文した。
「……ご注文は以上でよろしいでしょうか」
「ああ」
「はい」
「しばらくお待ちくださいませ」
 ウェイトレスが席を離れると加賀美は願いを話す。実行は簡単なようで難しかった。
 それは元妻ミナの再婚は望むが、中島陸人以外にすることだという。
 東の心が加賀美に宿っていることを秘密にしたままで伝えるのは難しい。
「どのみち一度は訪ねようと思っていたんだ。努力してみる」
 そう答えるだけで精一杯だった。。
 しかし加賀美はそれ以上この話題に拘泥せず話題を変える。自然に長尾の休暇にも触れることになった。
「ちょっと親戚の用事でね」
 まさか、お前の墓参りだというわけにもいかない。
「そう」
 食事が届く頃には、話題が最近の不順な天候や流行になり、長尾も気楽に話し合えるようになる。加賀美と話すのは楽しく、久しぶりに愉快なひと時を過ごした。

<つづく>

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