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呪いはわが身に (8) by.isako

(8)

 決行当日、昼間のうちに業者を装って四十八階のレストラン街にある普段は使われない倉庫に潜入した。
 作戦は比較的単純だ。ここの店は殆どが午後十時半に閉店する。ほぼ無人になる午前一時に煙をあげ火災警報器を作動させる。残っていた人も客さえいなければ消防が到着するまでの五分で退避できるはずだ。
 そこで四十五階にしかけたC4を爆発させる。逃げたければ脱出できるように非常口から遠いところから順に爆発する。爆発と同時に私は上階から侵入し攻撃を始める。
 これだけのことだ。
 私の攻撃は陽動で敵の注意を引きつけ長尾の仕事をやり易くし、直接攻撃と思わせることで貴重なデータが消去されるのを少しでも遅らせるのが目的だ。
 非常時に残ると予想されているのは十二名の戦闘員で、こちらが無勢で撃退できると判断すれば復旧の難しいメインコンピューターのリセットをためらうに違いない。
 長尾は五分欲しいと言っていた。

 長いはずの待機時間は、思い出に浸るうちにまたたく間に過ぎた。気になる妻と娘のことは、長尾に託すという手紙を直接マンションの郵便受け箱に入れてきた。防犯カメラに映る私に警視庁は気づくだろうが、親友の長尾あてなら疑問を持つことはあるまい。
 ライフルをもう一度確認し、アダプターに銃剣を取り付けた。

 ミナ、アスカ、本当のお別れだ。長尾、あとは頼むぞ。

 午前一時、私は起爆タイマーを作動させ廊下に出た。
 いくつもの発炎筒をたき、警報機を鳴らす。

 長尾の計画では、ここでしばらく待機して爆発と前後して突入する。私の安全のためだ。敵を混乱させるには充分ということだろう。
 しかし彼の目的だけを考えれば、制圧可能な襲撃だと思わせるほうが良いはずだ。

 非常階段を降り、施錠されたドアを吹き飛ばして私は四十七階に討ち入り、怒鳴った。
「fùchóu (復讐)!」
 私怨だと思わせるほうが良いだろう。AUTOのままSG550の引き金を引いた。
「díxí(敵襲)!」
 応戦に重火器はない。拳銃、92式手槍らしい。
 腰までの高さのパテーションの陰を駆け抜けながら弾倉を交換した。そのまま腰を伸ばし狙わず適当に撃つ。
 ジェネレーターの出力を上げ全力疾走すると後方から弾痕が追いかけてくる。
「yīrén(一人)!」
「nǚ(女)?」

 午前一時三分。下階から新手がきた。避けきれず一瞬射線に入ってしまう。数発が当たりバランスを崩して転倒した。
 ライフル弾だ。事前の情報が正しいなら、H&K MP7のデッドコピーだろう。素早くボディーアーマーを探ると分厚いセラミックプレートがぎりぎりの所で弾丸を防いでくれていた。
 死ぬ気とはいえ、今はまだ早い。長尾の役に立つつもりなら。
 ライフル上部のストッパーを操作しバーストオンリーにしてデスクの陰で構えた。事務椅子を押し出すとうかつな一人が顔をだした。
 壁に飛び散る血と脳漿が目に入る。
 悪かったな。十分もすれば私も後を追うから機嫌よく迎えてくれ。もっとも飛び散るのはオイルとメモリだけどね。

 敵は退路を断つように回りこんできている。囲まれては時間稼ぎがやりづらい。
 殺した敵の横からダッシュして隣室との境の分厚いガラス壁に頭から飛び込んだ。 
 敵の血で床に赤い筋を引きながら部屋の反対側まで移動した。背中側は作戦では脱出経路になる北向の窓で、リモコンで窓拭き業者が使うロープを屋上から垂らすことができる。

 午前一時五分。タイマーが作動して爆発が次々と起こった。たった一人の侵入者が怪我をしたと思い込んでいた敵に動揺が走る。
 相手の気を引くだけなら死を覚悟した私だけで充分。爆発はかえって敵を警戒させてしまう。しかし、長尾の行動のカモフラージュでもあるので外せないのだ。
 あと五分付き合ってくれたまえ、諸君。

<つづく>

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